アメリカを売ったFBI捜査官デイヴィッド・A. ヴァイス早川書房このアイテムの詳細を見る |
タイトルそのものの実際の話でして、とにかくいかにスパイが暗躍しているか、ということが分かるわけ・・・。これは米ソ間の話ですが、時代はつい最近(2001年)まで続けられてきたアメリカFBI捜査官のスパイ行為の実話です。何しろ、9:11が起こったのもこの捜査官の情報が間接的にテロに流れたからでは、という疑いもあったようで(結局、否定された)! オプス・デイというカソリックの一派の熱心な信者でもあった捜査官の錯綜した性的異常行為や、その父親との関係やらにも触れ、犯罪にはまっていく(この場合はアメリカの重要機密をロシア側(ソ連)に売る)捜査官の心の闇を深部までえぐり出している。筆者の手法は、捜査官を逮捕するFBI長官の人生までも綿密に語っていて、正義の側に立つ人間と闇へと落ちていく人間を対比させ、「現代」という病までも浮き彫りにする秀逸なものだ。
子を持つ親としては知性が闇と結びつかないよう、"知識を詰め込む教育よりはまず、心を健全に育てることを第一にしなければ・・・"と、スパイ行為をした捜査官とその父親との関係からは学ぶことができた。犯人の父親は息子を褒めることがなく、自分の考えを押しつけるだけだったのだ。
実話なだけに考えさせられます。著者はワシントン・ポストのベテラン記者で、ピュリツァー賞等、多数の受賞経験のあるデイヴィット・A・ヴァイス。