猫タワー争奪戦2009

 去年の冬、みゆちゃん、ふくちゃんのどちらもが猫タワーの一番上にある台座に乗りたがったので困った。猫タワーはエアコンの前にあるから、そこがおそらく、一番よく温風が当たるのだろう。当然のことながら最上階の台座はひとつであるから、もめる。タワーの真ん中あたりにも穴倉のような猫部屋がついているけれど、そちらは見向きもしない。
 もともとその台座はみゆちゃんのお気に入りの場所であったのに、新米の子猫だったふくちゃんが図々しく奪いに来た。神経質で遠慮がちなみゆちゃんが取り返せなかったりして、見ているこちらはずいぶん気を使った。
 それが、しばらくすると、いつのまにかふくちゃんはタワーの最上階に興味を失ったかのように全然使わなくなって、またみゆちゃんの専用に戻った。台座はそれほど大きくなくて、みゆちゃんが丸くなってぴったりなくらいだから、あるいは大きくなりすぎたふくちゃんにはもう狭くて居心地が悪くなったのかと思った。また寒い季節が来るまでは。

 今年の秋が深まって、部屋に暖房を入れるようになった途端、ふくちゃんがふたたび最上階を取ってしまった。それまでずっと台座を使っていたみゆちゃんはもちろん不服である。台座を取られると、ひとつ下の段に立ち上がって台座に手をかけ、ふくちゃんの背中に「のけ」とばかり噛みつく。ふくちゃんは当然、応戦する。みゆちゃんの首に両手で組み付いて噛み返したり、前足で上からみゆちゃんの頭を押さえつけたり、台座とその下の段で、二匹がしょっちゅう猫パンチを出し合い、組み合っている。
 それほど本気でやり合っているわけではないが、ふくちゃんは怒ったように尻尾をぱたぱたさせているし、みゆちゃんの尻尾は大きな毛虫みたいにぼさぼさに膨らんで、どちらも耳は後ろを向いている。
 結果は、たいていみゆちゃんがあきらめて終わってしまう(もっとも、一度だけみゆちゃんが押し勝ったところを見たことがある)。みゆちゃんがかわいそうなのだけれど、一方的に私がみゆちゃんの肩を持って、ふくちゃんを台座から抱き降ろしてしまうというのもためらわれる。仕方がないから、猫じゃらしを持ってきて、猫トンネルの中でかさかさ動かす。そうすると、ふくちゃんは何もかも忘れて自ら遊びに降りてくるから、そのあいだにみゆちゃんが台座に上る。

 猫タワー、もうひとつ買わないといけないかなあ、と私がぼそっとつぶやくと、「買わんでええ」と夫が即答した。それもそうではあるが。
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