白井健康元気村

千葉県白井市での健康教室をはじめ、旅行、グルメ、パークゴルフ、パーティーなどの情報や各種コラムを満載。

Cレーションと海兵隊のコーヒー 【連載】呑んで喰って、また呑んで㊷

2020-04-22 14:18:28 | 【連載】呑んで喰って、また呑んで

【連載】呑んで喰って、また呑んで㊷

Cレーションと海兵隊のコーヒー

●日本・静岡県御殿場

山本徳造 (本ブログ編集人)  

 

 

 ときは大学時代にさかもぼる。ある日、友人が変なモノを持ってきた。何でもアメリカ兵が第2次大戦から食べている戦闘糧食だそうである。その名は「Cレーション」。食べろと言うから、中を開けてみると、いろんな缶詰が入っていた。
 大きめの缶詰の他、チーズ、クラッカー、缶入りジャム、それにデザートの詰め合わせも。この食品以外に「アクセサリーパケット」と呼ばれる付属品が付く。付属品には、粉末コーヒー、塩、砂糖やチューインガム、プラスティックのスプーン、缶切りの他、なんとタバコも入っているではないか。
 備え付けの缶切りでメインの缶詰を開けてみると、トマトソースに漬けたミートボールが。スプーンですくって食べてみる。うー、さすがアメリカの軍隊食だ。ケチャップの匂いがプンプンする。うー、不味い。一口で舌が劣化しそうになった。
 それ以外はどうか。クラッカーはまあまあ、チーズもそこそこ。つまり、けっして手放しで美味いとは言えないシロモノばかりで、どれもこれもパッとしない。そんな中で、私がもっとも気に入ったのが、粉末コーヒーである。
 お湯を注いで飲む。私は酸味の強いコーヒーが苦手だ。が、そのコーヒーは酸味がほとんど感じられない。日本では薄めのコーヒーを「アメリカン・コーヒー」と称するが、米軍の薄いコーヒーを飲んだ日本人がそう命名したのかも。
 大学を卒業してから5年ばかり経った頃、私はある軍事専門誌で記者をしていた。その雑誌の企画でキャンプ富士の米海兵隊を取材することになった。某国の人質になった米国市民を海兵隊部隊が救出する演習を見てこいという編集長のお達しである。こうして静岡県御殿場へ。
 出発する前に気になったことがあった。キャンプ冨士のPXではウイスキーを売っていないという。だから、酒屋でサントリーの角瓶を1本仕入れた。
 キャンプに着いたのは夜だった。翌日は演習がある。早く寝た方がいいだろう。が、そんなわけにはいかなかった。私のようなプレスには海兵隊員の担当が一人付いた。名前は忘れたが、私とほぼ同年齢の軍曹である。その軍曹に案内されて、その夜の寝床となる兵舎へ。かまぼこ型のだだっ広い兵舎に私と軍曹の2人だけが泊まるというではないか。
 時計を見ると、まだ8時ちょっと過ぎだった。寝るには早すぎる。そんなときのためにウイスキーがある。
「ウイスキーでも呑もうか?」
「えっ、あるの?」
「うん、ここに来る前に買って来たんだ」
「わー、嬉しいなあ」と軍曹が少年のように喜んだ。「ちょうど吞みたかったんだ」
 酒が入ると、初対面でも話が弾む。ウイスキーを持ち込んでよかった。軍曹は先住民であるチェロキー族の血が少し入っているらしい。いつの間にかボトルの中身が半分になった。子供のときによく観たテレビ・シリーズ、それもアメリカのテレビ番組のことが話題に。
 同じ年代なので、観ていたテレビ番組も同じだった。「ローハイド」「サンセット77」「サーフサイド6」などなど。そんなわけで、その番組のテーマソングでふたりして大声で歌った。いつしかバターン。
 翌朝、軍曹も私も軽い二日酔いだった。朝食をとりに食堂に向かう。金属製のプレートを持たされて列に並ぶ。ベーコンと卵の焼ける匂いが食欲をそそる。配膳係がスクランブルか、オムレツか、ターンオーバーか、それともサニーサイド・アップか、と忙しそうに尋ねた。ターンオーバーとは目玉の両面焼きである。私はサニーサイド・アップ、つまり目玉の片面焼きを頼んだ。
 軍曹とテーブルに座って、ベーコン&エッグとパンを頬張る。そして仕上げはコーヒーだ。一口飲む。懐かしい記憶が蘇る。学生時代に飲んだ、あのCレーションに付いていたコーヒーの味そのものだったからだ。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« これが自衛隊式感染予防法だ... | トップ | 白井市で14人目の感染者が  ... »
最新の画像もっと見る

【連載】呑んで喰って、また呑んで」カテゴリの最新記事