はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

【情報】ヤマザキミノリ「四次元の立方体万華鏡CUMOS(キューモス)展」。

2007-11-13 23:29:14 | アートなど
非常に気になる情報を見かけたのでメモ。

「四次元の立方体万華鏡CUMOS(キューモス)展 -幻の万華鏡CUMOS(キューモス)の点・線・面-」
会期 11月26日(月)~12月7日(金)11時-19時(日曜休館)
会場 銀座 Galerie VIVANT  http://www.g-vivant.com/  銀座6-8-3 尾張町ビル5F

造形作家ヤマザキミノリ氏の個展。CUMOSという立方体万華鏡を考案開発した方らしいのですが、このCUMOSが非常に気になっています。
小さな箱を覗き込んだ中に果てしない空間が広がっているという、まるで、手のひらの中に無限を閉じ込めるかのようなコンセプト。
草間彌生の「水上の蛍」をも彷彿とさせます。
存在を知ったからには、ぜひとも一度実物を目にしてみたいところ。
タイミングが合えばぜひ拝見したいものです。
おそらく、万華鏡好きや『無限』という概念の好きな方(ひょっとするとボルヘス好きも?)や数学的な美が好きな方は必見と思われますので、興味のある方はどうぞ。

展覧会とCUMOS詳細はこちら→http://cumos.jp/


東京&横浜遠征11/4。(「馬と現代美術」「第19回『えんたに』グループ展」「シュルレアリスムと美術

2007-11-07 01:34:56 | アートなど
一昨日11月4日(日)は、東京と横浜で6つの展覧会と2つのイベントへ行って参りました。
書くことが多すぎて遅くなりそうなのでとりあえず観たものリストだけ。

目黒区美術館で開催中の企画展「馬と現代美術」。

・目黒区美術館となりの区民ギャラリーで開催されていた「第19回『えんたに』グループ展」。

・横浜美術館で開催中の企画展「シュルレアリスムと美術 - イメージとリアリティーをめぐって -」。

横浜美術館コレクション展 第2期

・横浜美術館内で開催中の「浅井祐介展『根っこのカクレンボ』」。

・横浜美術館アートギャラリーで開催中の「横浜美術館ボランティアが出会った『若きアーティスト』展」と題した、松宮硝子、日根野裕美、冨谷悦子3氏の合同展。

・横浜美術館 円形フォーラムで開催された、東京芸大大学院メディア映像専攻佐藤研+桐山研の「『表現実験ワークショップ』公開プレゼンテーション 『現代的シュルレアリスムとは?』

・新宿ルミネ・the・よしもと で開催された「バカロボ2007


おそろしく濃い一日でした。
詳細はのちほど。

以下、11月10日追記。

まずは、目黒区美術館で開催中の企画展「馬と現代美術」。
いつも良質の渋い企画展を開催してくれる目黒区美術館。今回は馬がテーマ。
案外ありそうでないテーマです。馬好きとしては見逃すわけにはゆきません。
加えて、ぐるっとパスで入場無料なので、これは是非にと足を運びました。

その昔、目黒には競馬場があったのだそうで、その縁に着目した目黒競馬場開設100周年記念としての企画展だったようです。
競馬にまつわる資料の展示にはじまり、競走馬たちの姿を記録した彫刻作品コーナー、馬が登場する日本近世絵画や馬を主題に据えた日本の近代絵画、馬を描いた海外有名画家の作品、などが展示されていました。
作品数は少な目でしょうか。
内容的には、馬好きとしては少し不満の残る展示でした。
あくまで競走馬の話題を中心に据えたため、近代化に伴う軍備増強の一環としての馬匹育成ばかりがクローズアップされ、「馬=サラブレッド」というステレオタイプなイメージを脱却できない内容に始終していたのが残念でした。
個人的には、昔からあった農耕馬・使役馬と人々のかかわりにももっと踏み込んで欲しかったです。馬にも多種多様な品種があることや、サラブレッドなどの軽種馬とはまったく異なる重種馬という存在があることくらいは紹介して欲しかったなと思います。そして、かつて日本には多くの在来種があったことや、国産馬の能力アップの名の下に在来種が繁殖禁止の憂き目にあって淘汰されてしまった負の歴史など、馬と日本人についてももっと多角的な視点でまとめてもらえればよかったのにと思えてなりません。
明治期に、軍馬にするための基準をクリアできる馬がいなかったので基準を体高133cmに下げた、というエピソードを紹介したキャプションがあったのですが、『ヨーロッパの基準では156cmであったことを考えると~云々』と、単に体格が小さいから『昔の馬は劣っていた』と評するかのような論調にすっかりがっかりしてしまいました。ペルシュロンやホルスタイナーやハノーヴァーなど、歴史的に大きな品種を育種してきた欧州と比較したところで何の参考にもなりません。競走馬だけが馬ではないし、馬はサラブレッドだけではありません。乗用馬ならむしろサラブレッドではないほうが適している場合も多いのです。
馬の博物館などから借用した資料も多数あっただけに、踏み込みの甘さが惜しまれてなりません。

ちなみに今回のマイベストは、エントランス付近にあった平山隆也氏の「何だお前はと嘶く」という立体作品。
くさりかたびらのように金属を繋いで造形した馬のオブジェです。
前脚を振り上げ後肢で立ち上がった馬が、柱の上に据えられた小さく奇妙な馬に向かって嘶いている様子が描かれています。
この、柱の上の小さな馬がものすごく気になる造形なのです。
体幹と四肢の比率と、首から上の比率が激しく異なっていて、頭部だけが異様に大きいのですが、何故か奇妙にしっくりきている。目を奪われました。ある意味、一生忘れられない作品のような気がします。

今回の企画展は手放しにおすすめとは言えませんが、ぐるっとパスをお持ちの方ならとりあえず行って損はないと思います。もれなく図録を兼ねたパンフレットがもらえるのは嬉しいポイント。
馬好きというだけで行くとかえってがっかりするかもしれませんのでご注意を。
なお、企画展ポスターが無料で配られていましたので、興味のある向きはどうぞお早めに。
11月25日まで。

さて次に、目黒区美術館となりの区民ギャラリーで開催されていた「第19回『えんたに』グループ展」。
こちらは目黒区美術館でたまたま案内をみかけて何となく足を運びました。
「えんたに」とは北京の美術大学で出会ったアーティストたちを中心としたグループなのだそうで、なるほど、メンバーの国籍も作風も多種多様。
工芸的な立体作品から版画、ドローイング、ペイント、インスタレーションまで、10名の手による実に多彩な作品が揃っていました。
作者に直接話をうかがうこともでき、なかなか興味深い展示だったと思います。
朽ちた板に有機的な紋様を描き小さな祠とともに配したインスタレーション(佐々木誠氏)、目の粗い巨大な布に施した山水画を思わせるモノクロ版画(ヤレンソワ・シェライク氏)、放射状に展開する木製折りたたみ椅子(作者失念)、羊歯の葉を描いた紙の正多面体(宮岡眞紀氏)、などの作品が気になりました。
こちらは11月4日で終了。


次に、横浜美術館で開催中の企画展「シュルレアリスムと美術 - イメージとリアリティーをめぐって -」。
20世紀初頭に始まった芸術運動シュルレアリスムに着目し、作品の背景や手法を鍵に分類展示していった大規模な企画展です。
エルンスト、デルヴォー、ダリ、クレー、ミロ、マグリット、マッソン、マン・レイ、などの作品がずらり。マグリット展など個人作家に着目した展示は比較的よくみかけますが、シュルレアリスムそのものをテーマにした企画展は珍しいような気がします。なかなかに気合いの入った内容。作品数も多く驚かされました。
しかしながら、こうして系統立てて総覧しても、いまひとつ「シュルレアリスム」というものが何なのかがとらえどころなく感じられ、どうにも釈然としないでいたところ、後述のワークショップ発表会で佐藤雅彦氏の再定義を聞いて長年のモヤモヤがすっきり氷解。同時に、なぜ当時のシュルレアリスムが科学を取り込まなかったのかという新たな疑問を感じ、いろいろと考えさせられました。


次に、横浜美術館コレクション展 第2期
企画展チケットで観られるというので巡ってみましたが、これが、すごい充実ぶり。
「近代の絵画と彫刻」「日本画に見る動物表現」「『わたし』との対峙 - 展開するセルフ・イメージ」「ミロとデルヴォーの版画」「長谷川潔:模写から創造へ」「シュルレアリスムと写真」と、計6つのテーマが展開しています。
企画展とのリンクもあり、シュルレアリスムについてより理解が深まるよう配慮されているのに感心しました。殊に「シュルレアリスムと写真」ではマン・レイによるシュルレアリスム作家のポートレートや、マグリットの撮影した写真などがあって個人的にとても興味を引かれました。
「『わたし』との対峙 - 展開するセルフ・イメージ」では、森村泰昌氏の「神とのたわむれ」シリーズが巨大な壁一面に配置されていて圧巻。石原友明氏のカンバスを使った立体作品(?)も強烈な存在感を放っていて印象的でした。
「日本画に見る動物表現」は、動物好きには純粋に楽しい展示。とりわけ、2頭の猿が鞠を運んでいるさまを描いた今村紫紅の「鞠聖図」が微笑ましくて個人的に大好きです。それと、鳥の形の陶器彩色作品、宮川香山の「古清水写鳧掛額」が陶器ながら鴨の羽ばたきを精緻に再現していて驚きました。
もしも企画展のチケットを買ったなら、こちらのコレクション展もぜひご覧になったほうが良いかと。おすすめです。
企画展と併せて12月9日まで。興味のある向きはお早めに。

この他、横浜美術館内では2つの企画展が開催中でした。
ひとつは館内全体を使った「浅井祐介展『根っこのカクレンボ』」。もうひとつはアートギャラリーが会場の「横浜美術館ボランティアが出会った『若きアーティスト』展」と題した、松宮硝子、日根野裕美、冨谷悦子3氏の合同展。
いずれも入場無料です。
浅井祐介氏は、マスキングテープを貼ってその上から絵を描くことで、どこにでも巨大植物や動物を出現させてしまうアーティスト。今回は言わば浅井祐介氏による『横浜美術館ジャック』とでもいうべき展示です。エントランスやカフェ、通路、トイレ、ありとあらゆる場所に浅井氏の植物が繁茂して場を彩ります。氏の作品は取手アートプロジェクト2006の記録書籍でちらっと拝見したことがあるだけだったのですが、入館して一目でそれとわかりました。いっけん単純ともいえる手法ですが、見る者への訴求力としてはとても大きな強度を持った作品だと思えます。作品を探してあちこち歩いてみたくなること請け合い。ところが、エントランス奥の通路をうろうろしていたら館の職員に『何かお探しですか?』といかにも不審そうに問いただされてしまったのが残念。せっかく作品が『かくれんぼ』的に分散しているのですから、鑑賞者にもっと自由を与えて欲しいものです。
こちらは12月25日まで。

「若きアーティスト展」は、それぞれ確固たる作品世界を持った作風の3氏による展示。
透明感ある少女たちを日本画で描いた日根野裕美氏、有象無象の動物たちを細密かつ高密度のモノクロ版画で表現した冨谷悦子氏、架空の生物Duqulamerを破砕したガラスによって再現した松宮硝子氏。三者三様。たいへんに個性的です。
私が特に惹かれたのが、松宮氏のガラスの生物シリーズ。とにかく繊細かつ驚異的な造形なのです。鋭利なガラス片が外向きに継ぎ合わされた、まるで巨大なウニやハリネズミのような本体から触覚のように細いガラス線が伸びていて、その先端にはこれまた鋭利なトゲのぼんぼりがついています。その体長、60~100cm程度。ナイフのように突き出たガラス片の密生するボディは触ったら血だらけ間違い無しです。
作者の提示する世界の中では、このDuqulamerをはじめとする生物がガラスの粉から成る土壌に生息し、特異な生態系の中で死滅と再生を繰り返すのだそうです。いわば、ケイ素を構成主体とした生態系といったところでしょうか。自然界には珪藻など実際にシリカ主体の生物も存在しますので、もしもこの地球とは別の進化を辿った生物がいたとしたらあながち無い話ではないなあ、と妙に感心してしまいました。どこか別世界の光景を提示しているかのような空気と、儚げであると同時に攻撃的かつ繊細な造形そのものの力にも目を奪われました。
博物誌的な作品世界の成長と進化を今後も期待したいところです。
こちらは12月2日まで。ガラス好きや不思議なモノ好きにはおすすめですので、興味のある方はお早めに。
ところで、この展示、ボランティアスタッフの方が解説してくださるのは良いのですが、松宮氏の作品世界をどこか嘲笑的に語る姿が気になりました。いくら奇妙な世界でも作品世界は作家にとって真面目なかけがえのない『世界』です。スタッフさんが『変だと思われたくない』と妙な気を回す必要などどこにもありません。社会常識的な視点で作品の価値を貶めないで欲しいと切に思いました。


次に、横浜美術館 円形フォーラムで16時半から開催された、東京芸大大学院映像研究科メディア映像専攻佐藤研+桐山研の「『表現実験ワークショップ』公開プレゼンテーション 『現代的シュルレアリスムとは?』」。
横浜美術館の企画展とタイアップする形で催された、横浜美術館と東京芸大大学院映像研究科との連携事業。
横浜美術館の学芸員中村氏が芸大メディア映像専攻教授の佐藤氏へ話をもちかけて実現した催しとのこと。
東京芸大の大学院には映像研究科という学科があり、この学科は横浜に校舎を構えています。
そして映像研究科の中には2つの専攻があって、それぞれ独立のカリキュラムと校舎を有しています。
ひとつは馬車道地区にある映画専攻、もうひとつが新港地区にあるメディア映像専攻です。
今回のイベントは、後者のメディア映像専攻によるもの。
専攻内に4つある研究室(藤幡研、佐藤研、桂研、桐山研)のうち、佐藤研と桐山研に所属する1年生が中心になって一般参加者を交えたワークショップを行い、その成果を発表したのが今回のイベントです。

横浜美術館学芸員中村氏からの趣旨説明と桐山孝司氏の挨拶の後、佐藤雅彦氏が「シュルレアリスム」という概念の解説(ある意味再定義)を行い、そのうえで「現代的シュルレアリスム」となりうる手法として4つの表現実験テーマを提示。その後、テーマを担当した学生さんが進行役となってそれぞれの実験結果をプレゼンテーションする、といった内容でした。

以下、簡単な概要と感想。

○中村氏の趣旨説明
・シュルレアリスムは言葉で説明し難い。現実体験に根差すものだから。
・現実に生じた裂け目から兆す強烈な光のようなものがシュルレアリスム。→現実観をゆさぶる。
・体験を再現する装置=シュルレアリスム作品
・3ヶ月前に東京芸大メディア映像専攻へシュルレアリスム展に関連した企画ができないかと相談してみたところ、快く同意してもらえて今回のイベントが実現した。


○佐藤氏によるプレゼンテーション「現代的シュルレアリスムとは」
・現代的シュルレアリスムについて表現実験ワークショップを行った。
・その成果発表の前に、まず、「現代的シュルレアリスム」というのが何なのかを解説する。
・その前にそもそも「シュルレアリスム」とは?
・シュルレアリスムを語義分解すると、
  ←シュルレアル
    ←シュル      +レアル
    =超(強い、過剰な)+現実
 つまり、強烈な現実、という意味。
 *一般俗語としての「シュール」とはまったく別の意味。
・では、「超現実」とは何か?
 →慣れすぎている日常に突如現れる強い現実
 *決して幻想といった類いのものではない。
  あくまで現実の延長線上にあるもの。
 キーワード
   現実に内在しているもの
   現実と連続しているもの
   過剰な現実
   主観的ではなく客観的
   シュールという言葉とはまったく違う
・佐藤氏なりのシュルレアリスムの定義
「日常生活や社会に対してあまりに慣れてしまい、知らないうちにだれてしまった我々。その我々が見えなくなってしまっている「真のリアル」を見ること。そして、そのための強い現実・過剰な現実をテーマとした表現活動」
・そのための手法として
  フロッタージュ(こすり出し)
  コラージュ(貼り合わせ)
  デカルコマニー(絵の具の混ぜ合わせ)
  自動記述
 などが編み出された。
・どの手法もオートマティスムという考え方に則っている。
・しかしながら、これら既存の手法はすでに我々の枠の中に入ってしまっている。
 →そこで、では「現代的シュルレアリスム」とは?
・現代の科学技術により露見する新しい表現が、現代のシュルレアリスムたりえるのでは?
・そういった仮定のもと、次の4つのテーマ表現を考えて実践した。
A 現代的フロッタージュ
B 街のオートマティスム・webのオートマティスム
C 時差のある顔
D パラレルリアリティ

佐藤氏によるシュルレアリスムの再定義は非常に端的で明快。いろいろ腑に落ちました。納得。


○学生さんたちによるプレゼンテーション
A 現代的フロッタージュ(北村氏、竹川氏)
 ・感熱紙とドライヤーによる「サーモタージュ」
   物体の上に感熱紙を置き、その上からドライヤーで熱風を吹き付けることにより、物体のテクスチャ(質感)を平面上に転写する手法。
   金属製ボールチェーンを対象にした実演(金属部分はそこだけ熱が逃げるので、チェーンの形が白く浮かび上がる!)の後、野外で石畳や石碑をサーモタージュした実例を動画と実物で提示。驚くほど忠実にテクスチャが写し取られているのがわかる。

これはつまり、下にある物体の吸熱率の違いによって感熱紙表面の温度上昇速度に差が生じ、その差が黒化という視覚的変化として検出されるシステムだと思われます。こんな形で物性を視覚化できるとは思いもよらなかったので驚きました。テクスチャだけでなく、見た目が同じなのに吸熱率が違う素材を「透視」的に写し取ることもできそうです。拓本にも応用できそうな気がします。

 ・レーザーポインタと長時間露光による「レーザーフロッタージュ」
   暗い中にある物体をレーザーポインタでランダムに照らし、その様子を長時間露光することで物体の形を写し取る手法。
   傘や椅子などの身近な物体からジャングルジムなどの野外の遊具まで、いろいろな例を画像で紹介。闇の中に物体が光のオブジェとして浮かび上がるさまは非常に美しく驚異的。

これは、いわばスキャン技術を身近な形に落し込んでやった検出システムだと思われます。走査電顕と同じ理屈をこうして身体スケールと同等のレベルで目の当たりにするなんて思いもよらなかったので、とても感動しました。
レーザー光を固定して物体が移動した軌跡をとらえても面白そうです。

 ・枠取りゲージによる立体的フロッタージュ
   モノの断面を型取りするための道具(櫛の歯のように金属棒が密に並んでいて、一本一本の歯が上下に動くので、モノに当てると接した形のとおりに歯が押し上げられて、下にあるモノの形がそのとおりに浮き出てくる。工学分野で使われる枠取りゲージ。)を様々な立体に使うことで、普段意識しない物体の断面を提示する手法。
   電話の受話器やコップの中の氷など、いろいろな例を実演と画像で紹介。


B 街のオートマティスム・ウェブのオートマティスム(勝目氏、村上氏)
 ・街のオートマティスム
   都市を素材にする理由→オートマティスムはパリで始まった。都市という場が重要。絶えずめまぐるしく変化しており一定しない。オートマティスムという概念とよく馴染む。

  横浜の町並みを実際に歩き、その中で集めた映像素材からオートマティスムを試みた。
  今回は街の広告に焦点をあて、そこから文章を創出してみた。
  例)カニの息切れ 心の 5号機
   街の映像に重なって上記フレーズが画面上に配置されている。街の映像がスクロールするとともに、フレーズの元となった広告と文字がぴったり重なってそこへ置き去られてゆく。

 偶然からの演繹的作詞を帰納的に示したシステムのように思えます。言葉を紡いだ過程の逆を映像で示されることで構築と解体を同時に体験できる。フォントの持つトーンもあいまって、妙なおかしみが付与されていて笑いを誘います。親しみを感じやすい表現手法だと思いました。

 ・webのオートマティスム
   入力した単語を含むテキストをgoogle検索し、それらの結果から文節を抜き出してランダムにつなげるシステム。
   あくまでひとつの単語をめぐる文であるのでそれなりに意味が通りながらも、叙述文と解説文と日記文等のスタイルがランダムに混ざり合うことで、思いもよらない文章が出現する。

 このシステムサイトにアクセスすることで誰でもweb自動記述を体験することができるのだそうです。ぜひ試してみたいのですが、URLをメモしきれず。残念。


C 時差のある顔(許田氏、田島氏、藤田氏)
 映像とプログラミングによって、次元を増やす表現として考えられたもの。同じ映像内に多数の時間軸を混在させる表現。
 動画をコマレイヤーとして積層し、局所的にコマを透明化することで異なった時間のレイヤーが画面上に同居する。
 透明化の操作が制作者の制御を越えたランダム要素を含むので、意図しなかった映像が出来上がる。

 時空の歪みや重力場のフィルタを通して光景を見たらこんな具合になるのかもしれない、と思わせるような映像でした。クロノス・プロジェクターにリニアな時間軸とランダム性を付与したようなシステムだと思えました。作者の意図を越えた映像が現れるのが一番おもしろい点のように感じます。そういう意味ではよりシュルレアリスム性の強い表現なのかもしれないと思えました。多重レイヤーの操作を「掘る」と形容していたのが印象的。自分でも実際にやってみたいなと思いました。


D パラレルリアリティ(加藤氏、細川氏)
 パラレルリアリティを表現したパフォーマンス。
 カンバスにドローイングする様子をビデオカメラで撮影しながら、それをリアルタイムでプロジェクタ投影している。青いクレヨンで描いてゆくと、ブルーにペイントされた画面の向こうに別世界が見えてくる。手に色を塗ると、そこにも別の映像が透けて見えてくる。

 いわゆるブルースクリーン技術を応用し、一定の色の上に別画像を重ねているのだという理屈は理解できるのですが、このようにして提示されるとかなりショッキング。とても印象的なパフォーマンスです。クレヨンでカンバスに書き付けるときのガリガリいう音も手伝って、『カンバスを削り取って異世界への穴を空けている』というシチュエーションも付与されているように感じられました。


最後に質疑応答(主に技術的なことなので割愛)の後、佐藤氏からアナウンス。
・横浜にも芸大があるということを知って欲しかった。
・メディア映像専攻に興味のある方はぜひ受験してみてください。
・3ヶ月間で考えてきたテーマについて、午前中からワークショップを行い、そのできたての成果を発表してもらった。
・シュルレアリスムの意味が伝われば嬉しい。


16時半から始まり、当初1時間の予定を大幅に上回って、終わってみれば18時過ぎ。
たいへん盛りだくさんかつエキサイティングな内容でした。
世の中に広く表現を発信してゆこうとする姿勢が見ていてとても嬉しくなります。
何かを一般見学者へプレゼンテーションするのは実は案外難しいものです。
しかもその内容が概念的なこととなると難易度はぐっと上がると思われます。
不慣れな会場や機材に苦戦しながら、そんなお題を果敢にこなしている学生さんたちの姿はたいへんまぶしく感じられました。
今回の催しは学生さんたちへの教育効果と広報を兼ねた意味合いもあった模様ですが、主催者と見学者双方にとって意義深い内容だったと思います。

なにより、佐藤氏の目論見どおり、シュルレアリスムというものの見方を変えられてしまったようで衝撃的でした。
前述のとおり、私にとってシュルレアリスムは知識としては知っていても何となくピンと来ない概念でした。
今まで私がなぜシュルレアリスムを理解しきれずにいたかというと、シュルレアリスムを回顧的な視点で観ていたからだと思います。20世紀前半特有の文化としてのシュルレアリスムは、既に終わってしまったものとして、私の中ではその時代を特徴付ける属性のひとつとして認識されていました。ゆえに、これらを現代に引き受けるための本質的な意味付けを得られずにいたわけです。
そこへ、佐藤氏の再定義によるナビゲートと、学生さんたちによるワークショップ成果実例を提示されることで現代とシュルレアリスムが結びつき、シュルレアリスムという概念をより具体的に理解できるようになったように思います。
そこで新たに浮かんだのが、20世紀初頭のシュルレアリスムがなぜ科学を取り込まなかったのだろう?という疑問です。
多くの驚異的事実や概念が科学分野でもたくさん生じていたのがこの時代です。それらの概念はきっとシュルレアリスムとも親和性を持っていたに違いないと思うのですが、既存のシュルレアリスム表現の中に科学的要素は希薄です。単に両者の接点がなかっただけなのでしょうか。それとも当時のアカデミズムにおける棲み分け意識の弊害なのでしょうか。あるいは情報流通が未熟だったための現象なのでしょうか。非常に気になるところです。

メディア映像専攻では、12月に恒例の「OPEN STUDIO」も開催予定とのこと。今回のイベントで活躍した方々を含む1年生の制作展示を拝見できるようです。
どのような個性が展開するのか楽しみでなりません。



さて、次に慌てて移動した先は、新宿ルミネ・the・よしもと で開催された「バカロボ2007」。
吉本興業と明和電機の企画による「役に立たずに人を笑わせる無駄にハイテクなロボット」のナンバーワンを決めるイベントの決勝戦です。
19時半開始の予定が50分押しでスタート。
催しそのものも伸びに伸びて終了した頃には22時半を回っていました。
南海キャンディーズの山ちゃんこと山里亮太氏の司会のもと、審査員として明和電機の土佐信道氏、マンガ家のしりあがり寿氏、電通大教授の稲見昌彦氏、映画監督の樋口真嗣氏、特別ゲストのぜんじろう氏が出演。審査員は明和電機の作成したバカメーター(ヘルメット上に扇状のメーターがついている。手元のボタンを押すごとに針が動いて馬鹿度が上がってゆく。最大値になると針がベル触れて『チン!』という音が鳴る。針がどこを指しているのか本人はわからないので、手鏡を見ながら操作する。機構がそのままむき出しになった機械なので非常に重い。馬鹿度を評価するメーターであると同時にメーターそのものが馬鹿である、という装置。)を装着し、出場ロボットの馬鹿さ加減を評価しつつコメントを述べる。
出場ロボットは8体。
以下概要と感想。

・プッシュくん
 4本足のついたゴミ箱型ロボット。タチコマのような動き。自動制御。ゴミ箱でありながらゴミを拒否する。
 制作者と漫才めいたプレゼンを展開する様子が面白い。
 バカというよりバカを装った賢いロボット。

・キントレーZ
 お茶の間ジオラマの中で筋トレをするロボット。筋トレしながら自壊してゆく。壮絶。
 バカかつ物悲しいロボット。分類し難い存在。

・勃具
 触覚インターフェイスを刺激することで、うめき声のような音とともに床上にうなだれた突起型ロボットが立ち上がる。
 非常に生物的な動き。会場ではセクシュアルな意味だけが強調されていましたが、これは厳然たるアートだと思いました。
 バカロボというよりはアート作品。ファルスをモチーフにしていることは名前からも明白ですが、その単一的意味を越えて生物の普遍性を表現するに足る強度を持った作品だと思います。泥を思わせる造形はそれ自体が生物であると解釈することもできそうです。
 会田誠を連想しました。

・イナザウラー
 恐竜をモチーフにした素朴なロボット。反り返る動作に挑むも構造ミスであえなく転倒。
 作り手含め悲しい馬鹿さ加減を感じさせる。
 選定側に悪意を感じるのは気のせいか。見ていて気の毒になる。

・カキールX & JUNKO2007
 女子高生の作った装置。ロボットの形をした筐体の先端に歯ブラシがついていて、痒いところにあてて掻くためのカキールX。
 振動装置の上にジオラマがあり、家々とともにロボット型の人形が置かれている。スイッチを入れると周期的に振動が発生し、振動が次第に強くなってついにはロボット型人形の首が取れて落ちてしまう、という地震啓発のためのJUNKO2007。
 何をもって『ロボット』とするのかを考えさせられる作品。
 こちらも選定側に悪意を感じる。見ていて気の毒。

・美影
 『萌え』をテーマにしたメイド型ロボット。細いラインと繊細な動き。戯画的ではなく普通に美しい。
 バカロボというよりはまっとうな技術的製品。

・ラマーズ4
 妊婦型コーラススピーカー。妊婦型のトルソがスピーカーとして4体並んでいる。胎盤を模したインターフェイスを装着した演奏者がボタンを押すと、ボタンどおりの音階で背後のスピーカーから『ヒー』『フー』とコーラスが流れる。乳頭がそれぞれ電源とボリュームつまみになっていたり、顔面のスピーカーがヒゲのように見えたりとユーモラスでショッキングな外観と存外に美しい声があいまって非常に示唆的。
 ロボットというよりアート作品。
 
・ロボプッチョ
 UHA味覚糖のとある一部門がつくった公認プッチョロボット。
 体高60cmほどのプッチョがゆる~く喋りながら歩いたり旗揚げゲームを行ったりする。あぶなっかしい動きの末、最後には転倒して助けを求めるという趣向。動作の途中での唐突な『ぷっちょ♪』というサウンドロゴ挿入が可笑しい。
 運動にはおおよそ適さない比率のプッチョをそのまま大きなロボットにしてしまった時点で充分なバカっぷり。


グランプリはキントレーZ。
『バカロボ』という観点からすると消去法でキントレーZかロボプッチョかのどちらかだろうと思っていたので納得。
印象的だったのが『人と機械の違いを端的に表している』という稲見氏のコメント。
動かすと壊れるのが機械、動かすと強くなるのが生物。
常に自分を壊しながら更新している生物の特性に思い至り、感慨深く思えました。

バカロボ2007の様子は映画になるとのこと。
間に制作者を紹介した映像も流れていたので、それも収録されていることでしょう。
見逃した方々は、パッケージ化を待つのがよろしいかと思います。

次年度開催があるのかどうか、気になるところ。
アートの枠から取りこぼされてしまうようなバカバカしく示唆的なテクノロジーの無駄遣い、今後もそんなものを集めていってくれることを期待したいです。


バカロボの後は夜行バスで帰宅。
0泊3日。たいへん濃くて刺激的な遠征でした。


行きたい催し11月、12月篇。

2007-11-03 18:29:51 | アートなど
備忘録的に。

0 佐野市立吉澤記念美術館「関東の文人画展」 9/29~11/11
  目的は若冲。しかしたぶん行けない。苦吟。

1 目黒区美術館「馬と近代美術」 10/11~11/25
 馬好きとしてはぜひ行きたいところ。

2 ギャラリー小柳「マラブ・太陽 野口里佳」 10/27~11/30
 どことなく惹かれる。

3 目黒寄生虫博物館「それ!ほんとうに寄生虫? 寄生虫!と疑われた寄生虫ではない異物」 4/28~12/2
 獣医師としては、とりあえず見ておきたい。

4 横浜美術館「シュルレアリスムと美術」 9/29~12/9
 ワークショップに興味津々。

5 サントリー美術館「鳥獣戯画がやってきた!」 11/3~12/16
 鳥獣戯画! 果たしてゆけるか?

6 川崎市市民ミュージアム「みんなのデザイン ?グッドデザインと私たちの生活?」 10/27~12/16
 川崎市民ミュージアム自体に一度行ってみたい。過去の図録が欲しいのです。

7 旧赤坂小学校「Dialog in the Dark」 9/13~12/19
 真っ暗闇の中でのインスタレーション? 内容が気になる。

8 森美術館「六本木クロッシング:2007」 10/13~1/14
 先日も書いたので詳細は割愛。

9 21_21 Design Site「WATER」 10/5~1/14
 佐藤卓プロデュース企画展。名前のとおり水がテーマ。面白そう。

11 東京オペラシティアートギャラリー「北欧モダン - デザイン&クラフト」 11/3~1/14
 とりあえず行っておきたい。

12 東京都現代美術館「space for your future」 10/27~1/20
 エルネスト・ネトやオラファー・エリアソンも出展しているらしい。必見。

13 国立科学博物館「大ロボット展」 10/23~1/27
 とりあえずの興味。混んでいそうで憂鬱。

14 日本科学未来「地下展」 9/22~1/28
 前回見逃したのでぜひリベンジを。

15 DNP museum lab「<<うさぎの聖母>>聖なる詩情」 10/27~3/8
 一度行ってみたい場所。

16 リスーピア 常設展
 ここも一度行ってみたい場所。



たくさんありすぎ。はたしていくつ行けるのであろうか?
どこでもドアが欲しい・・・。


【情報】フジモトマサル「二週間の休暇」、発売。

2007-10-29 02:09:47 | アートなど
フジモトマサル氏の新刊「二週間の休暇」が発売された模様です。
これは、昨年こちらのサイトで連載されていた作品を単行本化したもの。
独特の絵柄と世界観がマッチした、ノスタルジックな物語が展開します。
フジモトマサル氏に興味のある方や、クラフト・エヴィング商會好きな方、鳥好きな方、裏路地の風景がつい気になってしまったり、通りすがりの猫についついちょっかいを出してしまうような方にはおすすめです。

単行本紹介サイトは↓こちら
http://moura.jp/manga/fujimoto_book/

amazonでの取扱いもあるようです。
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=hazamanoiori-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4062140659&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>


音楽バトン(人生版)。

2007-10-18 23:52:28 | アートなど
すっかり遅くなりましたがバトン回答。
音楽バトンというものだそうです。
盟友、北国のあきさんの「心の旅」からのいただきものです。
以下回答。

◎歌or音楽どちらでもOK◎
あなたの思い出を彩った楽曲を教えてください。

♪小・中・高校・成人・現在(まだ成人でない方は、そこまでで)と、心に残っている楽曲は?ちょっとしたエピソードなどもどうぞ♪

【小学校時代】
・校歌
一時期通っていた山奥の小学校の校歌。
「木々の緑が輝いて 山鳩歌う朝ぼらけ 子牛が草を食んでいる 泉が清く湧いている 元気だ きみもわたくしも」
という、小学校名が一切出てこない潔さと牧歌的な歌詞がお気に入り。この小学校から転校してみたら、1番2番といちいち学校名を連呼する押し付けがましい校歌が一般的だと知ってなおさら愛着が深まる。


【中学校時代】
・???
中学時代は本ばかり読んでいたのであまり音楽が記憶に残っていません。
クラシックはよく聞いていました。
そういえば、チャイコフスキーのバレエ音楽が好きでしたね。『くるみ割り人形』の全曲CDや、ボリショイの『白鳥の湖』テレビ放映からの音だけダビングを愛聴していました。


【高校時代】
・校歌
ふたたび校歌。
「やまとおみなのかぐはしき たましずもれるおかのべの ときわのもりのしたかげに ふかきみどりをみにしめて おふるちぐさのいやつよく ますぐにのびむ ともどちよ
 こがねはなさくみちのくの ふみのみやこのまなびやに あしたゆうべをおのがじし みちにいそしむともどちよ まことのこころみがきつつ きよきひかりをよにあげむ」
古風で格調高くのびやかな歌。学校名が一切出てこないのもナイス。意味含め、今でも大好きな歌です。

・古楽とクラシックと民族音楽
古楽に傾倒。リュート曲のCDやNHK FMの「朝のバロック」などを愛聴していました。
高校1年あたりでワーグナーにハマって、オペラ「ニーベルングの指輪」のテレビ放映を夜更かししながら見ていたのは懐かしい思い出。
そして気が付けばロシア好き。ボロディンは偏愛。弦楽四重奏第1番の第1楽章と、オペラ「イーゴリ公」中の『だったん人の踊り』が好きすぎて困る。
そういえばショパンのプレリュードやポロネーズを1番から最後まで通しで全部聞くのも好きでした。
ケルト音楽に手を出したのもこの頃。
主に書籍からの影響が大。

・ゲーム音楽
「ファイナルファンタジー」の音楽にハマる。ゲーム自体はよく知らないのに音楽だけをよく聞いていました。プレリュードはもう大好きです。

・創作と音楽
部活動(SF研)で、3年の間に短~中編を10本ほど書いたのですが、音楽が重要なモチーフとして登場する作品が多かったです。
音楽(主にクラシック)からインスピレーションを得て、それをキーとした物語をよく書いていました。
当時の私の中では、文学と音楽が分かち難く結びついていたのだと思います。


【成人後】
・ポップス
現代歌手の音楽を聴くようになったのは成人後。遊佐未森や葛生千夏や谷山浩子、ビョークに傾倒。
その延長で古楽をロックするヴィータ・ノヴァにも傾倒。
それと、歌詞と声が気になってスガシカオと原マスミ。
男性歌手にはなぜかあまり惹かれない。上記2名は例外的。

・ミニハープ購入
こつこつ貯金し、念願だった25弦の小さなハープを購入。ケルト音楽CDの曲を耳コピーしてよく弾いていました。

・古楽熱ふたたび
ロバの音楽座や栗コーダーカルテット、タブラトゥーラに傾倒。

・指輪映画サントラ
いわばトールキンファン祭りの一環。
映画化された「ロード・オブ・ザ・リング」のサントラ関連はよく聴いていました。
「May it be」「ゴクリの歌」「Into the West」の歌詞翻訳で遊んだのは懐かしい思い出。



【現在】
・以前からの継続
古楽関連やクラシックは今も好き。
以前好きだったものは、基本的に今も好きです。

・アート関連
アートとして出会った音楽たちも印象深い。現在はこちらが主な興味対象かも。
松本秋則: 竹で作った楽器のインスタレーション作家。音があまりに心地良いので気に入っていたところ、BankARTでCDを見つけて即購入。いわゆる環境音楽のようでありながらインスタレーションであり音楽でありアート作品であるという不思議な音源。よく聴く音楽として iPodに入っています。
岩井俊雄: アート作家。岩井さんの曲ではなく、岩井俊雄さんの作り出すインタラクティブな音楽システム作品が好きでたまらない。音と戯れる感覚が詩的。他に類を見ない。「エレクトロプランクトン」欲しさにゲームを始めて買った。今はTENORI-ONに興味津々。
明和電機: アーティスト。色々な意味で。「六本木エレクトロニカ」の衝撃が忘れられない。ライブパフォーマンスマシンとしての楽器たち。音楽性というよりも表現形態が丸々気になって仕方がない。
徳澤青弦: ラーメンズ本公演の幕間音楽。全般的に好き。
ミュージックビデオ関連: ショートフィルムを観るようになってから多様な音楽に感心。特にミュージックビデオとの馴染み具合で強烈に印象づけられるものもあって興味を引かれているところ。
佐藤雅彦: 主にピタゴラスイッチ関連で印象深い歌がいくつか。栗コーダーカルテットの栗原氏との合作もあるが、「ぼくのおとうさん」や「つながりうた もりのおく」「いたちのたぬき」は衝撃でした。


♪一番最初に買ったレコードorCDは?
うろ覚えなのですが、たしか「グリーンスリーブス~ハープとフルートによる小品曲~」という表題名の小曲集だったと思います。
クーパーの「闇の戦い」シリーズの影響か、フルートとハープの器楽曲に傾倒していたためかと。
伝承曲「グリーンスリーブス」やフォーレの「幻想曲」やラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」が今でも大好きです。


♪一番最近買った(ダウンロードした)シングルは?
シングルはここしばらく買っていないような・・・。
記憶にあるのはTHE CONDORSの「真夏帝国」くらいか?
そういえば、シングルかどうか微妙ですが、つい先日 ART STAR(ひとつの曲と多数画像がセットになったCD-ROM。iPodで持ち歩けるアート、というコンセプト。音楽つきスライドショーで写真を楽しむためのもの。)のヤノベケンジ版を購入しました。


♪人生の転機で聞いた曲は?
・ボロディン「弦楽四重奏第1番」
大学受験のときにヘビーローテーションで聞いていました。合格発表の日に落ち着かない気持ちを抑えながら学校で聴いていたのもこの曲。
これを聴いている最中に合格通知を受け取ったので思い出深い。
宮城から岐阜くんだりへ、文系から理系へ、小さな世界から大きな世界へ。この通知がまさに転機となった。


♪バトンタッチ!5名
ぶら下げておきますので、どうぞご自由にお持ちください。




いやあ、あらためてみると、自分がいかに時代と切り離された興味関心の持ち主なのかがバレバレですね。
正直に書いても全然歳がバレない(笑)。
しかし、ゆえにカラオケは鬼門。
良いのやら悪いのやら・・・・。


テート・モダンに亀裂。

2007-10-17 21:50:14 | アートなど
いつもこっそり覗いている坂口祐氏の「魚祐の巻物」10月16日付けエントリで知った情報。

ロンドンのテート・モダンで、なにやらものすごい作品が展示されているようです。
コロンビア人作家ドリス・サルセド氏の『Shibboleth』は、なんと、会場床に本物の亀裂をつくってしまったインスタレーション。
さすが、現代アートの聖地テート・モダン!
他に見つけた記事(→http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2296058/2229900)によれば、かなり深そうな本格的亀裂のようです。
RC仕様でしょうか。
落ちて怪我する人がいようとも、柵など設けません、という姿勢も素晴らしい。
数年前にオラファー・エリアソンの黄色い太陽(作品名を失念)が展示されたのもこのホールだったはず。
行ってみたい場所がまたひとつ増えてしまいました(笑)。
もしもロンドンへ行かれる方がいらっしゃったらぜひ。


【情報】「計算の庭」。

2007-10-17 21:00:05 | アートなど
「計算の庭」の情報がTOPICSのサイトにアップされたようです。
写真も掲載されています。

「計算の庭」とは、佐藤雅彦氏と桐山孝司氏の共同新作。体験型の作品で、現在森美術館で開催中の「六本木クロッシング2007」に出展されています。
わたくし、8月の芸大メディア映像専攻OPEN STUDIOでこの作品のプレ展示を拝見したのですが、実際に体験してみると子供時代に戻ったかのようなドキドキ感がスリリングかつエキサイティング。とても楽しい体験でした。
四則演算ができる方なら小学生から大人まで年代問わず楽しめる作品。ご家族や友人同士で一緒に体験しても楽しそうです。
機会のある方はぜひとも体験してみてはいかがでしょう。おすすめです。

ところで、佐藤氏と桐山氏のユニット名が「euclid」(ユークリッド)というのを知って思わずニヤリ。
まさしく『名は体を表す』ですね。
お二方の今後のご活躍がますます楽しみです。


KKP#5「TAKE OFF」仙台公演。

2007-10-11 12:59:00 | アートなど
10月10日および11日は、仙台市民会館大ホールで上演されていた、小林賢太郎プロデュース「TAKE OFF」(2007年度版)を観て参りました。
ともに19時公演。
客席は8割程度の埋まり具合でした。
地元ネタも織り込みつつ、そつのない舞台だったと思います。
やはり、2006年バージョンに比べて遊びやゆらぎはごくごく少ない。
芝居としてのありようを重視したのだなと納得するいっぽう、私としてはコント寄りの2006年版のほうが好みなので少し残念でもあり。
大阪、広島と併せて評はまた後日まとめたいと思います。

本編とは関係ありませんが、カーテンコール時の客席煽り具合が日に日にヒートアップしているようで面白い。
仙台では小林氏が客席とハイタッチするなど、THE CONDORSのようなノリにびっくり。
表現におけるひとつの方向性を垣間見たようでたいへん興味深く思えました。


東京遠征10/7。(出光美術館「仙厓~禅画に遊ぶ」、time-A「アトリエオモヤ展」、OZONEショ

2007-10-08 08:05:26 | アートなど
昨日10月7日は、東京で5つの展示と1つのイベントへ行って参りました。
とりあえずリスト。

・有楽町 出光美術館「仙厓~禅画にあそぶ」
 禅僧仙厓(センガイ)の自由奔放な禅画世界。思わず笑いを誘うゆる~い絵柄と、その中にひそむ鋭い視点。圧巻。これはけっこうおすすめです。
 ちなみに、東京・ミュージアムぐるっとパスでこの企画展は無料で見られます。

・秋葉原 time A gallery「第2回アトリエオモヤ展」
 鈴木太朗氏率いるアート集団アトリエオモヤの展示。
 羽根が浮かぶ作品シリーズが好きな方は見るべし。アートリンクkirariやwater logoの記録映像も見られます。
 サイト上では期間表示が間違っていますが、本当は15日まで。

・新宿 OZONE 3F OZONEプラザ「五感×LIFE展
 暮らしをテーマにした6つのアート展示。同じくアトリエオモヤが出展。
 こぢんまりとした展示ですが、なかなかの良作ぞろい。何かのついでにちょこっと寄るにはおすすめです。9日まで。

 OZONE 6F リビングデザインギャラリー「&Design展
 デザイン集団 &Design の製品展示。テーブルウェアの販売もあり。上記「五感×LIFE展」を見るのならば併せて見ておくと吉。こちらも9日まで。

・新宿初台 ICC「坂本龍一+高谷史郎|LIFE - fluid, invisible, inaudible...
 坂本龍一氏と高谷史郎氏のコラボレーションによるインスタレーション。
 長時間滞在したくなること請け合い。時間のある時にどうぞ。
 この企画展も、東京・ミュージアムぐるっとパスを使えば無料で見られます。

・表参道 青山スパイラルホール「劇的3時間SHOW 岩井俊雄
 日替わりで各界のクリエイターを招いて持ち時間3時間の自由プレゼンをしてもらうというイベント。この日は岩井俊雄さんがゲスト。
 前半は岩井氏の制作活動経緯、後半は新しい楽器TENORI-ONの開発と実体についての詳細なプレゼンでした。
 ハイテンションかつ嬉しそうに喋る岩井さんの姿と、ヤマハの相棒、西堀さんの圧倒的な音楽センスが印象的。
 このイベントについては後日簡単な覚え書きを上げたいです。


この日のメインは岩井俊雄さんのイベント。直前まで行くかどうか迷っていましたが、夜行バスが取れたので0泊3日の旅を決行。
いろいろと気付かされることの多い、結果的には行って大正解の遠征だったと思います。

以下、個人的メモ。
・ヤノベケンジさんと岩井俊雄さんの、大阪万博や未来・テクノロジーに対する捉え方の違いが面白い。片や終わってゆく未来、片や希望の未来。しかし、子供というキーワードが重なっているのが興味深い。そして、表現の方向性が真逆なのに、着地点が一緒なのがとても面白い。
・「100より上は『いっぱい』」の法則。テクノロジーのすごさを認識できる幅は受け手の知識や世代によって大きな開きがある。子供はすごさの閾値が低い。大きな数はすべて「いっぱい」になってしまうのと同様。たとえば、すごさ度合い30と50は比べられるけれど、100と1000は同列の『すごい』になってしまう。(ネーミングはざらえもんさん)
 若い世代にとってパソコンや携帯電話は技術的に正しく評価されているのか? 発展を目の当たりにしてきた世代と、既に完成品が目の前にあった世代とでは、すごさの受け止めかたが違うのではないか?
・TENORI-ONの演奏記録データは手順のみなのでデータが小さい、という話に衝撃。音データではなく手順データ。音楽データは重いという思い込みに対して目からウロコ。


芸術の秋ツアー2007@東京。

2007-10-01 22:07:43 | アートなど
ツアー最終日の昨日、9月30日は、東京の台場にある日本科学未来館で開催されていた「インタラクティブ東京」「国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト(IVRC)」「デバイスアート展」を見て参りました。
本当は科学未来館で開催中の企画展「地下展」のチケットも購入したのですが、うっかりして気が付けば閉館時間で見られずじまい。
いずれ日を改めてリベンジしたいと思います。

「インタラクティブ東京」と「IVRC」は昨年の9月半ばに拝見してとても面白かったので、今年も楽しみに足を運びました。
行ってみれば、昨年と比べて幾分パワーアップしたような印象を受けました。
例えば会場の使い方。
昨年は1階奥の広い催事スペースを使ったワンフロア展示でしたが、今年は7階の中規模スペース3部屋を使った構成でした。作品数自体は変わりませんが、会場を適度に配分することで、1作品ごとのスペースが把握しやすくなるとともに、観客の動線がすっきりしてとても見やすくなっていたように思います。「インタラクティブ東京」と「IVRC」の区分けがはっきりしていたのもわかりやすくて良かったと思います。
作品も全体的にレベルが上がったのでは?と思えるものばかり。
殊に「IVRC」の充実ぶりには舌を巻きました。荒削りだけれど奇想天外で遊び心に満ちた作品が多く、製品としての完成度に制約されない自由な発想が活きた展示になっていたと思います。学生さんだからこそできる、学生の本領発揮の見本のような催しだったのではないでしょうか。
昼過ぎに行ったため、親子連れが多く訪れており、子供たちが実に楽しそうに作品体験しているのが印象的でした。子供でも直感的に楽しめる要件が揃っている点において、まさにインタラクティブ技術の真骨頂ここにあり、という状況だったのではないかと思います。

以下、メモ的短評。

・インタラクティブ東京
I-1 TWISTER V :予約がいっぱいで体験できず。残念。去年からさらに進化したのでしょうか。気になるところです。
I-2 ビュー・ビュー・View :風の情報を遠隔地へ届けるインタラクティブシステム。昨年のIVRC作品が双方向システムとして進化。風の検出器兼出力デバイスともなる映像スクリーンを二基接続することで、うちわで扇いだ風や呼気による風を、遠く離れた場所へ伝えることができる。デモ映像ではテレビ電話の向こうから吹いた息で誕生ケーキのろうそくを吹き消している場面が紹介されており、情報伝達における新しい提案として非常に面白いなと思いました。ある意味で、これはひとつの新機軸かもしれません。
I-3 CoGAME :携帯式プロジェクタで投影した道の映像で亀のロボットをナビゲートするシステム。これも昨年のIVRC作品が進化したもの。ディティールや精度が格段に上がっていて感心。投影の向きにかかわらず、投影された映像が常に正方形なのがすごい。亀が展示フィールドを離れて外へ『お散歩』していたのが印象的でした。
I-4 inter-glow :4つのライトが人物情報を担い、中央のテーブルに光をあてることでそれぞれの「人格」同士が会話するシステム。ライトの点滅がそれぞれ別々の周波数になっており、その周波数を検知することで人物情報が認識される。ある意味、光を使ったスイッチのようなものかと。なおかつ重複検出自在なのが面白い。岩井俊雄さんのサウンドレンズでこの装置を『聞いて』みたら面白そう。
I-5 多点入力デバイスを用いたアニメーション作成システム :テーブル上のディスプレイにある映像を手で触って何か所でも直接操作できるシステム。同時に何カ所でも操作できるというのがすごい。特殊なアクリル板へ触点が接着することで生じる光情報のゆがみによって位置情報を検出しているとのこと。始めて聞く技術。面白い。
I-6 ログログ: 川の映像の上に渡された丸太橋を渡ると、その振動が川の映像に反映されるシステム。ICCのキッズプログラムにも出展されていた作品。橋を渡った時だけリアクションが生じるのが面白い。横方向からのプロジェクションというのも斬新。
I-7 目が動いた時だけ見ることができる情報提示装置: 縦長に並んだLEDの光を見ながら目を動かすと画像が見える、というディスプレイシステム。今年のメディア芸術祭地下にも展示されていたもの。眼球のサッケードを利用した点が面白い。プロジェクタの映像を見ていて目を動かすと赤青緑に光分解された色が見えることがあるのは、おそらくこれと同じ原理。
I-8 オプティカル トラジェクトリー2: 倒れても起き上がるライトに、360°の傾き方向と色相環を対応させた、『回すと虹色に光る』ライト。RGBシステムと人間の色彩感知特性とを勘案した色彩グラデーション開発の解説映像が非常に面白い。明度を一定にした色相環には純粋に驚きました。以前色盲のメカニズムを調べた時に、人間の錐体細胞の検知範囲にはかなり偏りがあると知ったので、その予備知識のおかげで余計に面白く感じられました。いろいろな色覚の人間にはそれぞれどう見えるのか興味深いところです。
I-9 Thermoesthesia 冷温感覚ディスプレイ: 微細な温度を検知し、触って操作できるディスプレイシステム。温度で操作、というのが斬新。面白い。分解能の精度がどれくらいなのか興味のあるところ。
I-10 Kage no Sekai: テーブル上にあるモノの影から小さな生物がわき出し、動きを感知すると消えてしまう、というシステム。物の怪や妖怪的な、幼少時の心象風景を再現したようで面白い。テーブル下方からプロジェクションした映像が木目調のテープを透過して影の中に写り込んでいるものと思われるが、かたくなにカゲを生き物扱いして仕掛けなどないと言い張っていたスタッフさんの徹底ぶりが印象的。
I-11 ビデオエージェント: 写真をもとにした画像をディスプレイ上へ配置し、それらをキャラクターのように動かせるシステム。写真を切り抜いてコマ撮りしたような映像が自律的に展開してゆくのが面白い。
I-12 くまたちと: クマのぬいぐるみをいわば操縦桿のようにして、映像の中のクマを操作するシステム。クマの腕を交互に動かすことで前進、首を回すと方向転換。
ところで、「くまたちと」の横にひっそりとあった「ホタル通信」が興味深い。装着者の呼吸を感知して明滅する明かりとして遠隔地へ提示できる装置。Macのスリープランプのよう。誰かの気配、活きている証のバイタルサインを視覚的に共有できる点でとても面白い。パフォーマンスアートやインスタレーションへ応用できそう。検知が呼気の気流であるため、装置が仰々しいのが唯一の難点か。
I-13 TORSO: 人間の腰から上の動きを忠実に再現したロボットアーム(?)による遠隔地視覚取得マシン。視差で遠近感も取れ、側面を覗き込む動作も可能。限りなく実視覚に近い視野が得られる。とにかくすごい!の一言。
I-14 Gravity Grabber: 人差し指と親指に装着した2つの装置で、持っている立方体の中にあたかも物体が入っているかのような感覚を再現するシステム。装置によって指を締め付けたり緩めたりするだけで、動きが発生しているかのような感覚を再現できるのが驚き。面白い。
I-15 Tempo Primo 演奏者のテンポ感をいかした音楽表現支援システム: ボタンを押すテンポを一定に保っていると、音楽が自動的に生成されてゆくシステム。ボタンを放すタイミングが難しいが、上手くゆくと何重にも音が重層されてゆく。その様子が何度やっても面白い。
I-16 Haptic Telexistence 分布型触覚情報を伝達するロボットハンドシステム: 手で動かした通りにロボットハンドが動く、というシステムに、ロボットハンド側の触覚情報をフィードバックさせるシステムを組み込んだもの。触覚の代わりに微小電極による指先への電気刺激を採用。操作部が大きすぎて私の手にフィットしなかったためいまひとつすごさが実感できず残念。フィードバック刺激はなかなかのもの。ただ、実用性を考えると、繊細さが要求される手術のような操作に使うためには、この刺激法では操作者の負担が大きすぎて本末転倒になる可能性もありそう。進化を期待。
I-17 String Walker: 半ば空中に吊ったサンダル状の靴を履くことで「その場で歩き続ける」ことを可能にした装置。足を踏み出すごとにもう片方の足が引き戻されるので、普通に歩いているにもかかわらず足の位置が保持される。前面にはディスプレイがあって、足の情報と連動しているので、仮想の町の中を歩くことができる。
I-18 Sound Candy: 混んでいて体験できず。残念。
I-19 Spilant World: 混んでいて体験できず。残念。
I-20 Kobitoのケーキ屋: 混んでいて体験できず。残念。

・IVRC
V-1 MABOROSHI: スクリーンに映る光の中で、目の端にちらちらと見える何か。瞬きをしたり目を動かしたりすると、輪郭のゆがんだ人影がかすかにみとめられる。驚き盤の要領で目の前で手を振ると、見ていたのが白抜きのきちんとした人物シルエットであったことがわかる。映像条件としては常に同じなのに見えるものが違ってくるのが面白い。
V-2 かげかみさま: 壁のスクリーンに映る二次元の影を自分の手の影でつまんで『3次元変換装置』へ落し込んでやると、床のスクリーンへその物体の正体が3D映像で写し出される。影たちの『正体』が奇想天外で予想を裏切ってくれるのが文句なしに面白い。ネタ勝負的なところがエンタテインメントとしての強みだけれど、同時に、技術よりも影→3Dの意外性のアイデアのほうが注目されてしまうという弱みもありそう。壁と床のスクリーンを繋ぐコンベアがアナログな物体であることで、あたかも影が運ばれて3Dになったかのようなリアリティを生んでいるのが興味深く感じました。
V-3 虫 HOW? : 専用手袋を装着し、アリの行列映像に手を触れることでアリが腕を這い登ってくるかのような感覚を再現するシステム。山アリのように強烈な感覚でした。おそらく電気刺激。
V-4 いれたら: 生物の口の中を再現した装置。真実の口の中に手を入れると、生暖かい。さらに舌が手を舐めてくる。馬や牛の口に手を入れた感じにとても近い。リアル。湿度と温度が絶妙。感触と舌の大きさは馬っぽい。素材が気になるところ。
V-5 HOP AMP: ジャンプ感覚を増幅してくれるシステム。トランポリンの足下にビル群を見下ろす映像があり、ジャンプの強さに応じてビルが遥か彼方に小さくなる。気分は大ジャンプ。かなり爽快。
V-6 Heaven's Mirror: 鏡像の視覚効果が現実的に再現されるシステム。傾斜再現と物体破断感覚再現の2種。
V-7 かげくり: 自分の影と映像とのインタラクションシステム。振り返ってから目を戻すとその隙に映像が変わっている、という演出が面白い。
V-8 HAPPA!!: サトイモの葉のような大きな葉っぱを上下に扇ぐと、その勢いに応じて盆栽のような木のオブジェから泡が吹き出してくる。泡を生命に見立てた木の育成システム。接客上手で根っからのパフォーマンサーのようなスタッフさんが印象的。
V-9 風景バーテンダー: 液体の入った8つのびん。それぞれの液体が風景要素になっている。びんの中身を好きな配合でシェイカーに入れ、カクテルをつくる要領で混ぜ合わせてグラスに注ぐと、作られた風景がスクリーンに表示される。セットや舞台装置のしくみが考え抜かれていて、びんの中身を混ぜた液体が風景になる、という設定を、直感的に理解できるようになっている点が秀逸。ハイテクは水面下で処理され、テクノロジーを意識させることなく日常動作のみで結果が現れるので限りなく魔法的。
V-10 ムーミのいる部屋: 部屋の中に多数の映像を浮遊させるシステム。
V-a 老化防止ゲート: 人が通ると美容液を噴霧するゲート。たいていの化粧水はエタノール含有だと思われるのですが、私の体質上、微量でもアルコールを吸ってしまうとNGなので念のためパス。残念。
V-b Cycling Colorful Composer: テーブル状のディスプレイ。同心円状に並んだ音階の中を演奏タイムラインがぐるぐる回っている。その上に発光パーツを置くことで、位置によってさまざまな音楽が奏でられる。いわば光のオルゴール。子供たちに大人気。いたずらに苦戦しているようでした。
V-c Visible/Invisible: ルーペ状のモニタで漢字を認識し、その文字に近づけると画像の漢字が古代へ遡ってゆき、ついには漢字の元となった事象の写真が現れる。空間上に時間軸を置いて、漢字という媒体で時間情報を再現してみせた着眼点が面白い。表意文字という漢字の特性を活かした表現であり、立派なアート作品としての強度もありそうに思えました。
V-d Popping-Pump: モニタ上の3D物体に空気入れを接続し、ポンプを動かすとそれに連動して物体映像が膨らんでゆく、というシステム。空気を入れすぎたり、膨らんだモニタ上の映像を触ると物体映像が破裂してしまう。ポンプを動かす動作と映像の膨らみ具合が絶妙に連動していてなかなか面白い。

大会本選にはどの作品が進んだのでしょうか。興味のあるところです。

その後、デバイスアート展をふらりと見て夜の新幹線で帰宅。
7泊8日、アート三昧。じつに充実した夏休み(遅い!)でした。
忘れられない記憶になりそうです。


芸術の秋ツアー2007@直島。

2007-09-30 11:44:07 | アートなど
Kabocha01


9月28日および29日は、今回のツアーの大本命、香川県の直島へ行って参りました。
とりあえず行ったところメモ。

28日
・ベネッセミュージアム 野外作品鑑賞ツアー
・地中美術館
・家プロジェクト 南寺、角屋、護王神社、石橋、はいしゃ、碁会所、きんざ
・まるやカフェ
・地中美術館 オープンスカイ ナイトプログラム
・ベネッセミュージアム 屋内作品
・ベネッセハウス オーバル

29日
・ベネッセハウス 野外作品
・高松港
・丸亀市 猪熊弦一郎現代美術館 エルネスト・ネト展
・高松空港 うどん屋

直島とベネッセハウスは予想以上に良かったです。
そして、ジェームズ・タレル!
やはり、南寺のバックサイト・オブ・ザ・ムーンが予想どおりにすごかった!
地中美術館の常設作品も良かったのですが、時間制限があるのでとても残念でした。
詳しくは後日。

ところで、予想外にとても嬉しかったのが、ミュージアムリンクパスの景品。
金沢の21世紀美術館と東京の森美術館と直島の地中美術館では3館共通のミュージアムリンクパスというものがあります。
上記3館を1年以内に回ると景品がもらえるという、いわばスタンプラリー兼共通割引券のようなものです。
わたくし、今年1月の金沢21世紀美術館を皮切りに、今回の直島行きで3館を制覇いたしました。
で、いただいた景品がこれ。
Keihinall

Keihinmug

3館のロゴの入ったマグカップと、それを入れるトートバッグ。
デザインもナイス。
売られていたら普通に欲しいような豪華景品です。
近いうちにこの3館を巡るご予定のある方は、このミュージアムリンクパス、おすすめです。


芸術の秋ツアー2007@広島。

2007-09-28 01:19:49 | アートなど
昨日9月27日は広島をうろうろ。
とりあえず行ったところ一覧。

・ひろしま美術館「野田弘志展 写実の彼方に」
・広島現代美術館「MONEY TALK」
・広島市中清掃工場 エコリウム
・アステールプラザ KKP「TAKE OFF」

この日特に面白かったのが現代美術館の常設展「MONEY TALK」。
収蔵作品を購入価格ごとに分類展示し、芸術作品の価値をめぐる考察を促すという画期的なテーマコレクション展でした。
美術館の予算をめぐる厳しい状況を理解できるのはもちろんのこと、普段知ることのできない作品の市場価値を知ることができます。
購入価格が添えられた作品たちに、納得するやら驚くやら。
相場というものが何となく読めて、とても勉強になりました。
他の公立美術館でもぜひとも同様の企画を見てみたいものです。


芸術の秋ツアー2007@岡山。

2007-09-27 23:59:23 | アートなど
昨日9月26日は、岡山県の倉敷近辺をふらふらしてきました。
とりあえず行った場所メモ。

・倉敷駅から美観地区にかけてを徒歩。
・大原美術館(本館、工芸館、分館)
・加計美術館
 (児島虎次郎美術館は時間切れで行けず。残念。)
・三宅商店
・バスで倉敷駅→児島駅

大原美術館で、中学美術部時代に模写したミレーの「グレヴィルの断崖」に遭遇してびっくり。
国内にあったとは。旧友に会ったかのような気分。
工芸館、分館、と巡り、現代美術も積極的に収集するそのバランスの良さに驚く。
大原美術館、あなどれじ。

ひそかに探していた、近藤良平氏が「なんにもない」の歌を歌っていた路地(参照→webタウン情報 おかやま-近藤良平 「倉敷で踊る」ということ。
http://www.vis-a-vis.co.jp/jl/interview/kondou/index.shtml)
はわかりませんでした。残念。


芸術の秋ツアー2007@香川。

2007-09-26 03:16:22 | アートなど
Neto01

とりあえず概要のみ。
本日9月25日は、香川県丸亀市にある熊谷弦一郎現代美術館で開催中の「エルネスト・ネト展」へ行って参りました。

鹿児島ー岡山便があるのを知らずにうっかり大阪を経由してしまったため、大きなタイムロス。
丸亀には午後遅めの到着でした。
JR丸亀駅の駅前広場と連続する形でそびえるオモシロ建築が熊谷弦一郎現代美術館(通称MIMOCA)。近い!
Mimoca00

行ってみれば、ネト展の作品はじつは1点のみ。
「キスをするふたり。愛し合い、ともに夢見る。よりよい世界を、まだ見ぬ我が子を、そして人生と人類とこの星の未来を。」という長~い題名の作品です。
しかしながら、この作品自体がこの美術館のために設計企画されたもので、3階のC展示室を使い切った予想を上回るものすごい巨大作。
鑑賞者は靴を脱いで作品の中に入り、様々な場所で思い思いに作品に触れ、全身で体験します。
もはや、作品に溶け込んで作品と一体になる感覚です。
文字通り、作品に包まれて身を委ねるような場所もあり、これが非常に心地良い。
鑑賞者がそれこそ思い思いの鑑賞行動をとるので、作品の中も相当に面白い光景になってきます。
赤ちゃんから小学生、中学生、高校生、大人、来場していた皆が作品の中で笑ってはしゃいで癒されてしまうような、そんな空間が作り出されているのです。
時間の許す限りずっとそこに居たくなること請け合い。
チャンスがあるなら、これはぜひ一度体験してみるべき。
おすすめです。





芸術の秋ツアー2007@鹿児島。

2007-09-25 00:41:14 | アートなど
Torayan01

昨日9月24日は、鹿児島県の湧水町にある霧島アートの森で開催されていた企画展「ヤノベケンジ『トらやんの世界』展
http://open-air-museum.org/ja/art/exhibition/yanobekenji/
へ行って参りました。
大阪出身の現代アーティスト ヤノベケンジの、近年の集大成ともいえるまとまった展示です。

青森美術館オープン企画で、子供の命令だけに従い火を吹く巨大ロボット ジャイアント・トらやんの噂を聞いたのが昨年11月。
東京都現代美術館の常設展でヤノベケンジのアトムスーツプロジェクトに衝撃を受け、なおかつ会場の映像から氏とトらやんの名前が私の中でつながったのが今年6月。
横須賀美術館の「生きる」展でもヤノベ氏の作品が出展されていたのですが、ちょうどタイミングが合わず見逃してしまったことを悔しがっていたところ。
その後、この鹿児島で大規模な個展があると知って、思い切って最終日へ滑り込みました。

ヤノベケンジ氏は、「生き残るための機械」をテーマに作品を製作している造形作家。
少年時代に大阪万博会場が解体されてゆく現場を目の当たりにし、未来が廃墟になってゆくという不安のイメージを抱いてしまった氏が、その妄想から逃れるかのように作ったのが様々なサバイバルマシーン作品群です。いずれも実際に稼働するのが大きな特徴。
特に有名なのが「アトムスーツ」。
アトムスーツとは、胸や局部に放射線検出器をつけた黄色い防護服。実際に線量を計測でき、腹に放射線量のカウンターがデジタル表示されるようになっています。潜水服のような外観ですが、ヘルメットには鉄腕アトムを彷彿とさせる角がついています。
この「アトムスーツ」を着て万博会場跡地のエキスポタワー廃墟を訪れたり、太陽の塔の目玉部分へ侵入したり、チェルノブイリ原発事故跡地の高汚染地帯ZONEを訪れたり、といった活動が氏の「アトムスーツ・プロジェクト」です。

また、こういった活動から少し方向性を変えて生まれたのが「トらやん」の世界を体現した作品群です。
トらやんとは、黄色いアトムスーツを観にまとった、ちょびヒゲにバーコード頭の腹話術人形。
オリジナルは3歳児サイズですが、30cm程度のミニ・トらやんや、7.5mものジャイアント・トらやんなど、様々な大きさのトらやん族が存在します。
終末世界を冒険しながら太陽を甦らせる、という再生・希望の担い手であり、大人と子供と性別を超越した世紀のトリックスターがトらやんなのです。

氏の原点「未来の廃墟」というイメージと、サバイバルのための機械作品群、その延長にあるパフォーマンスアートとしてのチェルノブイリ訪問。
そこで出会った現実。子供と保育園廃墟の壊れた人形、壁に描かれた太陽。
そして、氏の父親が唐突に作り出したバーコード頭にちょびヒゲの腹話術人形「なにわのトらやん」。
氏の表現の底流にあったイメージと、チェルノブイリで受けた衝撃と、なにわのトらやんという存在、そして子供たちへのまなざしが出会うことで、偶然的に誕生した「トらやん」の作品世界。
展示会を行うたびに成長する物語と予言神話的な偶然の符丁が重なってゆくさまは、鳥肌が立つほど。
氏が「トらやんは『降りてきた』」と形容するのも充分頷けるような気がします。

どこか禍々しい終末的な世界観を提示していながら、同時にほほえましく新しい希望を感じさせる作品世界は圧巻。
ジャイアント・トらやんの鼻歌とSOSのラッパが今も耳を離れません。
そして特に「亀島 - 霧島」という作品にはたいへん感動させられました。
思い出すだけで泣けてきます。

会場には子供も大勢来ていて、赤ちゃんから小学生くらいまで皆が皆楽しそうだったのが印象的でした。
そういえば、こんな出来事がありました。
ジャイアント・トらやんのSOSラッパに泣き出してしまった幼児がいたのですが、ふつうなら迷惑がられそうな状況なのに、わたくし、号泣する姿を見て思わず温かな気持ちになって笑ってしまいました。ふと周りを見渡せば、同様に会場中の皆が暖かく笑って見守っているではありませんか。
つくづく、トらやんの世界は次世代を担う子供たちの味方なんだなあと、感慨深かったです。
とても感動的な企画展だったと思います。

この日はちょうど作家ヤノベケンジ氏自らによるギャラリーツアーやサイン会もあり、少しながらお話しさせていただくこともできました。
大阪弁で飄々と、フレンドリーかつオープンに語るヤノベケンジ氏の姿が忘れられません。
年末に大阪で展示が予定されているそうなので、都合が許せばそちらもぜひ足を運んでみたいと思います。

よりによって南の果て。空港からの足が無くレンタカー必須であるなど困難が山積みで、計画段階では少し迷ってもいたのですが、結果的には行って大正解でした。
思わず食事を忘れてしまうほど没入してしまったツア-2日目。
色々な意味で忘れ難い体験となりそうです。


Kirishima_art_museum01


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