「バナナブレッドのプティング」大島弓子(1978.3)
高校生のときに出会って以来、うん十年。私の心の殿堂入りベスト1が、これです。
名作だと思います。
ちょっと変わった(ある種の神経症的な)女子高生が主役で、その子が友人のお兄さんに恋をするお話。
ただこの話、あらすじを書いても良さがまったく、みじんも、これっぽっちも、伝わらないんですよね~。
あらすじだけを取り出すと奇妙というかヘンというか、何が面白いの?みたいな・・・。
ところがこれが、大島弓子さんのペンにかかるとあらふしぎ、極上のデリケートな作品世界に変身してしまう。
正直、これを読んだ当時も何がそんなに魅力的なのか、心に訴えてくるのかわからず、夢中になりながらもとまどいました。ラストがとても感動的なんですが、その感動すらもどこから出てくるのかわからないような、不可思議な感覚。
ただね、そのわからない感じ、あいまいな感じこそが魅力の原点かもしれないと思うわけです。
だって思春期の少女の内面なんて、そもそもあいまいでつかみどころがなくて、とりとめもなくて、自分自身にも理解しがたいようなものじゃないですか。
で、これを読んだときの私自身が、まさにそのあいまいな年齢の女子高生でした。
この作品の主人公は、変わっているがゆえに生きづらさを感じていて、自分の内的世界と現実の世界をすり合わせるのに苦労している(と、私には思える)。
私もまあその年代はそれなりに苦労していて・・・そういうお年頃だったんですよね。
すり合わせが終わったいまじゃ、もはやどういうあつれきや齟齬があったのかさえ思い出せないんですが、きっとそんな私の心に、この作品がすごくはまり込んだんじゃないかと思います。
ちなみにアマゾンのレビューを見ると、いろんなかたがこの作品の分析をしていて、わーすごいと感心しました(笑)。あいまいじゃなかったのか??
それと、けっこう読む側の感受性を選ぶ作品のようですね。でも大島弓子さんの作品って、これに限らず全部そんな感じですよね。
大島弓子さんの単行本、いまでもかなりの数を保管していますので、次回に載せようと思います。
つづきます
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