便秘疑惑

 このあいだ、みゆちゃんが便秘になっているのではないかと思われた期間があった。
 我が家には猫トイレをふたつ設置しているのだが、みゆちゃんふくちゃんはそれぞれ別のトイレを使っていて、またそれぞれ形状が違うので、誰が出したものかはすぐ判別できる。
 いつもは夜のうちに出ていて、朝起きるとトイレの中にあるはずのものが、ある日なかった。体のリズムが少々ずれたのかしらと思って一日様子を見たけれど、次の朝にもなかった。便秘なのかと不安になった。
 みゆちゃんは子猫のときに便秘になったことがある。うちに来てしばらくあと、交通事故の大怪我から回復した頃で、怪我の後遺症で粉砕骨折した腰の骨のあいだが狭くなっていることが原因だと思われた。トイレに座って苦しそうにしているのが可哀想で、なんとかならないかとご飯にサラダ油や、茹でた人参、サツマイモをすったのを混ぜたり、おなかをマッサージしたりした。
 幸い、成長とともに腰骨の間隔も広くなったのか、その後便秘は解消したが、いつまた再発するかもしれないという不安はあって、決まった時間に出ていないと、気が揉まれた。
 今回、二日間も出ていないようなので、私はもうじっとしていられずに、まだかまだかとしょっちゅうトイレの砂をスコップでかき回して探しては、がっかりした。缶詰にマーガリンを混ぜて与えたり(でもみゆちゃんはあんまり食べないで、その残りを太り気味で食べて欲しくないふくちゃんがきれいに、お皿がぴかぴかになるまで平らげてしまった)、おなかをさすったりした。ネットや本で調べると、猫は水分が不足気味になりやすいので、水を飲ませるように心がけましょうとあったので、私はしばらくしまっていたみゆちゃんのお気に入りの花瓶を食卓に出した。
 口が少し広くなった青いガラスの花瓶で、これに花を活けて置いておくと、いつもみゆちゃんがそこから水を飲むのである。しかし、切花の中には猫のからだに悪いものも多々あるだろうし、たいていは買ってきたあと毒がないかネットで調べてはいたが、それにも限界があるから、ここしばらくは、口がすぼまって水が飲めない別の花瓶を置いていたのである。
 その横に、今度は純粋に猫のための飲み水として、青いガラスの花瓶を置いた。さっそくみゆちゃんがやって来て、目を細めながら可愛らしい舌で水を飲んでいった。
 三日経っても、まだ出ないようだった。ただ不思議なのは、みゆちゃんが少しも苦しそうではないのである。何度もトイレで力むということもないし、いつもどおりに涼しい顔をしている。おかしいなと思った。
 結局、みゆちゃんは便秘ではなかった。普段使っていない部屋の隅の、段ボールが積み重ねてあるところに、こっそりしていたのである。それを見つけたとき、私は胸のつっかえが取れたように、本当にほっとした。
 便秘ではなかったけれど、予防策として、青いガラスの花瓶は、本来の使い方をされている花を生けた花瓶の横に、常設することにした。
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