阿部ブログ

日々思うこと

H2Aロケット打ち上げ成功と日本における宇宙開発の行方

2012年05月20日 | 日記

5月18日午前1時39分、種子島宇宙センターから、地球観測衛星「しずく」と、韓国の「アリラン3号」を搭載したH2Aロケット21号機を打ち上げた。これは初めての商用衛星の打ち上げで、無事に軌道投入に成功している。

因みに韓国の「アリラン3号」は、超高解像度衛星で、所謂「サブメートル観測衛星」。サブメートルとは0.7mの解像度を持つ衛星の事。この手の衛星は米国、EU、イスラエルしか保有していないが、今回の打ち上げ成功で韓国は第4のサブメートル級衛星を保有する事となった。

今回、日本のH2Aロケットでの打ち上げを何故、反日国家・韓国が選択したかと言えば、日本側が超格安の価格を提示したから。提示価格は13億円。流石のロシアもこの価格では負け。利益などある筈もなく、初めての外国衛星打ち上げと言う実よりも名を取った。

さて商業衛星打ち上げ市場は、約3400億円規模と言われるが、三菱重工とJAXAは、この市場で生き残っていけるのだろうか? 個人的には三菱重工に踏ん張って欲しいと思っている。三菱の頑張りでH2Aロケットの打上げ成功率は、今や95%以上に達している。2005年の7号機打ち上げから今回の21号機打ち上げまで連続成功しているのだ。

発射成功率の向上は、重要なアピールとなる。だが打ち上げコストがネックだ。商業衛星打ち上げの平均は70億円前後と言われるが、米スペースX社のファルコンの打ち上げ費用は50億円程度であり、商用衛星市場で生き残るには、激しいコスト競争が待ち受けている。
三菱重工は、次世代のH3ロケットの開発を進めており、2022年の初打ち上げを目指しているが、H3は米スペース社のファルコンとのコストにも匹敵する競争力を持たせると言う。

今後の日本における商用衛星打ち上げビジネスを含む宇宙開発はどのような政策で動いていくのだろうか?
日本政府は、小泉政権以降、政府主導での産業振興を縮小させているが、原子力と宇宙開発については政府主導での財政投資を含む官民連携でのプロジェクトを進めている。原子力については「フクイチ」(福島第一原発)事故で、国民の信頼を失墜しており、縮小はあっても拡大はあり得ない状況。だが宇宙開発と海洋開発については、縮小ではなく拡大あるのみだろう。

しかし、日本の宇宙開発については問題もある。特に宇宙開発を手動する政府組織が存在しない点。しかし、それを改善する努力は払われている。
2011年4月8日の当ブログでも「宇宙庁構想について記載しているが、宇宙開発の司令塔機能の強化の為、今年2012年2月14日に「内閣府設置法等の一部を改正する法律案 」(宇宙開発戦略本部事務局)が国会に提出された。(詳細は下記参照)

概要  
要綱  
法律案・理由  
新旧対照表  
参照条文  

宇宙開発利用の枠組みを定めた宇宙基本法(平成20年法律第43号)が平成20年に制定されたことを受け、宇宙開発利用の戦略的推進を目指して内閣に宇宙開発戦略本部が設置されている。が、しかし、宇宙開発戦略本部の設置後も、戦略的な意思決定が可能な本部機能が必要であるとの議論が続き、この議論を受け。平成24年2月14日、宇宙戦略の本部機能を内閣府に組成する事を目的とする「内閣府設置法等の一部を改正する法律案」が国会に提出されたのだ。

今回の法改正に向けて、平成22年12月の専門調査会において、宇宙開発に関する司令塔機能の見直しを平成24年度予算に反映させるべきとの結論が導き出され、また宇宙開発利用体制検討ワーキング・グループの中間報告や有識者会議の提言を踏まえて、宇宙庁構想を視野に入れた検討が進められたが、防衛省が運用する情報監視衛星を含む、宇宙関係予算の執行の一元化の難しさ、JAXAとの一体化による弊害などが様々指摘され、意見の集約が行われなかった。

紆余曲折を経て、平成23年9月30日の閣議決定で、内閣府に宇宙開発の司令塔機能を設けることが再確認されたものの、宇宙庁の設置や宇宙関係予算の執行の一元化は見送る方針が示された。しかし、宇宙政策委員会が平成24年1月に報告書を発表し、この報告書に基づいて、今回の改正法案が作成され、国会に提出された。
海洋開発もそうだが、宇宙開発も単純に政策遂行と行かない状況があり、国益を損する事となっているが、現在の非公式権力は単なる共通利益共同体と化している為、適切な対応が出来ていない。これは北朝鮮と同じ構図であることが理解できない。国民が市民として個人としての意識が確実に変わっているのに偉い人達は無認識だ。

さて、今回の改正法案の概要は、以下の4点である。

(1)内閣府は、今回の法改正を受け宇宙政策の企画立案と総合調整を受け持ち、他府省の所掌に属するものを除く宇宙開発利用の推進(バスケット・クローズ規定)し、準天頂衛星システムの整備運用が加えられる。

(2)宇宙政策委員会が設置される。この委員会は、内閣総理大臣の諮問に応じて、宇宙政策の重要事項や経費の見積りの方針に関する調査審議を行い、内閣総理大臣や関係各大臣に対し建議と勧告を行う組織で内閣府に設置される。(宇宙政策委員会の委員は、非常勤で、国会同意人事の対象ではない)

(3)内閣府に宇宙政策委員会が設置されるため、文部科学省の宇宙開発委員会は廃止。今まで宇宙開発委員会が行っていたJAXAのプロジェクト評価なども宇宙政策委員会が行うこととなる。

(4)上記を受けてJAXAの主務大臣は、文部科学大臣と総務大臣から内閣総理大臣となる。

今回の法改正に伴い重要なのは安全保障会議との関係である。
安全保障会議では、「防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画」に基づき宇宙基本計画や、防衛省の宇宙開発利用推進委員会で策定された「宇宙開発利用に関する基本方針について」に基づき、情報収集及び情報通信機能の強化等の観点から宇宙開発利用について言及されており、宇宙と安全保障の両領域に関わる課題として、情報収集衛星の機能強化や早期警戒衛星の開発と実戦配備、防衛技術についての防衛省と民生及び学術分野の研究開発機関との協力関係の構築と秘密保全強化が挙げられている。宇宙政策委員会と安全保障会議との密接な連携により、国益に資する宇宙開発施策の適切かつ強力な施行が期待される。

宇宙政策の司令塔機能をめぐっては、前述の通り「宇宙庁」構想が議論されていた。しかし、宇宙政策に関する企画立案と実施の一元化については、組織の肥大化の弊害などが指摘され、関係省庁との調整がつかず、同構想は見送られている。

しかしながら経団連などでは宇宙庁構想の実現を求める声もあるが、宇宙政策の司令塔機能をめぐる議論は今後も続けられるだろう。実は宇宙政策は、大陸間弾道ミサイル開発の技術保持と核武装した際の運搬手段としての国家プロジェクトの含みもある事から、宇宙開発を専管する組織が存在すること自体、非公式権力の皆さんから観ると、望ましくないのだろう。

既に核武装は時代遅れ。これより強力な武器が存在する事を理解した上で、今後の宇宙開発をどのように進めるのかが問われているのですよ。