杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ラースと、その彼女

2009年08月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年12月20日公開 アメリカ 106分

アメリカ中西部の小さな町に暮らすラース(ライアン・ゴズリング)は、純朴で優しい青年で町の人に好かれているが、独りが好きで彼女もいないため兄夫婦ガス(ポール・シュナイダー)とカリン(エミリー・モーティマー)は心配しあれこれ世話を焼いていた。そんなある日、ラースが「彼女を紹介する」と兄夫婦のもとにやってくる。しかしラースが連れてきたのは、ビアンカと名づけられた等身大のリアルドールだった。兄夫婦を始め、街の人たちは驚きながらも、ラースを傷つけないようにビアンカを受け入れようとするが…。

主演のライアンは『きみに読む物語』に出てた俳優さんなのね。整った優しい顔立ちが印象に残ります。

内気な青年が“リアルドール”に恋したという設定はかなり奇抜ですが、それを彼の妄想と否定するのではなくラースを傷つけないようビアンカに接する兄夫婦や町の人や彼の友人たちこそ、ラースに劣らず優しい人々じゃないかしらん。

カナダ・トロントの田舎町が舞台で冬の凛とした空気と清浄な雪景色が、登場人物たちの温かさをより一層輝かせていました。実際、都会でこの設定はありえないでしょう(^^;

初めはただの人形としか見えなかったビアンカが、物語が進むにつれて感情を持った人間のように思えてくるのは俳優陣の演技と脚本の賜物なのでしょうか。

ラースが何故そのような妄想を作り出したかは、彼の生い立ち(誕生と引き換えに母を喪い、そのことで人が変わってしまった父親を嫌い家を出た兄に取り残された)や、自分でも気付かなかった職場の同僚マーゴ(ケリ・ガーナー)への恋心にあるようですが、周囲がラースを嘲ったり拒否したりせずに、彼の現状をあるがままに受け止める姿が素敵です。

兄は初めは弟の異常を受け止められずに苦しむのですが、それもまた当然の姿だと思います。隣人を愛せとの神の教えを体現するかのような町の人の優しさは、彼らの敬虔な信仰心が大きく働いているのでしょう。

ビアンカの「病気」が重くなって死を迎えるのとは逆にラースの心は修復・治癒に向かうのが印象的でした。担当のバーマン医師(パトリシア・クラークソン)の対処法も淡々とした中に深い理解を感じられて良いなぁ。

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