モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

心安らぐ景色

2021-10-27 23:04:01 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

寒くて布団に入るとうっかりそのまま寝てしまうことが多いです、ナツメです。今回は日曜クラスの釘宮さんの作品をご紹介します!

基礎デッサンが終わって、初めての水彩画ですが、とても丁寧な仕事を積み上げ完成されました。一見、苦労なく仕上がったように見えますが、立ち枯れした木の遠近感が出せず試行錯誤されました。遠近法にも多くの種類がありますが、ただ背が高い・幹が太い・下の方にある、というだけでは手前に感じません。濃淡の強弱が必要です。空気遠近法といって遠くのものほど大気の影響で霞んでいくことから、手前を濃く、奥にあるものを淡く塗ると遠近感が出ます。あまり強弱をつけすぎてしまうとうんと遠い場所にあるかのように見えてしまうためその調整が難しかったようですが、細やかな仕事によって見事に木で構成された空間を表現されています!

晴れた空や周囲がくっきりと映るほど風もなく静かな様子に、この場所に立って深呼吸したくなるような澄んだ空気を感じますね。くっきり、と書きましたが水面に映っている木は虚像ですので、少しぼんやりしていて暗めになり、そのポイントもしっかりと抑えられているため実像の木にすっと目がいきます。そしてその木や雲の影など、僅かな色の違いや変化に反応されているのも見事です!例えば模写やデッサンなどでそっくり同じものを描きたい時も右から左へと機械的には写せず、一度自分にインプットしてからそれを出力する、という作業になります。自分が認識した分の情報しか描けないため、この絵からは釘宮さんが情報の読み取りに長けていることまで伺えます!

一作目の今回は透明水彩でしたが、ぜひ色々な画材に挑戦して好きな絵の具や表現方法を見つけて欲しいです。今後の作品にも期待大ですね!!

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記憶と共に

2021-10-13 23:23:42 | 大人 水彩


佐々木 透明水彩

ナツメです!近頃はいくら寝ても眠くなります。

今回は日曜クラスの佐々木さんの水彩画をご紹介します!

2枚とも息子さんたちを描かれた作品です。下に塗った色を活かした透明水彩ならではの優しい色彩の重なりが素敵ですね。その中でもメインの2人は濃くなっており、パッと見た時に視線が吸い寄せられます。2人ともマスクをしているので右の作品の方が最近の様子でしょうか、成長しても仲良しな兄弟の淡い色合いで表現された柔らかい雰囲気や仕草も見どころです!

さてこちらの2枚、目を合わせずともお互いをを理解し合っているような、兄弟の信頼感や距離感まで伝わってきませんか?どちらの作品も記念写真のように発表会などの特別なシチュエーションだったり、こちらに向かってピースや決めポーズをしたりしている場面ではなく、2人が過ごしている何気ない日常を切り取ったシーンを描いています。そのようなふとした瞬間の視点を取り上げることで、生活感が実感としてひしひしと伝わる絵になっているのだと感じました。

私はそろそろ成人する年齢なのですが、この歳になると家族の会話や親戚の集まりなどで昔の写真をきっかけに自分の小さかった頃の話を機会が増えてきました。絵も振り返って見ると描いていた時の記憶や風景が甦ってくるなあと思いタイムマシンのようだと考えたのですが、今回の佐々木さんの作品もまさにご兄弟の思い出に加えて描いている時の佐々木さんの気持ちも残る、記憶を辿ることのできるタイムマシン的要素としても素敵な記録になると思います!

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やめ時の見極め

2021-09-24 22:56:50 | 大人 水彩


西山 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは西山さんの作品です。いつもサラッと描いていつの間にか水貼りを剥がされているので、なかなか写真が撮れずブログアップを逃していましたが、この度ようやくチャンスに恵まれました!

絵画は中々やめ時を見極めるのが難しく、描きすぎるとかえって台無しになってしまう事もあります。水彩画は特にその傾向があり、絵の具を重ねすぎてしまうと色が濁ってしまいます。西山さんはミオスでもベテランで、長い間透明水彩に取り組まれているだけあり、そのやめ時がしっかり見極められていますね。どこを沢山描いて、どこをサラッと仕上げるか、その画面のバランスの取り方もお見事です。
例えば左の絵は、見所でもある小屋と近くの木は色を濃いめに乗せ、地面や背景は色を薄く滲ませて塗っています。サラッと塗っているだけでも、奥に木々がある事や平ではない地面の質感がよく伝わってきますね。これを11本すべてしっかり描たり、べったりと地面を隅まで塗ってしまうと、この空気感は損なわれてしまっていたでしょう。何より、絵の中で何が主役なのかがハッキリとしています。
また、右の絵も紙の白を残し方が非常に上手いですね!水面の煌めきや、少し雲がかかった空の様子などが紙の白という"描いていない"部分から伝わってきます。水の青色や奥の山々も色の滲みと感触がとても美しいですね。透明水彩の良さが引き出されています。川の流れる水音や、澄んだ空気の匂いまでも感じられるようです。奥にかかる橋の赤色も、自然物の柔らかい色合いの中でアクセントになっており、画面を引き締めてくれています。その橋の描写も、遠くにある物なのでハッキリと描きすぎず、けれど橋と分かる絶妙な描き込み具合になっていますね!

冒頭でいつもサラッと描いて、と書きましたが、サラッと描いて1枚の絵として完成させるまでに西山さんは何十枚も練習と下準備を重ねられています。本番よりも練習と下準備の方が長いくらいです。描くのにある程度慣れてきた方も、今一度西山さんのように1枚の絵の為に下準備に時間を掛けてみてはいかがでしょうか?

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エスキースを重ねる

2021-09-18 19:44:40 | 大人 水彩


佐藤,K 透明水彩

岩田です。

本日は、チケットで通われている佐藤さんの作品をご紹介します。

青鷺が水の中で静かに佇んでいる風景は、私の住む地域にもよく見られます。じっと動かずに獲物を狙っているであろうその様は、微笑ましくも美しい日本ならではの光景です。

こちらの作品は全体的に青い色調がとても印象的です。茂った木々の陰に水からの反射を反映させることで、独自の世界観を作り出しています。
又、寒色系の様々な色を取り込むことで、実に豊かな印象を醸し出しています。

とはいえ、この絵を描くまでには様々に思案しながら実験を繰り返しました。それが下の2点の絵です。  

左手は、緑を主体に構成していますが、木々と水の色味と似通っている上に、水が濁っているような印象を受けます。
右手は、鷺が大きく入っている分目を引きますが、木々の陰色があまり綺麗に見えません。
こうして比較してみると、上段の作品が特に活き活き見えてきます。

一枚の作品を描く為にエスキースを重ねることは重要なことですが、更に佐藤さんは実際に色を使ってシュミレーションを重ねています。こうした積み重ねをこれからも続けていくことが絵のクオリティーを確実なものにしていく源泉となるでしょう。

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かっとばせ〜!!!!

2021-09-07 21:39:00 | 大人 水彩


大平 透明水彩

急に寒いですね〜、一平です!本日は先日退会された日曜クラスの大平さんの水彩画をご紹介します!

ご自身も野球部であった事からファンであるイチロー選手を描かれました。野球を全く知らない僕でも知っているスーパースターの1番特徴的な瞬間ですね。ちなみに左上の電光掲示板の上には歌手の秦基博さんが歌っています。秦さんの楽曲の中に「月に向かって打て」という曲があるらしいのですが、その曲のイメージとイチロー選手の選手としての存在感からインスピレーションを受けて今回制作されました。

やはりファンであるイチロー選手からは絵の中でも圧倒的な主役感がありとてもかっこいいです。未来を見据えているような力強い眼差しが渋いですね。よく見ると背景の電光掲示板にはアトリエミオスのロゴマークや、絵の登場人物の名前などが描かれており、そういった遊び心も大平さんの絵の魅力の1つです。また、ユニフォームの普通の服とは違う独特な厚みのシワ感やグローブのヌメ感、ナイターの光が反射しているヘルメットのテカリ感など色々な素材のものが混在しつつ、しっかりと描き分けがなされているので見ていて違和感がありません。僕が思う大平さんの作品の強みはこの「違和感のなさ」だと思います。普通では電光掲示板の上に人が乗っていて歌を歌っているなんて事は中々ありえません。ですがそこに観察力と描写力を加える事で絵が本来は違和感があるのに、違和感がない、なんだか不思議な雰囲気が出来上がっているのです。ありえない事を絵の力を持って可能にするパワーが大平さんの絵にはあります!初めて絵を描く生徒さんはいつも「間違えてはいけない」「間違えるのが怖い」とおっしゃりますが、何度も間違え、失敗しないとこの空気感は作れないはずです。

ちなみに、丁度10年前の201110月に入会された大平さん。僕も未成年の頃から大人クラスの宴会に参加していたので(勿論お酒は飲んでいません)、顔見知りの方でしたし、ミオス展覧会で作品もずっと拝見して来ました。いつも柔らかい空気感で子供ながらに魅力を感じていたのでよく覚えています。

僕がミオスの大人クラスでバイトしはじめの頃の辿々しい話を優しい笑顔でいつも聞いてくれていた大平さん本当にお世話になりました!ミオスでは最後の制作になりましたが、絵を描くのが終わったわけではありません!絵はどこでも紙と鉛筆があれば出来てしまいます。またどこかでお会いできるのを楽しみにしております!

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様々なモチーフにチャレンジする。

2021-08-07 16:20:15 | 大人 水彩


杉田 透明水彩

暑い日が続きますね。今日は熱中症気味でした皆さんもどうぞお気をつけください。
本日は、土曜午前クラスの杉田さんの作品をご紹介します。

透明水彩を一貫して続けられ、様々なモチーフにチャレンジしている杉田さん。近作2点をご紹介します。

左手の機関車と女性の作品は、雑誌の写真を元に描きました。
全体的に暗いトーンで女性の衣装とバックの機関車の色がとても似ています。互いを描き分けるのはとても難しいですが、メカニカルな金属感と布の柔らかな質感を描き分けており、その対比がとても綺麗です。

右手は最新作のカメレオン。砂漠に只一匹歩く姿をユーモラスに描いています。
真っ青に晴れた空に乾いた砂の色、カメレオンの鮮やかな姿がとても印象的です。左隅の木以外は全く何もない大地の広大な空間をヒビ割れを手掛かりにしながら空間的に描き切っています。
カメレオンの硬い皮膚に刻まれたシワも繊細なタッチで克明に描かれているのです。

透明水彩は油絵と比べて修正が効かないと思っている方も多くいらっしゃって、始めるのを躊躇する方もいらっしゃるようです。
厚手の丈夫な水彩紙で描けば形の修正なども可能なので、是非トライしてみてくださいね。

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生き生きとした印象

2021-06-05 18:47:32 | 大人 水彩


西  左/ペン  右/透明水彩

岩田です。
今回は、土曜午後クラスの西さんが描かれた作品をご紹介します。

西さんは今までも油彩、水彩など様々なモチーフも描いてきました。
そうした中で、対象を観察する力と描く力をバランスよく養ってきました。何よりも絵の中のトーンや色幅が増え作品が近作は特に生き生きとした印象を感じます。

今回は今まで使っていなかったペンを駆使した作品ですが、どちらも魅力的な作品に仕上がりました。

左手はライオンの子供が大きい岩の上でくつろいでいる姿を描いたものですが、ペンと墨で構成された世界がとても美しく、岩の質感なども緻密なタッチで描かれ、その描写には目を見張られます。
右手の猫の作品は、パッと見た時に、何かとてもリアルな印象を受けます。
猫が何かに目を奪われそちらをじっと集中して見ているような、命あるものの躍動感すら感じてくるのです。

描画材の扱いもどんどん上達している西さん。
今後更にご自身がどういった絵を描いていきたいかを追求されいってください。

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爽やかな休日のような

2021-04-20 23:11:55 | 大人 水彩


遠藤 透明水彩

最近ずっと眠いです、一平です!本日は水曜クラスの遠藤さんの水彩画をご紹介します!

晴れた日の桜と並木道から見える東京タワー、どちらもとても爽やかかつ軽やかで見ていて気持ちが良いですね。遠藤さんはまだ入会されてから日が浅いですが、描く上で「ここさえ外さなければ絵が破綻しないだろう」、という勘がとても冴えているように感じます。
例えば左の桜の絵は初心者の方であれば、桜自体にもっと色を入れようとしてしまいそうなものですが、白とピンクのバランスが程よく、手数は少ないですが物足りない感じがなくとてもいいバランスです。下描きの鉛筆の線も汚く見えず、良い具合に桜の見え方をアシストしてくれています。周りの木や瓦屋根の描き込みとのバランスも相まって、桜がより引き立っている絵です!
右の東京タワーも地面であるグレーのコンクリートをただ灰色で描くのではなく、影の部分に紫など他の色を使うことで絵に深みを与えています。また、全体を緑、青系統の色で埋め、そこに赤い東京タワーを持ってくる色彩計画も素晴らしいですね。遠近感も自然で違和感なく見えてきます。
もう少し何枚か水彩を描いた後にデッサンを
1枚やってみると、凄く上手くなっているのが実感できると思います。水彩に疲れたら是非またやってみてください。

遠藤さん、普段は風景画を描く事がほとんどなので次はそれ以外の動物や人物画に挑戦してみてはいかがでしょう。明確な主役がいる絵も全体感が大事な風景画とまた一味違って勉強になりますよ!

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静物着彩之心得

2021-04-10 23:15:23 | 大人 水彩


河内 透明水彩


女子美術大学付属高校合格 中3の作品 透明水彩(1枚2時間)

 

本日も宜しくお願いします。岩田です。
今週は、透明水彩の作品を並べてみました。上段は、土曜午前クラスの河内さんの作品。

ご自身曰く「まだ透明水彩と仲良くなっている感じがしません・・。」とのこと。ところが作品を見るにつけ良く描いたなあという印象を持ちます。
特に目を引くのは赤いホーローポット。先ず大きく色を置き立体感を出しつつ、徐々に面相に持ち替えて細部を攻めていくといった、お手本のような描き方で進められたことを想像します。
その反面、やや苦労をしたのはガラス浮きではないでしょうか。保護網に覆われている故、如何に進めようか迷うことは致し方ないことです。
こうした場合、先ずは浮き自体の青色を乗せていくことが定石でしょうが、網に絵の具がはみ出てししまわないかと躊躇してしまうでしょう。
しかし下の色が透けやすい透明水彩とはいえ、更に明度が低い網の焦げ茶色が上から乗ることを考えるとその心配をし過ぎるのは無用です。
むしろやや大きめの筆で、浮きの丸みを意識しながら鮮やかな青色を思い切って乗せてみると良いでしょう。

下段は今年の受験生の作品です。
2時間という決して多くはない時間の中で、ご覧のような数多くのモチーフを描き切るのは至難の業と思えるかもしれません。
確かに一朝一夕で上手くはいかないでしょうが、こうした試験で求められるのは個々の描きこみよりも全体の印象。つまり如何に客観的に目の前のモチーフを捉えられているかです。

並べられたモチーフの中で、主役、脇役の序列を決め、主役は立体的且つ質感までしっかり描きつつ、主役から離れるに従って手を抜きつつ、上手く逃げることが大切です。
又、上手く逃げる為にも下描きがおろそかなまま焦って絵の具の仕事に入ってはいけません。
筆の筆致を主体に描いてもある程度描けそうな野菜や果物といった自然物はさておき、特に工業製品に伴う楕円やパース、レタリングといった筆だけに頼ると大きく形が歪んでしまう可能性がある部分はぐっと我慢して、下描きの段階でしっかり捉えておく必要があります。
画面の中で硬柔、遠近、静動といったメリハリのある一枚を心がけましょう。

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見る人も異国の地へ

2021-04-09 23:15:42 | 大人 水彩


佐藤.K 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させていただくのは、佐藤さんの透明水彩作品です。ご自身で旅行に行かれた、トルコのグランバザール(大市場)の様子を描かれています。前回描かれたトルコのモスクは陽の光に照らされた明るい画面でしたが、今回は薄暗い市場の中にお店の光が横断しており、天井はトルコランプがぼんやりと照らしています。ランプのレモン色がとても素敵ですね。人の目は明暗差が大きい場所に惹かれやすいので、画面全体を暗く色を落とす事でそれらの明かりをより強調させています。こうした暗い場所の風景は、明るい場所よりも色づくりが難しかったりします。暗い色を作ると濁った汚い色になりやすく、暗い色をどのように綺麗に見せるかが重要になってきますが、このように鮮やかな色と対比するように置いていく事でどちらもお互いの色を引き立ててくれます。
トルコランプの美しい模様や壁にぎっしりと並ぶ商品、床の石畳など画面全体に細かい描写が多くありますが、作品からは圧迫感や息苦しさは感じさせません。手前から奥に抜けていく構図がそう見せてくれているのでしょう。天井に並ぶトルコランプ1つ1つを眺めているだけでもワクワクしてきますね!大市場はトルコが発祥なのだそうですが、日本のように品物1つ1つに値札はなく店員さんとの交渉で価格が決まるそうです。そうした日本とは違った異国の雰囲気が作品からも伝わってきます。市場で買い物をする人々の様子も、自然な姿で描かれており、表情が見えなくとも何を思ってどんな話をしているのかが想像できますね。人が歩いている姿を違和感なく描く事は意外と難しいもので、佐藤さんもかなりこだわって描かれたのではないでしょうか。

自分の旅路をこうした作品に活かせるのはとても楽しい事だと思います。きっと、制作中もその時の思い出がよぎっていくのでしょう。そうして完成した作品は、見る人もその場所へと連れて行ってくれるかのようですね。

 

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一つの結晶となる。

2021-03-06 22:16:23 | 大人 水彩


杉田 透明水彩

3月になりました。卒業シーズン到来。

今回は、土曜午前クラスの杉田さんが描かれた作品をご紹介します。

杉田さんは一貫して透明水彩で描き続けています。以前は風景中心でしたが近年になりむしろ人を中心に描くことが多くなりました。
描いたのはベネチア・ムラーノ島。吹きガラス職人が集まる町とのこと。小原先生が旅をしたときに撮影された写真です。

簡素な工房で、吹いたガラスを独特の道具で成形しているその様に言い知れぬ情緒を感じます。
使い込まれた道具たち、木造りのベンチ、そうしたデティールに目を向けるとどれも丁寧に描き込まれています。
そうした茶色を基調とした全体のトーンの中に今にもとろけそうなオレンジ色をしたガラスが何とも印象的ですね。

まだ柔らかいガラスを扱う職人の姿が、コツコツとしかし確実に一歩づつ完成に向かって描き進めていく杉田さんとどこかリンクするようです。

対象を素直な気持ちで捉え、一枚の作品へと昇華させていく。

急いで沢山の作品を量産せずともその一枚を大切に描くことで、描き手の思いが素晴らしい一つの結晶となっていきます。




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透明水彩を極めましょう。

2021-01-23 00:43:12 | 大人 水彩


殿山 透明水彩

久しぶりの雨模様の土曜日、岩田です。

本日は土曜午前クラス、殿山さんの作品をご紹介致します。
透明水彩を中心に描き重ねてきましたが、特にそのクオリティーが上がってきています。

画像右、やかんと洋ナシを描いた作品を描いた頃から絵の具の扱いが格段に良くなってきました。
滲みやぼかしといった、絵の具を紙に置いた時に現れる自然の現象を筆で馴染ませ過ぎてしまうと、紙の上で乾いていない絵の具同士が混ざってしまい絵自体の鮮やかさが失われてしまいます。
殿山さんは、そうしたことにご自身が気づき、絵の具、水、紙との関係性に介入し過ぎないように配慮することで、透明水彩の長所を生かした絵が描けてきていると感じていらっしゃることと思います。

例えば、銅製のやかんの色合いを見ても鮮やかさが失われていない上に、その質感がとても自然に表現されているのが見て取れます。
左手の娘さんを描いた作品も、肌に透明感を感じると共に着物もとても華やかに表現されていますね。以前から娘さんの作品は何枚も描かれていますが、こちらの作品の色使いが最も美しいと感じます。

これからもこの調子で、透明水彩を極めていってください。

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美しいハイコントラスト作品

2021-01-09 21:19:27 | 大人 水彩


古屋 透明水彩

今年も始まりました。土曜日の岩田です。
本日は、土曜午前クラスの古屋さんの作品をご紹介致します。

秋に描き始めたということもあり、紅葉の景色をモチーフに描いた透明水彩の作品です。
様々に色付いた木々とそこに佇む神社。スカッと晴れた青空が覗く気持ちの良い作品になりました。

日向と陰によって作られたハイコントラストの世界。画面にそうした情景を生み出すには思い切って暗さを付けて紙白との対比を作ることがまずは必要。とはいえ、黒に近いような絵具を濃度が濃いままに色付けするのはとても勇気がいることですね。
でもこればかりは何度も繰り返しトライして、失敗を重ねながらその勇気と適切なテクニックを身に着けるしかありません。
こうした黒味を作るときも、先ずはブラックを使わず有彩色同士を混ぜ合わせましょう。でも色が締まらずどうしても黒を使いたいという時に気を付けながら徐々にブラックを混ぜていきましょう。

古屋さんも今回の作品に関して、描き出しはちょっとその辺りに躊躇されていた様子もありましたがだいぶ思い切りが付いてきたようです。鮮やかなパーマネントレモンの葉と逆光の木々も美しく映えています。
これから益々見識とテクニックを身に着け、更にレベルの高い作品を目指していきましょう!

本日の土曜日は授業がございましたが、明日、明後日は連休させて頂きます。日曜クラス・月曜クラスの方はお間違えのないよう、お気を付けください。
またそれに伴い、ブログもお休みさせて頂きます。

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佐々木家のアルバム

2020-12-08 23:10:10 | 大人 水彩


佐々木 透明水彩

サンタの気配を感じません、一平です!本日は日曜クラスの佐々木さんの水彩画をご紹介します。

お父さんがお子様達を描かれた2枚。どちらも佐々木さんらしい優しいトーンで描写されていてとても素敵です。
ご兄弟が2人で仲良く歩いていたり、こちらを振り返っている瞳の輝きから佐々木さんの家族への愛おしさを感じます。見ている僕達が佐々木家のアルバムを盗み見しているような感覚になりますね。

全体に強い色を使わず人物にもアースカラーを使い風景的に描くことで、より日常を切り取ったありのままの情景に感じられます。絵のために作ったような嘘っぽい表情ではなく、本当にその時こういう顔してたんだろうなぁと感じさせる自然な表情にも注目です。

絵を描く時、もちろん模写もすごく勉強になりますが、やはり自分の実体験を描く事はその絵自体の強みになると思います。見た人に「この2人はどこを散歩しているのかな」「なんだか楽しそうだな」と考えさせ、自分の体験を追体験させる事が出来るからです。もちろん自分が実際に感じた事と100%同じにはなりませんが、それはカメラで撮った映像や写真を見る事とはまた違った思い出の楽しみ方、振り返り方です。

今は写真が全てデバイスのなかにあり、写真の残し方も変わってきていてパラパラとアルバムをめくる、というようなご家庭も減ってきていると聞きます。ですがもし自分が大人になった時、ふとした瞬間にアルバムの代わりにこの絵を見たら、携帯で写真を見るよりもずっと暖かい気持ちになると思います。息子さん2人への素敵な未来のプレゼントになったのではないでしょうか!いや、絶対なりました!

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空気を描く

2020-11-10 21:44:38 | 大人 水彩


藤本 透明水彩 左(2020.10完成) / 右(2019.7完成)

羽毛布団大好き!一平です。本日は日曜クラスの藤本さんの水彩画をご紹介します。藤本さんの前回の作品(2018.11完成)はこちら

この2作品、左の方が暖かく右の方が寒そう、というような違う温度感が肌に伝わってきます。

古民家の並びとそれを分ける川が印象的な左の絵、暗い色を川辺以外にほとんど使っていませんが、中明度の色と明るい色のバランスを絶妙に保っていて、結果的にはお昼時の優しい日差しの印象を与えています。
右側の壁は逆光なので現実ではもう少し暗くなるはずなのですが、藤本さんの絵の中だとその暗さも野暮というもの。もしここにしっかりとした暗さが入っていたら絵の印象は崩れてしまうでしょう。バックの山々も明るくまとめているのも絵に合っていてとても綺麗です。(僕はいつも強い色を使いたがる傾向にあるので、このような優しい仕上げ方はとても勉強になりました
。)

また、雪景色の中の小さな民家と対照的に、画面の半分を占める大きな山が力強い右の絵。
こちらは反対に山の暗い色がポイントになっています。白くふわふわとした雪景色のなかに締まりを与えてくれていますね。柔らかい雰囲気だけではなく、キチッと締めるところは締める事で緊張感を作り出し、自然の厳しさまで感じさせます。一見寂しげに見えますが、民家に使われている暖色がこの雪景色のなかでオアシスとなっており、自然の厳しさの中に安心感もある、対照的な2つの要素が存在している面白い作品です。

2枚の絵、両方からとても澄んだ空気感が感じられます。見ていると行ったことも無い場所のはずなのに、なんだかノスタルジックな気持ちになるような、そんな柔らかい気持ちが生まれます。存在しない記憶が呼び起こされるという『絵の魔力』が存分に発揮されている2枚ですね。大学院の研究が忙しくなり10月で退会された藤本さん、たまに絵の具に触ってあげてくださいね!

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