奥田英朗「空中ブランコ」:同僚から借りたもの。奇しくも借りた直後に直木賞受賞の報。
曰く言い難い問題を抱える患者たちが、傍若無人にして非常識な精神科医伊良部にかかわり「何か」をつかむ様子を綴った、抱腹絶倒の短編物語集。軽いタッチで一見奇想天外な出来事が描かれるが、その実、人間の深層にうごめく得体の知れない闇を鮮やかに炙り出す問題作(?)。
現代人の置かれた「ストレスの世紀」を読み解き憂えるも良し、人間の普遍的な弱さと可笑しみに微笑むも良し、ただひたすらバカ笑いするも良し。いろいろな楽しみ方ができそうな本。
京極夏彦の薔薇十字探偵ものとテイストが似ているかも知れない。榎木津好きにはおすすめ。
5つの短編のうち「義父のヅラ」がマイベスト。
「ちくま」9月号:定期購読。
ちくま新書創刊10周年記念特集記事あり。重松清×宮崎哲也 対談「新書は"教養"の底を支える」、著名人への「新書アンケート」。対談中の宮崎氏の発言で、新書が上の世代の知識人に蔑まれている風潮があったと知り驚いた。理系の新書に関しては新書アンケートの澤口氏の意見に賛成。引用出典を明確にしてくれればもっと利用機会も増えるはず。
なだいなだ[人生、とりあえず主義]72 「論理的訓練」 フランスバカロレア試験の例題にゲーデルの不完全性定理を連想した。自己言及命題とパラドックス。個人的にはパラドックスについてもっと語り合える楽しみが増えるよう、論理訓練の普及を切望。
岸本佐知子[ネにもつタイプ ]31 「裏五輪」 読みはじめて5行目でもう爆笑。最後の一行にニヤリ。すでに様式美。
斉藤環[家族の痕跡]13 「虚像としての『世間』と『家族』」 「負け犬」論の出現するような状況とひきこもりを増長させる社会の構造的類似性(すべての問題を「勝ち負け」という価値判断へすり替えてしまう構造)を指摘しているのには興味をそそられる。さらに両者の根底にあるのは「世間」ではないかとの提示に頷。超自我としての機能を日本の「世間」と西洋の「神」で対比させるほど両者に違いがあるのかと疑問を提示しているのにも頷。論展開がまだ序盤なのが残念。続きを待望。斉藤氏の議論はなかなか核心を突かないのがもどかしいが、実例をあげつつ一歩一歩積み上げてゆくような丁寧で誠実な論展開がたいへん好ましい。
気になる新刊本 「定本 畸人研究Z」畸人研究学会
曰く言い難い問題を抱える患者たちが、傍若無人にして非常識な精神科医伊良部にかかわり「何か」をつかむ様子を綴った、抱腹絶倒の短編物語集。軽いタッチで一見奇想天外な出来事が描かれるが、その実、人間の深層にうごめく得体の知れない闇を鮮やかに炙り出す問題作(?)。
現代人の置かれた「ストレスの世紀」を読み解き憂えるも良し、人間の普遍的な弱さと可笑しみに微笑むも良し、ただひたすらバカ笑いするも良し。いろいろな楽しみ方ができそうな本。
京極夏彦の薔薇十字探偵ものとテイストが似ているかも知れない。榎木津好きにはおすすめ。
5つの短編のうち「義父のヅラ」がマイベスト。
「ちくま」9月号:定期購読。
ちくま新書創刊10周年記念特集記事あり。重松清×宮崎哲也 対談「新書は"教養"の底を支える」、著名人への「新書アンケート」。対談中の宮崎氏の発言で、新書が上の世代の知識人に蔑まれている風潮があったと知り驚いた。理系の新書に関しては新書アンケートの澤口氏の意見に賛成。引用出典を明確にしてくれればもっと利用機会も増えるはず。
なだいなだ[人生、とりあえず主義]72 「論理的訓練」 フランスバカロレア試験の例題にゲーデルの不完全性定理を連想した。自己言及命題とパラドックス。個人的にはパラドックスについてもっと語り合える楽しみが増えるよう、論理訓練の普及を切望。
岸本佐知子[ネにもつタイプ ]31 「裏五輪」 読みはじめて5行目でもう爆笑。最後の一行にニヤリ。すでに様式美。
斉藤環[家族の痕跡]13 「虚像としての『世間』と『家族』」 「負け犬」論の出現するような状況とひきこもりを増長させる社会の構造的類似性(すべての問題を「勝ち負け」という価値判断へすり替えてしまう構造)を指摘しているのには興味をそそられる。さらに両者の根底にあるのは「世間」ではないかとの提示に頷。超自我としての機能を日本の「世間」と西洋の「神」で対比させるほど両者に違いがあるのかと疑問を提示しているのにも頷。論展開がまだ序盤なのが残念。続きを待望。斉藤氏の議論はなかなか核心を突かないのがもどかしいが、実例をあげつつ一歩一歩積み上げてゆくような丁寧で誠実な論展開がたいへん好ましい。
気になる新刊本 「定本 畸人研究Z」畸人研究学会