猫のツボ

 みゆちゃんは、おなかを撫でられることを好まない。みゆちゃんが好きなのは、あごの下や頬っぺた、おでこや眉間や、鼻腔の横などの顔周辺と、背中のしっぽに近いあたりを掻いてもらうことである。
 椅子の上でくつろいでいるみゆちゃんのあごやおでこを撫でると、気持ちよさそうに頭を座面に擦り付けて、少し仰向きになるから、調子に乗ってふわふわで柔らかいおなかをさすると、すかさずうしろ足のキックが飛んでくる。爪を出して蹴るから痛いのだけれど、我慢してしつこく撫でていると、今度は両手で撫でているこちらの手をつかんで、噛みついてくる。もちろん、肉球を触られるのも嫌いである。
 おひとよしなふくちゃんは、体中どこを撫でられてもうれしいらしい。触った瞬間、もしくは触る前からごろごろとのどを鳴らしている。肉球の手を握ってもごろごろ言っている。
 それでも一番好きなのは、おなかをごしごし撫でられることで、仰向けに寝転がっていつまでも嬉しそうにしているから、きりがない。
 ふくちゃんのおなかを撫でていたら、みゆちゃんが寄ってきた。そうして、自分は嫌いなくせにやきもちを妬いたのか、それとも単にちょっかいを出そうと思っただけなのか、ふくちゃんの脇の下に鼻を突っ込んで、かぷと噛んだ。
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