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旧市街地の子供服のお店で寄り道したり、レストランで昼食を取ったりした後、
空を見上げると、飛行機雲が海の彼方へとたなびいている。
その飛行機雲に導かれて浜辺に出た。古代の要塞に守られるようにして
小さな砂浜が広がっていた。要塞はどこまでも続く海岸線と浜辺を隔離して、
そこだけに、古代からの風を吹かせているようだった。
太陽がぐるんとはっきりとした強さで、それでいて優しく体を包む。
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子供たちの遊ぶ様子は万国共通だ。アラブ系らしき子供も、白人も
ここではその差はなく、皆調和して遊びに夢中だ。
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娘は、カワイイ坊やと友達になり、浜辺で一緒に砂遊びをした。
ことの成り行きはこんなかんじだった。
ランチに入ったレストランで偶然、隣のテーブルにその子がいた。
パパとママに甘えるその仕草が愛くるしくて、
娘は「あの子かわいい、かわいい」を連発していた。
レストランを出ても偶然歩く方向が一緒で、娘はお気に入りの坊やに
手を振った。その坊やの家族も浜辺を目指しているのは明らかだった。
浜辺の入り口についたところで、坊やが手をつないでいたママに
何か話しかけたかと思うと、嬉しそうに娘の所へやってきて
娘の腕を引っ張り出した。「一緒に遊んで」とおねだりするかんじで。
娘が「どうしよう、いい?」と私にお伺いをたててきたので、
「ご自由に」というと娘は坊やに引っ張られるままに浜辺へと降りていったのだ。
どちらの親も(私も先方も)どうぞどうぞ、とお互いの子供の自由を尊重した。
ママの方が英語をしゃべれたので、少しお互いに自己紹介をしたところ、
チェファル近郊に住んでいて、ランチがてらドライブに
やってきたということだった。日本人の友人がいると話してくれた。
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で、こんな感じに2人は仲良く砂浜で遊びはじめた。お互いに言葉が
違うのに、どうやってコミュニケーションをとったのか・・・・。
小さな坊やのお昼寝の時間まで、遊びは続いた。
別れる時、小さな天使君は娘の頬にありがとうのキスをした。
イタリア人はチビでも、侮れない。娘はたじたじになってしまった。
その子のパパとママも娘をハグハグしてお礼を言ってきた。
さて、私もハグハグしてキスを交わしてお別れしたいところだったが、
照れくさくて、できなかった。「グラッチェ」というのが精一杯。
ゴメン、日本人のお友達がいるんだから、日本人が照れ屋なこと知っているよね、
と心の中で弁明した。
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坊やと別れて、娘は1人で波と戯れ始めた。
彼女のエネルギーは無限で、波を起こす自然の営みは彼女を飽きさせない。
永遠に続きそうな、その波とのじゃれ合いを眺めながら、
「シシリアを旅してみて、よかっただろ」と天からささやかれた気がした。
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最後に、浜辺では子供たちのジャングルジムのような存在だった、
砂浜にぱっかり頭を突き出した岩の上でポーズ。旅の記念の写真を撮った。