-今日の独言-
塩野七生の「ローマ人の物語」
一昨日、昨日と、気分転換に塩野七生の「ローマ人の物語」シリーズを久し振りに読んでいた。文庫版では現在すでに23巻まで刊行されているというのに、私が手にしたのは6巻と7巻。まだカエサルの登場以前である。まてよ、久し振りにというけれど、このシリーズは三年前から文庫版化されはじめたのだから、1巻~5巻までを読んだのはたしか一年半ばかりまえではないか。いやもっと以前かもしれない
紀元前二世紀半ば、第三次のポエニ戦役で強大国カルタゴを完全に滅亡させたその後から、BC63年、ポンペイウスのオリエント制圧によって地中海に面した全域がローマの覇権下となるまでを描く。グラックス兄弟、マリウスとスッラ、そしてポンペイウスと連なる約百年間、共和制下ローマの覇権拡大の道のりは決して平坦なものではない。軍事指導者と元老院たちとの対立相克が絶えずつきまとい、制度的な矛盾を露呈しつつ、ときに血の粛清が繰り返されもする。属領、属国の拡大は奴隷層の民をも飛躍的に増大させる。BC73~2年にはスパルタクスの叛乱も起こった。
著者はこれにつづくカエサルの時代をルビコン以前と以後に分け、8~13まで6巻をあてている。はて、これらを読むのはいつのことになるやら。きっとしばらくはツンドク状態に置かれたままだろう。
<歌詠みの世界-「清唱千首」塚本邦雄選より>
<秋-8>
さりともとつれなき人を松風の心砕くる秋の白露
藤原良平
千五百番歌合、戀。九条(藤原)兼実の子。良経の弟。さりげなくも意外とみえる初句の発想。「砕くる-露」の新鮮ともみえる巧みな縁語。作風は地味だが詩心の味わいは深い。
吹きしをる四方の草木の裏葉見えて風に白める秋のあけぼの
永福門院内侍
玉葉集、秋の歌とて。作者はこの一首をもって「裏葉の内侍」と称されたと伝えられる。自然への緻密な観照に加えて、第三句の字余りがゆったりとした調べをもたらし、独特な風雅を生んで印象的。
今月の購入本
鷲田清一「現代思想の冒険者たち-メルロ・ポンティ」講談社
水村美苗「続 明暗」新潮文庫
塩野七生「ローマ人の物語-8~13」新潮文庫
L.ウィトゲンシュタイン「ウィトゲンシュタイン・コレクション」平凡社ライブラリー
図書館からの借本
岡井隆「短詩形文学論集成」思潮社
市川浩「現代芸術の地平」岩波書店
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