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Tcupサ終のため2022年春に移籍しました。岩手盛岡のことやサッカーなどスポーツのことを書きたいと思います。

パパがパパを殺した?

2008-11-15 00:06:56 | ザ・ハングタン
盛岡市は北上川と中津川によって城下の河北と繁華街の河南に分け隔てられた。
この世界で言うとショパンこと横田夏子の住むマンションなどは河南地区、盛岡ジャーナルや東北日報岩手総局、盛岡テレビのある内丸などは河北地区となる。

中津川の川べりで事件が起きた。佐藤という会社員が腹を刺されて死んだ。佐藤は腹を刺される前に男の携帯電話のストラップに手をかけた。

翌朝、佐藤の死体のそばに盛岡学園高等部2年生の秋元若葉が駆け寄ってくるのをマッキーが見ていた。
「おじさん、どうしてこんなことに」
若葉は泣いていた。そこにクラスメートの田村愛里が。
一方、この事件の犯人は不逞の若者だと言うことでかたがついたが、その若者はやっていないの一点張り。確かに携帯のストラップはこの若者、坂本弘樹のものだったが、ナイフが坂本のものだと言う証拠はなかった。

「若葉ちゃん、大好きだったのね。佐藤さんが」
若葉はショパンに叔父である佐藤慶明の話をした。現在の秋元家には養女として引き取られたと言うのだ。現在の父親は秋元勝、55歳。ショパンは前にスティングから彼の名前を聞いたことがある。
「秋元勝さんって、確か北貿易の秋元専務」
「パパを知ってるの?」
ショパンはうなづいた。そして佐藤の仇はきっと取ってやると約束した。

ショパンはその足でゴッド、つまり理事長の大谷正治にこの事件を売り込んだ。しかしゴッドはいまいち乗り気でない。
「すでに坂本と言う若者が逮捕されたんじゃないのか?」
「でも本人は否定していると警察は話しているそうです。それに…」
「それに?」
「佐藤慶明さんは元北貿易のトレーダーだったんです」
ショパンは佐藤慶明の履歴書を見せた。かつてはシルバーマンブラザーズ系列の商品取引会社でドバイやモスクワで働いていた。そんな人材を秋元が引っ張ったということらしい。
「つまり秋元専務があやしいのか、と言いたいのだな」
そこへマッキーがやってきた。ウイングこと高橋弥生、そして愛里も一緒だった。
「秋元専務が怪しい?そんな馬鹿なことが」
「これは事件よ。万が一と言うこともあるわね」
「そんな、若葉ちゃんがかわいそうよ」
しかしゴッドは愛里の必死の訴えも退けた。
「そんなことを言うのなら、ハングタンの出番はなさそうだな」
「えっ」
「まぁ勝手にやっても構いませんが、その場合の責任は…」
ゴッドの非情な通告もショパンは理解していた。どうせ命は神に捧げた身だ。



そして捜査開始。まずは北貿易の経営状況についてショパンがスティングこと原俊彦に話を聞く。
「北貿易ね、あすこは社長が近く勇退するらしいね。最近は次期社長の人事をめぐって取締役会のナンバー2の大木啓輔と言う人と…」
そしてスティングは秋元勝の写真を見せた。
「専務の秋元勝。いわゆる保守的な人間だな」
「で、それが今度の殺しと関係があるとしたら」
「大アリ。佐藤は大木派だったらしい。佐藤が死んで大木派も大変みたいだ」

スティングが懸念したとおり、北貿易では大木と部下の中川、村山が会議室で話をしていた。
「佐藤さんの訃報は聞き及んでいると思う。この際はっきり言わせてもらうが、あれは秋元専務が仕組んだものだと思う」
「証拠は」
中川が佐藤の履歴書などを大木に見せた。
「佐藤さんは秋元専務の娘の実の父親だからです」
「なるほど、専務が裏切り者を消すために仕組んだと」
そして中川は大木に耳打ち。大木は了解した。
「これで秋元専務と秘書の大竹を失脚させられる」

アローこと斉藤葵は就職活動と称して北貿易にやってきた。そして人事部はどこかと尋ねた。2階にある人事部の部長はさきほど大木に耳打ちした中川浩二、38歳。大木は人事部長から総務担当チーフにするという口約束で彼を腹心の部下にしたのだ。
「あの、中川さんは」
「わたしですが」
「わたし、盛岡学園の3年生の斉藤です」
そしてとりあえず面接を行なったが、その帰りにアローと遅れて到着したエースこと荒川まどか、ホワイトこと白澤美雪は中川に呼び止められた。
「よかったら話を聞いて欲しい」
そう言って中川は会議室へ。

一方、マッキーは現場近くで誰かいなかったと言うことで話を聞いていた。
「あの、昨日襲撃されたサラリーマンの事件をご存知の方はいませんか」
すると一人の老婆がマッキーのもとへ。実は昨夜、女の人が事件の現場近くを歩いていたと言う。
「OLさんかねぇ、スーツ着てて」
中津川沿いの河南エリアならスーツを着たOLが歩いてても不思議はない。しかしこの言葉は忘れてはならないと、OLの話をメモした。

中川の長話が終わったあと、生徒たちは近くのレストランでお食事。
「でも中川さんって悪い人じゃなさそうよね」
「うんうん」
そこへスティングとショパン、さらにマッキーもやってきた。
「どうだい、北貿易の雰囲気は」
「何だか社内で揉め事があるとは思えないみたい」
「でも中川って人、女に弱いみたい」
スティングはさっそくメモを取った。大木派の中川浩二に愛人関係があるとしたら誰か、生徒たちに尋ねたところ秘書の大竹靖子の名前が。社長秘書の大竹は実は秋元に金で雇われていた。
「もしも派閥間で恋愛とかが公になれば…」

夜、秋元は自宅で若葉を殴っていた。
「若葉!よくも」
「パパ…」
「中川君と村山君に言われたんだ、佐藤君のことで。お前が密告したのか」
「違う、パパの言うことなら何でも」
若葉は泣きじゃくった。その模様をスティングとショパンも見ていた。実はショパンは若葉に集音機を持たせていたのだ。だからこの喧嘩も筒抜けだ。
「これで双方の心理戦、いや、情報戦だ」

翌日、ウイングが昨日のアローたちに続き中川に会った。しかし中川はまたも会議室。そして大竹靖子と密会していたのだ。そこをウイングが見てしまったのだ。しかも素のドジっ子ぶりを発揮してしまい中川に気付かれた。
「誰だ、今見てたのは」
ウイングは逃げた。会社の出口にはスティングとマッキーが待機しており、二人で取り巻きを撃退した。
「中川さん、あなたは大木副社長に取り入るふりをして社長秘書で専務の愛人の大竹さんと密会ですか」
「何だと」
「どっちの味方か、はっきりさせましょうよ」
マッキーとウイングは用意したニトロボールを中川たちにぶつけた。ニトロボールは爆発し、中川たちは気絶した。
「それじゃ、ちゃんと最初から吐いてもらいましょうか」
スティングは中川を締め上げようとした。しかし中川は哀願する。
「や、やめろ。わたしはただ大竹がやったことが…」
「秘書の大竹靖子さんですね」
そしてハングタンたちはその場を立ち去った。中川はデスクに戻り一仕事、しかしそこへ秋元が…
「中川君、伊達産業の長谷川さんが来ているのだが誰か接待を」
「は、はい。村山君」
中川は村山を呼び出した。秋元は同じ部署の吉田に耳打ちをした。吉田は最初は渋ったものの、中川に同じ手段は使えないと言った。中川は吉田の不穏な態度に目を尖らせていた。
「専務、やはり…」

夕方、ハングタンは中津川の河川敷に網を張っていた。
「とにかく大竹靖子が、マッキーが聞いてたOLだとしたら必ずあのへん通るね」
現場近くにエースとホワイト、対岸にショパン、その他のメンバーは毘沙門橋で迎撃という陣形だ。しかし大竹はいっこうに現れない。そこへマッキーの携帯からスティングの連絡、秋元勝は一昨日の夜24時過ぎに帰ってきたが、かなり慌てていたと若葉が証言したのだ。さらに坂本が持っていたと言うストラップは実は特注品で、とあるエリートの人が娘にと注文を受けたというらしい。
「そのストラップって」
「そうさ、秋元若葉の携帯ストラップと一致した。この世に二つしかない特注品ということは…」
しかしスティングの背後に人影が。それに気付いたスティングは逃げたが、すぐに追いつかれてしまった。
「お前は誰だ」
「秋元専務のことを嗅ぎ回っているのか」
「佐藤慶明さん殺害の件で、若葉ちゃんから依頼されたんだ」
「うそつけ」
スティングは回天、もとい回転で男を鯖折り状態にさせた。男は吉田だった。
「誰と話していた」
「別に…」
「まぁいい」
「明日、本社前で会おう。それでは」

その頃、中川は大竹を連れて河川敷へ。そこへ一台の車が入ってきた。
「まさか、あの車が」
そして秋元は中の橋のたもとで吉田を待ったが、9時を過ぎても吉田は来ない。
「吉田さんはいつまでたっても来ませんよ、秋元さん」
秋元が後ろを振り向くと、ハングタンが堂々と整列していた。
「秋元さん、義理の娘さんが泣いてますよ」
「だ、誰なんだ」
「あたしたちはハングタン」
「エリート社員を刺殺して、のうのうと会社のトップに立とうと考える人でなしの心を処刑する、闇の死刑執行人よ」
「秋元勝、大竹靖子、それに中川浩二!」
マッキーに名指しされた中川は逃げようとした。
「畜生、スパイだったのか」
「中川!」
中川は泣きながら訴えた。
「専務、あんた悪い人だ。靖子に人殺しの手伝いまでさせて、裏切ったら佐藤の二の舞だとか脅しをかけて…」
しかし秋元は証拠がないだろうと一喝。すると明日、若葉を連れてくるとハングタンたちは言った。

翌朝、坂本が盛岡中央署から釈放された。秋元家では若葉が目を覚まし、帰らぬ父を心配していた。そこへ一通の手紙が届く。
「若葉ちゃんへ。朝9時に北貿易の本社ビルに来てね。お父さんを殺したお父さんが反省するそうです」
それを見た若葉は涙を浮かべていた。そこへマッキーがウイングと愛里を連れてやってきた。若葉は秋元に将来は大企業のセレブ妻になるんだと言われていたらしい。それを知ったマッキーは若葉にこう言った。
「若葉ちゃん、秋元は佐藤さんが海外転勤になると知って預かっていたの。でも17になっていっそ政略結婚でも、なんて考えを起こしたの」
「えっ?そんな…」
「じゃ、行きましょ」
「行こう、行こう」

北貿易本社ビルには秋元、大竹、中川、吉田が首輪をつけられていた。
「さぁ、秋元さん。娘の実の父親を殺したことについて白状したらどうですか?」
「知らないよ」
しかし大竹、中川、吉田は秋元の指示でやったと主張。秋元は何の証拠もなしに、と白を切るが、そこへ若葉が飛び込んできた。
「パパ、いいえ、秋元さんはわたしのパパを殺しました。遺留品のストラップは秋元さんの携帯についていたものです」
「…若葉、なんてことを言うんだ」
若葉の涙ながらの訴えに、秋元はついに観念せざるを得なかった。程なくパトカーがやってきて秋元たちを逮捕した。

数日後、秋元若葉は佐藤若葉と名乗るようになった。そしてアロー、ホワイト、ウイング、愛里と一緒にIGRの車内で雑談。
「今日からは佐藤になるの、よろしくね」
「頑張りましょっ」
「またぁ」

不正を始末する偽りのハングタン!?

2008-11-12 11:41:37 | ザ・ハングタン
絶対に許してはならない、偽りのハングタンだけは…絶対に

ある晩、盛岡学園の教諭栗山和正がある女子生徒の凶刃に倒れた。しかし盛岡学園に今中と言う生徒はいない。
「栗山和正、女子生徒への不義密通の罪で処刑する。ザ・ハングタン」
栗山の死体のそばにはこういう書置きがあった。

実は10日ほど前に盛岡学園の不良生徒と卒業生のカップルがスーパーセンターの駐車場で排気ガス自殺を図るという事件が発生。その後教諭や生徒への暴行が後を絶たなかったが、ついに犠牲者が出たとなると話は大事だ。しかも「ザ・ハングタン」と名乗る集団が存在しているのだから、マッキーもショパンも気が気でない。

マッキーとショパンは栗山の葬儀に参列した。葬儀が行なわれたのは北山の報恩寺、五百羅漢で有名な寺である。
「まったく、栗山先生を殺してなんかいないって言うのに」
「生徒が殺したと言う証言があるわ」
そこへスティングこと原俊彦がやってきた。何やら慌てたしぐさである。
「大変だ。おたくのクラスの生徒が逮捕された」
「えっ!?」
「どういうことよ」
「実は昨夜の栗山先生の事件の前に、ハングタンが通り魔事件をやったと言うんだ」
それを聞いたマッキーとショパンはすぐに盛岡中央警察署へ。
「すいません、ちょっと通りますよ」
「担任の牧村です。逮捕された生徒と言うのは…」
なんと逮捕されたのはウイングとアロー、そしてホワイトだった。
「美雪、それに高橋!?」
「葵ちゃんまでいる」
「何だ、やっぱりおたくの生徒たちみたいだな。ハングタンというのは」
刑事たちは根拠もなしにマッキーたちをハングタンだと断定したようだ。当然マッキーとショパンは浮き足立ったが、そこは別に知らないと白を切って見せた。
「知りませんよ」
「ハングタンって、どういう人たちなの」
刑事はハングタンの書置きについて説明する。3日前には通り魔事件で市の職員が犠牲になったが、その市の職員は競馬の金を着服して自分が馬券を買う金にしていたらしい。それからその前に襲撃された放送局のアナウンサーはフットサルの選手と交際していることが新聞で話題になっていた。さらに不正が噂される企業の重役も刺されて一時重体となった。
「でも殺人事件なんてね」
「ハングタンというのはね、人殺しは決してしないんですよ。それに」
「どうした」
「ハングタンという存在自体が知られる筈はないんです」

盛岡学園の理事長室、ゴッドこと大谷正治理事長はスティングとエースに話をした。
「牧村先生、横田君、それに斉藤、白澤、高橋。彼女たちが逮捕された。そこでだ、彼女たちを抹殺してもらいたい」
ゴッドのこの話にエースは黙り込んだ。スティングはそりゃ無茶だと訴えたが、ゴッドの決心は固かった。
「原君、ハングタンは人を殺めたりしないとか言うけれど、そんなことで何になる」
「はぁ」
「わたしが危惧しているのは、ハングタンの存在が公になった場合だ。そうなるとわたしの立場もある、わかるな」
「確かにゴッドの意見はもっともでしょう。でも…」
「そうだ。もし本当に彼女たちがやっていないというのなら、24時間以内に証を立て、真犯人をハンギングしてもらいたい」
「わかりました」
「牧村先生のためなら、クラスの垣根も越えてみせます」
こうして、24時間のタイムリミットの中でハングタンは偽者のハングタンをハンギングすることになった。

その頃、偽者のハングタンのアジトでは女の高笑いが聞こえた。
「ハングタンの正体は女子校生だって」
「あら、いやだ」
「でも、あの原俊彦と言う男は役に立ちますね」
「あらあら、お兄様」
お兄様と女性たちに呼ばれているのがリーダーの安田恭平だ。アジトは市内の菜園にある安田の興信所である。
「しかしまずは偽装自殺、それから原俊彦がスクープした記事をネタに通り魔を装いハングタンを名乗る。いい方法じゃないですか」
「そうよ、これであたしたちは勝ち組だわ。女神様よ」
「晃子、やったな」

15時、スティングは偽ハングタンのアジトにいた一人の女性に注目していた。
「あの女なんか、ハングタンやっていそうかな」
彼女は石倉伸子、28歳。普段は市内の銀行に勤めるOLだ。しかし持ち物がかなり高級だ。
「岩手のOLが買うレベルじゃない。こんなことできるのは金がたっぷりあるからだ」
そう言ってスティングは石倉を尾行。石倉は駅の中にあるデパートで今日すぐに着る服を買った。
「うわっ、高そうだな」

ちょうどその頃、本物のハングタンたちは盛岡中央署から釈放された。マッキーは生徒たちとこの状況について考えた。
「もしもこれが事実だったらどうする?」
「どうするも何も、あたしたち何もしてないのに」
「そうだよ」
「朝に捕まったときなんて、ただ単にハングタンなんて…と言ってただけなのに」
「それだけで逮捕されちゃ」
「バッキャロー!!」
ところが、そこでハングタンたちを盗撮していたストーカーがいた。安田である。そんな安田のもとに電話が。
「原俊彦は今日は休みか」
「はい、どうやらハングタンの事件にはノータッチのようで」
「そうか。これでハングタンが正義の味方だと誰もが思ってくれたら、と思っていたのだが…まさか逮捕とは」
「おっしゃる通り、しかしハングタンを祭り上げてどうしたいのでしょうか」
「そんなことは聞くな」

スティングは石倉の尾行を続けていたが、念のためショパンの携帯に連絡を入れてみた。
「あ、先生?今重要参考人を尾行中」
「重要参考人?」
スティングの説明では、市職員と会社重役の事件の際に石倉伸子は会っていると言う。それにこの石倉の恋人と言うのがトップ屋らしいのだ。
「昔いただろ、アッシー、ミツグって。そういう類らしいよ」
「男の人が実際に手を下した、というわけね」
「しかし盛岡学園の話になると厄介だ。多分彼女は関与していない、となるとその男が鍵になる」
「わかったわ」
マッキーは安田の視線が気になっていた。そしてマッキーと安田の目が合った瞬間、安田は大通りの方へ駆けていった。すぐに生徒たちが追跡したが、産業会館ビルの交差点で見失った。その後安田と石倉はアジトである国際探偵社に入った。

国際探偵社、つまり偽ハングタンのアジトでは石倉がスティングに目をつけられたことを安田に話していた。
「あの人、多分あんたにも気付いているはずよ」
「さぁ、それはどうですかね」
「でも、でも…」
「だったら原俊彦を消せばいいんじゃないですか?」
安田はそう言って小説本を読んでいた。そしてそこに二人の女性がやってくる。安田は二人の女性に一万円を手渡していた。
「今中由佳君、堀口恵理君、一万円だ」
「ありがとうございます」
しかし石倉は不服そうな顔。そりゃ無理もない、金でなんちゃって女子校生を演じた上で殺人なんて犯すのだから。
「こんなことして、よく平気ですね」
「お金がもらえて、しかも不平不満の分子を消すことが出来るんだから」
「みんなの敵はハングタンに処刑されるべきよ」
「その通り、世間は悪い人たちに不満をぶつけたくてうずうずしているのだ。その不満が鬱積して腐海と化したのが現代日本だ」
そう言って安田と電話した男がやってきた。
「これはゴッド」
ゴッドと名乗る男は安田にジュラルミンケースを手渡した。中には一億円が入っている。
「しかしけしからんな、盛岡学園の人間が捜査している」
「はぁ?」
「お前たちが利用している原俊彦、あいつがハングタンを操っている」
「わたしたちのほかにもハングマンごっこしている連中が」
「そうだ。だから原俊彦と盛岡学園の関係者を抹殺しろ」
石倉は了承した。
「わかりました、さっそく例の通りに」

ゴッドが出て来たところをスティングたちも目撃。
「あれ?どっかで見たことがあるな」
スティングは見覚えのあるゴッドの顔を思い出した。
「経済評論家の大井勝雄だ」
マッキーも父の勤める蔵の蔵元から話だけは聞いていた。かなり強欲な経済論者だったという。数年前まで信越経済大学の教授だった。
「そんなえらい学者やエリートが、社会悪撲滅を謳っては…」
「エリートさんは必要悪ってことね」
「おいおい、そんなこと言うなよ。安田だって好きで公務員辞めて探偵になったわけじゃないからな」
スティングは安田の素性も調べていた。安田は4年前に県庁を辞めていた。原因は女性関係だったと言うが、それは県議会議員の情婦にされた女を救うべくやったことだったと安田はスティングに話したことがある。
「エリートだって間違ってたら訴えようとするのさ。でもその県議会議員は国政進出の噂があったから…」
「もみ消されてしまった、というわけね」
「そうだ」

19時、まだ国際探偵社の近くで見張るスティングとエース。そこにショパンとアローがやってきた。アローはクロスボウのようなものを手に持っていた。
「葵ちゃん、それは?」
「名づけてアローガン、これで発信機を取り付けるのよ」
「発信機?」
そして国際探偵社の近くの電柱ではホワイトとウイングが見張っており、マッキーは反対側でオペラグラスを片手に、トランシーバーを肩口にという格好で待機。
「どう?」
「あっ、今出て来た」
ちょうど安田たちが出て来た。しかし表に車はない。いったいどこに車があると言うのだろうか?すると近くのタワーパーキングで安田は係員に話をした。
「例の奴」
「かしこまりました」
そして安田は少し小さめのサルーンカーに乗ろうとした。そのとき
「ちょっと待って下さい。あなたにはどうしてもお話しなければならないこどがあります」
「誰ですか」
スティングは安田にこう言った。
「忘れたんですか?僕ですよ。あの節は本当に申し訳ありませんでした」
「貴様…原俊彦か」
「はい」
そしてハングタンたちも登場。ショパンは偽ハングタンを一喝した。
「あんたたち、ハングタンと名乗っているわけね」
「それが何か」
「本物のハングタンはあたしたちよ」
「えっ?」
安田はサルーンカーに乗って逃げようとした。しかしすでにアローがアローガンでくっつけた発信機がついてしまっていた。
「安田は大丈夫だ。あとは君たちに任せる」
そして本物のハングタンは石倉たち本物のハングタンを撃退。スティングも安田を発信機を頼りに追跡した結果、盛岡学園近くのスーパーセンターの駐車場で身柄確保。
「ここは…一週間前に大坪って盛岡学園を退学した元生徒が一酸化炭素中毒で自殺したところだ」
スティングはさっそくショパンに連絡し、偽ハングタンたちを連れてくるようにした。そして偽ハングタンたちも安田の車に閉じ込められた。

翌朝、盛岡学園の理事長室。ショパンがゴッドに報告した。
「ご苦労さんでした。これで君たちへの処分はなしと言うことになります」
「ありがとうございます」
「しかし、世の中にはすべて偽りがあると言うことですよ。君たちもせいぜいそのへんのことをわきまえて欲しいですな」
「はい」

正午、スーパーセンターの駐車場では安田たちのハンギングショーが行なわれていた。
「一週間前にここで偽装自殺を仕組んだのは皆さんですか」
「違う、あいつらは自殺したんだ、だよな」
「こうやって死んだんですよ」
「やめて」
「あの子は学校の生徒に破廉恥なことを言わせるから、セクハラだって…それで退学させられたのよ」
「何だって?」
「あたしたちの秘密を知られた美樹と一緒に…」
「そうですか、大坪公一君と佐々木美樹さんの偽装自殺はあなたたちだったんですか」
しかし安田は白を切ってばかり。
「やめろ、嘘だ、嘘だ」
「じゃあ市職員殺しと盛岡学園教諭殺しは」
「盛岡学園の教諭殺しだけだったのよ、美樹のかわりにあたしたち利用して」
「なるほど、栗山先生はあなたが殺したんですね」
「でもそれは安田のお兄ちゃんが」
「な、何を言うのか!自分たちで裏切ろうとした仲間を殺めた者が、何を言うのかっ!」
そして石倉は安田の首を絞めた。
「安田さん、そうやって美樹も、栗山先生も殺したんですね」
「伸子、許してくれ。俺は正義のために色々とやってきた。しかしそれがどうだ」
「確かに僕も最初は県職員安田恭平とは書かなかった。石川尚登県議と書くつもりだった。しかしマスコミの悲しさ、報道管制で石川尚登の記事は没にされた」
「そうだよ。だからそんな世の中がいやになった女たちを集めて、俺は探偵気取りのリーダーさ。盛岡の正義の味方、世界の恋人だ」
「お前は正義の味方でも世界の恋人でもない、下劣な男だ」
「そうよ、バッキャロー!!」
そして幕が開き、安田と石倉はお互いを見合った。石倉は自分がしていることに恐怖さえ覚えた。そして野次馬たちは
「お前たちは悪人だぁ」
「よくも先生を」
「息子を返せ」
などと罵った。そこへパトカーがやってきて安田と偽ハングタンを逮捕した。


不来方旋風スティンガー(続き)

2008-11-11 17:31:46 | ザ・ハングタン
<<口上>>
銀河の星が輝く裏で 鬼の雄たけびこだまする
村から町へ泣く人の涙を背負ってハンギング
不来方旋風スティンガー 悪の現場にただいま参上!


スティングたちは中間報告と言うことで清水町にあるショパンとマッキーのマンションの1階の部屋に集まった。ここがハングタンとザ・新選組のアジトである。
スティング「まず、高橋クリニックとバイエラン製薬東北支社の関係について」
ショパン「院長の高橋幸三は実はバイエラン製薬からリベート、つまり見返りを受ける形でモニターになろうと考えていたそうです」
マッキー「それを受けて承認したのが松岡さんね」
バトラー「バイエラン製薬の日本法人の東北支社をこの盛岡に建てたと言うだけでも勇気がいるのに、それでよく地元の医師に取り込めたなぁ」
ショパン「松岡典明、40歳。バイエラン製薬のドイツ本社でも働いていたエリートです。そして現在厚生労働省への便宜を図る部署に在籍しています」
マッキー「じゃあ高橋クリニックのような開業医の1軒や2軒なんて」
スティング「そうだな。だから厚生労働省の村上と言うのが橋渡し役だろうね。ただ、彼については厚生労働省の東北厚生局の官僚であること以外何一つ不明なんだが…」
マッキー「何か?」
ショパン「その村上さんが明日にも盛岡に来るかもしれないのよ」
マッキー「でもこの3人と例の事件は結びつきそうに…」
スティング「いや、待てよ。高橋と松岡が会っていたときに誰か見たような気がする…あれが多分リーダーかな」
バトラー「違うな。確か松岡が病室で挨拶していた女性、渡辺って言うんだが」
マッキー「そうよ、あたしも見たわ。渡辺さんの息子さんが何か言ってたのよ。バイエランの治験がどうとかって」
スティング「なるほど。これでわかったぞ」
ショパン「つまりこうなんです、法人設立にあたって治験に協力する開業医を全国から公募する」
スティング「そして協力した病院に厚生労働省認可のバイエラン製薬の薬を売り込み、治験の結果を参考に販路拡大を狙う」
マッキー「よくある話だけど、バイエランって世界最大級のメーカーじゃん。そんなことまでしなくても…」
スティングはくしゃみしながらも説明を続けた。
スティング「日本の製薬会社と行政はつながっている。だから既得権益のために新規の、例えば後発の会社とか、外資系とかには冷たいんだ」
ショパン「そうだったの」
マッキーとバトラーは腹を立てた。
バトラー「俺たちがやるときが来たようだな」
マッキー「やりますか?」
スティング「やろうじゃないか!」
マッキー「イェーイ!」
スティング「出陣だ!!」
ショパン・マッキー「イェイ、イェーイ!!」

高橋クリニックの閉院時間、あの3人組のひとりがクリニックにやってきた。
「予定通りです」
そう言ってリーダーらしき人に連絡。
「了解。菊池はそのまま院長を見張っててくれ」
「わかりました」
「渡辺は村上さんのエスコートだ」

菜園にあるとあるビルの一室。松岡はリーダーらしき人と取引をしていた。
「松岡さん、おめでとうございます」
「ああ、中村君。君を正社員に採用するという約束は忘れちゃいないよ。ただ、あれはちょっとやりすぎたかもな」
中村は松岡に千葉を殺したのではないかと嫌疑をかけられていた。だが今は正社員になれることが第一だ。
「高橋院長と村上さんはアネックス盛岡ホテルに先乗りする手筈だったと思いますが」
「はい」
そして松岡も中村をお供にアネックス盛岡ホテルへ。

一方のスティングたちは…高橋院長の話からアネックスホテルのことを知り、バトラーとマッキー、それにウイングが院長室の掃除と称して盗聴器を回収。さらに高橋と中村の仲間の菊池を倒した。バトラーは高橋と菊池を締め上げた。
「菊池と渡辺…リーダーはもうひとりの男ね」
「すでにアネックスホテルに村上と松岡は来ているのか」
「松岡さんはわたしと村上さんのあとでやってくる。あの不良のようなサラリーマンと一緒に」
「何だって?じゃあそいつがリーダー」
「そうだよ。中村雄大って人なんだ。あれが俺とナベに院長に反対する奴を始末しろって」
高橋と菊池の声はしっかりマッキーのピアスの盗聴器に録音されていた。

その頃スティングはアネックスホテルにいた。ロビーでコーヒーを飲みながら、カウンターバーにいるショパンを気にしていた。
「松岡さんはいませんね。多分リーダーと思しき人と一緒なんでしょう」
さらにスティングは話を続ける。
「村上浩二、34歳。厚労省東北厚生局の医薬担当官です」
村上の横にはさっき中村の言っていた渡辺がいた。
「院長も松岡さんも遅いですね」
村上と渡辺は高橋と菊池がつかまったことを知らなかった。そこでスティングはパーサーのふりをして二人に近づいた。
「ええと、村上浩二様と渡辺達幸様で」
「はい」
「高橋幸三様からの伝言を預かっております」
しかし高橋が急に来られなくなったというのは怪しい。渡辺はスティングに詰問するが、スティングは渡辺の顔を覚えていたのでこう言った。
「薬剤師殺害、ならびに看護師強姦未遂の罪がなくならないとは言わせませんよ」
ちょうどそこに松岡と中村がやってきた。
「これは松岡様」
「どうぞこちらへ」
スティングは地下にあるカウンターバーに案内した。そこではバニーガールに扮したショパンが村上と松岡に酒を飲ませた。さらに中村には誘惑責め…
「東北支社の正社員なんですね。おめでとうございます」
「でも大変だよな、外資で働くってのも」
「そうですか?」
「あんただけに言うけど、外資派遣から正社員にしてくれるって言ったのは松岡さんと村上さんなんだよ」
それを知ったショパンは思わず口をつぐんだ。
「そうそう、それで高橋クリニックにちょうどいいカモがいたんだ。あいつのおふくろさ」
そう言って渡辺を指差した。
「ナベのおふくろは長の患いでね。だからなんとかしてやろうと思ったわけ」
「ふーん」

そして飲み終えた一行はその足でホテルを後にした。しかしそこにバトラーとマッキーがいた。スティングとショパン、ウイングも二人の背後からやってきた。
「みなさん、薬にも毒にもならないことしてますね」
「だ、誰だ」
<<口上>>
というわけで、不来方旋風スティンガーは病院の薬の取引に絡む不正と、それがもとで起きた殺人その他の事件の犯人をとっちめることに成功した。

「さて、みなさんには今から粉薬をこれで飲んでもらいます」
スティングはカップ酒で粉薬を飲ませようとしたのだ。
「強制ではありませんが、あまり飲まないようですと…自動的にお酒が口の中に入ってしまいますよ」
「すでに証拠は挙がっているのです、いい加減白状したらどうですか?」
そして今までの高橋や中村の証言が盛岡市内のあらゆるスピーカーから流されていった。
「みなさんの悪事はまるっと筒抜けですよ~」
「ふざけんな!!」
しかしとうとう中村たちは我慢できず、千葉の殺害と落合の強姦未遂の話を自白してしまった。
「助けてくれよ」
「はい、中村さん。どうぞ」
「千葉和雄を刺したのは渡辺だ。おふくろの治験の話を聞いて、反対するから…」
「本当ですか?」
「ああ、おふくろが助かるためならなんでもやるつもりだった。それだけで数万円がもらえるとあの人は言ったんだ。俺はそんな甘い言葉に吊られて…」
渡辺の自白を聞いた松岡は震えだした。
「ちょっと待て。確かに君のお母さんを治験候補者にさせたのはわたしだが」
「松岡さん!」
「院長!あんたは落合看護師を痛めつけるように命令したでしょ」
「知らないぞ」
しかし悪党たちの口には粉薬が入り、今また酒も口に入りそうなところだった。
「仕方ないな」
ということで、ショパンがまたバニーガールに変装する。
「ちょっと、お酒でお薬を飲んだら死んじゃうわよ」
そう言ってショパンはカップを取り上げた。
「ねぇ、あたしのことを忘れたの?」
ショパンは松岡と村上を誘惑した。そして…
「お・ね・が・いっ!!」
ここで松岡と村上は渡辺たちにショパンを襲うよう命じたが、その模様はマジックミラーで丸見えだった。そして、その模様を落合早苗もみていた。
「…そんな」
隣にいたウイングがささやく。
「明日から、また頑張ってくださいね」
ウイングがその場を去ったとき、ちょうどパトカーとすれ違った。悪人たちは全員逮捕され、新聞には「医薬品めぐり結託」「病院関係者の口封じ認める」という記事が躍っていた。

事件解決の翌朝、スティングは自分の書いたコラムを眺めていた。
「原君、病院でお薬もらってきたら」
「どうせ効果が変わらなければ、安いほうがいいじゃん。クシュン
スティングは相変わらず風邪ッぴきだった。
「しかしこの風邪はしつこいよな」
「もう、これ風邪じゃないかもしれないじゃない」
「確かにありえる。胃炎や食道炎から来る空咳もあるって言うし」
「それじゃ、病院に言ってきます」
しかし、そこでスティングは吐き気を催してしまった!!まぁ次回には治っているだろうけど。

不来方旋風スティンガー!?

2008-11-11 14:47:25 | ザ・ハングタン
これは僕の「ザ・ハングタン」のキャラクターを利用したパロディものです。

<<オープニング>>
ハングタンって知ってるかい!?盛岡で粋に暴れまくってるって言うぜ。
今も世の中荒れ放題、ぼやぼやしてるとあの子達にやられるぜ!!
どいつもこいつも、どいつもこいつも!

あ、そうそう。俺はスティング。ハングタンを影に日向に見守り続ける男さ。
いつもの地酒バーで俺を見かけたら、声をかけてやってくれ。


その日、スティングこと原俊彦は盛岡市内の病院から出てきたばかりだった。
「ヘクション、ちょっと今夜は早く寝よっと」
そこにピアノ教室を終えたばかりのショパンこと横田夏子がやってくる。
「まったく、こんな風邪引きさんがチームリーダーなんて…どうなってんのよ、この糞団体は!!」
「ちょっと待て、そんなこと一言も…」
「あ、原君。来てたのね」
「風邪引きさんだかなんだか知らないけど、」
ショパンはそう言ってのど飴をスティングに手渡した。
「ありがとう。で、何か事件ないの?」
「あるんだったら、あんたが事件を売り込みなさいよ。病院とかって、白いなんとか…」
ショパンは白い巨塔と言いたかったのだろう。それはさておき、スティングはショパンに猛省されて病院のネタがないか盛岡市内の盛り場で話を聞くことになった。

さて、スティングが出てきたのは盛岡市の上田にある岩手県立中央病院。その近くにあるある医院で事件は起こった。
「困ります、製薬会社の変更なんて急に言われても」
「世界トップクラスのバイエランが日本法人をつくるんだ、うちも協力することになった」
「ですがこの臨床試験に患者さんを利用するなんて…」
「まるでモルモットみたいじゃないですか」
高橋クリニックの院長と薬剤師、看護師が口論を起こした。世界トップクラスの医薬品メーカーであるバイエランの日本法人「バイエラン・ジャパン」が設立されるにあたって全国でモニターとなる病院を探していたのだ。しかし厚生労働省などがうるさくて大々的なことが出来なかった。そこで1県1病院規模でモニター病院を公募することにしたのだ。
「確かにバイエランという名前は信頼が増します。けど、それによる患者へのリスクは…」
「千葉君、心配するな」
院長の高橋幸三は薬剤師の千葉にバイエランのことを説明した。千葉は納得して高橋院長を信用したが、看護師は腑に落ちない表情だった。

「しかし、まったく医療行政もどうなってんだかね。医療費の高騰の元凶は行政に賂い出してる国内大手の薬屋も一枚噛んでるって言うのに…」
スティングは経済新聞を読んでこうぼやいていた。そこへショパンがマッキーこと牧村環を連れてやってきた。だが、マッキーも風邪気味だったのだ。
「お待たせ~♪」
「あ、原さんも風邪?」
「うん」
「そっか、それじゃ景気づけに一杯」
マッキーは酒で景気づけと行こうとしたが、それをスティングは自重する。
「お酒で風邪薬飲んだら死んじゃうよ」
ところが、ここでさきほどの高橋クリニックの看護師が三人の横を通り過ぎた。さらに彼女を付け狙う3人の男の姿もあった。
「おや?裏道なのに、こんなに大挙して何を…」
スティングは怪しい3人の男たちについていくことにした。
「あいつら・・・」
スティングは看護師に危機が迫っていると予感した。案の定、看護師はパーキングの陰で3人組に犯されそうになった。そこへスティングは石を投げつけたが、それに気付いた男がスティングに襲い掛かってきた。だが、3人組のところに別の男が飛び掛った。
「何だ、あいつは」
「バトラー!」
バトラーこと国分繁治、彼はスティングとともに「ザ・新選組」というユニットを結成していた。バトラーの姿にスティングも負けていられないと男に抱きついてタックルをお見舞いした。
「よかったな」
「それより彼女を」
そしてスティングは看護師を自宅まで送った。バトラーはショパンとマッキーに説明した。
「リーダーは助けた女の人を送ってきましたから」
「そうなんだ」
「あんたがやれよ、バッキャロー!!」
マッキーの言うとおりかも知れないが、とにかく今夜はここまでということで…

高橋クリニックでは高橋幸三が電話をしていた。
「しくじったと言うのか」
「申し訳ありません」
「ならば明日、例の場所に来てくれ」
「わかりました」
高橋の電話の相手はさっき看護師を襲った一人(バトラーに蹴飛ばされた若者)だった。

翌朝、バトラーはショパンとマッキーの住む清水町のマンションの一室にいた。
「おい、起きろ。目を覚ませ!!バッキャロー」
マッキーに起こされたバトラーはもう慌てていた。
「まだ5時だぞ、どうして起こすんだ」
「今から仕事。だからお姉ちゃんと一緒にご飯つくれ」
ちなみにお姉ちゃんというのはここではショパンのこと。
「よぉし、こうなったら戦闘メシにすっか」
ということでバトラーは戦闘糧食もどきのレトルト・フリーズドライ食品を使って朝ごはんをつくった。
「どう?味のほうは」
「うん、悪くないわ」
「そうだろう、日本の戦闘糧食は世界一」
「確かにね」
そんなこんなで歓談している朝に、スティングがやってきた。
「おはよう」
「あ、おはよ。風邪は大丈夫?」
「それより、あの看護師さんに色々と言われなかった?」
スティングは顔色が悪くなった。
「それより、今日は国分さんがいいもの食べさせてくれるって」
「またミリメシか…」

その頃、中央通のマンションにパトカーが。なんと薬剤師の千葉が腹を刺されて死んでいた。
「今朝、市内中央通一丁目のマンションの一室でこの部屋の住人の薬剤師千葉和雄さん35歳が腹部を刺されて死んでいるのが発見されました。千葉さんは市内にある高橋クリニックの薬剤師で…」
高橋クリニックの名前が出たのでスティングは思い出した。あの看護師も高橋クリニックに勤めていたのだ。これはあの看護師も千葉の二の舞になっていたかもしれない。
「これは事件になる。もし落合早苗が襲われたら大変だ」
「高橋クリニックに何かある」
ハンギングの行動開始である。

まずはショパンとスティングが高橋クリニックにジェネリックのセールスマンということで入ることにした。
「すいません、院長先生は…」
「あ、院長ですか。すぐお呼びしますので」
スティングは高橋と色々な話をする。世界経済から医療費高騰、老人医療、そして医療費問題の抜本的な解決策としてぜひうちの薬を使って欲しいと言う話まで。その隙にショパンは盗聴器を置いた。
「しかし大変ですね、看護師の落合さんまで酷い目に遭われて」
「…知らん」
スティングは高橋が千葉殺しに一枚噛んでいるとにらんだ。そしてクリニックを出た後でショパンに話を聞く。
「先生、やっぱし高橋院長はクロでしょ」
「…かも」
続いてバトラーとマッキーがマッキーの教え子のウイングこと高橋弥生を連れてやってきた。
「すいません、急患なんです」
そしてマッキーは重体のバトラーを連れて手術室へ。そこでバトラーは目を覚まし、高橋の声を聞いていた。
「松岡さん、昨日うちの有能な部下があわやというところで」
「まったくですよ、うちより安価な薬なんて使用してこっちの儲けがなくなったら大変でしょ?」
「これは厚生局の村上さんへ…」
ショパンの盗聴機の拾った声はマッキーの耳にも届いた。
「松岡さん?誰よ」
松岡が裏口から出るのを看護師と秘書が見送った。ウイングはそれを見届け、マッキーに連絡。
「先生、松岡さんの車にはByelanと書いてました。英語読みでバイラン…」
「なるほど、バイランね」

マッキーとショパンはIGRいわて銀河鉄道の盛岡駅のホームでスティングにウイングの話を報告。
「B-Y-E-L-A-N…バイエラン製薬の日本法人じゃないのか?確か日本法人の東北支社を盛岡につくる話があった」
「本当に?」
「ああ。しかしそこに厚生労働省も肩入れしたとなると…ただじゃいかないな」
そしてスティングはいわて沼宮内行きの電車で渋民の実家兼オフィスに帰った。

土曜ゴールデン劇場「音楽教師夏子・非情の調べ」

2008-11-08 07:39:51 | ザ・ハングタン
朝、肌寒くなった盛岡の街はもう落ち葉が道を埋め尽くしていた。ショパンこと横田夏子はマンションの秘密の部屋でピアノを弾いていた。
「すっかり朝は冷え込むようになったわね。あたしもちょっとあったかくしないと!」

横田夏子は音楽教師である。しかし、それは表の顔に過ぎない。彼女にはもうひとつの顔があるのだ。
彼女は盛岡学園理事長、大谷正治からの特命を受けてさまざまなトラブルを解決し、続発する凶悪な事件の真相を暴く「ザ・ハングタン」の一員なのだ。

ある日、盛岡学園の生徒・岩井智之の父、岩井勝彦が心中した。遺書には社会に疲れたと書かれてあったが、それが本人の筆跡かどうかは判明しなかった。
「父さん…」
智之は泣いていた。翌朝、智之は数人の生徒にぼろくそに言われていた。
「お前の親父はリストラされて死んだんだ」
「ヤーイ、お前も弱虫」
そんな言葉を耳にした智之はどうすることもできなかった。そこへ夏子が立ちはだかり、智之を野次る生徒たちを一喝。
「おい、てめぇ人の心を勝手に傷つけるんじゃねぇ!もうこれ以上言ったらこの子死んじゃうよ」
それを聞いた生徒たちは一目散に逃げ出した。
「大丈夫?」
「先生…ありがとう」
そう言って智之は去っていった。

昼休み、理事長室で夏子は大谷に岩井の父の不審な自殺の話をした。
「確かなことはわかりませんが、岩井智之君のお父さんは自殺していないと思います。多分…」
「偽装自殺、そしてリストラの核心は会社の重要機密か」
「岩井勝彦は確か滝沢の鵜飼だったな。念のため家庭訪問を頼むよ」
「はい」
こうして夏子は岩井勝彦の死の真相を暴くことになった。大谷は夏子の去った後にどこかへ電話した。
「わたしだ、よろしく頼む」
「わかりました」

岩井家は滝沢村の鵜飼、滝沢ニュータウンにあった。滝沢村は日本一の村として知られ、果物の栽培もさかんなところである。夏子は滝沢ニュータウンのバス停で降り、
「わざわざ学校からおいでくださって、ありがとうございます」
「実は岩井さんは自殺ではないと…」
夏子が岩井勝彦は自殺ではないと言うと、妻(=智之の母)のさちこは泣いてしまった。そこへ一人の初老の男がやってきた。
「来杉さん」
夏子はこの男に見覚えがあった。来杉章、盛岡学園の理事である。
「横田君、どうしてここに来たのかね」
「はい、理事長に呼ばれまして」
「来杉先生、ご焼香を」
さちこの案内で来杉は祭壇へ。夏子はすれ違いざまに岩井家を去った。

さて、来杉章は秘書兼運転手の桜井貴久とともに事務所へ。それを一人の若い男が見張っていた。彼こそ夏子の知人でさきほど大谷が電話した相手、スティングこと原俊彦である。
「あれが村議で盛岡学園理事の来杉章か…」
俊彦は来杉の資料を読んでいた。滝沢村内の地主らしく、その土地に商品価値が生まれたために大金持ちになったという。現在はキスギ開発という会社にケイワンという商品流通会社を設立。村長選挙にも出馬経験がある。
「村の名士というわけか。地主で運び屋」
来杉と桜井は事務所の2階へと消えた。そして俊彦も事務所の中へ。俊彦は来杉に取材と称して接触、地域経済のあり方について問うと言うタイトルで俊彦は来杉に話をした。
「とにかくミクロだマクロだ言っても、経済の本質と言うのはね…」
「失礼します」
「おっと、お客様だ。失礼するよ」
来杉はそう言って別の来客に対応した。この来客は福田直也と言う盛岡銀行の滝沢南支店長だった。福田は来杉の後援会の幹部が自殺したことに心を痛めていた。
「岩井さんがあんなことになって、お気の毒です」
「いや、別に」
来杉は平静を装ったが、俊彦は岩井勝彦の死の真相の鍵を握る男イコール来杉章とこの段階で考えていたようだ。だがここはビジネス優先で
「社長、地域経済の本質を教えてください」
「おお、そうだった。ちょうどいい先生がいるので、教えてあげましょう」
来杉は地域経済の本質は民力にありと解く人だった。民力とは金だけでなく心の力、情熱なのだと来杉は力説した。俊彦はそんな来杉に感銘を受けた。
「確かにそうですね。わたしもスポーツライターとかやっていますけど、確かに民力は大切だと思います」
「ありがとう」
そう言って俊彦は事務所をあとにした。


夏子は学園に戻り、音楽室で一人ピアノを弾いていた。
「岩井君、かわいそう」
夏子は朝の岩井智之の件が胸から離れなかった。
「せんせ、どうしたの」
音楽室に入っていったのは高橋弥生、夏子のクラスの生徒だ。
「弥生ちゃん、どうしてここに」
「ちょっと放課後にこんなことしてるったら、せんせしかいないじゃないの」
「こらっ!」
夏子は弥生の頭を叩いた。

夜、盛岡市内の公園から一人のOLが出てきた。そこへ一台の車が走り、そのOLをはねてしまった。そしてOLのバッグから男が何かを取り出した。
「あのことがバレてみろ、すべてがフイになるぞ」
「わかりました」
そして男はバッグのピンを左手で閉め、その左手でゴミ箱にホールインワン。

翌朝、夏子はテレビのニュースでひき逃げ事件を知った。
「亡くなったのは市内の会社に勤務している上村美幸さん、23歳で…」
「ひゃ~、ひき逃げ事件かぁ。おちおち歩くのもめんどくさいわよ」
そこへ部屋を間借りしている同僚の牧村環が。
「あたしの車、今日はお姉ちゃんが運転だからね」
「わかったわよ」
そこへ電話が鳴った。なんと電話の相手は俊彦。上村美幸の父親と話をしたところ、どうやら美幸は事件の少し前に遅くなるからと連絡があったらしい。
「ところで上村ってもしかして」
「住所は滝沢村の狐洞上山…役場の裏山だな」
「えっ?滝沢村」
また滝沢村だ。俊彦は滝沢村で何か起きていないか調べるので、あと何かあったらと夏子に言ったが、夏子は上村美幸を知っているようだった。
「それで上村がどうしたって?」
「上村美幸の弟、2年にいるのよ」
「ええっ」
「上村賢一君と言って結構いい子なの」

その上村賢一は姉の死に泣いていたが、授業中はそれを隠すのに精一杯。
「やっぱりショックみたいね」
夏子には何も出来なかった。ただひとつできることは姉を殺したひき逃げ犯人が逮捕されることを祈るだけ。
一方、上村家に電話が入った。来杉章の後援会からということで上村次郎、つまり美幸と賢一の父にお悔やみの電話だった。
「このたびは、娘さんのことでお悔やみ申し上げます」
しかし次郎はふてくされた顔で電話を切った。

俊彦は盛岡ジャーナルの関本編集長と会っていた。
「来杉さんの話は参考になりました」
「そうか、ケイワントランスはうちも広告出しているから」
「では、よろしく」
そして俊彦が去ろうとしたとき、関本は話を持ちかける。
「実は盛岡銀行の福田さんと話をすることになっている。日時は3日後の夜7時、大通りのバーで」
「わかりました」
このとき俊彦は二つ返事で了承したが、これが思わぬ方向に進むとは誰も予想しなかった。俊彦はさっそく夏子に連絡した。
「ちょっと気になる人がいるの」
「どういうこと?」
「最初の事件の岩井さんち、あそこに来てた人が怪しいの」
「先生はそっち頼む」
「わかったわ」

そして夏子は上村美幸が盛岡銀行で働いていたことを知り、そこで深田と言う営業二課の課長に会った。
「深田です、どうぞよろしく」
「深田課長は主にどういうお仕事を」
「地元企業の貸し借りですね」
「それじゃ、かなり大変ではないんでしょうか」
深田は夏子に何か指摘されるんじゃないか、と冷や汗をかいていた。
「地元でも有名な企業とかとお付き合いがあるんじゃないでしょうか?」
「そ、そりゃもう。今なんか滝沢村の来杉さんとことか…」
「そうですか」

夏子はその足で来杉の事務所をたずねることに。夏子は大谷理事長からの紹介と言うことで秘書になることにした。
「不束者ですが、どうぞよろしく」
「横田君、君のようなきれいな秘書が欲しかったんだ。さぁ」
ということで、さっそく仕事に取り掛かった。と同時にピアスの盗聴器もスイッチオン。
「さっそくだが、盛岡銀行との取引の書類を保管金庫に収めてくれ」
「わかりました」
そう言って書類を入れたが、それは実は桜井ともう一人の男が上村美幸のバッグから奪った書類だったのだ。
「ん?少し変だぞ」
夏子は違和感を覚えたが、来杉の命令だから仕方なく金庫へ入れた。
「書類の収納は完了しました」
「おお、そうかい」
来杉と桜井はそれから二階のベランダで岩手山を眺めていた。

翌日、夏子は金庫からその書類をすりかえた。
「これでいい?」
それから桜井の運転する車で盛岡市内へ。目的地は何と紺屋町の盛岡銀行本店だ。出迎えた行員はなんと深田だった。
「これは桜井さん、それにその女性は?」
「あっ」
「まさか、横田さん」
「深田さん」
そう言って深田は専務に会ってくるからと去っていった。それはともかく、夏子と桜井は専務の藤原秀治から話を聞いた。そしてそこへまた深田が。
「深田君、二人にお茶を」
「はい」
「でも、ここでは粗相のないように」
夏子は藤原専務、深田、桜井にお茶を出した。
「ところで話と言うのは?」
「実はうちへの特別融資の件…」
「わかっています。そのことで滝沢南支店にも連絡を」
その話を夏子も立ち聞きしていた。
「桜井、よかったな。これで先生も一安心だ。副頭取に頼み込んだ甲斐があったよ」
「タカはそういうところはうまいからな」
そう言って深田と桜井は喜んでいた。
「副頭取?どういうことよ」

事務所に戻った来杉たち、ちょうどここに福田がやってきた。
「先生!」
「支店長、ちょうどよかったですな」
そして来杉と福田はしばし歓談、その中で金の受け渡しが行なわれていた。

「で、何かわかったかい」
「ええ」
そして俊彦のノートパソコンに夏子が拾った音声をダウンロード、それを二人で聞いていた。
「来杉さん、県議選頑張ってくださいよ」
「わかってますよ」
俊彦はおかしいと思っていた。が、とっさにあることを思い出した。
「もしかして…」
俊彦は東北日報の記事を夏子に見せる。岩手郡選出の県議会議員が辞職したために補欠選挙が行なわれることになったのだ。
「地元の町長選挙出馬と、県庁不正に関与というわけだ」
「なるほどね」
「それで来杉が出馬することに?」
「そういうこと。県議選の資金稼ぎとか、スキャンダル隠しのために殺人を…」
「そういえば盛岡銀行の営業二課の深田さん、福田支店長と運転手の桜井さんと仲がいいらしいの。昔同じ職場だったからって」
「何?福田支店長」
俊彦は夏子に関本との約束を話す。
「実は、明日福田に会うことになった。ついては先生にも手伝ってもらいたい」
「本当に?」
「午後7時、大通りのバーということで」

夏子は俊彦の段取り通りに大通りのバーでピアノを弾いていた。そこへ福田がやってくる。関本と俊彦も一緒だ。
「関本さん、うちが大広告出すってことを知って…」
「いや、彼が言ってきたもんですからね」
関本は俊彦を褒めた。
「でも福田さんって昔は一高のエースだったんでしょ?」
「そうだ」
「確か桜井も青森の…そうだ、板垣高校のサウスポーってことで当時は話題になったんだっけ。野球部ではエースだったけど、廃部したと同時に会社辞めちゃって」
福田と関本が談笑している中、俊彦は福田の行動に目をやった。福田は携帯電話の着信があったことを知り、どこかへ電話する。
「あ、来杉先生。どうもです」
それを聞いて俊彦は夏子のほうへ。
「そうか…読めた」
夏子はノクターンを弾いていた。それが終わってから俊彦は夏子に福田のさきほどの行動を耳打ちする。
「来杉って、うちの学園の理事よ」
「そして滝沢村議会議員。岩井も上村も後援会の幹部だったんだよ」
「でも選挙関連でないとしたら?」
「あってもなくても、スキャンダルは問題だろ」
「もし桜井のひき逃げの一件からすべて公になれば…」
そして夏子は自分が襲われそうになった場面を思い出した。確かにあそこに書かれていたナンバープレートの数字は、来杉が所有し桜井が運転する車のナンバーだった。
「桜井は左利きだ。多分ひき逃げの車も、先生襲ったのも来杉の車だろう」
「…そんなぁ」
そして俊彦は夏子に勝負は明日だと告げた。つまり明日、いわて花巻空港から大阪経由で海外に行く前に来杉と福田をとっちめるわけだ。
「時間は午前10時だ」
「了解」

そして来杉がフランスに向けて旅立つ日だ。この日にまさか夏子と俊彦が空港で罠を張っているとは思っていなかった。
「来杉さん」
「横田君、これはどういうことだ」
夏子が秘書の姿でやってきた。そして事務所から掠め取った書類を見せ付けた。
「この書類はすでに空港中にばら撒かれています」
実は俊彦の指示でアテンダントに扮した教え子たちが俊彦の書いた告発記事と証拠の書類のコピーを空港のコンコースにばら撒いたのだった。
「観念してください」
「し、しかし」
「あの書類だけで不十分でしたら…」
そして夏子は服を脱ごうとしたが、ここで福田が思わずしゃべってしまう。
「盛岡銀行の使い込みはうちの副頭取が首謀者なんだ、俺はただ深田の言いなりになっただけだ」
「なるほど、深田高之さん」
「どうしてそれが」
福田はうなだれた。
「深田は俺をクビにするとか言ってきた。自分たちのやってきたことを俺に着せて、自分たちはのうのうとエリート面するつもりなんだ」
「まぁ」
「そのことを知った上村美幸を殺そうと決意したのは、この桜井なんだ。桜井も元々は…」
「知ってるわよ。そして来杉さん、あなたが選挙のためにお金が欲しいこともね」
「横田君、君が何しているかわかっているのかね。理事のわたしを失脚させようとして、事件をでっちあげたんだ」
「でっちあげ?はぁ!?」
そしてビラまきを終えた環と教え子たちもやってくる。
「バッキャロー!!」
夏子がそう言って福田に攻撃。深田と桜井も弥生に抑えられた。

夏子はその足で藤原に会うことに。
「藤原さん、ちょっとお話があります」
「君は…」
「横田です」
「どうしてわたしに話などと」
「ただいまから、中津川の河川敷でショーをお見せします。ぜひお越しください」
そして藤原は中津川の河川敷にやってきた。そこには岩井智之も上村賢一もいた。
「それでは、ただいまから音楽を流します」
夏子はピアノに合わせて歌を歌った。相変わらず音痴なのだが、それが悪人たちにはかえって効いたみたいだ。
「助けてくれ、社長の選挙資金捻出のために仕方なくやったことなんだよ」
「金出し渋った岩井と上村を脅迫したのは福田支店長だ」
「それもこれもあんたの差し金だ」
「しかし一番悪いのは深田君、君だろ」
「そりゃ副頭取の指図だから仕方なかったんだよ」
それを聞いた藤原は顔面蒼白、中の橋から逃げようとした。一方河川敷では野次馬が罵倒しまくり。智之も賢一も激しく野次った。
「父さんの仇」
「姉ちゃんを奪いやがって!」
それを見た夏子は笑顔を浮かべながら中の橋通り(つまり河南)の方へ歩いていった。

「でも大変だったわ。今回の事件は」
夏子は俊彦のいきつけの地酒バーで俊彦、環と飲んでいた。
「あんな民衆の味方を謳う人が、後援会に金たかって、挙句人殺し。残念です」
「本当よ」
「学園関係者なら盛岡学園の生徒の身内をターゲットに出来る。それを悪用したんだから、本当に許せませんね」
俊彦は怒っていた。

数日後、滝沢の墓地で岩井智之が父の、上村賢一は姉の墓参りをしていた。そこへ夏子と弥生がやってくる。
「岩井君、上村君、遊びましょ」
「うん」
夏子は弥生を見送った。そして岩井さちこと一緒に岩井家の墓に手を合わせていた。夏子はそのあと弥生、智之、賢一と一緒に雪がはっきり見える岩手山を見上げた。