ロシアのウクライナ侵攻に世界中の関心が集まっていますが、戦争ほど悲惨なことはありません。平和を実現するためにこれまでも天台宗は先頭に立ってきましたが、今起きている悲惨な状況が一日も早く終わることを願い、私も日々祈りを捧げております。
令和4年の比叡山から発する言葉は「大悲万行」です。本年1月1日に水尾寂芳延暦寺執行から発表がありましたが、今こその言葉を世界中の人に知ってもらいたいと思います。水尾執行は「伝教大師は己を忘れて他を利する『忘己利他』の精神を示されましたが、いきなり自己を忘れることは難しいかもしれない」と述べられるとともに、「まずは自分のなかに大悲の心〈仏性〉の気付き、他人のために何か出来るよう心がけたい」と思いを語られました。
戦争というのは、国家的な野心によって引き起こされるものです。どんな人でも仏性があるとの信仰にもとづけば、他人を抹殺することなどできません。仏教徒は平和を愛する信仰です。唯一神の信仰とは違い、自らを絶対化することはありません。それだけに度々迫害に遭うことになったのです。私はシルクロードで有名な敦煌を何度か訪れましたが、仏教が中国に伝わる中継地でもありました。7回にわたって法難に遭っており、今も敦煌莫高窟が残っているのは、奇跡が重なったからといわれています。
仏性がある人は殺めることは許されることではありません。己を忘れて他を利することにはならないからです。一仏教徒として、私は今まで以上に平和の大切さを訴えていきたいと思っています。
合掌
写真は水尾寂芳延暦寺執行