はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

東京遠征11/23。

2006-11-24 08:48:20 | アートなど
昨日11月23日は、東京でイベント1件と上映会1件、展示会を1つ観て参りました。

とりあえずメモ的に。
・丸ビル 7Fホール 「明和電機会社説明会」
 慶応大学オープンリサーチフォーラムとの抱き合わせイベント。デジタルアートアワード授賞式の記念講演的な位置づけで明和電機の会社説明会が行われたもの。明和電機代表取締役 土佐氏による約1時間のプレゼンテーション。スライドショー、ビデオ、パチモクやサバオによるパフォーマンス、質疑応答。
質疑応答の中で「明和電機はどこを目指しているのか?」という質問に対し、「自分の中の分類不能なごちゃごちゃしたよくわからないものを表現するためのフィールド、入れ物が『明和電機』や『エーデルワイス』であるので、自分でもよくわからない。もっといろいろな表象を経て最終的には何でもありの統合世界になればいいなと思っている」という趣旨の社長の言葉に妙に納得。
説明し難いモノ、未だ世の中にないモノを具現化させようとしたとき、その表象を定着させるための手法、媒体がアートになるのかなと腑に落ちました。形態は違えど、明和電機は佐藤雅彦氏と中村至男氏の『勝手に広告』と同じ意味合いを持つものなのだなと感じました。

・ラフォーレ原宿 「RESFEST2006 『RESMIX SHORTS』」
 RESFEST2006のうち、日本のショートフィルムを集めたプログラム。
 元々ショートフィルム好きなのと、NAMIKIBASHIに興味を持っていたのとでこの回を鑑賞。
 NAMIKIBASHIの「折り紙」も面白かったのですが、マイベストは『昭和ダイナマイト』。ごく普通の中小企業が町の平和を守るというシチュエーションだけで既に面白いのに、登場するモチーフや細部がことごとく私のツボをヒット。最高です。シリーズがあったら映像が欲しいなと思いました。
 他にクラクラしたのが、「TONER」と「RAPID MOVEMENT」「停止円」「TRAIN」。
「TONER」は音と図形とのシンクロ具合が心地良い。
「RAPID MOVEMENT」は、ズームアップによるミクロの世界と具象的なマクロの世界とが実写とCGを併用して混在するという非常にエキサイティングな映像。貨幣や羽根のどアップと分子のようなパーティクルと小さな羽毛が同じ画面に入っているなんて、もうそれだけでクラクラきてしまいました。
「停止円」は、人工物である写真の中の赤い円を固定し、逆に周囲の風景を相対的に配置したコマ撮り映像。コンセプトは良いし、外側世界が写真へ侵入してゆくアイデアも良いけれど、いまひとつコンセプトを描ききれていないのが惜しい。ループ構造を利用するなど、もうひと工夫あれば絶品のクラクラ映像になっただろうなと思えるだけにとても残念。
「TRAIN」は電車のループ映像を利用してリズムを刻む、非常にユニークな映像。電車を2分の1→4分の1→8分の1→・・・と分割してゆき、分割された電車の幅で音声=リズムを表現。三三七拍子やカエルの歌はまあ普通ですが、輪唱が始まったときには面食らって『すごい!すごいぞ!』と喝采したくなりました。最後のクレジット映像には、佐藤雅彦研究室の佐藤匡氏の映像作品「反復かつ連続」を電車で再現したような表現があってニヤリ。

・青山スパイラル「NSKベアリングアート展」
 工業製品であるベアリングをモチーフにしたアート作品を集めた展示会。日本精工主催。
 無料とは思えない充実のラインナップ。とにかくすごい。
 ベアリングの回転や形をモチーフにした作品から、ペアリングの中に使用するベアリングボールを利用した驚きの作品までじつに多様な内容でした。特に印象に残った作品をいくつか。
 名和晃平氏の、磁石を利用したベアリングボールオブジェや、流れる極小ベアリングボールを使ったPIX-Cellシリーズ作品には目を奪われました。まるで水滴のような粒が正方形のマスを流れる様子はとても美しく幻想的。
 鈴木康広氏の、気流を利用してベアリングボールを空中に保持する装置、これも非常に面白い。空中でくるくる回るベアリングボールは幻想的でどことなくユーモラス。
 日比野克己氏のベアリングの海、これはもう文句なくアイデア勝ち。ベアリングボールを敷き詰めた『海』にタライの船でこぎ出す小冒険が体験できます。笑いが止まりませんでした。
 川瀬浩介氏の「ベアリンググロッケン」。これは、この日に観たあらゆるものの中で一番感動した作品。ベアリングボールを落下させて鉄琴を奏でる装置なのですが、鉄琴ユニットにぶつかったボールがきれいな放物線を描いて一列で4つの音を奏でる、その正確無比な動きと、4列の鉄琴が奏でる音楽が非常に美しく、視覚的にも聴覚的にも物理的にもたいへん美しい装置作品でした。
 あのような 『音楽』が実現するためには、電子制御で落下タイミングを厳密に規定すること、跳ね返るボールの滞空時間を均一にすること、ベアリングボールが真球であること、落下先の鉄琴面が限りなく平らで水平であること、などなど、実に多くの技術的問題をクリアせねばならないはず。それをあのような形で見事に、しかも美しく実現していることに、すっかり感動してしまいました。あの作品は計り知れないほどの努力と技術の結晶なのではないかと思います。
 ボールが跳ね返るたびに放物線の頂点が次第に低くなってゆく様子、常に正確無比な着地位置とタイミングを保っている様子、いくら観ていても飽きません。アディクトしてしまいそうな勢いです。
 理工系でアート好きの方や、物理法則の好きな方、科学未来館の「インターネットの物理モデル」が好きな方、そして、ピタゴラ装置にときめいてしまうような嗜好の方々には絶対におすすめです。
 なお、この「ベアリングアート展」の会期は26日(日)まで。
 少しでも興味のある方はお早めに!

そういえば、ラフォーレ原宿から青山スパイラルへ移動する途中の右側にルイ・ヴィトンのお店があって、そこになんと! オラファー・エリアソンの作品がディスプレイされていました!
すごい、すごいぞルイ・ヴィトン!
小さな太陽のような単一波長ランプと鏡からなる作品で、お店と一体化していました。
写真はのちほどアップしますが、とりあえず。
エリアソン好きは要チェックです。


風で動く人工生命。

2006-11-20 02:19:01 | アートなど
丸面(Chubb)さんの Chubb's Chamber*Reading Room No.2 経由で教えていただいた情報。

「idea*idea」というブログのエントリ「風の力で動く巨大な生き物」で紹介されている奇妙なモノ。
テオ・ヤンセンという彫刻家の作った巨大風力ロボットなのですが、これがすごい!
骨格だけなのに、まるで生き物のように動きます。
しかもとても美しい!
上記ブログで紹介されている動画を見た瞬間に心臓を射抜かれました。
実物を見てみたくて仕方ありません。
直線的でシンプルなパーツから複雑で有機的なシステムを作り上げた手腕に脱帽。
しかも動力は風のみ。
ときに技術者やアーティストのモノ作り力は、物語作家の想像力を軽々と飛び越えてしまうような気がします。
事実は小説より奇なり。科学とアートの融合、モノ作り万歳。
宮崎駿バージョンのハウルの動く城はこれを参考にしたのかな? とも思えます(笑)。
エッシャーや明和電機や現代アート、面白いモノ好きは必見です。

なお、「idea*idea」の該当記事は→こちら

追記:テオ・ヤンセンについて少し調べてみたところ、英語版Wikipediaに記述を見つけました。(→こちら
オランダの動体彫刻家にしてアーティスト。いわゆるキネティックアートの作家さんのようです。技術とアートの融合を目指しているのだとか。どうやらBMWのCMで一躍有名になった模様。
追記2:もっと詳しい記事を発見。「和蘭生活事始」というサイトの連載記事(→こちら)に、作品制作のコンセプトや解説が掲載されています。写真も豊富。おすすめです。
追記3:作家本人のウェブサイトは→こちら。 strandbeestのfilm項から「砂浜生物」たちの動画一覧を見ることができます。 


アップルのサイトトップにラーメンズ。

2006-11-11 13:20:38 | アートなど
アップルジャパンのサイトトップに接続すると、ラーメンズ起用のCMムービーが!
うひゃあ。
心臓に悪いです。
内容は、アップルユーザーのこだわり、「『パソコン』と『Mac』」の違いを主眼に据えて喧伝したCM。
とてもAppleらしい。
イヤミになりがちなところを、片桐氏のかわいらしさが素敵にフォローアップしているのが微笑ましい。
私自身はアップルユーザーですが、逆にPC氏を応援したくなってしまうのは片桐氏のお人柄のせいでしょうか(笑)。
配役を逆にしたバージョンもあればいいのになと夢想してしまいます。
アメリカ版ではたくさんのシリーズが出ていますので、今後の展開にも期待。

なお、アップルジャパンのサイトは→こちら
すべてのCMは→こちら

ちなみに、ご本家サイトの元CMは→こちら
アメリカバージョンとラーメンズ起用日本バージョンを比べてみると面白いかもです。
日本版ウイルス編
アメリカ版ウイルス編
日本版iLIFE編
アメリカ版iLIFE編


「がんばれ!図画工作の時間!! フォーラム」に賛同。

2006-10-30 02:08:06 | アートなど
「大江戸動物図館」リベンジ鑑賞のことや若冲の升目描きことなど書きたいことは多々あるのですが、あまりに驚いてしまったので、まずはこの話題から。
リンク元を辿っていてゆきあたった情報。

大きく削られてしまった小学生の図画工作の時間を復活させるため、図画工作の重要性を訴える運動が発足したようです。
その名も「がんばれ!図画工作の時間!! フォーラム」。
いわば『図画工作の応援団』を目した活動が展開されてゆく模様。
中心メンバーは藤幡正樹氏を筆頭に、佐藤雅彦氏、上田信行氏、堤康彦氏。

思いもよらない情報でしたが、いっぽうで、佐藤氏がその講演の端々で訴え続けてきたことがらの点と点がつながったような気がして腑に落ちました。
藤幡氏と佐藤氏がらみの運動ということにも驚いたのですが、それ以上に驚いたのが図工をめぐる切実な現状。
以下、フォーラムサイトから抜粋。

『図画工作科の授業は、平成元年度に、年間70時間から年間50時間(小学校高学年)に削減されました。 「がんばれ!図工の時間!!フォーラム」では、「図工の時間」の維持・拡大を目指し、「図画工作科の授業時数を増やすことに賛成します。」という項目で署名運動を行います。』


70時間から50時間に削減?
ありえない!
よもや、小学校の図工の時間がそんなことになっていようとは思いもよりませんでした。
びっくりです。
小学校高学年といえば、彫刻刀や小刀の使い方に習熟したり、色の混ぜ方の規則性に感づいたり、自在に作ることの可能性に目覚めたり、真似から飛躍する準備をしたり、何より、夢中になって頭の中を具象化しようとする自らの衝動に気付く、そんな年代です。
この時期に図工を通して学ぶことは、のちに科学や文学へもつながる重要な基盤になる、と、自分の体験を振り返ってもそう思います。
実習があるという点では理科や技術家庭科と共通する部分もあるかもしれませんが、図工は何より『作ること自体』そして『かたちにすること自体』を目的としている点で大きく異なると思えます。目に見える実利性ではなく、もっと人間性の本質と直結するような何かが図工によって養われるように思えてなりません。
ですから、私もこの図画工作応援団たる「がんばれ!図画工作の時間!! フォーラム」には大いに賛同いたします。
そして図工の拡充ついでに、図工における生徒評価が、上手さだけでなく個性も考慮に入れたものになることも併せて祈りたいです。

目の前でモノを作ってみせると、子どもたちは必ずと言っていいほど手元をじ~っと見つめて夢中になるものです。
絵しかり、折り紙しかり、ハンコしかり。
小細工好きとして、私も自分なりのやり方で図工する心をこっそり広めてゆけたらいいなと思っています。

なお、引用のとおり上記フォーラムのサイトでは、図画工作の時間拡充を求める署名運動が行われていますので、趣旨に賛同される方は、ぜひぜひ署名なさってみてはいかがでしょう。
「がんばれ!図画工作の時間!! フォーラム」のサイトは→こちら


「100%」にトリハダ。

2006-10-28 11:04:26 | アートなど
デザブロネットで教えていただいた情報です。

100% というデザイン集団。
これが、すごい。
電球の電球。
自立する傘。
サクラサク グラス。
竹の蛍光灯。
マグネットピンで壁に収納。
どれも『うひゃあ!』なプロダクトです。

コンセプトは『鳥肌の立つデザイン』とのこと。
深く納得。
驚きのプロダクトたちは→こちら でご確認を。

自立する傘は確実に買ってしまうと思います。
2月の発売が待ち遠しい。
100%、今後も目が離せません。


【情報】小林賢太郎氏ソロコントライブDVD発売。

2006-10-23 20:34:46 | アートなど
小林賢太郎氏のソロコントライブ「ポツネン」および「ポツネン ○-maru-」のDVD発売が決定した模様です。
2007年1月17日発売とのこと。
予想に違わずGBLに先行。そして、予想に違わず二枚組。
あの二つのライブが一つの作品を便宜的に区切った結果、副次的に2部作として再構成されたものであることをうかがわせる販売方法です。
映像作品として見た時にどのようなトーンが再現されるのかが非常に興味深い。
そして、私の唱える『maruのオープニング映像は谷篤氏が作成したに違いない説』が棄却されるか否かも興味深い。
記憶の中の音楽が当たっているかも興味深い。
佐藤雅彦氏関連の手法を検証する意味でも興味深い。
興味深いづくしのDVD発売情報。とにかく楽しみです。
なお、詳細は ラーメンズ公式サイト「Rahmens.net」のNewsおよび下記amazonのリンクでご確認を。

<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=hazamanoiori-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000JVS5B6&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>


東京遠征10/19。

2006-10-21 08:29:10 | アートなど
10月19日は、野暮用のついでに東京で展示会1つとトークイベント1つを観て参りました。

まずは、日本橋のDIC COLOUR SQUAREで開催中の「COLOUR OF 10」。
10人のクリエイターたちによる、「色」をテーマにした作品の展示会です。
佐藤雅彦氏とその門下である気鋭の集団ユーフラテスの手がけた作品があるというので足を運びました。
行ってみれば、非常にユニークな作品ばかり。
まず、ユーフラテスの「midnight animation」は、暗闇の中でじつに驚くべき手法を呈示した作品。科学的であると同時に独特のユーモアも感じさせてくれます。実利的なはずの『休憩』には何故か思わず笑ってしまいました。色と光と知覚の関係性に深い考察をめぐらせたくなること請け合い。佐藤氏の流れを汲む表現は、毎度ながら『なんて素敵なんだろう』と思わせてくれます。科学の素養を持つ方や、オラファー・エリアソンに感激した方、そして何よりものごとの純粋な面白さを愛する方にとっては特におすすめです。(一つだけ不安な点は、第1第2色盲の方々への物理的問題。ひょっとすると作品を体験できない方もいらっしゃるかもしれません。)
他にも、永山裕子氏の「The tale of right」が非常に面白い。偏光レンズを利用した、これも驚くべき視覚効果をもたらす作品。我々が普段目にする色が反射光なのに対し、呈示されるのは透過光で構成された色。「色」とは何かを、驚きと楽しみをもって考えさせてくれる作品だと思います。
衝撃的だったのは、寄藤文平氏の「Color violence」。文字通り、暴力的なまでの色の力を見せつけてくれる作品です。衝撃的すぎて思わず笑いが込み上げました。
森本千絵氏の「イロニンゲン プロジェクト」も面白そうだったのに、時間がなくてじっくり見られず、残念。
会期は11月7日まで。ぜひもう一度訪れてみたい展示会だと思いました。

さて、次に訪れたのはギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で開催中の「勝手に広告」展のギャラリートーク。
『"表象"はどのように現実世界に定着するのか。 -「勝手に広告」を例として』と題し、写真家のホンマタカシ氏を迎えて、クリエイターの中村至男氏と佐藤雅彦氏が「勝手に広告」プロジェクトの構築過程と、その表現を支える技法について語った鼎談です。
冒頭では、地下展示室からの『中継』で作品を解説するというサプライズ。ホンマタカシ氏の撮影するカメラで中村氏と佐藤氏が作品を紹介しながら、ときに実演。思わぬプレゼン形式に会場からは随時笑いが。出演者たちが目の前にいないにもかかわらず、会場はどっと暖まりました。
ついさっきまで自分がいた現場を、モニタを通したライブ映像で見るのはとても不思議な気分でした。トーク会場はgggの5階なので、物理的にはほんの数階離れただけの距離なのに、空間だけでなく時間的にも隔絶されているかのような感覚をおぼえました。人間の認識する現実感について少し考えさせられる体験でした。
地下での解説を終えると講師3人がエレベーターから登場。その後、スライドショーを使用しつつ、佐藤氏のナビゲーションによって主に中村氏がコンセプトと技法について詳細を話し、ときたまホンマタカシ氏にコメントを求める、という形式でトークが進みました。
話の内容も示唆に富んで興味深かったのですが、何より印象的だったのは、あの3人の取り合わせ。面白い。面白すぎます。中村至男氏は作品から受ける印象そのままのきちっとした几帳面な雰囲気。対してホンマタカシ氏は、写真作品からは繊細で神経質な印象を受けますが、ご本人は自身も『僕は大雑把です』と言うほど非常におおらかで大胆なアーティストっぷり。中村氏がひとつひとつ丁寧に言葉を選んで話せば、ホンマタカシ氏が思いもよらないコメントを放つ、佐藤氏はそんな対照的なお二人をニコニコしながら眺めている、といった、とてもほんわかした鼎談でした。
私が受けた印象では、佐藤氏はホンマタカシ氏のパーソナリティが大好きなんではないかと感じました。『中村さんは几帳面なんですが、ホンマさんはこのとおりなので、2人が同じスタジオで一緒にいるととても面白いんです』と言ってみたり、トーク中はいつも平然としているあの佐藤氏が思い出し笑いで言葉を詰まらせて『ごめんなさい』とつぶやいてみたり。三者三様の個性と相互作用が本当に面白くて興味深いです。
どこまでをどちらが考えたのかを忘れて仕事の分担境界がわからなくなるほど緊密な感性と世界観を共有する佐藤氏と中村氏。その世界へホンマタカシ氏が撮影者として加わることで、一連の作品がより豊かになったであろうことがうかがえました。
他にも中村氏の『説明になってはいけない、少し足りなくて、最後の1本の線を見る人が頭の中で引くくらいがちょうどいい』という趣旨の言葉、そして版の大きさによってVittelのフタの線の数を変えているという話、ホンマタカシ氏が鉛筆の森の撮影について話した『僕の中でこういう世界に見えていたからこういう写真が撮れた』という趣旨の言葉、そしてグリコシティを怖いと評した(『だって至る所にあの子(ビスコの子ども)の顔があるんですよ。監視されてる気分になるじゃないですか』と大真面目で発言)り、Vittelのダムと水道契約できたらいいのにと語るホンマ氏の感性が印象的でした。
総じて、確固たる個性は大きな力になること、そして、でき上がった作品を見るのも面白いけれど作成されてゆく過程を知るのはもっと面白いこと、それらを実感したギャラリートークでした。
そのうち簡単な覚え書きを書く予定ですので、興味のある方はいましばらくお待ちください。

ところで、ホンマタカシ氏は阿部サダヲ氏にちょっと似ているような気がするのは私だけでしょうか(笑)。
気になります。


東京遠征10/15。

2006-10-15 23:58:30 | アートなど
昨日にひきつづき、本日10月15日は東京で展覧会3つを観て参りました。

まずは、上野の森美術館で開催中の「ダリ回顧展」。
ものすごく混んでいるらしいとの情報があったため、チケットは上野駅で購入。開館時間の30分以上前から並んで挑みました。いざ開館してみると、ハナから人の群れ。こりゃいかん、と直感し、一緒に来た友人とともに最後の部屋へ先回りし、そこから逆行鑑賞するという暴挙に。結果的にはこれが大正解。3D絵画もゆっくり体験できましたし、一番込み合う2階の部屋もストレスなく観ることができました。しかし、2階から戻ってみると1階はものすごい人人人。幸い、ちょっと引いて見るスペースがあったので、主に持参した単眼鏡での鑑賞となりました。ただし閉口したのが、絵画に覆いかぶさるようにして観てしまう方々。完全に視界を塞いでしまうので、こうなるともう単眼鏡ですら役に立ちません。
今日のような状態が常だとすると、この企画展は総じて、とてもじゃありませんが絵を観るような環境ではないと思います。
そのうえ、ただでさえ混んでいるところに、音声ガイド使用者が加わることで不自然な人溜まりができてしまい、一部はほんとうに目もあてられないような状態でした。話の種に見てみようという方ならまだしも、本当にダリが好きな方は却って行かないほうがいいかもしれません。
宣伝も音声ガイドも意義深いものであることはたしかです。しかし、国立博物館でのプライスコレクション展でも感じたことですが、今回はそれにも増して、宣伝と音声ガイドの功罪を痛感した鑑賞となりました。

さて次に、品川の原美術館で開催中の「アート・スコープ2005/2006」。
概要は説明し難いのですが、要するに、日独のアーティストを2名づつ交換留学させ、その成果を紹介した現代アートの展示会です。
映像あり、プロジェクションあり、立体あり、音楽あり。実に多様な内容でした。
私にとって今回もっとも印象的だったのは、森弘治氏の「美術のための応援」というインスタレーション作品。
応援団が日本特有の文化であることを衝撃的なまでに思い知らせてくれました。
真っ暗な部屋に投影される応援団の姿は、Japanese Art Parformanceとしての個性を確実に発揮していたと思います。
見ていてコンドルズを連想したのはきっと私だけではないでしょう(笑)。
今回の企画展は作品ボリュームの割には少々割高かなという感も否めませんでしたが、そういった不満は「美術のための応援」の衝撃ですべて帳消しにしたいと思います(笑)。

最後に、新宿初台のインターコミュニケーションセンターで開催中の「コネクティング・ワールド」。
ウェブネットワークの中での情報と人間のありようをテーマにした作品が主体の企画展です。
2度目のリベンジでようやく鑑賞が叶いました。
特に印象的だったのがフラッシュを使用したトレーディングデータ可視化作品「Mass (Market as Speed Spectra) 」と吹き替えによるアイデンティティのゆらぎを呈示した「ルイス・ポルカルの穴」。
片や鋭いストロボ光のもたらす質感と心象。片やユーモアあふれる一発芸のような構造。全く方向性の異なる2作品ですが、いずれも、とにかく体験してみないとわからないたぐいの面白さだと思います。

帰りは最終電車。先ほど帰宅。
今も半分寝ぼけているんじゃないかというほどくたくたです。
しかしまあ、かなりの強行軍でしたが、たいへん充実した2日間だったと思います。


東京遠征10/14。

2006-10-15 01:15:51 | アートなど
本日10月14日は、東京で展示会2つと芝居を1ステージ観て参りました。

まずは、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の中村至男+佐藤雅彦「勝手に広告」展。
既存の企業や商品やロゴを使って、それらを使わなければ決して立ち現れないたぐいの表現を追求したシリーズ。扱っているモノがモノだけにまるで広告のような体裁をとってはいますが、つまり、これらの表現の広告としての機能はあくまで副産物的なものなのだそうです。
展示は、表現の生むゆるぎない『世界』を感じられる作品ばかり。
催しに先立って発売されていた書籍の内容を大判で出力したグラフィックが主ですが、撮影に使った素材の実物や、書籍には掲載されていない新作インスタレーションもあって、たっぷり楽しむことができました。
殊に、物理法則をあざやかに活用した「NIKE」の作品が私の心を鷲掴み。毎回微妙に異なる軌跡。厳密なディティールは異なるけれど、目的に沿ったディティールには確実性と普遍性が宿る。数学的にも、物理的にも、表現的にも、とにかく強烈な美しさを感じました。
ところで、私が行った時にはたまたま写真撮影が入っていて、なんだかとても落ち着かない鑑賞でした。
本当は、「NIKE」の作品をもう少し制御できないかもっと何度も実験してみたかったのですが、傍らで写真撮影されているのでバツが悪くて早々に退散。私にしてはずいぶん早めの鑑賞だったと思います。ちょっと残念。

さて次に、東京都写真美術館で開催中の「橋村奉臣[HASHI]展 『一瞬の永遠』&『未来の原風景』」。
特殊なカメラで数十万分の1秒という人間の知覚し得ない一瞬の事象を鮮烈に切り取った写真の数々。一度見たら忘れられないこと請け合い。水が粘性の高い物質だということをあらためて実感させられました。
こちらも行ってみればギャラリートークの真っ最中。
時間の関係で対談そのものは聞けませんでしたが、写真家ご本人からの作品解説を交えたガイドツアーは拝聴することができました。とても貴重な体験。橋村氏は、おおらかでフレンドリーな切れ者といった印象を受けます。

最後に、東京グローブ座で上演中のG2プロデュース「ジェイルブレイカーズ」18時公演。
私は久ヶ沢徹氏を目当てに足を運びましたが、主演が松岡氏とあって会場はジャニーズファンが主。しかし、そのバックグラウンドの違いなど吹き飛ばす力を持ったたいそう楽しい舞台でした。

(途中休筆。また書き足します。)


「ぴったりはまるの本」。

2006-10-11 00:39:08 | アートなど
佐藤雅彦氏とユーフラテス(そして内野真澄氏)の新刊、ピタゴラブック「ぴったりはまるの本」を購入しました。

購入までに、書店では思わぬ出来事が。
探してみるも、新刊、文芸、児童、TV関係、芸術、雑誌・・・いずれのコーナーにも無し。
書店員を頼るも、店員さん、走り回ること5分。
「すみません、在庫はあるはずなんですが、見つからなくて・・・」とのお言葉。
半ば諦めて別の用事で某コーナーに足を運んだら・・・あった!
な、なんと、科学コーナーに配架されておりました。
よく考えれば、まあ、たしかに(笑)。
分類し難い、書店泣かせの書籍です。
『ピタゴラブック』なので何となく黄みどり色のイメージがありそうですが、背表紙は木机の茶色をバックにした白い明朝系の書体。うっかりすると見逃してしまうかもしれませんので要注意です(笑)。
裏表紙にはバーコードのような配置でこっそり10本アニメが出演していたりと遊び心も満点です。
手に取ってみれば、とてもしっかりした造り。
幼児が手荒に扱っても、少々のことでは傷まない仕様になっています。
実際に使って遊んで考えて・・・という実用本意の体裁が、この書籍のコンセプトを如実に物語っています。
素晴らしい。

内容は、ページに印刷されたある「かたち」とぴったり一致する家庭用品を探すというもの。見る者の観察力と創造力が問われる内容です。
お題は、立ち読みでもすぐにわかるものからちょっと考え込んでしまうものまでさまざま。
私も立ち読んだ時には2つほどわからないものがあったのですが、敢えて答えを見ずにいたところ、帰りの運転中に突然ひらめいて『!』と納得。
思い付く楽しさを与えると同時に『規格』というモノの存在をこっそり知らしめる、とても楽しい本ですね。
子どもの頃に出会っていたらきっとムキになって答え探しをしただろうなあ、と己の子供時代を振り返ってニヤリ。
そういう意味では、巻末の答えは無くてもいいのじゃないかと思えました。
お子さんをお持ちの方はもちろんのこと、シンプルでラディカルなものの見方を大切にしたい方にもおすすめです。
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=hazamanoiori-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4591094707&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>

ところで、巻末の著者紹介ページでひとつ謎が解けました。
4月からの『ピタゴラスイッチ』エンドクレジットに登場していた「ユーフラテス」という製作チームの正体が判明したのです。
慶応大学SFCにおける佐藤雅彦研究室の卒業生を中心としたユニットがユーフラテスであるとのこと。
貝塚氏や山本氏、植田氏、佐藤匡氏が今回の製作チームなのだそうです。
今後の活躍がとても楽しみです。


仙台市博物館「大江戸動物図館」。

2006-10-09 23:58:46 | アートなど
川内の仙台市博物館で開催中の「大江戸動物図館」へ行って参りました。
動物に着目し、江戸時代の資料絵画から人と動物との関係を再考するような、非常に良質の企画展でした。
私は、ほぼ伊藤若冲の「白象群獣図」目当てで行ったのですが、予想外の充実内容にたっぷり2時間以上も居座ってしまいました。

正直、はじめは当惑しました。
第1展示室の入り口付近に、ぞんざいとも言える感じであっさりと若冲の「白象群獣図」があって、まず、そのあまりのあっけなさに虚をつかれました。さらに奥には、明らかに未完成(または習作)としか思えない円山応挙の屏風絵がその旨解説もなく置かれていて『えっ?』と脱力。それですっかりこの展示会をみくびってしまったわけですが、順路を進むにつれじわじわとその全貌がわかってみれば、江戸時代後期の代表的な絵師たちの作品もひととおり揃っていてびっくり。
群獣図と涅槃図と十二支図、お家芸としての絵画、江戸時代のペット事情、珍獣奇獣幻獣、博物誌の中の動物・・・・と様々な切り口から並べられた資料は圧巻。少し説明が不十分だなと感じる部分もありましたが、総じて見ごたえのある展示でした。

特に印象に残っている作品を以下列挙。
まずは、やはり若冲の「白象群獣図」。小ぶりの画面に緻密な升目書きで施された獣たちの細密画。プライスコレクションの「鳥獣化木図屏風」とは若干技法のルールが違っているようです。執拗さと緻密さと生き物らしさという点では、こちらのほうがいかにも若冲らしいなと感じました。見れば見るほど『頭おかしいよこの人!』と 賞賛したくなる過剰な緻密さとデフォルメーション。すばらしい。何度見ても新たな発見のある絵だと思えます。
伝若冲の作はもうひとつ。「鶏図」。力強い躍動感と大胆な構図で雄鶏を描いた墨絵。ぎょろりと見開いた鶏の目がユーモラス。こちらもとても『らしい』作品だなと思いました。
狩野派一門の「牛図」と「馬図」。これ、狩野派の絵師たちが寄せ書きしたという掛軸絵なのですが、寄せ書きしちゃっているところがすごいなと。何十人もの絵師たちが順繰りに書き込んでいる風景を想像すると、なにやら無性に微笑ましくなってしまいました。
北斎の「白蛇と雀図」。鍬の柄に羽根を休める小雀と、それを狙って柄を登る白蛇。一瞬を切り取ったスリリングでドラマチックな画が鮮烈。
森徹山の「寒月狸図」。三の丸尚蔵館で見た孔雀図を思い起こさせる繊細さと静謐さに満ちた画。理屈抜きに好き。
「姫国山海録」。宝暦12年(1762年)に序された、当時のヘンな生き物記録帳。『発熱!猿人ショー』の大路画伯も真っ青な摩訶不思議生物の絵が記録されています。そのユルさたるや、半端じゃありません。描いた人が下手なのか、見つかった生き物が本当にヘンなのか、とにかく強烈。強烈すぎて思わずスケッチしてきてしまいました。スケッチと記憶を元に再現したのが下の絵。P1050128脇書きに「此物在奥陸津軽海邊秋来出食粟穂土人以鎗殺文享保如之事也墓後不見津軽刺史之臣山尾長八郎親看之也」とありました。
P1050129こいつにいたっては、「此蟲出於下総国葛飾郡山岡村永宝寺境内之池其長六尺九寸悪臭甚矣惣身如蝦蟇其聲如雛」だそうで、こんな姿で2メートル以上あって臭くてガマガエルみたいで雛鳥みたいな声で鳴くって一体・・・・・(笑)。
おそるべし『姫国山海録』。ぜひ他のページも見てみたいです。いや、本気で。

最後はすっかり『姫国山海録』に心を奪われるという、思わぬ展開を見せた「大江戸動物図館」。
ひそかに かなりおすすめです。
なお、私の心をかっさらった『姫国山海録』は前期(~10/15(日))のみの展示らしいです。見てみたい方はどうぞお早めに(笑)。


【情報】展覧会「勝手に広告」。

2006-10-06 22:10:08 | アートなど
ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の「勝手に広告」についての情報が、気が付けばTOPICSのサイトに上っておりました。
TOPICSの該当ページは→こちら

この展示は、下のエントリでご紹介した書籍「勝手に広告」にまつわる展覧会。
(「勝手に広告」とは、中村至男氏と佐藤雅彦氏が企業ロゴや商品をつかって対象を勝手に広告した雑誌連載企画。)
今回はグラフィックとともに、写真に撮影された商品については実物も展示されているようです。
そして、どうやらギャラリートークもある模様。
中村・佐藤両氏と、写真を担当したホンマタカシ氏との鼎談のようです。
すでに受付は終了してしまったようで残念。
こんなとき、茂木氏の音声ファイル公開のありがたさが身にしみます。

なお、展示会会期は10月5日(木)~ 10月28日(土)。
開館時間は11時~ 19時(土曜は 18時まで )。
日曜と祝祭日は休館なのでご用心を。


東京遠征9/17。

2006-09-18 23:57:11 | アートなど
本日9月17日は、昨日にひきつづき東京で展示会を2つ(3つ?)観て参りました。

まずは、台場の日本科学未来館で開催中の「インタラクティブ東京2006」。
 観る側が関わることで何らかのアクションが生ずる作品、いわゆるインタラクション型のアート作品を集めた展示会です。最先端の科学技術の結晶ともいえる作品が主であるので、アートというよりむしろ実用や純粋な学問を目指して作成されたものも多数みとめられました。実際、観客側が『この技術はどのように役立つんですか?』といった質問を投げかけている場面を何度も目にしました。そういった意味では、展覧会というよりも情報工学系の学会に近いものがあったかもしれません。
 各展示ブースには解説パネルもありますが、基本的には制作者(又は研究チームの誰か)が常駐しており、作品概要と使い方を直接解説してもらえます。
 質問もできるので『ここはどうなってるの?』と気になる色々を確認したり、『ここがおもしろい』と感想を伝えたり『こうできたらいいのに~』と要望を述べたり、作者と鑑賞者もインタラクション(笑)。双方にとってたいへん有意義です。午後になって子供連れの親子が参入してくると、子供の正直な反応で会場はさらに楽しげな空気に。メディアアートの可能性に、毎度ながら感心させられました。
 いっぽうで、繊細な物理的要件に支えられた作品であるがゆえのマシン不調もみとめられ、アイデアを実用に耐え得るものにすることの厳しさと、表現を支える技術のすごさに心を打たれました。ひとつの論文の裏に何十・何百もの実験が潜んでいるように、ひとつの作品の裏にも見えない努力、とほうもない時間と労力が潜んでいるのだろうなと思います。しかし同時に、アイデアが形になったり、問題が解決したり、仮説が証明されたり、何かを発見したときの喜びはその苦労を帳消しにするぐらい大きなものなのだろうなとも思います。きっとこの点は研究者ならば本質的に皆一緒なのではないでしょうか(笑)。
今回出品されていた作品数は27ほど。以下備忘録的に感想。
I-1 KITAKAZE 混んでいて体験できず。残念。
I-2 Embossed Touch Display 指で金属の円盤をなぞると、指の動きに合わせて金属盤が動く。目を閉じると金属盤の大きさが変わったように感じられる。長さ知覚の錯覚を利用した装置。シンプルながら磐石の技術に支えられた装置。とても面白い。
I-3 Gravity Jockey 耳の後ろに電極を貼り付け、2mA以下の微弱電流を流して平衡感覚を操作する装置。なおこの装置、体に電流を流すので体験には同意書が必要です。仰々しいただし書きに少々躊躇しましたが、やはり好奇心には勝てず。結果、ものすごい体験をいたしました。強烈な揺れが体感できます。実際には体は揺れていないのに、体験している本人はあきらかに『揺れている』ように感じられるのです。加えて私はかなり感受性が高かったらしく、体験後もしばら~くクラクラ。帰り際に体験したので、後述のGEISAI会場でも終始妙にふわふわした感覚を味わいました。
聴覚には影響せず前庭感覚のみを選択的に刺激できることも面白いし、三半規管から脳までの経路のうち作用点が不明だというのも面白い。色々な意味で今回いちばん印象的な作品です。
I-4 Perceptual Attraction Force 二方向性の力を一方向へのみ指向性をもって感じさせる装置。私の場合は一般的な感じ方とは違うように感じられてしまい、指向性を体験できませんでした。残念。
I-5 触覚的描画体験 視覚によって、触覚的に抵抗が生じているように感じさせるシステム。いろいろ応用がききそうで面白い。これを利用して、市販の描画アプリケーション上で筆を変えた時に書き味まで変わればいいのに、と夢想。
I-6 物まねロボットハンド 操作用手袋と連動してその通りに動くロボットハンド。最新バージョンでは物をつまむことも可能だそうです。ハイテク。逆説的ですが、こういう生体模倣作品を見ると生物の組織がいかに高性能であるかを実感させられます。
I-7 演奏インターフェイス 混んでいて体験できず。残念。
I-8 Suicaを用いたDigitalPublick Artにおけるインタラクション 鑑賞者がかざしたSuicaの履歴が読み込まれ、映写されたマップ上に地図データとして蓄積されてゆく作品。2月のメディア芸術祭でみたものの簡易版。私のSuicaには仙台管区の履歴しかないので地図上には表示されず。残念。ちなみに、Suica本体には、20件分の履歴が残っているのだそうです。読み取り装置があれば、持ち主の行動がバレてしまいますね(笑)。あなどれじ、Suica。
I-9 水滴を利用した空間充填型ディスプレイ 等間隔で高速滴下される柱状の水滴を、光の照射タイミングでカラフルな3D表示に変貌させる作品。美しい。とても好きな作品。
I-10 Forehead Retina System 電気刺激作品第2弾。小型電極が集まった帯を額に装着し、電気刺激を触覚として感じ取る装置。カメラで映し出された映像を額の刺激位置と相関させることで『額で見る』ことができる。視覚障害者用の知覚システムとして開発されたものだそうです。実際に体験してみたところ、長時間正座してしびれた足を触った時のようなピリピリした刺激が額に感じられ、その刺激位置でたしかに図形(デモでは二本の線)の存在を知覚することができました。もう少しマイルドな刺激方法があればなお良いのになと思いました。
I-11 Wet-Free Water バーチャル流体を操作できる作品。左利き仕様のようで、右利きの私にとってはちょっと残念でした。
I-12 手が届くバーチャルヒューマノイド 混んでいて体験できず。残念。
I-13 Strino Plant Instrument 鉢植えの植物たちが、風にそよぐことで音を発する。うちわで扇ぐとえもいわれぬ音が。風流。
I-14 Tablescape Plus ディスプレイ上に駒を置くと、そこに人物のアニメーション映像が投影される装置。デュアルディスプレイ技術と光線カット技術が使われており、ひそかにスゴい。
I-15 視覚的聴覚体験 顔の向きによって、聞こえてくる音が変わってくるという、指向性音響システム。赤外線感知による音声チャネル切り替えによるものだそうです。視覚障害者のガイドシステムに使えそうだなあと夢想してしまいました。
I-16 Powder Screen 水面のようなスクリーンと釣り竿でバーチャル釣りゲームが体験できる装置。ゲームに気を取られてパウダースクリーン技術のほうに目がゆきませんでした。不覚。
I-17 Powered Shoes 体験できず。残念。
I-18 Fabricel Element 温度変化で色の変わる塗料を布に塗り、電熱線を仕込んで温度制御で絵を表示させる装置。正方形の升目を並べたピクセル画のような構成。孔雀の羽のような色合いも美しく、非発光ディスプレイというところが非常に面白い。
I-19 Freqtric Drums 人間パーカッション生成装置。演奏者と楽器者が電気的につながることで音が発生。つまり、演奏者が楽器側の手に触るとそれぞれ割り振られた音が鳴ります。4人ほどで体験しただけでも面白かったです。最大6人までが楽器になれ、ドラムセットを組むことができるそうで、デモ映像に爆笑してしまいました。大人数でずいずいずっころばしをやったらどうなるのか興味のあるところです。
I-20 Incompatible BLOCK 3D積み木ソフト。ありえない配置がそのまま反映されるので思わぬ画像が生まれます。そのありえなさに思わず笑ってしまいました。
I-21 TWISTER V 裸眼での360°立体映像装置。体験は予約制。科学未来館のラボスペース、レーザー実験室の隣に設置されていました。装置は直径1メートルほどの円筒形で、被験者はその中に入って360°映像を体験することができます。高速で回転するLEDによる残像効果で映像が再現され、なおかつ視差利用で映像に立体感が生まれます。動作も安定しており、技術的にも作品的にも非常に完成度の高いものに思えました。
I-22 Morphovision 岩井俊雄氏とNHK技研との共同作品。高速回転する家の模型に特殊なスリット光を照射することで、実物の家がゆがんで見える、というもの。昨年の超[メタ]ヴィジュアル展で観た「ゆがむ家」のニューバージョン。装置自体がコンパクトになっていたり、回転音がカットされていたり、変形種類が増えていたりと着実な進化がうかがえて感心。何度観てもおもしろい。隠しバージョンの解説モードも見せていただき、理論ではわかっていたしくみを実感として理解することができました。私としては解説モードがとてもエキサイティングで非常におもしろかったです。聞いたところによると、家の模型は600rpmほどで回転しているとのこと。遠心分離機のことを考えると、とても大きなGがかかっていることがうかがえます。簡易近似式でG=1.12×(0.6)2×R(mm) なので、模型の大きさが20cmほどだとすると、庭の柵や犬には40Gほどかかっている計算でしょうか。バランス取りの難しさなども想像され、作品を支える技術にはただただ感心するばかりです。
I-23 LivePic 大きなスクリーンに絵を描くことができ、さらにその絵に息を吹きかけることで絵が動く装置。落書きとのインタラクションが面白い。子供たちの反応が楽しそうだけれども、スクリーンが高い位置にあるのが唯一の難点?
I-24 Ego Balance 鑑賞者を写すスクリーン映像。動くと鑑賞者の中から魚が逃げ出してゆく。それに伴い消えてゆく鑑賞者の映像。最後には輪郭線だけが残る。逃げ出した魚たちに触れると円形の光と音で反応。動かずにいると魚が戻ってきて鑑賞者の姿が復帰するが、触れなかった魚は戻ってこない。流れ出した自分を捕まえる、という概念が面白い。とてもコンセプチュアルなアート作品だと思います。
I-25 Bubble Cosmos 白煙を封じ込めたシャボン玉が光に照らされながら次々と浮き上がってくる。シャボン玉を割ると美しい音が流れる。見た目にも体験してもとても楽しい作品。子供が夢中になっていたのが印象的。安定した動作にも感心。個人的にも好きな作品です。
I-26、I-27 体験できず。残念。

次に、インタラクティブ東京と同時に開催されていた「国際学生バーチャルリアリティコンテスト2006」、こちらも体験して参りました。いずれも学生さんたちの力作揃い。ただ、作品調整に泣かされている作品も数多く見受けられました。
以下、思いつくまま備忘録的に。
V-1 Planet of Grassland 「気配」を演出する着目点が面白い。調整に泣かされていたらしいのが不憫。草の動きがなかなかリアルでよかったです。目に見えない「何か」を探る被験者の探索行動を、あとで被験者自身がCG込みのリプレイ映像として見られたらもっと面白いのになと思いました。
V-2 ぐ~るぐる 体験できず。残念。
V-3 あしゅら 手と足を使って4本の手をヴァーチャル体験。アイデアが面白いけれど、操作性はもどかしい。
V-4 体験できず。残念。
V-5 まじかるSPLASH 杖で噴水を操る装置。解説の必要もなく純粋に面白い。ぜひオープンスペースに設置して欲しいなと思えました。
V-6 Virtual Seesaw 対面式であるはずのシーソーを並列させた作品。背景スクリーンの関係上か、作品をテントで覆っていたのが残念。わざわざテントに入って行かないと何があるのかわかりません。体験の様子を見せてなんぼの世界なので、せっかく面白い作品なのにもったいないなと思えました。
V-7 らくがきえた 子供たちに大人気。いつも行列で体験できず。残念。
V-8 COGAME 手持ちプロジェクタで道を照射し、亀を導くゲーム。制作者側の意図とは違ってなぜかあっけなくゴール。なぜ?
V-9 Sociable Dining Table テーブルの上の皿やポットたちが被験者に寄ってきて自らサービス。ほほえましい。日本古来の九十九神的な世界観ともマッチしていそう。
V-10 新風感 風を感知し花の芽が。そこへ息を吹きかけることでディスプレイに花が咲く。気化熱と熱感知を利用した装置。気化熱利用というアイデアがとても面白い。湿度条件に左右されそうなのに、巧く動作を調整しているのもすばらしい。接客(?)も巧みで、子供たちをうまく乗せる手腕にも脱帽。
V-11 ビュー・ビュー・View ディスプレイに風をあてることで、画面上のブロックが動く。ブロックを動かした先によっては、風が吹き返されてくる。
R-1 KITAKAZE 体験できず。残念。
R-2 CREATUREs:Tabby 光る毛もじゃのインテリアのような家具のような何か。触ることで反応を示す。
R-3 PhysicalDrawingPaper 腕に装着した装置によって生じるタッチペンと描画のズレ。コンセプチュアルな作品。意図は面白いけれど少し伝わり難いかも。
R-4 Crossing Colouful テーブルに配置された3つのマイク。それぞれから入った音声が光の図形として投影され、それぞれが出会うことで美しい音と光がはじける。説明不要。コンセプトがストレートに伝わる楽しい作品。
R-5 百色園 枯山水を模した砂鉄の庭。調整に泣かされていたのが不憫。
R-6 Empty Box 箱を通して観た風景に映像が加わる。視線管理技術と併せてひそかにスゴい作品だと思いました。

審査結果がどうなったのか気になるところです。

さて次に、東京国際展示場で開催されていた「GEISAI#10」。
国内の様々な若手アーティストの展示即売会です。
正直あなどっておりました。しかし行ってみれば、出展作家たちはいずれも確固たる作風を確立している方ばかり。分野も様々な作家たちの「世界」が所狭しとひしめく様子は圧巻。完全に圧倒されました。
絵画や写真、立体、インスタレーション、パフォーマンスなど、媒体も様々。見て回るだけでも面白いのに、その上、各ブースに作家本人がいて、直接話を交わすこともできます。
私にとって今回いちばん印象深かったのがダジャレアートの高田明日路氏。
言葉を象形的に絵として表現する作家さんです。お題を出すと、即興でその言葉を絵にしてくださいます。見本として「ジョーロ」というカタカナでできたジョーロの絵、「ことり」というひらがなでできた鳥の絵、「くるま」というひらがなでできた車の絵など、どれも『!』と思わず膝を打ってしまうような作品が展示してありました。
とても興めたので、日本で一番多い名字「佐藤」で製作を依頼。その結果、次のような素敵作品を作ってくださいました。
(高田氏ご本人に了承を得て写真を掲載しています)
Takkadasato01
ひらがなで「さとう」。
Takadasato02
横から見ると「SATO」に!
あの佐藤雅彦氏含め、全国の佐藤さんにお知らせしたい素晴らしさではありませんか。
思わずハンコにしたくなりました。
ほんの数分の間のクリエイト。高田明日路氏。すごい才能です。
高田氏ご本人は残念ながらHPなどは持ってらっしゃらないとのこと、作品を目にできるのは限られた場においてのみ。もしもどこかで遭遇する機会があればぜひまた製作を依頼してみたいです。
もっと知名度が上がってくれることを祈ります。

時間ギリギリまで駈け足で会場を回り、18時過ぎに帰路につきました。
帰宅したのは22時過ぎ。
インタラクティブ東京と併せて、非常に濃密な一日だったと思います。


東京遠征9/16。

2006-09-17 08:22:39 | アートなど
本日9月16日は、東京で展示会3つと芝居を2ステージ観て参りました。

とりあえず羅列。
・銀座日産ショールームで開催中の「ニューデザインパラダイス」人気投票上位作品展示。
会期を区切っての展示替えがあるらしく、今日はたまたまベスト3デザインが展示されていました。
郵便ポスト、婚姻届、コンセント。殊にコンセントには感心。あのデザインが実際にあったら欲しいです。

・ギンザ・グラフィック・ギャラリーで(ggg)で開催中の「School of Design」。
注目されているグラフィックデザイナー4人展。
一階には企画のためにデザインされたポスターとグッズ。地下には4氏が手がけてきたプロダクトが。
教科書とノートを買ってしまいました。重い!

・新宿初台のインター・コミュニケーション・センター(ICC)
本当は企画展「コネクティング・ワールド」をみようと思ったのですが、閉館まで時間がなくて常設のみ鑑賞。
いつも混んでいてできなかった「ONE BUTTON GAME」に初めて挑戦。苦心。難しい。

・池袋の東京芸術劇場小ホール2で上演中のたいしゅう小説家「泥棒役者」14時および19時公演。
初めて きたろう氏を生で拝見。きたろう氏は藤幡正樹氏に似ているような気がするのは私だけでしょうか。

(とりあえずアップ。また書き足します。)