阿部ブログ

日々思うこと

超伝導関連での国内動向が活発化している

2012年05月16日 | 日記
中部電力は、電磁力2000メガパスカルに対応した超電導コイルを開発したと14日発表している。
同社は、2004年頃から高性能な超電導電力貯蔵装置(SMES)等のマグネットや大容量・低損失な超電導ケーブルの開発を進めており、超電導線材の中でも、特に電流密度が高く、磁場中での特性低下が少ないイットリウム系線材の開発を進めてきている。

中部電力によれば、通常の金属系超電導コイルの電磁力に対する耐力は300~400 MPa程度。同社が開発を続けてきたイットリウム系超電導コイルの、超電導線材の強度限界は1000 MPaが最大。因みに100MPaは、直径1mmの糸で8kgの重さのものを吊ったときに糸に加わる力とされるので、イットリウム系超電導線材の電磁力耐性の強さが分かる。

しかし、今回の新たな構造の超伝導コイルは、1000MPaの2倍以上となる2000MPa以上の電磁力に耐えることが可能と言う。中部電力のイットリウム系超電導コイルは、通常の金属系超電導コイルの6倍と言う電離磁力耐性を持つコイルで世界最高。
これは凄い。

このイットリウム系超電導コイルは、金属技術では定評の東北大学と共同で開発したもので、重要な絶縁の部材には低温で硬化する液状のポリアミド樹脂を用い、超電導線材の特性を保ったまま絶縁する事を可能としている。従来の樹脂テープだと、コイルの曲げ加工の際にテープが切れて絶縁性能が低下することがあったが、ポリアミド樹脂はそれがない。
今回の中部電力によるイットリウム系超電導コイルの開発で、従来の超伝導コイルより小型でエネルギー容量が大きい超電導電力貯蔵装置(SMES)などへの実用化が加速されるだろう。

今後は、中部大学で直流超伝導を研究している山口作太郎教授との連携により交流&直流の超伝導研究に更に弾みがつくことに期待したい。

それと東京電力も超伝導ケーブルでの送電に関する実証実験を、今年11月に行うとしている。
この実証実験には、住友電気工業の超電導ケーブルを使い、国内初となる一般家庭への超伝導送電を行うもので、横浜市にはる東京電力・旭変電所から超電導ケーブルを引き、約20万キロワットの電流を流す事で、送電中の損失に関するデータを取り、既存の送電網を将来的に置き換えられるかを調査すると言う。

実は、東京電力管内には、275kV以上の高電圧送電ケーブルの総延長は400kmを超える規模で運用されており、送電中に約4万キロワットのエネルギー損失を出しており、これを超電導ケーブルに換装する事で、送電ロスを半分の2万キロワット以下に抑えたいのが本音。

それと先月19日、理化学研究所とNECの共同研究で、超電導の新たな物理現象が発見されており、新たな超伝導世界が開ける可能性がある。この新発見は、量子磁束と言う磁力線の最小単位が、超薄の超電導物質を「すり抜ける現象」。
この現象はジョセフソン効果とは真逆の現象で、2006年に理論的には予測されていたものを、今回の研究実験で確認したもの。この発見により、新たな超伝導の原理で動く素子の開発にもつながると期待されるいる。

まあ、何れにせよエネルギー損失を最小化した送電網の必要性は、国民一般もその必要性を感ずる所。
今後の積極的な技術開発と早期の超伝導送電網の実現に向けて邁進して頂きたい。