はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

フキコシ・ソロ・アクト・ライブ「『タイトル未定』-この公演のタイトルはタイトル未定です-」仙台公演。

2008-03-04 01:38:00 | アートなど
昨日3月3日は、仙台市民会館小ホールで上演されていた「フキコシ・ソロ・アクト・ライブ『タイトル未定』」19時公演を見て参りました。
俳優吹越満氏の独壇場ともいえる単独公演。ご本人曰く『不定期な定期公演』とのことですが、ここ数年は年に1回コンスタントに新作が上演されています。私は2年前に何となく見に行った17回公演「Mr.モーションピクチャー」のあまりの素晴らしさに衝撃を受け、それ以来毎回楽しみに足を運ぶようになりました。
前回の「XVIII」に続く今回。その公演タイトルはなんと「タイトル未定」。
しかも『この公演のタイトルはタイトル未定です』と副題のつく念の入れよう。
いったいどんな舞台になるかと思っていたところ、タイトルをふまえつつ、さらにその予想をはるかに上回る内容でございました。
場内感動と爆笑の嵐。毎度ながら少々の下ネタも含まれますが、文句なしで素晴らしい舞台でした。
詳細は後述しますが、見ていて今回ふと気付いたことを少々。

見ていていつも思うのが、このフキコシ・ソロ・アクト・ライブは、もはやインスタレーションアートなのではないかということです。
殊に毎回趣向を変えて繰り出してくるオープニングの舞台装置は完全に光のインスタレーションとして成立していると思います。
プロジェクションやキャプチャ、レイヤースクリーン、CG、スライドショー、映像との同期、などなど、多くのメディア映像技術を取り入れつつ、しかし、あくまで身体表現や日常目線にこだわっていることを考えると、吹越満氏は映像と身体表現との接点を模索している表現者なのではないかという印象を受けました。

老若男女問わず楽しめる舞台です。笑い嗜好の方、芝居好きの方、パントマイム好きの方、くだらないモノ好きの方、メディアアート好きの方、マジック好きの方には特におすすめです。
コンドルズ、ラーメンズ、水と油、piper、後藤ひろひと、これらの名前にひとつでもピンときた方はぜひとも一度観ておくことをおすすめしたいです(笑)。
仙台の後は大阪(3/5)、名古屋(3/6)、札幌(3/17)、焼津(3/21)、広島(3/24)、松山(3/26)、福岡(3/28)と全国各地を回る模様ですので、お近くの方はぜひ。おすすめです。
なお、公演詳細はこちらのサイトhttp://www.stage-mura.jp/archives/category/stage/fukikoshi/でご確認を。

そういえば、会場では昨年の公演『XVIII』のDVDが販売されていました。
amazonで引いたらヒットしたので上げておきます。
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ついでに一昨年の『Mr.モーションピクチャー』も。
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=hazamanoiori-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000ICLNOW&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
映像に収録されていない内容もありますが、フキコシ・ソロ・アクト・ライブに興味のある方はぜひ。

以下、今回公演の短評メモ。完全なネタバレですので未見の方はご注意を。
とりあえず一覧。のちほど書き足します。

1 ケータイ注意~オープニング~タイトル決定
 薄布による2枚のレイヤースクリーンと鏡、前後二方向からの光源によるアナログなキャプション投影。まるでインスタレーション。
 客席側からの照明を鏡に反射した光がフロントスクリーンを照らし、そこだけ鏡の形そのままにスポットライトが当たっているような効果が得られる。その鏡にマーカーで文字を書くことで、文字部分だけが光を反射しなくなり、文字がそのまま影=キャプションとして写し出される。
 この舞台装置上で以下のシークエンスが展開する。

a. ケータイ切った?というメッセージを文末から逆に提示。加えて、遅刻者へ『すわった?』『プンプんよ!!』などと揶揄。
b. 鏡で反射した光の文字を舞台側から客席側へスクリーン照射→その文字をキャプチャした映像を前面から奥へと投影→元からあった文字とぴったり重ねて、鏡の文字と入れ替える、という操作を繰り返しながらタイトル等を示してゆく。
c. 『タイトル未定』という芝居を見に行った男が困る寸劇を展開→タイトルが必要なので決めます、と宣言。会場の2人に好きな食べ物を訊ね、そのうち一方をタイトルにする。仙台公演タイトルは「さかな」。考えてくれた人はホンゴウさん。(対抗案は「肉じゃが」)
d. 決定タイトルを鏡に手書きし、それをふたたびスクリーンへ投影。

2 無対象の世界
 『表現』することではじめて対象が存在する世界に暮らす家族をひとりで演じたコント。
 パントマイムのように身体や音声で物体を表現するとそれが『無対象』として具現化する世界に住む3人家族の、何気ない朝の風景を描く。
 『表現することでそう見える』のではなく、あくまで『目には見えないけれど表現した通りに対象がそこへ生じている』のが無対象の世界。ややこしくも可笑しくて面白い。
 そのややこしい世界で父母息子の3役を演じ分けつつ『無対象』を表現する吹越氏にはただただ脱帽。

3 物の状態に関する質問
 舞台上に不可解な状況が示され、その状況に至った経緯を解釈して寸劇で表現する課題が吹越氏に課せられるという趣向。
 不正解だとブザー音、正解するとチャイム音が鳴り響く。
 今回の課題は「テーブルの上にトレッキングシューズが片足分だけ倒れて置かれている」という状況。
 『あした天気になあれ』と飛ばした靴が乗ってしまった(不正解)
 崖につかまっている男の手を踏んでいる足に向かって『俺をここから落すつもりか!』(不正解)
 黙秘を続ける容疑者に証拠の靴を持ってきた刑事(不正解)
 ゴキブリたたき(不正解)
 火星着陸(不正解のブザー連呼)
 よっぱらいがお土産と間違って持ってきた(正解)
 
4 幕間(逃げる帽子とペットボトル)
 帽子をかぶってペットボトルのお茶を飲む、という動作の途中に一瞬照明が消えると、その間に帽子やペットボトルが想定外の位置へ移動している。その様子がまるで帽子やペットボトルに逃げられているように見える、というパフォーマンス。
 間に闇をはさむことで、連続していないことがらがあたかも連続しているように見える。コマ撮りアニメの原理をそのまま身体と照明を使って舞台上で再現した表現。シンプルながら秀逸。

5 仕草をデコレーションする装飾店

6 物の状態に関する質問 第2問

7 物の状態に関する質問 第3問

8 白鳥の湖 掃除の情景

9 不完全なタイトル

10 劇団名前

11 命をかけた芝居

12 エンディング

おまけ ボツネタコーナー