茶トラ親子

 幼稚園の近くのコインパーキングに車を入れようとしたら、駐車場の突き当たりに小さな茶トラの子猫のいるのが目に入ってきた。
 あっと思って、まだだいぶ距離があったが、子猫が驚かないように車を止めて様子を見ると、駐車場を囲っている塀に前足をかけて立ち上がり、首を上のほうへ伸ばしている。塀の上には、同じような茶トラに体の下半分が白い母猫がいた。
 駐車スペースに入れるために仕方なく、車をできるだけそっと動かしたけど、やっぱり驚いて塀沿いに横走りに走り、隅っこまで逃げた。
 塀のこちら側へ落っこちてしまって、あるいは降りてみたものの上れなくなって、母親のいる向こう側へ戻れなくなってしまったのかもしれないと思った。私に抱っこすることさえ許してくれれば、塀の上の母親の横へすぐにひょいと上らせてあげるのだが、そんなことはまずさせてくれなさそうなのが、歯がゆかった。
 車道のほうへ行ってしまっては危ないので、うかつにも近寄れず、結局何もできることがなくて、渋々その場を離れた。
 子猫のいたコインパーキングから道を挟んで斜め向かいにある駐車場に、また猫がいた。茶トラに白で、体の大きさやふてぶてしい顔の感じから、オスだろうと思った。もしかして、さっきの子猫の父猫かしらと思った。
 幼稚園の用事を済ませてコインパーキングに戻ったら、やっぱり子猫がうろうろしていて、駐車場の裏の家の一階の屋根から、母猫がそれを見ていた。
 家に帰って、寒い季節ではないし、しばらく雨も降らなさそうだが、子猫はどうしているだろうと気になった。
 次の日に、キャットフードを持っていってみたら、もう子猫も母猫も姿が見えなかった。杞憂に過ぎなかったのかもしれなかった。
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