私がこの地に嫁いで、約40年。わけのわからないうちに嫁に来てしまった。
有難い事に隣近所の皆さんにとても親切にして頂いた。
特に同じ階の、じじちゃんばばちゃんにはまるで親戚の様に大事にして頂いた。
その当時のじじちゃんは、上場有名企業で管理職にありなかなか頭の良さが光っていた。
ばばちゃんは私の娘が赤ちゃんの頃お風呂に入れて下さったり、五目御飯を作ると必ず、
うちの分まで届けて下さった。それが美味しい事。
季節季節にはよく出かけるご家族だったので、必ず沢山のお土産を届けて下さった。
経済的に豊かと言う事も有ったかもしれないが、大きな優しさで包んでくれた。
田舎者の若い娘(私よ)が、何とかここ迄やってこれたのは全てご夫妻のお陰と言っても
過言では無い。
じじちゃんは65歳で会社を退職して、ゴルフや地域の少年野球の監督等を楽しそうに
されていた。
じじちゃんが、外を歩くと近所のきかん坊の子供達が、帽子を取り「あっ監督こんにちわー」と
元気に挨拶していたっけ。
私が会社から帰って来るとニコニコと「あーママお帰り!ご苦労さま」なんて私を労って下さった。
そうこうしている内にいつの日か、出かけた儘、家に帰れない病気が発症してしまった。
そう、迷子になっちゃうの。随分遠くで交番に声をかけたりして帰宅したり・・・・
首に名札をぶら下げる様になっても、私の顔を見ると「ママお帰り~」と。
まるで坂道を転がる様に病気は悪化してしまった。
会社でバリバリ有能な能力を発揮し、眩しい位素敵だった頃のじじちゃんは見る影も無くなり
10年前から施設に預けられる様になった。直ぐに家族の名前も全く分らなくなってしまった
そうだ。
本当にアルツハイマーと言うのは、肉体以外の全てを蝕み、廃人の様にしてしまう。
恐ろしい病気ですねー。
施設の方で全てを取り行いお骨になって帰って来た、じじちゃん。
娘の結婚式にはご夫妻でお祝いして頂き、孫を見る様な眼で嬉しそうにして下さった。
お線香を上げに伺ったら、ばばちゃんは私の顔を見るなり泣いてしまった。「淋しいわ」と
絞り出すような声で。
「どこに居ても、生きてくれているだけで良かったのに、私の顔を全く分らなくなっても
それでも命が有る事が幸せだったのに・・・・・」と泣く。
私と話しながらずっとお骨の前で残念がって泣いていた。
「ばばちゃんは結婚して60年以上も経つのにじじちゃんの事が好きだったのね」と言うと
子供の様に「うん」と頷いていた。
何とお幸せな事だろう。大家族に嫁いでのご苦労は口に出せない程だったし、実家に帰る所も
無かったので我慢したそうだが、それでもずっと愛し愛され何と美談と言いたい。
ばばちゃんは、子供さん、お孫さん、ひ孫さんと沢山の家族に囲まれているが
みんなに優しいばばちゃんは、休日になるとどやどやと押しかける様にみんなが集まる。
じじちゃんもそんな奥様の元、お幸せな人生を過ごされたと確信する。85歳、安らかに・・・合掌。
ノースポール
カラー
クレマチス
【花の展覧会】より
有難い事に隣近所の皆さんにとても親切にして頂いた。
特に同じ階の、じじちゃんばばちゃんにはまるで親戚の様に大事にして頂いた。
その当時のじじちゃんは、上場有名企業で管理職にありなかなか頭の良さが光っていた。
ばばちゃんは私の娘が赤ちゃんの頃お風呂に入れて下さったり、五目御飯を作ると必ず、
うちの分まで届けて下さった。それが美味しい事。
季節季節にはよく出かけるご家族だったので、必ず沢山のお土産を届けて下さった。
経済的に豊かと言う事も有ったかもしれないが、大きな優しさで包んでくれた。
田舎者の若い娘(私よ)が、何とかここ迄やってこれたのは全てご夫妻のお陰と言っても
過言では無い。
じじちゃんは65歳で会社を退職して、ゴルフや地域の少年野球の監督等を楽しそうに
されていた。
じじちゃんが、外を歩くと近所のきかん坊の子供達が、帽子を取り「あっ監督こんにちわー」と
元気に挨拶していたっけ。
私が会社から帰って来るとニコニコと「あーママお帰り!ご苦労さま」なんて私を労って下さった。
そうこうしている内にいつの日か、出かけた儘、家に帰れない病気が発症してしまった。
そう、迷子になっちゃうの。随分遠くで交番に声をかけたりして帰宅したり・・・・
首に名札をぶら下げる様になっても、私の顔を見ると「ママお帰り~」と。
まるで坂道を転がる様に病気は悪化してしまった。
会社でバリバリ有能な能力を発揮し、眩しい位素敵だった頃のじじちゃんは見る影も無くなり
10年前から施設に預けられる様になった。直ぐに家族の名前も全く分らなくなってしまった
そうだ。
本当にアルツハイマーと言うのは、肉体以外の全てを蝕み、廃人の様にしてしまう。
恐ろしい病気ですねー。
施設の方で全てを取り行いお骨になって帰って来た、じじちゃん。
娘の結婚式にはご夫妻でお祝いして頂き、孫を見る様な眼で嬉しそうにして下さった。
お線香を上げに伺ったら、ばばちゃんは私の顔を見るなり泣いてしまった。「淋しいわ」と
絞り出すような声で。
「どこに居ても、生きてくれているだけで良かったのに、私の顔を全く分らなくなっても
それでも命が有る事が幸せだったのに・・・・・」と泣く。
私と話しながらずっとお骨の前で残念がって泣いていた。
「ばばちゃんは結婚して60年以上も経つのにじじちゃんの事が好きだったのね」と言うと
子供の様に「うん」と頷いていた。
何とお幸せな事だろう。大家族に嫁いでのご苦労は口に出せない程だったし、実家に帰る所も
無かったので我慢したそうだが、それでもずっと愛し愛され何と美談と言いたい。
ばばちゃんは、子供さん、お孫さん、ひ孫さんと沢山の家族に囲まれているが
みんなに優しいばばちゃんは、休日になるとどやどやと押しかける様にみんなが集まる。
じじちゃんもそんな奥様の元、お幸せな人生を過ごされたと確信する。85歳、安らかに・・・合掌。
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【花の展覧会】より