2020年2月7日公開 アメリカ 109分 G
インターネットの出会い系サイトを通じて知り合った老紳士のロイ(イアン・マッケラン)と未亡人のベティ(ヘレン・ミレン)。実はベテラン詐欺師のロイは、夫を亡くしてまもない資産家ベティから全財産をだまし取ろうと策略をめぐらせていた。世間知らずのベティは徐々にロイのことを信頼するようになるのだが、単純な詐欺のはずだった計画は徐々に思いがけない方向へと進んでいき……。(映画.comより)
暴かれるのは、人間誰しもが抱えて生きていかねばならない秘密と嘘。偽りに満ちた人生の奥底にある真実とは――。(公式HPより)
ニコラス・サールの小説「老いたる詐欺師」を原作に、夫を亡くした資産家と冷酷な詐欺師が繰り広げるだまし合いを描いたクライムミステリーです。
初対面の時、二人は互いに偽名を使い嘘のプロフィールを載せていたことを告白し合い、逆に意気投合します。ベティは孫のスティーブン(ラッセル・トーヴィー)が唯一の家族だと語り、ロイも3年前に妻を亡くして一人息子のロバートはオーストラリアに住んでいると語りました。
しかしロイはベテラン詐欺師で、仲間のヴィンセント(ジム・カーター)と組んで投資家のブリン(マーク・ルイス・ジョーンズ)を騙そうと企んでいました。ロシア人投資家のヴラド(ヨハンネス・ハウクル・ヨハネッソン)との投資話をブリンに持ち掛け、彼の不注意からご破算になりかけたところをとりなして出資金を倍にさせて交渉成立したところへ警察官が突入してきます。ブリンは青くなって逃げ出しますが、それこそがロイたちの作戦で、彼らは大金をGETします。
ベティとデートを重ねるロイは彼女の信用を得ていきます。膝が悪いと言うロイをベティは自宅に滞在するよう誘います。
さりげなく彼女の資産状況を聞き出したロイはハイリターンな投資話を持ち掛けますが、彼女は回答を保留します。二人で旅行しようと提案するロイに、ベティは夫と行く筈だったパリやベネチアやベルリンを希望します。持病の発作を起こして倒れたベティに、駆けつけた主治医は、治療しなければ一年の命だと告げますが、彼女は療養を拒否、ロイは仕方なくベティの望み通りパリとベルリンに行くことにします。
その前にロイは、悪事の片棒を担いだヴラドに脅迫され、彼を駅のホームから突き落として殺害するんですね。何とも冷酷な奴!
ベルリンに着いた二人をスティーブンが出迎えます。ベティはロイを驚かせようと黙っていたと言いました。疲れたというロイをホテルに残しどこかへ出かけたベティは掌に怪我をして戻ってきます。二人を迎えにきたスティーブンは、とあるアパートの前で、ロイの過去を暴きます。第二次世界大戦終戦後の1948年。ロイ(フィル・ダンスター)はナチスの戦争犯罪を調査する諜報機関「Vセクション」の諜報員として相棒のハンス(ローリー・デヴィッドソン)と、ある人物の調査にあたっていて気付かれ銃撃を受け命を落としてしまいます。ロイに似ていたハンスは、チャンスとばかり彼にとって代わることを思いつき、イギリスに渡ってロイを演じてきたのでした。そう、ロイはハンスだったのです。更に彼には余罪があるというスティーブンをベティは遮ります。
ロンドンに戻ったベティは、共同口座を作ろうとハンスに持ちかけます。彼女から全てを奪おうと目論むハンスは、ベティの余命を知り躊躇うヴィンセントを立会人に仕立て、共同口座を開設して互いの全資産を入金し、二人だけがアクセスできるパスワードを設定します。取引が完了し、ハンスは息子と会うと嘘をついて立ち去ります。
ところが、ハンスがタブレットを使って金を引き出そうとカバンを開けると、タブレットがありません。慌ててベティの家に戻ったハンスの目に映ったのは、家財道具が持ち出された空っぽの部屋にタブレットを手に待ち構えているベティの姿でした。
ハンスは15歳の時、ベルリンの資産家の令嬢リリー・シュローダー(ネル・ウィリアムス)の英語の家庭教師をしていましたが、ある日リリーの3人の姉にからかわれ、その一人にキスしようとして拒否されて侮辱されたと感じた彼は、憤りに任せてリリーをレイプしたのです。姉たちの嘘を信じた父親がハンスをクビにしたことを逆恨みして、彼が戦時下で不正に金儲けをしたと密告したことで父は逮捕され、母は自殺、空襲で姉たちも亡くなっていました。そのリリーこそがベティその人だったのです。
当時、リリーはハンスに好意を持っていて彼の髪の毛をロケットに入れていました。彼女はベルリンの生家の床下に隠していたロケットを回収し、髪の毛を鑑定にかけてハンスが自分をレイプした本人であると突き止めた上で、彼への復讐を実行したのです。
持病も嘘で、医者も偽物、更にスティーブンも本当の孫ではなく、ハンスを調べさせていたことが明らかになります。リリーは、あの日から自分はあの部屋に閉じ込められたままだったと語り、ハンスに正面から向き合うことで解放されたかったのだと言います。ハンスは性懲りもなく彼女に襲い掛かりますが、そこへ過去にハンスが騙した投資家や痛めつけた詐欺仲間がやってきて、ハンスを拉致していきます。彼女の復讐は遂げられたのです。
後日談として、ヴィンセントが入院しているハンスの見舞いに訪れるシーンが登場します。耳は聴こえるけれど話すことはできない彼は、車椅子に乗っていてとても老け込んでいました。一方で、リリーは家族や友人を招いてホームパーティーを開いていました。
行いに対する当然の罰を受けたハンスに同情の余地はないけれど、最後の姿はやはり哀れに見えました。
いざ、心を決めたとなると女は強いのよ