みゆちゃんの不貞寝

 こないだの土曜日に日本海へ泳ぎに行った。遠いので、時間を節約するために朝食は車内で取ることにして、お茶などの準備をして出かけようとすると、みゆちゃんが玄関までやってきて、寂しそうな目をして見上げた。普段の外出時にみゆちゃんが見送りに来ることは滅多にないのだが、朝食を食べずに出掛ける場合は帰りが遅くなるときだったり、旅行のときだったりするということをみゆちゃんはよく知っていて、敏感に察知したのだった。後ろ髪を引かれるような思いで、玄関のドアを閉めた。
 翌日曜日にも、友人の家族と六甲山へ行く予定が入っていた。前日ほど朝早くはなかったけれど、やっぱりほぼ一日留守にして、日が落ちてから家に帰った。私は暑さで体調を崩してしまったので、その日はみゆちゃんのことに気が回らなかったのだが、その夜、いつもなら夜中に二度三度起こしに来るみゆちゃんが、一度も来なかった。
 おかげでよく寝られたのだけれど、朝起きるとみゆちゃんの姿がない。いつもおはようと挨拶するのに、どこへ行ったのかしらと探したら、押入れの中の収納棚のうしろで、向こうを向いて寝ていた。
 私が覗いていることはわかっているだろうに、知らん顔をしている。
 朝の諸々の用事がひと通り済んで落ち着いてから、もう一度押入れを覗いて「みゆちゃん」と声をかけたら、にゃあと答えて出て来た。それがあまりにも可愛いので、抱っこ嫌いを承知で抱きしめたら、みゆちゃんも、いつもよりは心ばかり長く私の腕の中でじっとしていた。
(今になって思うに、六甲山へ行った日の夜、みゆちゃんが私を起こしに来なかったのは、私の体調を気遣ってのことではなかったかと妄想する。)
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