2016年5月21日公開 ドイツ 95分 PG12
ハンネス(フロリアン・ダービト・フィッツ)と妻キキ(ユリア・コーシッツ)は、昔からの仲間たちと毎年恒例の自転車での旅に出ます。行き先を決める当番の彼らが選んだのはベルギー。仲間たちはベルギーには見どころがないと不満を漏らしつつ出発します。旅の途中でハンネスの実家に寄り食事を共にしている時、ハンネスの母(ハンネローレ・エルスナー)が急に涙ぐみます。訝る仲間たちにハンネスは今回の旅の目的を明かします。実はハンネスは亡き実父と同じ筋委縮性側索硬化症(ALS)を発症して余命わずかであり、尊厳死が法的に認められているベルギーで死を迎えることを決めていました。突然の告白に仲間たちは激しく動揺しますが、彼の思いを受け入れて旅を続けます。旅の間にもハンネスの容体は悪化していきますが、それでも子供のようにはしゃいで楽しい時間を過ごしますが・・・
不治の病を宣告された男性が妻や仲間とともに旅を通じて命と向き合う姿を描いたドイツ映画です。
夫婦が一緒に旅する仲間は、ハンネスの親友のミヒャエル(ユルゲン・フォーゲル)、ドミ(ヨハネス・アルマイヤー)とマライケ(ヴィクトリア・マイヤー)夫婦、ハンネスの弟のフィン(フォルカー・ブルッフ)です。途中でミヒャエルが出会った若い女性ザビーネ(ミリアム・シュタイン)も合流します。
旅の始まりに立ち寄ったレストランで恒例の「課題」を出し合うのですが、これがとんでもない内容だったりするの 高所からのダイビングなんて可愛いもんで、女装するだの職権乱用で法を犯すだの、エホバの証人の信者を殴るとか、挙句に乱交って
しかもそれぞれちゃんとクリアするあたりも凄い
本人が決めた事を尊重し、残りの時間を悔いなく過ごせるよう、普段通りに振る舞い、時には子供に返ったようにはしゃいでもみる仲間たち。
ハンネスの父親の闘病生活で家族や周囲の人たちの苦労も知っているからこそ、軽々しく反対もできず、かといって大切な人との別れの日が確実に迫っていることへの怖さや何もしてやれない無力さに揺れる心を抱えながら遂にベルギーの国境まできます。
ザビーネとはここで別れ、一行は約束の医師を訪ねますが、何と彼は全日に事故に遭っていました。代わりの医師が翌日対応することになり、ハンネスは最後の夜をキキと二人で過ごします。雨の中、ハンネスへの「課題」であるダンスを踊るシーンが切なく美しいです。
翌日、家族や仲間たちに見守られながら、キキの腕の中で安らかに息を引き取ったハンネス。1年後、ベルギーの浜辺に集まった仲間たちがハンネスを偲びます。浜辺に書かれた文字「HANNES WAS HERE(ハンネスはここにいた)」が映し出され・・・END
尊厳死が認められている国で、自らの意志で死を選んだハンネス。自分が同じ立場なら、まして父親が同じ病で亡くなっているなら、やはり同じ選択をするかも。自分の身近な人たちに苦労をかけたくない気持ちは痛いほどわかります。
でも逆の立場だったら・・・少しでも長く一緒にいたいと思うんじゃないかな~~。納得して「どうぞお逝きなさい」なんて言えないなぁ
それでも、あのラストシーンは、見送った側の人たちが彼の意志を受け止めた上で、自分たちの生を生きていることの証になっているのかも。