はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

東京遠征7/22。(ICCキッズプログラム、電通大オープンキャンパス)

2007-07-22 22:30:38 | アートなど
本日7月22日は、東京で展示1つとイベント1つを見て参りました。

余裕がないので簡単に。

まずは、新宿初台インターコミュニケーションセンター(ICC)のキッズプログラム「サウンド×イメージ」。
幼い子供たちにも楽しめるようなメディアアート作品を集めた、夏休み中の子供たちを対象とした企画展です。
実際に家族連れと子供たちがたくさん来ており、微笑ましい光景が繰り広げられていました。
常設展示も、昨年とは大幅な展示替えがなされていました。無響室とジャグラーとマシュマロスコープ以外はほぼ総入れ換えに近い形です。メディア芸術祭などの会場で拝見した作品も散見されました。
常設展企画展両者とも入場は無料ですので、幼いお子さんをお持ちの方はぜひ。
そういえば、キッズプログラムの会場でノーマン・マクラレンのフィルムが流れていました。
時間の都合でmosaic 1本と Rythmetic の後半しか見ることができなかったのですが、これ、かなりおすすめです。
特にモーショングラフィックスがお好きな方はぜひ。ヘッドホンで音を聞きながらの鑑賞を強くお勧めします。

次に、調布の電気通信大学オープンキャンパス関連イベント「明和電機通信大学」。
明和電機社長土佐氏をゲストとした特別講演と、アートと親和性の高いメディア技術を研究している稲見氏、小池氏、福地氏、梶本氏、児玉氏、長谷川氏に土佐氏を交えたパネルディスカッション、そして参加教官各氏の研究室公開をセットにしたイベントです。
5月のラボ公開時に児玉研や稲見研を拝見できなかったのを悔しく思っていたところ、この豪華メンバーによるパネルディスカッションに加えてラボ公開まであると知って足を運びました。
行ってみれば、一日限りの「明和電機通信大学開学記念」と銘打った洒落の利いたイベント。
理系実学系研究者のノリが生きた雰囲気であったかと思います。
土佐氏の講演も明和電機の会社説明会にラボ風味を添えた内容。
明和電機と電通大のかかわりは稲見氏つながりなのでしょうか。
パネルディスカッションでは各パネリストによる研究室テーマプレゼンの後、「明和電機通信大学」の教育理念や人材育成方針などが半ば冗談、半ば本気で討論されました。
架空の設定で話しているにもかかわらず、パネリスト陣の発言には自らが直面している教育と研究の現場における問題意識が如実に反映されているようでたいへん興味深く感じられました。
ラボ公開では、技術のデモ展示がたくさん。
制作者にコンセプトからしくみ、疑問点に至るまで直接話をうかがえるので楽しいことこの上なし。
個人的には小池・福地研の取り組む情報ディスプレイ技術には非常に興味を引かれました。
また、稲見氏の提示する「実体のない映像オブジェクトが実体の挙動に影響を及ぼすことで、その映像オブジェクトにリアリティが生じる」というシステムモデルが構造的に非常に面白いなと感じました。
新しい技術の可能性とかたちの芽を知ることは、いつも刺激になります。


気が付けば科学ざんまいの週末。
自分の仕事や研究にもこの体験を役立ててゆきたいものです。


東京遠征7/21。(科学未来館「サイエンスニュース!アジア展」「水素エネルギー展」「コピー機フシギ展

2007-07-21 22:43:58 | アートなど
本日7月21日は、東京にて4つの展示を見て参りました。

まずは、台場にある日本科学未来館。
企画展「サイエンスニュース!アジア展」と「水素エネルギー展」「コピー機フシギ展」の3展示を拝見しました。

サイエンスニュース!アジア展」は、近年発展目覚ましいアジア圏における科学技術のホットな話題を、多様性という観点から紹介した企画展。
この企画展は無料スペースと有料スペースに分かれており、無料スペースであれば誰でも入ることができます。
まずは無料スペース。地球ディスプレイのある広場を「アジアの広場」として週替わりで4か国の文化紹介を行うとともに、有料展示室からピックアップした話題を紹介する「アジアン・トーク」という15分程度のプレゼンも随時行われていました。
企画展に興味をもってもらうための掴みとしては考え抜かれた無料展示企画だと思います。
有料スペースは、「多様の生態系と科学」「自然の脅威と科学」「伝統と科学」「習慣と科学」「教育と科学」「都市と科学」「消費と科学」という7つのキーワードで、バイオからナノテク、医療や材料工学、脳科学、エコ技術に至るまで、実に多彩な14の話題が解説展示されていました。
それぞれの話題に関してテロップつき映像をいくつも並べて技術概要を説明するとともに、豊富な実例サンプルも展示されており、見て触って理解してもらおうという姿勢が感じられました。真面目に全部を見ようとすると、とんでもない時間がかかるかと思います。それだけに、解説映像の分数が書いてあるのは良心的。欲を言えば、早送り機能がほしいところ。
パンダの人工繁殖研究事例がどのように紹介されているか興味津々だったのですが、子供でも解るように簡略化しながらきちんとポイントを押さえた解説はなかなか良くできていたと思います。
見ていて私が特に興味を引かれたのは、昆虫寄生細菌からの創薬研究の話題、そして、イスラム文化圏での豚フリー食品鑑別技術開発の話題、それと、シンガポールの徹底した科学教育戦略の話題、さらに、重量が空気の3倍しかないという超軽量素材エアロゲルの話題、の4つ。
一番感銘を受けたのは教育の話。
シンガポールはバイオ技術とナノテクに相当な力を注いでいるのだそうで、実際、展示されていた小学校教科書の内容に度肝を抜かれました。殺人事件の犯人を捜す方法を考えよう、と、子供の心を奪いそうな魅力的な話題を導入とし、犯罪捜査にバイオ技術や遺伝子工学を利用できる事例を解説しながら、分子生物学を支える基本的概念と技術をきっちり楽しく学べてしまうという驚きの内容。アクリルアミドゲルの電気泳動写真や、DNA Ladder とフィンガープリントの読み方基本まで織り込まれている抜かりなさ。さらに、なぜそうなるのか、という論理展開も重要視されているのがうかがえて、とても唸らされました。ある意味ショッキング。
小学校でこんなにすごい教育を受けている国に、これじゃあ、日本の小学生が太刀打ちできるわけがありません。相手にならない。
基本的なものの考え方をしっかりと身に着けられるような教育の必要性を痛感して参りました。

別の意味で印象的だったのが、視力を鍛えて脳を活性化させるトレーニングの話題。
トレーニングの体験コーナーがあったので試してみたら、ハナから正解率100%。連続する2つの画面を見分けるというだけなので、ふつう解るだろう、何をこれ以上トレーニングするのだろうと疑問に思って他の方々を見ていたら、正解率は7割~9割が普通のようで逆に驚きました。
出題は、灰色の点が縦に3つ並んだ画面が0.5秒程度づつ2枚続けて出てきて、そのうちのどちらか1枚は真ん中の点がないので、点のあったのは前と後のどちらだったかを当てる、というもの。真ん中の点はだんだんと薄くなってゆくので次第に見分け難くなってゆきます。
差分認識の一種なのでしょうか。
薄くなった点の痕跡は私の目には明らかなのですが、他の人にはそれが見えていないという事実。
何とも不思議です。
やはり人はそれぞれ一人ごとに違った世界を見ているのだなと感慨を新たにした体験でした。


水素エネルギー展」は、その名のとおり水素エネルギーをテーマとした展示。BMW主催の催しです。常設展の入場料で見ることができます。
水素エネルギー利用をめぐる解説と啓発が主な内容。メインは水素燃料車の展示でした。
日本が高圧ガス方式なのに対し、ドイツでは液体水素方式なのだそうで、車載タンクの中身はマイナス253℃(!)。
タンク機能の要は保冷機能と減圧弁で、逃がした水素は化学処理されて水として排出されるのだとか。
衝撃耐性はライフル試験(その名のとおり、ライフル銃で撃って損傷しないか調べるらしい)で確保されているらしいです。
爆発性の気体を制御する難しさとコストは相当のものでしょうが、将来的にはやはり必要となってくる技術なのでしょう。
水素生産のためのエネルギーを化石燃料以外から調達できるようになれば、けっこう普及しそうな気もします。
たくさんあるらしき課題を着実にクリアしていってほしいものです。
これからの技術研究に期待。
なお、この展示ではディスプレイやデザインに工夫が凝らされていて、そっちのほうもなかなか楽しめました。
展示美術に興味のある方にはちょっとおすすめかもしれません。


コピー機フシギ展」は、コピー機のしくみを解説しつつ楽しませてくれる技術宣伝的な展示。夏休みの子供たちをターゲットにしたRICOH主催の催しです。こちらは無料スペースでの展示。
閉館ギリギリに入ったため全貌を見ることはできませんでしたが、コピー画像が点でできていること、そして、スキャンした画像情報が光に変換され、ポリゴンミラーによって再び画像として再構築されること、さらに、レンズの力によって拡大縮小がなされること、これらが実にわかりやすく展示されているのが見てとれ、感心してしまいました。
会場には、特殊なコピー機を使って書いた絵同士を対戦させて勝ち負け判定するゲーム(?)コーナーもありましたので、小さなお子さんをお持ちの方は一緒に行かれると楽しいかと思います。
後半には環境教育展示もありましたので、夏休みの自由研究課題にも役立つかもしれませんね(笑)。

科学未来館の展示3つは全体的に、環境とエネルギーを意識したテーマ性を感じさせる内容が多かったように感じます。
最先端の科学を紹介する科学未来館がこういったテーマを扱っているという事実が現代の科学技術の使命と宿命を表しているようで、何だか非常に感慨深く思えました。



さて、最後に、渋谷のGallaly Le decoで開催されている「あいちゃくをもつ為の道具展」。
武蔵野美術大学の空間演出デザイン学科小泉ゼミの展示です。
題名とコンセプトに惹かれて足を運びました。
行ってみれば、小規模ではありますがかなり面白い展示。
消費されがちなモノたちに道具としての「あいちゃく」を生じさせるためのデザインや工夫8点が紹介されており、それらの試作を実際に手に取ってみることができました。
ひとつひとつの道具に名刺様のテロップカードがついていて、鑑賞者がそれを持ち帰れるようになっているのも面白い。
どこかユーモラスで微笑ましさを誘う作品たちを思い起こさせるカード自体が愛着を誘う仕掛けにもなっていたように思います。
思わぬ収穫。行ってみて良かったと思います。
会期は明日22日の17時までですので、興味のある向きはお早めに。


気が付けば科学&デザインづくしの一日。
やはり科学は面白いです。


訃報。

2007-07-19 23:38:30 | アートなど
心理学者の河合隼雄氏が逝去されたそうです。

河合氏といえば、文化庁長官云々というよりも、児童文学に造詣が深い方として敬愛しておりました。
ユング心理学という観点から児童文学を読み解いた氏の著書「昔話の深層」や「ファンタジーを読む」は英米児童文学ファンにとって非常になじみ深いものかと思います。
中学高校時代に氏の著書と出会ったことは私にとって大きな事件のひとつでした。
そして大学時代、たまたまNHKで放映されていた大学教授の講義を見て感銘を受け、最後のテロップで、たった今聴いたのが河合隼雄氏の京大退官記念講義だったと知って驚いた時のことが今でも忘れられません。
退官記念講義で氏が言及されていた「コンステレーション」というキーワードは今も私の心に根付いています。
ものごとをとらえ考えてゆく上で、大きな示唆と方向性を与えてくれた氏には感謝しきれないほどです。
まだまだ矍鑠としていらしたことを考えると、他界されたのが残念でなりません。
氏の研究と教育と臨床、そして著作と文化活動など、多くの業績に敬意を表して。
心よりご冥福をお祈りします。


TENORI-ON 製品化実現!

2007-07-18 23:24:15 | アートなど
遅ればせながら岩井俊雄さんの「TENORI-ON 開発日誌」で知った情報。
メディアアーティスト岩井俊雄さんとYAMAHAが開発を続けていた、光の楽器「TENORI-ON」がとうとう完成した模様です!
わたくし、昨年5月の公開講義で岩井氏のTENORI-ON試作機によるライブパフォーマンスを見てからというもの、その製品化をずっと心待ちにしておりました。
価格や発売日、スペック等はまだ公開されていないようですが、AXISの8月号に正式な広告も載っているそうですので、発売は秒読みであると思われます。
願わくば手の届く価格でありますように。

なお、このAXIS 8月号の表紙はなんと、岩井俊雄さん!
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=hazamanoiori-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000RO3W3G&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
巻頭インタビューもあるそうですので、これはぜひとも早急に都の書店へ走ろうと思います。



【情報】OPEN STUDIO Vol.4 @東京藝術大学大学院メディア映像専攻。

2007-07-12 21:36:30 | アートなど
正式に情報が出たようなのでこちらにも。

東京藝術大学大学院 映像研究科 メディア映像専攻 の作品展示&ラボ公開である「OPEN STUDIO」の第4回開催日程が決定したようです。
7月30日(月)~8月5日(日)の7日間。
水曜を除き、11時から20時までの展示だそうです。(8月1日(水)は15時まで)
会場は、横浜新港地区校舎。
最寄り駅はみなとみらい線の馬車道駅。
詳細は「OPEN STUDIO」公式サイト→こちら でご確認を。

藝大大学院のメディア映像専攻といえば、既存の枠に囚われない、広義の新しいメディア芸術の可能性を探る研究科として2006年春に開講した年若い研究課程。
藤幡正樹氏や佐藤雅彦氏、桂英史氏、桐山孝司氏など、そうそうたる教授陣が教鞭をとる場所としても注目されています。
わたくし、佐藤氏と藤幡氏の仕事に興味をもって昨年のOPEN STUDIOVol.2とVol.3に足を運び、垣間見える教育方針や、学生さんたちのがんばりとその開かれた姿勢にたいへん感銘を受けて参りました。
昨年は専攻開設初年度とあって、水面下の試行錯誤が偲ばれる展示ではありましたが、いずれも色々な意味でたいへん刺激的な内容でした。
2年目の今年、経験を重ねた学生さんたちがどのような驚きとどのような個性の発露を見せてくれるのか、今から楽しみでなりません。

教授陣に興味のある向きはもちろんのこと、メディアアートや面白いモノ好きな方、そして、若い才能あふれる表現と最先端のメディア研究教育現場に触れてみたい方はぜひ。
おすすめです。


クリエイティブ・コモンズ解説映像。

2007-06-27 20:37:14 | アートなど
いつもこっそり覗いている坂口祐氏のブログで教えていただいた情報。
クリエイティブ・コモンズについて解説したビデオ映像というものがあったようです。

</object>

これほどわかりやすくまとまっているとは。素晴らしい。感動です。
クリエイティブ・コモンズについては、拙ブログやJSRでもたびたび言及しておりましたが、いまひとつ解り難かったかなと反省。
さすがプロの仕事は違いますね。

すべての創造性のために、もっと広がっていって欲しい文化だと思います。
当サイトでも条件が許せば エントリごとにCCライセンスを提示しておりましたが、うっかり忘れてしまうこともしばしば。
今後ももっと積極的に利用してゆけたらいいなと考えています。

なお、クリエイティブ・コモンズについての詳細は クリエイティブ・コモンズ ジャパン のFAQをご参照ください。


気になるBLUE MAN。

2007-06-26 22:40:03 | アートなど
茂木健一郎氏のブログクオリア日記6月24日付エントリで見かけて気になったのがこれ。

BLUE MAN GROUP

スキンヘッドの頭全体を青塗りして黒服でパフォーマンスする三人組。
怪しい。怪し過ぎる。
しかし、ものすごく面白そう。
英語版wikipediaによれば、
Blue Man Group's theatrical acts incorporate rock music (with an emphasis on percussion), odd props, audience participation, sophisticated lighting, and large amounts of paper.

と、何やら楽しげ。どことなくコンドルズやフキコシソロアクトライブを連想させるような。
しかも、それだけではなく、
It is also noted for having a "poncho section" of the audience; in the front rows, audience members are provided with plastic ponchos in order to protect them from various food, substances, paints, and so on, which get thrown, ejected, or sprayed from the stage.

スゴすぎる!
舞台から飛んでくるんですか!
substancesって!
どんなんだ!
しかし、それなのに、
The shows are family-oriented, humorous, energetic and often employ thought-provoking satire on modern life.

なのだそうで、意外にもご家族揃って楽しめるエンターテインメントなのだそうです。
でも、ユーモアの内容は、
Most of the humor breaks the fourth wall, for example, interrupting the show to ridicule latecomers in the audience.

なのだそうで・・・・。
う~ん、客いじり的なユーモアなのでしょうか。ちょっと恐いかもしれませんね。

いやしかし、総じてものすごく興める集団です。
しかも今年の12月に日本に来るらしい。
これはぜひ見てみなければなりませんねぇ(笑)。
ということで、今後もこっそりリサーチしてゆきたいと思います。


KKP#5「TAKE OFF」再演と告知映像。

2007-06-25 00:32:00 | アートなど
もう何日も前にRahmens.netで公開されていた「TAKE OFF」再演告知。
これまた通信速度の関係で観られずにおりましたが、さきほどようやく観ることができました。
告知映像がteevee graphics っぽい。ぽいです。
どなたのディレクションなのでしょう。
気になります。

ちょうど昨年の今頃上演されていた「TAKE OFF」。
今までの小林賢太郎プロデュース公演とは若干趣を異にした作品だったと思えます。
(私はコンドルズの舞台を連想しました。)
その再演が今回決まったわけですが、小林作品ゆえ台本変動は必至。
どのような内容になるのか非常に興味深いです。

なお、この舞台は全国を回るようですので、お近くで上演があるようでしたら喜劇好きにはおすすめです。
久ヶ沢徹氏ファンも必見。
開催地や日程、チケット発売日の詳細はラーメンズ公式サイトRahmens.netのNewsでご確認を。


佐藤雅彦氏関連映像2つ。

2007-06-25 00:01:52 | アートなど
佐藤雅彦氏の事務所TOPICSのサイトで知ってはいたものの、ナローバンドの悲しさで今まで見れなかった映像をようやく観ることができました。
ニューヨークADC賞に選ばれた2つの広告映像です。

まずは、佐藤雅彦氏とユーフラテスの作品。
ISSEY MIYAKE A-POC INSIDE
昨年4月15日に「脳!」のシンポジウムで見た「TOKYO STRUT」をベースにしたとおぼしき、バイオロジカルモーション手法を極めたシンプルかつラディカルな作品です。
植田美緒氏が中心になってディレクションした模様。
映像が流れはじめてからずっとドキドキが止まりませんでした。エキサイティングです。
群点間の線が音と同期しながら入れ替わる瞬間や俯瞰でアングルが回転してゆくあたりなど、もう鳥肌ものでした。
これだけの要素でこれほどの表現ができてしまうという事実に新鮮な驚きと興奮を覚えます。
佐藤氏とユーフラテスの取り組む認知科学アプローチ的手法が今後どのように発展してゆくのか、非常に楽しみです。

次に、佐藤雅彦氏とユーフラテス、そして石川将也氏の作品。
FACTORY OF IDEAS
石川将也氏の「仮想工場」をベースに表現を発展させたとおぼしき映像。
大日本印刷のGビル多目的ホールのスクリーンオープニング映像のために作られた作品とのこと。
文字の工場で、整然と作られてゆく言葉たち。規則性と意外性が絶妙にマッチした世界はまさに壮観。
どことなく「うごくID」や中村至男氏の香りも感じられる幾何的美しさと楽しさに満ちた作品です。
こちらも見ていてドキドキが止まりませんでした。
ぜひ一度、Gビルの大スクリーンで見てみたいものです。
石川将也氏といえば、昨年10月の『勝手に広告』展にあったNIKEのシステム制作や「やまだ眼」の装幀が記憶に新しいところ。
ユーフラテスとしての活動には参加されていないようですが、今後も活躍が期待されるところです。

どちらの映像もかなり重いのでナローバンド環境では見ることができませんが、もしも見られる環境にある方はぜひご覧になってみてはいかがでしょう。
一見の価値あり。年代嗜好問わずおすすめです。


東京遠征6/24。(東京都現代美術館「マルレーネ・デュアス-ブロークン・ホワイト-」「東京ワンダーウ

2007-06-24 19:57:39 | アートなど
本日6月24日は、東京木場の東京都現代美術館で3つの展示を観て参りました。

まずは、「マルレーネ・デュアス _ブロークン・ホワイト」。
南アフリカ出身のオランダ在住画家マルレーネ・デュアスの企画展です。
独特なタッチで主に人物のポートレイトを描くデュアス。
『いま私たちの怒りや悲しみ、死や愛といった感情をリアルに表現してくれるのは写真や映画になってしまった。かつては絵画が担っていたそのテーマをもういちど絵画の中に取り戻したい』という氏のコメントが示すとおり、非常に明確なテーマ性をもった作風の画家です。
キャプションによると、現存する女性画家作品の最高落札額記録保持者として世界で注目を浴びているのだそうです。
たしかに、決して奇をてらったわけではないのに一度見たら忘れられないインパクト。
彼女の作品はかなりの強度を持っているように思えます。
私の個人的感想としては『恐い! エロス! 劇的!』の3語に尽きます。
個人的には決して好きとは言えないけれど、好悪を越えたところにある価値を持った作品のように思えました。
生命や身体をグロテスクに捉える視点には、どこか束芋氏と通じる部分もあるような気がします。
東京都現代美術館の企画展にしては作品数は少なめですが、他作家とのコラボレーション作品などもありました。
料金も高めですし、かなり好き嫌いの分かれそうな展示ですが、様々な表現に触れてみたい方や現代芸術全般に興味のある方にはおすすめかもしれません。

つぎに、「東京ワンダーウォール2007」。
東京都主催の、若手作家コンペの入賞作品展。
企画展示スペースの地下1階を贅沢に使った展示でしたが、私にしては珍しくかなり辛口の感想を抱きました。
どこかで見たような表現が多くて圧倒的な個性は見受けられず、とりあえずそれっぽくまとまってはいるものの、少し稚拙で、悪い意味での隙のある作品が目立ちました。
正直、選考基準がよくわからない。
内輪受けの香りがしていたたまれなくなってしまいました。
現代の若手作家たちがいくらネットやコピー世代の人間だからといって、これほど実力がないとは思えません。
美大の卒業制作展のほうがずっと面白いのではないでしょうか。
もしも有料展示だったら怒りを覚えていたと思います。
もちろん若手作家ということで、『惜しい!』と思える良作もたくさんありました。
作家さんたちに非はありませんが、もっと直接批評・感想をやり取りできる場所での展示のほうが、出品作家さんたちにとってもプラスになるのではと思えます。
この展示を東京都現代美術館のスペースで大々的に行う意義があるのかどうか、現代美術に対するおかしな偏見を広めてしまう恐れはないのか、等、いろいろな疑問を抱いてしまいます。残念ながら私の中では、今までに見たあらゆる展示の中で『困った展示』堂々第一位です。

最後に、「常設展Motコレクション2007年度第1期 特別公開 岡本太郎『明日の神話』>>」
2007年度の常設展1期展示。
体験型の作品や、会田誠の作品、そして大竹伸朗の「ゴミ男」などインパクト絶大な作品が多数。特別展では岡本太郎の壁画「明日の神話」が贅沢に室内展示されていて圧巻。鑑賞環境は汐留のテレビ局の時よりも格段に良いです。
入口ホールの2作品や「明日の神話」は撮影可なのも嬉しいポイント。
また、個人的には最後の展示室に会田誠の「スペース・ウンコ」「スペース・ナイフ」、八谷和彦の「スカイボード」、ヤノベケンジの「アトムスーツ」、そして宮島達男のLED作品が勢揃いしている状況が面白すぎてかなりテンションが上がってしまいました。
ヤノベケンジの「太陽の塔乗っ取り計画」ともうひとつの映像作品も秀逸。
わたくし個人的には企画展よりもこちらの常設展Motコレクションのほうが格段におすすめかもしれません。

10時過ぎからゆっくり回って館を出たのは15時少し前。
4時間半ほどの鑑賞でした。
ところで、帰り際にチケット売場前を通ったら何故か長蛇の列。
ここでこんな光景を見たのは初めてだったので驚きました。
岡本太郎効果なのでしょうか。気になります。



東京遠征6/16。(「花展」「アートで候」「見えるもの/見えないもの」)

2007-06-18 01:44:17 | アートなど
一昨日6月16日(土)は、上野で3つの展示を観て参りました。いずれも17日終了の会期ギリギリなものばかり。
とりあえず簡単にメモ。

・東京国立科学博物館「花 Flower~太古の花から青いバラまで~
 花と文化、そして植物における花の位置づけと、花の色のしくみ、様々な植物と育種について包括的に提示した良質の企画展。
 最相葉月のノンフィクション「青いバラ」で取り上げられていた、サントリーの遺伝子導入プロジェクトの成果である青いバラが展示されているというので足を運びました。デルフィニジンを合成させる酵素発現にまでは漕ぎ着けたようですが、『青』というよりは『薄い紫』とでも形容すべきトルコギキョウのような色合いで、代謝産物である色素の発色まではコントロールしきれていないようなのが印象的でした。
遺伝子操作と発現制御はまったくの別物であることは、分子生物学とマクロの生体両者を扱ったことのある方ならよく御存知と思いますが、サントリーの青いバラプロジェクトはその発現制御がいかに難しいかを露呈させているようで非常に興味深く感じられます。
青色色素の代表デルフィニジンを有する初めての品種を開発したということで大きく評価はされるでしょうが、その色素の発色条件をどのように改良してゆくのか、そして今後、サントリーのプロジェクトがどの方向へ向かうのかがとても気になるところです。

・上野の森美術館「アートで候 会田誠・山口晃 展
 現代美術の気鋭若手作家である会田誠と山口晃の作品を集めた企画展。
 二氏の学生時代作品から代表作、さらに書き下ろし最新作までを集めた充実の展示でした。
 かたや、圧倒的な画力がありながら常に人を食ったようで真剣にふざけている感のある会田誠。
 かたや、これまた圧倒的な画力と構成力で緻密な日本画的諧謔世界を構築する山口晃。
 どちらも徹底的に考え抜かれた戦略と戦術があるのが見てとれて、しかもそれが技術と不可分に結びついて大きな個性になっているところに興味を引かれました。
 戦う表現者会田誠、巧みな戦略家山口晃。日本の美術世界を牽引してゆく可能性に満ちた二人のように思えました。
 会期ギリギリなので一時は諦めようかとも思いましたが、結果的に行って良かったと心底思いました。

・東京芸術大学陳列館「<<写真>>見えるもの/見えないもの
 19人の写真展。近くだったのと、題名に引かれたのとで足を運びました。
 個性豊かな表現。写真に作家性を付与するものとは何だろう、と考えさせられました。


3館回って、その後国際こども図書館のカフェでお茶。
鴬谷、品川、銀座伊藤屋を経由して帰路。
暑さの中、12時間の長旅(?)がこたえたのか、17日はまた動けなくなってダウン。
今週はもう少し自重してみたいと思います。


今週観たもの6/12~6/15。

2007-06-15 09:17:26 | アートなど
今週観たもの。とりあえずメモ。

・6月12日(火) 銀座教文館6Fナルニア国「海とキャンプと冒険と~アーサー・ランサムの世界~
 児童書専門店のイベントスペースで開催中の写真展。ランサムの作品に魅せられた方々が、ゆかりの地を訪れて撮り貯めた写真を、作中の情景とクロスさせながら展示したもの。引用キャプションが絶妙。さらに、作中に登場するツバメ号を模した3mほどの小帆船実物が展示されていてびっくり。しかも個人作。実際に帆走もできるのだそうで、その職人魂に感服。
 こぢんまりとした展示ですが、アーサー・ランサム好きは必見です。
 会期は17日(日)まで。

・14日(木) 東陽町 ギャラリーA4(エークワッド)「クリスティアーネ・レーア展
 竹中工務店本社ビル併設のギャラリーA4 で開催中の、現代美術作家クリスティアーネ・レーア個展。
 植物の穂や種、馬の尻尾の毛など、小鳥が巣作りのため集めてきたかのような自然由来の素材を使い、繊細で美しく微笑ましい作品が構成されている。子供の頃を思い出すとともに思わず真似してみたくなるような魅力をたたえた作品群。ある意味ではニルス・ウドの系譜かもしれない。
 小規模ながら良質。かつての理科少年理科少女たちは必見。
 7月31日(火)まで。


東京遠征6/10。(オペラシティアートギャラリー「藤森建築と路上観察」展、ギャラリー・スペースキッズ

2007-06-10 23:46:00 | アートなど
本日6月10日は、昨日に引き続き東京で展覧会3つを観て参りました。
とりあえず、データ抑えて簡単に。

1 新宿初台 東京オペラシティアートギャラリー「藤森建築と路上観察」展
 建築史家 藤森照信氏の建築家としての仕事と、トマソンで有名な路上観察学会 関連のもろもろを網羅した企画展。どうやら、ベネチアビエンナーレに出展した内容を活かした帰国展、という位置づけのようです。
 とにかく楽しい。思わずうふふと笑ってしまう物件たちはインパクト絶大。「高過庵」建築過程映像と、ビエンナーレに出展された「The ROJO」のスライドショーは必見。
 面白いモノ好きと路上観察学会&トマソンに興味のある向きはぜひ。
 同時開催のアートギャラリー収蔵品展「こことそこの間」も見ごたえあり。
 project N で紹介されていた若手  須藤由希子 の作品群も不思議な個性を感じさせる。
 なお、トータルでの鑑賞時間は3時間でした。余裕を持って観るのがおすすめです。
 会期は7月1日(日)まで。行ってみたい方はお早めに。

2 青山 ギャラリー・スペースキッズ「オープンアートデイ」
 若手4人のグループ展。能面、写真とコンセプトアート、油彩、アクリル画、と、立体から平面、無形にいたるまで実に個性豊かな作品が集う。

3 六本木 森美術館「ル・コルビジエ」展
 現代建築の巨匠、ル・コルビジエ生誕120周年を記念した回顧展。氏の手がけた絵画、彫刻、住宅、公共施設、都市計画などを、コンセプト解説とともに図面や模型・写真・映像・CGを駆使するばかりか原寸大模型まで使って紹介した良質な企画展。
 とにかく資料数が半端じゃない。圧巻です。
 そして、原寸大模型。恐るべき説得力。スケール感覚の個人差を吹き飛ばす展示は、建築関連展示のひとつの到達点なのかもしれないなと思いました。物理的、要件的に、ある意味では森美術館だからこそできた企画展のような気がします。
 いっぽうで、中身は非常に濃いのですが、建築やル・コルビジェに興味がないと少々辛い内容かも知れません。
 「面白かった!」というよりも、見終わって「勉強になった!」という感じの展示のような気がします。
 体力と時間に余裕のある時に行くのがおすすめです。
 ちなみに、前述の「藤森建築と路上観察」展でもこのル・コルビジェに言及している部分があり、両方を観ておくと、理解が深まってちょっとお得かもしれません。
(ピロティが頻出しますので、ラーメンズ好きはニヤニヤしないよう心の準備を。)

 奇しくも同日に2つの建築関連展を観て、しかもそれらが支流と源流の関係にあったわけなのですが、巨匠と呼ばれるル・コルビジェの物件は緻密でコンセプチュアルでエネルギッシュだけれども、どこか落ち着けない点を抱えているような気がする反面、藤森建築は明らかにル・コルビジェの流れを汲みながらも、荒っぽくてむちゃくちゃなのに、人の好意を寄せ付けるような、中でくつろぎたくなるような根源的欲求を喚起する力を持っているような気がして、そのあたりが非常に興味深く思えました。
藤森建築には『土』や『大地』を感じるような気がします。
あるいは、この感覚は日本人の文化特性に由来するものなのかもしれず、海外における両者の評価も気になるところです。


東京遠征6/9。(目黒区美術館「原マスミ大全!」)

2007-06-09 23:54:23 | アートなど
とりあえず簡単に。
本日6月9日は、目黒区美術館で開催中の「原マスミ大全集!」へ行って参りました。

シンガーソングライターであり画家であり絵本作家であり声優でもある原マスミ氏の仕事を総覧する企画展です。
一度聞いたら忘れられないあの声と独特の絵。
「ストレイシープ」のポーや「Jam the ハウスネイル」の先生役、パンパースCMのナレーション、吉本ばななの表紙絵や「ふたコマ絵本」の作者、と言えばピンと来る方も多いはず。
私にとっては昔からずっと気になる存在で、LPこそ持っていませんが、CD化されたアルバムは「イマジネイション通信」「夢の四倍」ともに家にあるという状態。
『なんだかよくわからないけれど、非常に気になる圧倒的な個性の持ち主』という認識でした。
その原マスミ氏を真っ正面から企画展にしてしまった、というところに興味津々で足を運びました。

区の美術館での開催ということで見くびっていたところ、行ってみれば大変な作品数に度肝を抜かれました。
初期のアルバムイメージ画集、吉本ばなな作品の装画、絵本や朗読の仕事、よしもとばなな とのコラボレーション紀行画群、最近のオリジナル作品群。どれをとっても確固たる個性の光るものばかり。
アルバムから各2曲づつがエンドレス再生されていたり、CD-ROM作品である「動物の謝肉祭」まで置いてあって驚きました。
まさに、『!』がつくほどの原マスミ大全集ぶりだったと思います。
結局2時間ほどの鑑賞。
予想以上の収穫でした。

そうとう個性的な作風ゆえ、すべての方々におすすめとは言えませんが、とりあえず原マスミ氏に興味のある向きにはとにもかくにもおすすめです。


京都遠征5/25。(「若冲展」リベンジ、広隆寺)

2007-05-26 19:13:32 | アートなど
昨日5月25日は、展覧会1つと寺院を1件鑑賞して参りました。

とりあえずメモ。時間があったらレポとして書き足します。
・相国寺「若冲展」
 スタートダッシュで前日見られなかった第2展示室を重点的に鑑賞。「動植綵絵」全30幅と釈迦三尊像3幅を堪能。
 2日間延べ5時間。環境は最悪でしたが、根気と根性で何とかきちんと見られました。
 33幅が一堂に会した場面を見られる機会は、私が生きている間にはたぶんもう二度とないでしょう。
 観ることが叶って本当に良かったです。
 若冲の信仰の結晶、いわば魂と向き合うことのできたこの貴重な体験をぜひ語り継いでゆきたいと思います。

・広隆寺
 小学生の時にわけもわからず連れて行かれた寺で目にした仏像に一目惚れしたものの、それが何たるかを知らないままに過ごし、長じてからようやくあれが「弥勒菩薩半跏思惟像」であって、広隆寺の国宝であったことを知った、という因縁の場所。正体を知ってからずっと行きたいと思っていたのが、今回ようやく叶いました。
 展示方法こそがらりと変わっていましたが、20年前の記憶そのままに、弥勒さまは物思いに耽ってらっしゃいました。感動。
 およそ知る限り最も美しい仏像なんではないかと思います。

(とりあえず休筆。のちほど書き足します。)