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Tcupサ終のため2022年春に移籍しました。岩手盛岡のことやサッカーなどスポーツのことを書きたいと思います。

祝!ハングタン誕生(その1)

2008-10-14 04:45:47 | ザ・ハングタン
さんざん書きまくってる「ザ・ハングタン」ですが、そもそもハングタンはどうやって結成されたのか?それをはっきりさせていただきます。

岩手県の県庁所在地、盛岡市。人口およそ30万で北東北の中核都市だ。盛岡学園はその盛岡市の中心地から北に位置するみたけにある。幼稚園から短期大学まで完備し、エリート育成にも力を注ぐ学園である。

高等部着任二年目の牧村環。新潟県出身の24歳だ。あだ名は「マッキー」。特技はバスケットボール、高校時代は新潟女子商でインターハイにも出た。現在は社会科全般を教えている。
マッキーが住んでいるのは盛岡市の河南地区と呼ばれるところ。一概に河南と言っても肴町、鉈屋町、清水町とある。マッキーは先輩講師の横田夏子とともに清水町のマンションに住んでいる。

横田夏子、30歳。新潟県出身、マッキーと同郷だ。盛岡学園に赴任してきて9年目のピアノ講師であるが、彼女には裏の顔がある。
盛岡学園の理事長を務める大谷正治が郷里岩手のためにと結成した「ザ・新選組」の一員として一時期暗躍していたのだ。そのときのコードネームはショパン。

夏子「今日から二年目スタートだね」
環「うん」
しかしマッキーは昨夜酒を飲んだとかでもう大変。ショパンは気のゆるみだとか、原君も悪いとお説教。
夏子「まったく、何やってんのよ」
環「酒癖は牧村家の伝統なの」
マッキーの実家の牧村家は新潟で有名な越後杜氏の家である。だから酒(とくに和酒)にはうるさいのだ。
夏子「もう、電車に乗り遅れるわよ」


この日、盛岡学園高等部に転校生がやってきた。さっそく体育館でバスケットボールをする彼女、それを見ていたのは3年B組の白澤美雪だった。
美雪「あれ?こんな時間からどうしたの」
転校生「牧村さんは?」
美雪「先生はまだ来てないわよ」
転校生「そうなんだ。牧村環がWリーグの道を捨ててまで学校の先生になるなんて言ったのを雑誌で思い出したから…」
美雪「先生、知ってるんですか?」
転校生「当たり前じゃない。このために博多からやってきたんだから」
美雪は驚いた。博多から転校生が来るなんて知らなかったからだ。そこへ環がやってきた。
環「高橋弥生!」
美雪はまた仰天した。高橋弥生と言えば中学時代ジュニア日本代表キャプテンだった子である。
美雪「あの高橋弥生が、どうして」
環「実は彼女、あたしを慕ってやってきたみたいなの」
美雪「先生って女神様みたい」
環は美雪に褒められてうれしかった。

始業式の後、環は理事長室へ。
環「高橋弥生が何で福岡からこっちに来たのか、説明してください」
大谷は週刊誌の記事を環に見せた。そこには福岡の名門女子校でいじめが多発しているというのだ。そこで高橋弥生も被害に遭っていた。
環「もう、バッキャローだよ」
大谷「その通り、だからこそ将来ある彼女をここに転校させることにした」
環「表向きはあたしを利用して…」
大谷「このことは彼女と君だけにしか伝えていない。もちろん一部の心無い生徒への漏洩を避けるためだ」
環「わかりました」
大谷「それに昨今また若者たちの破壊的行動が目立つようになった。盛岡学園はさにあらずと言ったところだが油断は禁物だ」
環「ということは、やはり」
大谷「そうだ。君と横田君が今年度のハングタンを選抜し、盛岡学園と盛岡、岩手の平和を守って欲しいんだ」
環「(一瞬間をおいて)わかりました」
そして大谷は環を一旦部屋から追い出してあるところへ電話をかけた。
大谷「わたしだ。実は頼みがあるんだ」

環はさっそく弥生と美雪に交渉。
環「同じ部活だし、あたしについていくんだったらこんなにいい話はないわよ」
弥生「で、でも…」
弥生は福岡時代のいじめですっかり内向的になっていた。
弥生「そんなことしてていいんですか」
そのとき環は弥生のほほを叩いた。
環「バッキャロー!
  これは理事長も認めた立派な課外活動よ。いじめっ子もお仕置できるかもしれないし」
美雪「そうよ、こっちの人たちはみんな優しいわ。だから弥生ちゃんも…」
弥生「うん」
弥生は環のたってのお願いに逆らえなかった。

環と夏子は3年B組の担任となった。そしてそこで斉藤の名札を夏子が見つけた。
夏子「弓道部の斉藤さん、ですよね。後でお話があります」
葵「は、はい」
葵は美雪の後ろの席に座っていた。
斉藤葵。弓道部の副将でありクラス委員。現在は両親のもとを離れて都南にある叔父の斉藤勲のもとで居候。
白澤美雪。バスケ部の新人大会でのキャプテンだが、空手部や陸上部にも助っ人として参加した経緯がある。
葵「でも、いきなり転校生なんてね」
美雪「あたし驚いちゃった」
そして環から弥生が紹介される。弥生は暫定席として窓際に座ることに。
環「それじゃ席決めをします。葵ちゃん、あとはお願い」
そして葵の進行で席決めが行なわれた。葵は弥生と隣の席に座ることになった。美雪は葵の後ろの席に決定。
美雪「やった、思う存分いじられる」
葵「何か?」
美雪「…べ、別にあなたのこと言ってませんから」

午後の休み時間に環は校庭を見下ろしていた。
環「とりあえずメンバーはこれで…」
夏子「いや、もう一人ほしいわね」
環「いいんじゃないの?」
夏子「いいや、絶対にもう一人探しますから」
そこへ職員室からの連絡。来賓が見えているのですぐに来てくれというのだ。
環「まったく」
職員室にはなんと環と昨夜飲んだと言う原俊彦がいた。環は驚いた。
環「は、は、原さん」
夏子「原君、どうしたのよ」
俊彦はショルダーバッグから大谷と同じ事件の記事を夏子に見せた。
俊彦「先生、実は福岡の女学園でいじめのとばっちりを受けた女バスの子が岩手に転校してきたって噂を聞いた」
環「そのことね、それなら本人に直接聞いたほうがいいんじゃないの?」
俊彦「そうか、サンキュッ!」
そう言って俊彦はコーヒーを飲み干して職員室を出ようとした。しかし夏子が止めた。
夏子「できることなら、もうひとりハングタンが欲しいの」
俊彦「そうか…今年もやるんだね」
環「そ、だから、ね…」
環は俊彦に手を合わせてお願いした。俊彦はしぶしぶ承諾。校庭で待機する事にした。

放課後、夏子は屋上から校庭を見下ろしていた。俊彦の動きが気になったのだろう。
夏子「おや、女子のサッカー部じゃないの」
俊彦は無類のサッカーマニアで、自らサポータークラブやフットサルチームを設立するぐらいの熱狂ぶりだ。
俊彦「内田監督、今度の東北大会で常聖に勝てる見込みは…」
内田「さぁ、やってみないとわかりませんけど」
俊彦「注目選手は」
内田「そりゃ(選手を指差して)荒川だよ」
内田監督は荒川まどかを指差していた。俊彦はカメラを手にとってまどかを撮影した。
内田「これでいいかな」
俊彦「ありがとうございました」
俊彦と内田の会話を見届けた夏子はさっそく体育館へ。体育館では環がバスケ部の練習の最中だった。
環「今日からあの高橋弥生ちゃんが入りました。みんなも弥生ちゃんについてこられるようにしましょうね」
部員たちは気合が入りまくり。しかし岩手っ子たちは弥生についていけない。環は不満顔。
環「まったく、弥生があの子達に合わせてどうすんのよ。みんな弥生についていけないのかしら」
環はコーチ兼寮長の間宮由香にあとを任せることにした。そして間宮は弥生についていけないのなら、喰らいついてでもついてこいとアクションを起こさなきゃダメと言った。
間宮「弥生ちゃんは今日から寮生活です」
弥生「ありがとうございます」
そこに俊彦がやってきて、弥生の取材を行なった。弥生はこっちに来た理由を環を慕ってのことだと言ったが、間宮も高校時代はガードだったと知り驚いていた。
俊彦「確か富士学園だったかな」
弥生「東海の雄、富士学園の間宮…もしかして」
間宮は富士学園からシャトレーで活躍したバスケ選手だった。弥生はすごいと言ってただただ感心するばかり。
俊彦「今年はでっかく全国制覇ですか」
すると環がやってきて、当然全国制覇すると宣言した。それを聞いた弥生と美雪、それに2年生の田村愛里は気合を入れ直した。

さらに学園の近くの県営弓道場で葵と生徒会長の太田カナを見た俊彦は、葵に声をかける。
俊彦「葵ちゃんって、社長の親戚だよね。だったらハングタンに入らない?」
葵「その話ならすでに横田さんにしていますから」
俊彦「えっ?先生に」
カナ「なぁに、そのハングタンって」
俊彦「一言で言えば、いじめっ子に報復を与えたりする…処刑人だな」
カナ「やだぁ、そんなこと」
葵「カナちゃん!」
俊彦「とにかく、色よい返事を先生にお願いしますよ。僕も協力します」
俊彦は名刺を葵とカナに手渡してその場を去った。

茶室は陰謀の巣窟!?

2008-10-07 02:59:16 | ザ・ハングタン
岩手県内の茶道は伝統的に江戸武者小路千家が主流だと言われているが、高等学校の茶道に採用されているのは裏千家である(わたしの母校T校もそうだった)。
また、岩手の名物南部鉄器の花形である南部鉄瓶なども茶釜同様に茶道で扱うことがあるが、それは裏千家が考案した「立礼(りゅうれい)」という国際的スタイルや略式の盆手前に使われている。

さて、盛岡学園高等部の茶道部室。茶道部顧問の江越千尋は黙々と茶を点てていた。
「本日も、いただきます」
そこへ弓道部や空手部の女子がやってきた。アローこと斉藤葵とホワイトこと白澤美雪もそこにいた。
「千尋先生のお茶って愛情がこもっているわよね」
「そうそう、文化祭のときには行列作るってくらいだもん」
そして茶事のはじまり。江越は文化祭に備えて気合を入れていた。
「そういや去年の学園祭はひどかったもんね」
「あぁ、福島先輩が新田さんとやりあった話だっけ」
「だから今年は調和と癒しをテーマにするみたいよ」
「よかったぁ」
江越のもてなし方を学んだアローとホワイトは笑顔だった。

しかし江越がいない夜の茶室でとんでもないことが起きた。
「おい、今年の文化祭はステージイベントやんないってどういうことだ」
「それはわかってる。ただ学校としても去年のことがあるから…」
「俺たちには承服できないね」
「…」
文化祭のステージ自粛に反発した演劇部や軽音楽部の部員が学園祭担当の三浦利紀を問い詰めていた。
「それならこっちにも考えがあるんだ」
そして合唱部の上田加奈子が分厚い書類を三浦に見せ付けた。
「合唱部のカナッペは簿記と情報技術の主席なんだ、これくらい朝飯前だ」
三浦は紅潮し、そそくさと部屋をあとにした。
「待って。いつものように」
加奈子ともう一人の女子が香を焚き、室内の空気を入れ替えて部屋を出たのは12時を回ったときだった。

そして翌日、昨夜焚いた香の香りが漂う廊下で江越は立ち止まった。
「ああ、誰かがわたしの聖なる茶室を…」
それをマッキーこと牧村環が見ていた。
「誰がこんなお香を焚いたのかしら」
そこへ理事長のゴッド・大谷正治からの呼び出し。江越千尋の愛の込められた茶室を汚すものが学内にいるというのだ。
「動機は?」
「今年は例年のステージイベントを廃止して学園大運動会と文化祭の二本立てにする。それをねたんだクラブが何かしらやったに違いない」
「ということは?」
「おそらくはステージ自粛に反対する生徒たちか…」
「あるいは文化部内で茶道部の江越千尋に反目してた人」
「ところでステージ自粛となると、横田君も気の毒だろうな。横田君については何とかフォローしたいのだが、それは後の話にしよう」

そしてハングタン行動開始。アローとホワイトから江越の話を聞いたマッキーは、さっそく怪しい生徒や先生を調べた。その結果5人の容疑者が浮かんだ。
「まずは演劇部の佐々木浩之君。うちのクラスだからわかるけど、結構いじめられっ子だったのがこっちに入ってから人が変わったって」
ホワイトも浩之の写真に見入っていた。
「次にブラスバンドの指揮してる生徒会役員の川上元樹君。C組のクラス委員もしているわ。確か生徒会の決定に反対したのは彼と上田さんと…」
そこへ残りのメンバー(ウイングこと高橋弥生、エースこと荒川まどか)がやってきた。
「生徒会で反対したのは川上君と上田さんと山本君よ」
「そう、なんでも学園祭担当の三浦先生を訴えるなんて朝から大変な騒ぎで」
「逃げられなかったわよ」
「今度の生徒会役員改選にも影響が出るらしいからね」
念のため生徒会長の太田カナにも話を聞いた。すると三浦先生がオープンスクールにするのなら体育祭と日本文化祭の二本立てにしようと提案したと言うのだ。
「また今年も学園祭が荒れるのかしら?」

再び理事長室。ゴッドがショパンに話をしていた。
「もしかしたら、今年ステージ廃止を主張した三浦先生は学園の金を横領しているかもしれない。生徒たちがそんなことを風潮していますよ」
「許せないわよ、先生に罪を着せようなんて」
「実は三浦の提案は予算の合理化や生徒ひとりひとりの強化などを目的としたものだ。それ自体はいいのだが、それで浮いた予算が消えたと言うのだ」
「会計監査は」
「それが、先生のサラリーなどは監査の対象外なんだよ」
それを聞いてショパンはあきれた。そしてその書類を提出した加奈子に話を聞くことにした。
「横田君、これがおわったらもう一度話し合おう。講堂でピアノリサイタルをやる」
それを聞いたショパンは喜んだ。

昼休み、上田加奈子は同級生の山本邦人と弁当を食べていた。そこへショパンがやってきた。
「食べたい、食べたい。だから先生に三浦先生のこと教えて」
邦人がショパンの誘惑に負けてついしゃべってしまった。
「昨夜茶室で三浦先生の事件の証拠を見せたんだ。すると…」
その夜加奈子と邦人が書類をコンピューター室でまとめ、11時に茶道室に来るよう仕向けたらしい。しかし三浦は白を切ったまま茶室を去ったため、真相は闇の中だ。
「ということは、三浦先生は本当に?」
「間違いないわよ」
「三浦先生が文化祭の簡素化云々、生徒の体力向上言うのはわかるけどさ」

放課後、体育倉庫でバスケ部の撤収作業。
「いつもならしばらくは文化祭の関係で使えないですけど、今年は大運動会なので前々日までは使えます」
ウイングと後輩の菅原愛里がボールを磨いていた。
「あたしたちにとっては体育祭を大運動会とかするのは歓迎なんだけどね」
「でも当事者は笑えないでしょう」
ホワイトとカナも手伝いにやってきた。
「当然でしょ、バスケ部はこんな時間まで体育館使ってくれてるんだもの」
「さ、これでひと通り」
そしてホワイトは待っていたアローと一緒に1階に向かった。
「あたしも行く」
結局ウイングも行くことになった。行き先は今夜も茶道室、しかし今夜はどこの部員も来ていなかった。
「おかしいわね」
江越は黙々と茶を点てていた。
「先生、今日も来ました」
そして茶と料理をいただくハングタンたち。ちなみに弥生は寮生なので10時が門限、ということでまた朝にという約束をして茶を飲みきったところで帰った。
「明日の朝、か…」

その翌朝、朝7時に茶道室の戸を開けた江越は驚いた。なんと三浦が鉄瓶に頭をぶつけたのだ。
「三浦先生!」
幸い三浦は軽く打撲した程度だったが、念のため今日は病院へということになった。
「誰のせいかしら。まさかあの3人?」
「さぁ、昨夜は誰もいなかったようだけど」
「本当に?」
「あ、でも、千尋先生だけはいたわよ」
「そうよ」
すると警察は江越を傷害容疑で連行した。しかしハングタンたちは江越は犯人じゃないと思った。というのも江越が炭点前で準備するのは茶事の30分前、ハングタンたちが来ていたときにはもう1時間は経っていた。
「だとしたら変よ。お点前の後は水屋でおかたずけ、そして鍵を閉めたわけよね」
「鍵ってものがなくて、扉の仕掛があるみたいなのよ」
「それじゃ、それを知っている人が…」
そしてアローはエースと話し合っているうちに意外な事実を知る。
「確か上田加奈子は合唱のテノール部分担当だけど、茶道部も掛け持ちしてるらしいの。お母さんが茶の湯の先生で」
「そっか、上田吟緑って…お茶の宗匠なのね」
これで上田加奈子はクロとなった。しかし傷害事件の物証はない。そこでお見舞いに加奈子、川上元樹、山本邦人を行かせた。これもハングタンの作戦である。
「三浦先生の見舞いに行くって」
「あれは事故なんだから」
「でも加奈子、あそこでなんで止めたんだよ」
「だからかすり傷程度で済んだのよ。そうじゃなかったら…」
この会話はすでにホワイトとウイングによって盗聴されていた。
「…やっぱり」
三人は三浦の見舞いを済ませた。そこへショパンが看護師に扮したメンバーを引き連れてやってきた。
「すいません、上田加奈子様は…」
「はい、わたしです。何か」
「実は三浦先生の本当の病名を言ってほしいんです」
しかし加奈子は口をつぐみ、病院を抜け出そうとした。するとウイングが偶然居合わせた愛里とのペアで加奈子を捕縛した。
「やったぁ!」
「あとはハンギングだけ、だけどどうする?」
「茶道室ならではのハンギングよ」

いよいよハンギング開始。三人は茶道室の風炉の周りで縛られていた。
「さぁて、三浦先生をどうしていじめたのかしら?正直に答えないと、一酸化炭素中毒になりますよ」
「ちゃんとしゃべってね」
しかし三人は一言もしゃべろうとしない。だから茶室は一酸化炭素が充満してしまった。とうとう我慢できなくなった三人はあの夜の出来事をしゃべった。
「助けて!話すから」
「加奈子、何を言うんだ!」
「あのとき三浦先生は自白したわ」
「…そうだ、先公はステージ廃止するとか言ってあだこだ言ってたけど、証拠が出た以上は観念したみたいで」
「みんな三浦先生が悪いのよ、慰謝料とかギャンブルとか…」
「学校の金を使い込んでまで大義名分を掲げる悪徳教師は許せない」
「でも、でも、人を殺めちゃいけないって…」
「加奈子」
「山本君、あたし気がついたの。自分たちも悪いことをしたって」
そのとき、茶道室のにじり口を江越が開けた。
「先生が助けに来ました。みんなもう安心ですよ」
それを聞いた加奈子は江越に泣いて謝った。浩之と邦人も泣いて土下座した。

「今年の文化祭は日本文化の部とステージの部で二部3デイズよ」
「へぇ、よかったじゃん」
ハングタンたちは喜び勇んで放課後の厨川界隈を散歩していた。
「よかったはいいけど、これでバスケ部明日からしばらく休業よ」
「弓道部は休めないし…」
エースが道端の自販機でお茶を買った。
「ところでステージって、横田先生のピアノがメインイベントらしいよ」
「それに加奈子ちゃんの独唱もあるって」
一方マッキーとショパンは廊下で夕日を眺めていた。
「三浦先生が辞めたみたいですね。いくら慰謝料だ何だって言っても…そして再婚相手に千尋先生を選ぶつもりだったって言ってましたし」
「そうだったんだ。でも今回のことで学んだわ、いくらいいこと言っても中身が醜いのはダメだって」
「そうよね。だからこそ教え子たちには明るく元気で、きれいな心を持ち続けてほしいって思うの」

借金先生が罠にかかった!!

2008-10-06 22:08:15 | ザ・ハングタン
現在DMMで「半七捕物帳」をレンタル中。そこで、今回は里見版第一話のオマージュとして一筆。

盛岡学園高等部の職員室での出来事だった。マッキーこと牧村環は同僚の佐藤学に借金させられそうになったのだ。
「牧村ちゃん、5000円貸して。だめなら3000円でもいいんだ」
「ダメよ。いくらお金持ってると言ってもね」
「そこをなんとか」
「また競馬でしょ?せめてあの人と何か話すこと出来ないの?」
マッキーはスティング、つまり原俊彦のことを考えていた。
「どうしても金は出さないのか?そう言って実家から横領してるとか…」
佐藤学の言うことにマッキーは反論できなかった。いや、しなかったと言うべきだろう。
「そんなこと言ってもな、所詮新米は新米なんだよ」
「バッキャロー!」
佐藤学は不機嫌そうに職員室を出る。そこへホワイトこと白澤美雪と生徒会長の太田カナがやってきたから、さぁ大変。
「先生!いくらなんでも…」
「ごめん、ちょっと牧村君とあってさ」
そして佐藤学はホワイトの頭をたたいて教室のほうへ歩いていった。
「ひっど~い!」
そしてカナはマッキーに事情を聞いた。佐藤学に借金をせびられたそうだ。もう3回目と言うことでいい加減断ったらしい。
「こんな学校で働いてるのに借金するなんてね」
「…先生のお給料は?」
カナのこの一言にマッキーは答えられなかった。

さて、佐藤学はと言えば大通の場外馬券売り場にいた。そこへマッキーの教え子のウイングこと高橋弥生が通りかかる。
「あれっ?佐藤先生」
佐藤学に声をかけた女がいた。
「ねぇ、今夜一緒に酒でもいかが?」
しかし佐藤は買った馬券を見せてこれでどうだと言った。しかし馬券は外れてしまう。そこに一人の紳士がやってきて、オレの馬券を一緒に買わないかと誘ったのだ。
「1点勝負で20000円だ」
「えっ?」
そしてその馬券が的中、佐藤は紳士とともに近くのうなぎ割烹で食事することに。
「旦那、景気がいいですな」
「えっ、そんな」
佐藤は紳士に20000円返したが、そんなことはないと紳士は言った。紳士の本名は木村樹、とある産業調査会社の取締役だと言う。
一方、佐藤に声をかけた女は中の橋を歩いているところで暴漢に襲われた。

盛岡学園の視聴覚室でマッキーはウイングと話し合った。
「佐藤先生、札束をつかんで近くの料亭に入ったみたいですよ」
「…そんな金あるんだったらさっさと累積債務を返済しろよな」
「先生、どうしたんですか?」
「何でもないわよ。ところで、佐藤先生は料亭からどこへ…?」
「さぁね」
その夜、佐藤は大通りの裏小路のビルを抜け出して走っていった。そこをスティングが偶然目撃したのだ。
「メインの前に場外馬券売り場から出た二人…確か若い方だ」
そこへ女の悲鳴が聞こえたのだ。そしてスティングが向かうとさっきの女が死んでいた。
「これは…」
その知らせはハングタンたちにも届いた。さっそく私服に着替えたショパンこと横田夏子が現場に駆けつけた。
「死んでるって、どういうことよ」
「それはわかんない。ただな…」
そしてスティングは佐藤が現場にいたことをショパンに告げた。警察には黙ってやると約束した。
「どうやら絞殺だ。そして被害者なのだが…」
被害者は木村の上司に当たる上山和美36歳。いわゆるセレブな女社長だったのだ。そして上山が佐藤と会っていたということが警察の調べで明らかになった。それを知ったスティングとショパンは顔面蒼白。しかも場外発売の馬券が傍らに落ちていたことから佐藤学の犯行は明白だ。
「冗談じゃないわよ、佐藤先生は数学を丁寧に教えてくれるんだし」
「そうよ」
ホワイトとウイングは佐藤学容疑者をかばった。
そして木村が参考人として警察に呼ばれた。落し物はすべて佐藤学が酔った勢いで落としてそのままほったらかしにしたものだと言うのだ。
「ところで佐藤学はよほど金策に困っていたと言うのか」
「学校の先生でも昨今はひもじいのでございます」
「そうか、おい」

盛岡学園にパトカーが大挙し、佐藤学を逮捕した。
「佐藤学、上山和美殺害容疑の重要参考人として逮捕する」
そこにハングタンも居合わせたが、もうどうすることもできなかった。
「警察のみんなは佐藤先生が悪いと決め付けたけど、どうなのかしら」
「さぁ…」
「弥生が見たって言う木村と言う男、怪しいわね」
「でも証拠がなきゃだめじゃないの」
「その証拠をつかみましょうよ」
こうしてハングタンは出動した。

ショパンが上山和美の葬儀に参列した。そこで上山和美の秘書をしていた藤井京子は、佐藤学との関係を黙認しながらも佐藤の犯行ではないと言った。
「ということは…」
「実は内部でそれを知っているのは…だから調べなおしてください」
そう言って藤井はショパンに耳打ちした。
一方スティング、マッキー、ウイング、ホワイトは街中で聞き込み。佐藤学の犯行の動機を探っていた。
「佐藤さんは確か上山社長といさかいになってたことがあると聞きますよ」
「本当ですか」
「確か上山和美さんでしたよね、お父様が亡くなられてからここまで立派にされたと言うのに」
「佐藤さんの下の名前って確か学よね。もしかしたら初恋の…」
「初恋の人?」
「そ、20年以上前に付き合っていた先輩だって」
スティングはそれを聞いて菜園のあの井坂税理士事務所へやってきた。
「井坂さん、今日はちょっと話があるんですよ」
「話?」
「実は上山和美のことで…」
「ああ、上山社長ですか。かわいそうに」
そして井坂は上山和美の会社のデータをスティングに手渡した。

さて警察に捕まった佐藤学は白を切っていた。覚えがない殺人に何の証拠があってと泣いてばかりだ。
「あのとき、目を覚ましたら女が死んでいたんだよ」
「ふざけんな」
「料亭を酔って出てしまったんだ。それからのことはもう何も…」
刑事は机を叩いて佐藤を強請る。
「…」
「それだけか。都合の悪いことはすべて白紙にするつもりか」
「違いますよ」
ハングタンは刑事たちより先にうなぎ割烹へ。そしてそこの仲居から佐藤と木村のことを聞き出した。
「これでまずは佐藤と木村がつながったわけね」
「でもそれだけじゃ…」
「警察は確たる証拠をつかんでいるわ。このままじゃ佐藤先生の懲戒免職はまぬがれない」
「そんな」
「だからあたしたちが佐藤先生の無実を証明するのよ」

ハングタンたちは上山和美の事件当日の足取りを追うことにした。当日は農協の関係者との会合があったらしい。
「それで、いつ退席したんですか」
「さぁ、確か4時ごろだったと思います」
「それだけで十分です。あとはお任せください」
さらにウイングがアローこと斉藤葵とさきほどの従業員に話を聞くと、警察には内密にしていたということをしゃべってくれた。
「実は警察には口止めされていたんですがね、木村さんが上山商事の献金を少しばかりもらっていたと言うんですよ」
「それは本当ですか?」
「ええ」
さらにマッキーが盛岡城址公園に落ちた片方だけのハイヒールを発見した。
「まさか」
しかしそこに銃声が。あわてて駆けつけたウイングだったが、すでに狙撃犯は走り去った後だった。
「ハイヒールを拾ったら撃たれそうになって」
「もしかして、上山和美の?」
「そうよ」
そこへ放課後の練習を終えたエースこと荒川まどかもやってきた。
「牧村先生!しっかりしてください」
「まどかじゃないの」
「今はそれどころじゃないわよ」

マンションの一室、大谷の表札がある部屋がハングタンのアジトである。ハングタンが全員揃い、アジトで作戦会議を開いた。
「警察は上山和美のハイヒールを遺留品として保管しているはずよね。それが片方しかないと言うのは…」
「確かにおかしいですね。警察は両方持ち去ったはずじゃないかしら」
「それに上山和美は佐藤学と婚約する予定をしていたらしいの。来年には結婚式を挙げるなんて言ってたし」
「えっ?それじゃ上山和美を殺す動機はまったくないじゃない」
「そういうことになるわね」
そこにスティングからの電話が入った。電話にはアローが出る。
「はい、こちら大谷探偵事務所…原さんですか」
「大変なんだ。佐藤学が明日にも送検される」
「そうなったら大変よ」
そしてアローは佐藤学が送検されることをみんなに告げた。が、マッキーはこれで真犯人が油断するかもと考えていた。
「上山和美と佐藤学の関係を知っていた人物、そして面識のある人物と言えば…」
ハングタンの推理はこうだ。木村樹が上山和美と何らかのトラブルで対立し、佐藤学を犯人に仕立て上げて木村が殺したと言うことだ。しかし確証は何もない。
「木村樹の身辺をマンツーマンのスクリーンプレーで」
マッキーの指示でハングタンは木村をマークすることになった。

ついに佐藤学容疑者の書類送検の日だ。スティングとショパンは佐藤の姿を確認してから刑事に直談判した。
「佐藤先生は悪くありません」
「わたしたちは真犯人を知っています」
「誰だ」
「佐藤学の無実を主張する弁護団でございます」
しかし刑事たちはスティングの訴えを却下した。それを見た男はそそくさと大通りのほうへ走っていった。
「あいつ、まさか木村と」
案の定男は木村の待つラーメン店にいた。
「ご苦労さん。これはおごりだ」
「だどもよぉ、一時はどうなるかってよ」
「ハイヒールのことか。誰かが捨てたに決まってる」
「まぁよいではないか。公園で絞め殺したあの女狐を、フィアンセが殺したとしたらそれはそれで辻褄が合う」
「まぁこれで会社はオレのもんだ」
そこへ黒い影が忍び寄り、木村と相手の男を誘惑する。
「そうですか。女を食い物にすると、女に泣きますよ」
そしてマッキーの号令とともに教え子たちが木村と相手の男に襲い掛かった。
「宮田、何をしている」
「専務」
宮田は銃を取り出そうとしたが失敗。そしてマッキーにリベンジされてしまった。

ショパンとスティングはパトカーを追う。そしてパトカーの無線に先ほどの会話を流すことに成功した。警察は無線から事件の真相を知り、ただちに佐藤学を釈放して木村と宮田を逮捕することにした。
「社長が金の使い込みを公表するとかしゃべるから」
「しかしそれとこれとは」
「あの女狐め、結婚したら我々なんてリストラする気だったんだ」
「そんなこと言ってわたしに証拠隠滅をお願いしたじゃありませんか」
「黙れ!」
ここでマッキーの怒りが爆発した。
「バッキャロー!」
結局木村と宮田は上山和美殺害の主犯として逮捕された。

非情のライセンス!女教師の裏側

2008-10-01 18:08:41 | ザ・ハングタン
マッキーとショパンはデュエットを楽しんでいた。そこへスティングもやってきて、80年代の歌を熱唱。
翌朝、盛岡学園は大騒ぎとなっていた。中等部の藤澤久美子教諭が失踪したということだ。しかし藤澤は何もなかったようにやってきた。それを見たマッキーは驚いた。
「藤澤さん、いったいどうしたんですか」
「いや、その…」

実は藤澤は3年前までは県立高校の英語教諭だった。それがあらぬスキャンダルによってクビになり、去年からこっちに来ているという。藤澤のスキャンダルというのは、大通りで働いていたということだった。
大通りでエセアメリカ人の女性が客引きをしていた。しかし盛岡の人は人見知りが激しいようで…
「無名の芸能人が来たときのようだな」
「まったく、こんなだから…」
マッキーは夜の街で酔っ払っていた。スティングがマッキーを抱きかかえていた。
「あ、アメリカ人だ」
「本当ね」

そのエセアメリカ人が翌日厨川駅近くで殺された。名前はマリーと言い、大通りのクラブで働いていた。
「ん?アディウー!?確か…」
スティングはクラブアディウーに心当たりがあった。
「3年前にここのクラブにある女教師が身分を隠して働いていると言う密告があった。その結果とばっちりを受けたのが藤澤久美子だ」
「…そんな」
「しかし久美子は無実を主張、そして盛岡学園が中学生相手にならというわけで」
「じゃあ、藤澤久美子は」
ハングタンは藤澤久美子が犯人ではないかという考えと、逆に藤澤久美子はやっていないという考えで対立した。
「あたし、昨夜見ていたのよ」
ウイングとホワイトが男の子を見たと言うのだ。結局生徒たちは久美子は無実だと言う主張を曲げなかったため、その男の子を追うことに。

しかしその男の子、久保田大介は3年前久美子の担任したクラスのクラス委員だった。そこでショパンが久美子に話をする。
「久保田君が…そんな」
「でも」
「はっきり言うわ。久保田君は卒業後大学に進んだわ。だけど…」
久保田大介は大学在学中に父の退職、母の死などで結局中退。今年に入り紫波の工場で働いていたらしい。
「夢破れ、国に帰るしかない若者の気持ちなんて…よそ者のあんたにはわからないわよ!」
そこにマッキーがやってきた。
「久保田大介は確かにあのクラブに足を運んだわ、でも…」
「でも?」
「知らないって」
久保田大介が逮捕された。しかし大介は白を切った。すると大介とメリーは確かにブルーノ藤原という男のところへ行くと言っていた。
「でも、そんなことされたらすべてあいつの思う壺ですよ」
ブルーノ藤原は岩手県内の中南米移民の元締めだった。
「ブルーノ・フジワラ・ノルベルト、48歳。紫波町や滝沢村に工場を持つ。それだけじゃない、マラカイポに資源開発センターを立てたらしい」
「マラカイポ…確か石油の」
ブルーノはマラカイポ油田の権益にも肩入れする人物。だとしたら久保田大介の一件も黒幕はブルーノ藤原ということになる。さらにショパンから、アデュウーもブルーノの息のかかった店だったと判明。

翌日、久美子はマッキーの電話に衝撃の事実を伝えた。
「久保田君は犯人じゃないわ。メリーの落としたピアス、あれ拾ったの。拾ったのはバーノ…」
久美子がそこまで伝えたところで、男に刺された。それをカナが偶然目撃。
「あっ、藤澤先生」
「…あなたは」
「ハングタンです」
「じゃあ、横田さんに伝えて。バーフジワラって」
「藤澤先生!」
久美子は病院に運ばれた。
「先生、スイマセンでした」
「本当に…あたしが追いかければ」
「いいのよ。これでブルーノ藤原の仕業とはっきりしたから」
マッキーは久美子の病室を出て、ブルーノ藤原への怒りに燃えた。

エースとホワイトが久美子を刺した男と接触。そしてマッキーはアディウーに入り、偽造パスポートなどを発見した。
「どういうことよ」
「メリーを殺し、久保田大介に罪を着せ、挙句3年前にこの店で働いていた藤澤久美子をも…」
「別に。それに3年前なんてもう時効じゃないですか」
しかしそこに謎の男が現れた。実は彼、スティングの仲間の後藤保隆(通称ジャック)だった。

ハングタンはジャックのバー「ステラ・アミーゴ」に集合。そこでスティングがマイグラスを片手に腰掛けていた。
「先生、待ってたよ」
「あらっ、もう酒飲んでたの?」
「実は今夜はサッカーのブラジルのビッグクラブの対戦があるんでね」
「それでブラジルなのね」
「今夜のお勧めはこれです」
ジャックはブラジルのピンガをスティングとマッキーに飲ませた。
「ところでジャック、アディウーの評判はどうだ」
ということで、ジャックにブルーノ藤原の話を聞くことに。するとブルーノ藤原は金に物言わせて女衒屋でもやるかという話になった。それを日本人は嫌がるから中南米の人間にやらせるらしい。
「ひどい!」
「バーやスナックパブも、行き着くところまで来ると…」
「あ・ぶ・な・い・ば・か」
そしてハングタンは出陣した。

マッキーと生徒たちはブルーノ藤原の紫波の工場に集まった。
「いい?ブルーノと取り巻きの連中は合わせて5人。いい勝負よ」
マッキーはアロー、カナ、ウイング、ホワイト、エースの並びでブルーノたちを包囲した。
「ふざけるな」
ブルーノは先制攻撃を仕掛けるが、スティングとジャックが乱入して取り巻きを一網打尽に仕留めた。
「あとはあんただけね。殺すわよ」
「Lo asesino!(西語:殺す!)」
マッキーとブルーノの1対1のバトル。マッキーはブルーノに痛めつけられたが、生徒たちが取り囲みKO。

さぁハンギング、とその前に藤澤久美子の病室。そこにカナの名前で手紙が届いた。
「今日午後2時、テレビをご覧ください。3年前にスキャンダルをでっち上げ、今またあなたと教え子を陥れた悪党に審判が下されます」
それを見た久美子は涙を流していた。

「さぁ、開店の時間ですよ。大サービスですからね」
スティングの一言でハンギング開始。
「お~い、酒だ、酒だ」
そして酒を注ぐショパンとマッキー。
「おい、どこにやってんだよ」
「やめなさい、服にかかったら燃えちゃうぞ」
ブルーノたちはバーのカウンターでブラジルビキニ姿のハングタンに接待されていたのだ。が、その酒は実はアルコール分の高い南米のスピリッツだった。
「もし誰かが火遊びしちゃったら?」
マッキーは指を使ってブルーノの取り巻きの一人を誘惑。
「…やめてくれ、やめてくれ」
「ウチダサン、ナニモイウコトハアリマセンヨ」
マッキーは胸の谷間からライターを取り出し、酒に火をつけた。
「このお酒、火をつけたらやけどするわ」
「…そんな」
内田はとうとう黙っていられなくなった。
「あの女刺したのはオレだ!あの女を消せといったのはブルーノだ」
「何だ!!何だ」
「マリーも殺した。ちょうどあの若者が去った後だ」
内田は久保田がマリーと口論したあとにマリーに近づいた。
「マリー、どうしたんだい」
「オネガイ、ベネズエラニカエシテ」
「そうかい、そうかい」
しかし内田はマリーを北上川の水で水責めにした。
「水責め、どうりで凶器がない筈だわ」
「そのときなくしたピアスが藤澤久美子に発見された」
「その通りだ。3年前にブルーノの誘いで…」
「そうよ。アディウーのママになったときに久美子ちゃんはまじめに働いてたわ」
その自白を久美子も聞いてしまった。
「南田さん、内田さん、それに桜庭さん。みなさん酔いすぎたみたいですね」
そこへ火災報知機の音が。火災が発生したのだ。ハングタンたちは逃げたが、ブルーノたちは取り残された。

ブルーノたちが外へ出た。しかしそこは大通りの道の真ん中だった。
「どうなってるんだ」
「オー、ジーザス」
パトカーがブルーノたちを囲み、ブルーノは逮捕された。

「日系人のトンネル、岩手県にも…グループの関係者も同罪」
この見出しを見たマッキーは笑みを浮かべていた。
「藤澤先生、いつ戻ってくるんでしょうね」
「さぁ」
久美子は大介と手をつないで大通りを歩いていった。カナとウイングがそれをじっと見つめていた。そしてスティングも久美子とすれ違った。

おもちゃの首の怨み唄

2008-09-30 02:55:03 | ザ・ハングタン
これは今回届いたDVD「ザ・ハングマン」に収録された同タイトルのお話を少しハングタン風に改訂したものです。

秋、中津川でスティングこと原俊彦は川釣りを楽しんでいた。しかしさっぱり釣れない。
「川の景気が悪いのかね」
そうぼやくスティングの横で別の釣り人が竿を振り回していた。堤防の上にはトラックが待機していた。
「なしてあんなとこに」
そう言ってスティングはトラックに詰め寄ったが、トラックは逃げてしまった。すると釣り人が待てと言った。しかしその男も、トラックの運転手も対岸の狙撃手に撃たれてしまった。狙撃手はそのまま外国のスポーツカーで逃亡した。
「ちきしょう、こいつめ」
スティングが荷台を開けると、そこには人形が。
「なぁんだ、おもちゃじゃねぇか。ん?盛岡学園附属幼稚園、盛岡学園初等部…」
これらは盛岡学園に注文するおもちゃだったのだ。

テレビニュースで狙撃されたのは東北の地方暴力団幹部高橋と判明。そのニュースをショパンこと横田夏子とマッキーこと牧村環も知った。
「これでしょ、原さんが見たって言うのは」
「そうみたい」
「盛岡学園におもちゃの注文?なんて知らないわよ」
「ねぇ」
そして盛岡学園の理事長室。ゴッド・大谷正治は盛岡学園におもちゃの購入注文と言うのはなかったと言う。
「初等部と幼稚園のおもちゃを注文した、なんてことはないぞ」
「じゃあ、あの大量の人形は…」
「コピー商品じゃないのかね」
「コピー商品?」
「つまり正規のルートを通さない人形とかだ。ネットオークションの浸透でこうした偽物が増えている」
「確かにキャラクターグッズを自作改造したために逮捕されたフィギュア造形師もいましたしね」
「つまり、そのコピー人形を盛岡学園に売りつけようとした詐欺師がいるというわけだ」
「なるほど」
理事長室を出たショパンは男とすれ違った。男は理事長室に入った。

校庭ではエースこと荒川まどか、ウイングこと高橋弥生、そしてホワイトこと白澤美雪の3人がジョギング中。そこに初等部の子供が操縦するラジコンが。
「ちょっと、お姉さんにいたずらしないでよ」
「ほんと、ガキのお遊戯って…」
すると母親がやってきた。
「みつる、みつる」
「母ちゃんだ」
みつるは母親にびんたされた。そこへホワイトがやってくる。
「みつる君は悪くありません」
「いいえ、みつるはうちの売り物のおもちゃを持ち出したんですよ」
「ええっ?」
みつるの家はおもちゃ屋だった。しかしこのご時勢、おもちゃ屋なんてはやらないと母の和子はぼやいていた。
「それでもおもちゃ屋に賭けるのはなぜですか?」
スティングの質問に和子はこう答えた。
「そりゃ、子供たちの健やかな成長と幸せな心のためですわ」
「…僕はおもちゃといえばすごろくと地図でした。だから地理はいつも点数良かったんですよ」
「あら、そうだったんですか」
「最近はアニメショップとか言って、フィギュア売ったりするのがはやっていますけどね」
「おもちゃは本来子供のためのもの、それをもてあそぶ大人たちは…」
和子は涙を流した。

生徒たちは幼稚園の保母さんに話を聞いていた。
「こんな人形を注文した覚えありませんか?」
「黄色いぬいぐるみなんですけど」
しかし保母さんたちは誰も知らないと言う。事務長の石川にマッキーが同じことをたずねたが、これも空振り。
「やっぱり盛岡学園にコピー商品を売りつけようとしたのね」
さて、盛岡市内には村上というバッタ屋があった。ここのバッタ屋のオーナー村上誠一郎は盛岡学園に商品が届かなかったということで憤慨していた。しかもコピー商品のことに気がついていた。
「何か商売になるおもちゃないのか」
「すごろくゲームとかは」
「それはいろいろセットが必要になる、ダメだ」
「じゃ人形だ」
「ただしフィギュアとかはだめだ、そんなのは学園にふさわしくない」
「じゃ、どうしたら」
「おもちゃ屋に聞けばいいのさ」
村上の部下の井上勝也があのおもちゃ屋に入った。
「あ、どうも」
和子はお客さんと言うことで喜んだ。だが、井上はこの店の人形やぬいぐるみを全部欲しいと言ってきた。
「とにかく全部だ。釣りはいらんぞ」
井上は20万円を和子に見せた。
「すごい」
和子はそう言って卒倒した。
スティングと生徒たちが井上が人形やぬいぐるみを買い占めるのを目撃していた。
「こんちくしょう」
「フランス人形持ってっちゃうの」
「ぬいぐるみも根こそぎよ」
そしてスティングは生徒たちに何か買ってこいと命令した。
「ごめんください」
「あら、またお客さん?」
「そうです」
「女の子なの?ごめんなさいね、リナちゃんもジェミーちゃんも売り切れなのよ」
「あぁ~」
そこでホワイトが2000円を和子に手渡した。
「あの、これは」
「さっきの人、何なんですか?」
「どういうことです」
「実はあの人、この前中津川近くで発見されたコピーのお人形の件に関わりがあるんです」
「えっ?」
和子は2000円を持ったままそそくさと消えていった。

井上は狙撃手の中西に電話、仲間を動員してあのおもちゃ屋の在庫を買い叩けと命令した。
「あのおもちゃ屋で変な男に会ってしまった。若い女性3,4人を連れた…」
中西は気が動転した。中津川の一件がバレやしないかと思ったのだ。
「もしかしてそいつは…」
「心当たりでもあるのか?」
中西たちはスティングと生徒たちを包囲した。だが、ホワイトとアローが敵を撃退した。スティングは仲間の一人に話しかける。
「お前たちは誰の指図で動いているんだ」
「…村上誠一郎だ」
「村上?確か在庫処分質流れ取り扱いの」
「そうだよ」

スティングは中西の仲間の自白テープをショパンとマッキーに聞かせた。
「なるほどね、おもちゃ屋が廃れたからこそこういう策を取ったわけ」
「その通り。バッタ屋による事件なら警察にもバレたりはしない」
「そしてそこからコピー商品をつくる、汚いわ」
「そうでしょ?だから今のうちになんとかしないと」
ということで村上商会にハングタンがやってきた。するとマッキーが電話の秘話機能がどうとかで盗聴無線機を取り付け、火災報知機にもカメラやマイクをセットする念の入れようだ。
「よし、これで全部ね」
村上商会の手の内はハングタンに筒抜けとなった。そこへ井上が戻ってきた。
「さて、人形やぬいぐるみのコピーと言うことだが、今度はどこへ売り込もうかな?」
「売り込み先なら学校や幼稚園しらみつぶしに探せばいいじゃないか」
「さっそく売り込みに」
「いや、この人形たちを土台に我々は増産する」
それを聞いたマッキーは逆上する。
「バッキャロー!!」

そしてさっきのみつるのおもちゃ屋「おもちゃのさとう」に井上がやってきた。
「実は折り入って話がある」
なんと井上はみつるを誘拐したというのだ。返して欲しかったらすべてのおもちゃを村上商会に引き取れと言う話だった。引き取ったおもちゃは特殊教育センターに安く売り飛ばすと言う。
「どうです、お上の買い物なら文句は言えますまい」
「…みつるを本当に返してもらえるんですか」
「ま、そのつもりだ」
和子はおろおろしながらおもちゃを出した。
「これで全部です、いつもあまり客が来ないもんで」
「ほぉ、レアなおもちゃもあるじゃないですか」
井上は仲間にブリキのおもちゃを渡した。
「竹内、これ運べ」
別の部下(竹内)がボードゲームの山を運んだ。
「みつるはこれで帰ってくるんですね」
「ああ、明日には」

しかしみつるは村上商会の倉庫に閉じ込められていた。アローとエースが近くを通りかかったとき、その異常に気がついてみつるを救出したが、そこで狙撃手の中西に狙われた。
「いやっ」
「葵、大丈夫?」
中西の弾はアローの足をかすった。
「鉄砲玉め…」
中西は屋上から消えた。
そして夕方、みつるは和子の元に帰って来た。和子はみつるを抱いて、おもちゃ屋を閉めることにしたと言う。
「え~っ、どうして」
「村上さんに在庫引き取ってもらったわ。これからは母さんとのんびり暮らしましょ」
それを聞いたアローとエースは驚いた。
「そんな、おもちゃ屋閉めたら周りの子供たちも…」
「そうよ。それにあたしだってたまにはこう言う店で買ってみたいもん」
それを聞いた和子は驚いた。
「もう買ってくれる人なんていないと思ってたのに、こりゃ驚いたわね」
「僕もお母さんのおもちゃ売ってるところ見てみたい、ずっと、ずっと…」
この光景を対岸の歩道からスティングとショパンが見ていた。

マッキーとショパンは作戦会議を開き、村上商会のおもちゃを買いに来たと言って一気に叩き潰すことにした。さっそくショパンが村上商会へ。
「すいません、おもちゃのピアノの調律に伺いました」
なるほど、ショパンらしく調律師ときたわけだ。そこへマッキーとスティングが県教育委員会の人間だと言ってやってきた。竹内がドアを開ける。
「おもちゃを引き取りにきたんですね」
「いいえ」
「あたしたちはみなさんを取りに来たんです」
そしてハングタンと井上たちが格闘した。井上はスティングにナイフで襲いかかったが、スティングが早めに身を翻したので井上はバランスを崩して倒れた。
「よし」
村上は生徒たちが連れ出した。これであとはハンギングだけ。

村上、井上、中西は棒にくくりつけられていた。
「ここ、どこだよ」
「何も見えないじゃないか」
「おもちゃの墓よ。あんたたちに捨てられたおもちゃの…ねっ」
「墓だって?とんでもない」
「だったら見せてあげる、ここが血も涙もない人間に捨てられた人形の墓場だってことをね!」
そして灯りが点ると同時に人形たちが一斉に動き出した。
「本当に動いているぞ」
「さぁ、しゃべらないとどんどんうるさくなるわよ」
「うるさい」
「おもちゃ屋からおもちゃを買い叩いておきながら、偽者のおもちゃを学校や幼稚園に売り込むなんて!」
「もう最低よ、夢も希望もない大人たち」
ハングタンにぼろくそに言われた村上たち、しかし何も出来なかった。人形たちはどんどん前進し、ついにナイフやライフルを持った人形が迫ってきた。
「中津川の射殺事件は偶然だったんだ、邪魔が入ったと勘違いして…」
「そうか、やっぱりお前だったのか」
「おもちゃ屋から買い叩いたおもちゃは海外に輸出して恵まれない子供たちへの寄付としたんだ」
「見せ掛けの善意には感動しないな」
そして人形が村上たちを完全に包囲したところで止まった。
「…何だったんだ」
「さぁ」
ショパンはおもちゃのピアノで村上たちの悪行を歌った。ショパンの歌声に村上たちはとうとうたまりかねて外へ逃げ出したが、そこはおもちゃのさとうの近くだった。
「しまった!」
「今のはすべて嘘です」
「いや、違う!中西に取引の見張り番やられたのも、おもちゃのさとうの一人息子を誘拐して脅迫させたのも、みんな村上さん、あんたの指示だ」
そのことを知った和子は井上に向かって罵声を浴びせた。
「井上さん、騙したんですね!」
そしてパトカーがやってきて、ハングタンは街の中へと消えていった。