はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

<font size="-3">大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ。</font>

2006-09-03 23:58:41 | アートなど
Daititanada01昨日9月2日は、新潟県の越後妻有地方(十日町市および津南町の一部)で開催中の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」へ行って参りました。
このイベントは、720平方キロメートルに329もの現代アート作品を点在させるという、壮大且つつつましやかな里山タイプの芸術祭。
交通の便が悪いので宮城からの参加は難しいかと思っておりましたが、東京からの日帰りパックツアーが出ていることを知り、東京の友人をそそのかして共に参戦いたしました。
金曜夜に宮城からの夜行バスを利用して東京へ早朝着。
上越新幹線で越後湯沢へ。
越後湯沢からはパックツアーの接続バスで十日町駅へ。
十日町駅からはガイドつきバスツアーで「南回り1」というコースを回りました。
朝10時から夕方18時まで、都合50近くの作品を駆け足で鑑賞。
その後、十日町→越後湯沢→東京と逆の経路を辿り、ふたたび夜行バスで帰宅。
0泊3日。
非常に楽しく密度の濃い体験でした。

この芸術祭で特徴的なのが、その場にあることではじめて意味を持つ作品が多いこと。
もしも別の場所へ作品を移動しても価値が半減してしまうと思います。
いわば、人々の生活や文化を含めた包括的な意味で「土地固有」のアートが多いように感じました。
これは逆に言えば、『その場所に行かなければ意味がない』ということでもあります。
実際感じたのが、とにかく行かなきゃわからない、ということ。
少しでも興味のある方は、ぜひぜひ、とにかく行ってみて欲しい! と心底思いました。
また、この大地の芸術祭は運営がボランティアスタッフによって支えられているのも大きな特徴です。
ガイドつきバスツアーにはそれぞれ「こへび隊」と呼ばれるボランティアスタッフが同乗し、ガイド兼タイムキーパーとして活躍しています。
それだけではなく、こへび隊はいたるところで素晴らしい活躍ぶりを見せており、その姿がたいへん感動的でした。

もう一度行きたくてたまらないのですが、残念ながら会期は来週の10日まで。
3年後の次回はもっとじっくり回ってやろうと心に決めました。

以下、今回観た作品の感想を簡単に。

十日町
空家プロジェクトの4点。
No.41 土の音 たくさんの土鈴と焼き物の太鼓。土の楽器たち。音色がひとつひとつ異なって美しい。
No.42 最もよい彫刻 住民へのアンケートに依るベストパーツを集めた神様の彫像。やさしげな細面の観音像になっていました。頭に茨の冠、足下は蛇を踏みつけているのが印象的。
No.43 痕跡 歯科診療所の跡地をつかったインスタレーション。青い光が印象的。思わぬところで足踏み式の歯科ドリル現物を見られたのが感動。
No.44 ドリーム・ブランケット・プロジェクト 毛布の重層。その奥から語られる夢。圧巻。

中里エリア
車窓から2点。
No.171 中里かかしの庭 小紋柄のかかしが河川敷水田に散見される。
No.172 大地のグルグル 稲藁を使った巨大アート。揃った側面と渦巻きの曲線。とにかく美しい。圧巻。

No.170 小出の家 空家プロジェクト。建築プロセスを意識させる古屋。

No.184 ~187 ヘテロトピアへようこそ 廃校作品不在をコーディネートした作品4点。暗号作品に興味津々。
No.180 ブランコはブランコでなく 集落ごとに点在する巨大な竹のブランコ。ロープが非常に長いので、高くこいだ時の爽快感は格別。風景が変わります。おすすめです。

車窓から2点。
No.183 カクラ・クルクル・アット・ツマリ 棚田一帯に設置された小さな竹の風車が音を奏でる作品。えも言われぬ空気は感動的。すばらしい。
No.181 中里重地パブリック・アクセス・ネックレス 廃材利用のベンチ設置プロジェクト。座り放題の巨大ベンチから、各家々の玄関先に据えられた小さなベンチまで、集落まるごとをコーディネートした素敵作品。

No.178 ポチョムキン 産廃が不法投棄されていた川岸を公園に再生した作品。鋼鉄と玉砂利が不思議な枯山水的調和を演出。木々と光がとても美しい。
No.179 静寂の層 ポチョムキンを画廊に見立てて展示された写真作品。モノクロームの美しさが際立つ。

車窓から3点。
No.176 たくさんの失われた窓のために 谷間に向かって設置された窓枠と、そこにゆれるレースのカーテン。美しい。
No.175 森とつながる 木々に渡された鉄製の輪。そこに繁茂する植物。森と構造物がつながってゆく。
No.188 日本に向けて北を定めよ イギリス人作者が、自宅の構造をそのままの位相で設置した作品。地球は丸いんだなあと実感しました。圧巻。赤い鳥居との対比も面白い。

お弁当@林屋旅館 豪華弁当。
余談ですが、旅館の中庭に池があり、そこでなんと、イワナが飼育されていました! ずいぶん立派な体格だったので聴いてみれば、女将曰く、『養殖場へ繁殖用に貸し出し、そのお礼に現物支給で100匹の食用イワナを卸してもらったこともある』とのこと。イワナが稼いでくれたんですね(笑)。餌も動物性タンパクが必要なので、お刺身の余りを利用するなどいろいろ苦労されているのだそうです。飼育の腕に脱帽です。

松之山エリア
No.328 はがきプロジェクト 空家プロジェクト。それぞれの故郷について語るハガキを募り、暗闇の中にインスタレーションとして並べた企画。郵便局の識別バーコードをブラックライトで励起させた光が非常に美しい。一つ一つのバーコードの明かりと、故郷を語る人々とが一対一対応していることを考えると圧倒されます。二階にはハガキ表側の写真も。参加用のハガキ用紙も配布されていました。とても印象的な作品です。
No.329 最後の教室 廃校作品。旧東川小学校の体育館と校舎全体を使った闇と光のインスタレーション。人の不在を露にする舞台装置はとにかく圧巻。草いきれの体育館。回転翼で明滅する廊下。鼓動する闇の理科室。白布で覆われたバリケード。音楽室の魂の静寂。光の棺。 訪問者が異物になるような、圧倒的な存在感を持った作品だと思いました。もう一度行ってみたくてたまりません。大地の芸術祭へ行くならばぜひ体験してみてほしい一作だと思います。
No.298 森の学校キョロロ 自然博物館的な施設として6年前に建設された作品。豪雪に耐える鋼鉄製の建築物は、蛇が鎌首をもたげたような特徴的外観を有します。作品の一つである高い塔が印象的。暗く果てしない階段を登って辿り着いた展望台からの眺めが忘れられません。 館内では、地元でみられる生物たちを展示していたり、蝶のコレクションがあったり、木の作品をつくれる場所があったり。企画展では人間と同じ大きさに拡大した昆虫の写真が展示されていました。鱗粉の一枚一枚までが鮮明に映し出された写真には驚かされました。カラスアゲハの羽根に毛が生えていることにここではじめて気付きました。

松代エリア
車窓から1点。
No.283 農舞楽回廊 瀬替えによって消えた川の流れを黄色いポールで再現。

No.287 天竺 空家プロジェクト。外側からは想像もつかない世界が室内に展開。平泉の金色堂を思わせるような黄金づくし。日用雑貨を金で塗り替えたキッチュな絢爛豪華さはある意味バロック的。圧巻。
No.286 影/来し方行く先 空家プロジェクト。人々の記憶をまとった家。集落の家々に保存されていた記念写真をピックアップし、窓ガラスに焼き付けた作品。
No.291 無音花畑 空家プロジェクト。買い物袋でつくられた花が、小学校校舎に咲き乱れる。ストーブの花畑が印象的。古い小学校教室の様子も印象的。
No.292 私たちは、それをありありと思い浮かべることができる 空家プロジェクト。家屋二階の障子に描かれた半透明の絵画たち。屋外の風景を重ねることで思わぬ絵が立ち現れる。
No.290 七人の侍 英国の7人のアーティストが峠集落に暮らした滞在型アートの記録。
No.289 脱皮する家 空家プロジェクト。屋内のあらゆる可塑部を彫刻し、溝模様を刻んだ作品。とにかく徹底的。呆れ、圧倒され、感動すること請け合い。ものすごい存在感です。もう一度観たいと思えてなりません。
No.293 TOGE夏の庭 空家周辺に渡された水の道。樋と池を配したつつましやかな作品。

No.288 風のスクリーン 休耕田に設置された焼き物の壁。とんでもない構造物です。風景との融和が美しい。遠くからと近くから両方で観たい作品。

車窓から数点。
No.294 ステップ・イン・プラン 独創的なフォントの独創的な看板。一度見たら忘れられないこと請け合い。
No.282 風の原稿用紙 スキー場に整列した200もの白い升目。不思議な存在感を示します。
No.257 ○△□の塔と赤とんぼ 十字架のようにそびえる赤とんぼの塔。地元議員さんのエピソードが微笑ましい。
No.260 かかしプロジェクト 田に根付く家族を模したかかしたち。
No.252 円ー縁 6つの個性的な木工オブジェ。車座になって語り合う神像のよう。
No.251 花咲ける妻有 極彩色の巨大な花。草間禰生氏の作品だそうです。草間カラーと水玉は健在。圧巻。地元ではひそかに「人食い花」と呼ばれているそうです(笑)。たしかにそのくらいのエネルギーを持った作品。地元民の感覚は鋭く言い得て妙かも。
No.276 棚守る龍神の御座 丸太を組み上げたオブジェ。籠型の核にまとわりついた、流線型の勢いに満ちた丸太の束。まるで濁流で流された流木の束のようなエネルギーを感じます。あれほどランダムに、動的に丸太を組めるとは。とにかくものすごいオブジェです。一見の価値あり。
No.279 かかしの嫁入り 東京深川商店街のかかしコンテストから出張してきたカカシたちが田に整列。皆が故郷の方角を向いているのだそうです(笑)。東京現代美術館にお越しの際は、清澄白川で下車して深川商店街を歩いてみることをおすすめしたくなる作品たちでした。

No.234 農舞台 見た瞬間にうひゃあと叫びたくなるような建築物。MVRDVによる設計の文化施設だそうです。内部の配色にもクラクラ。とても印象的。ぜひまた訪れてみたいです。
周囲や内部に多数の作品があり、どれがどれやら書ききれないほど。食堂の配色と光の美しさ、そして、黒板づくしの教室という黒板好きの楽園(笑)のような作品が特に印象的です。
No.235 まつだい住民博物館 旧松代町全世帯を色と屋号で一枚づつの板に託し、駅からのアプローチを飾る。住民による歓迎のメタファー。よりしろやトーテムといったものも連想しました。
No.249 棚田 カバコフの作品。棚田に配されたオブジェと、空中に配されたキャプションが出会うとき、生きた絵本が立ち現れる。作品の位置と意味に気付いた時、なんてこった、と思いました。とてつもなく感動的。ある一点からのみ成立する舞台装置は場というものの力を存分に体現していたと思います。

車窓から数点。
No.233 ワンダフル赤ふん少年 赤いふんどしを締めた木彫の少年たち。川の記憶の担う作品。
No.231 ミルタウン・バスストップ 地元民のために企画されたバス停プロジェクト。かわいらしい外観。中がどうなっているのかを見てみたかったです。
No.230 イナゴハビタンボ 田の中に屹立する巨大な焼物イナゴの滑り台。エピソードが微笑ましい。これもぜひ実際に滑ってみたかった。残念。
No.229 人 自然に再び入る 休耕田に、植物と同化するかのように立つひとつの鋼鉄製人形。これもまたエピソードが微笑ましい。
No.33 マッドメン セメントと土でできた不規則な幾何学的構造物。薄闇に光を内包する姿が美しい。

(ふたたび途中休筆。また書き足します。)


Daititogeyakan