モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

子どもの比率

2022-12-01 22:58:26 | 大人 水彩


殿山 透明水彩

気がつけば12月ですね!マユカです。今回は殿山さんの水彩画をご紹介致します!
 
夏祭りに参加する、可愛らしい女の子を描いた一枚。モデルは殿山さんのお嬢さん。
りんご飴と、かき氷を手に嬉しそうに笑っているところを見ていると、なんだかこちらも嬉しくなってしまうような笑顔です。
ほっぺの血色感は、表情を明るく見せるだけでなく、ハリのある皮膚の立体感まで生み出しています。笑ったときにできる涙袋がとってもキュート!自然な表情筋の動きが描きあらわせているところから、殿山さんがしっかりと時間をかけて観察したことが伝わってきます。背景は手前ほどは描き込まずに、水彩のにじみでぼんやりと描くことによって、女の子にピントが合い、にぎやかな背景にも埋もれずに見えています。お祭りの雰囲気が伝わってくるようですね。
繊細な着物の柄も、えりや裾の端まで描きこまれていますが、着物のふんわりとした布が立体的に立ち上がって見えるのは、陰影の入り方はもちろん、布の形に応じて着物の模様が変形しているためです。また、表の模様が裏側へ透けて見えているところから、涼しい素材なんだろうな、という情報が伝わってきます。着物が重く感じないのは、そのためでしょう。
 
ところで皆様、この左側(原画)の夏祭りの女の子、何歳に見えますか?
実は幼稚園生なんです。描いている内に少しずつ比率が伸びてしまって、小学生のお姉さんのようになってしまいました。
そこで、まことに勝手ながら、フォトショップで少々加工させて頂き、幼く見えるようにしてみました。首から下をより短くして、帯が少し上の方に来るようにしています。こうすることで、小さな子ども特有の丸みを帯びたシルエットが見えてきます。
私は彼女に会ったことがないので、右の加工が正しいかどうかは親御さんしか分からないとは思いますが、より幼気のある表情に変わったのではないでしょうか。
 
幼い、と言っても赤ちゃんから小学生低学年まで幅広くありますし、このくらいの時期は成長も早いため、描き分けがかなり難しいですよね。
ちなみに、私が小さな子ども達を描くときはほっぺを大切にしています。幼ければ幼いほど、こぼれおちそうなほどにもっちりとしたほっぺを描いてあげると、愛らしさが増し、幼く見えます。お顔のパーツは少し大きめに描いてあげるといいかもしれません。逆に大人になるにつれて、あごや指先をシャープにしてあげたり、顔のパーツを気持ち小さめにしてあげると、大人っぽく、すっきりとして見えます。
顔周りだけでなく、指先や肩周りなど、全体のシルエットを意識してあげることが、人物を描き分けるコツです!皆様も人物を描く際にはぜひ意識してみてくださいね!
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柔らかく優しい作品

2022-11-04 20:50:15 | 大人 水彩


室井 透明水彩

大竹です。本日ご紹介させて頂くのは室井さんの水彩作品です。入会後の基礎デッサンが終了し、初めてチャレンジした透明水彩画だそうです。笑顔にピースの可愛らしいおばあちゃんの肖像画ですが(すごく似ています!)、写真を見ながらプレゼントする為に制作されていました。

発色の良い透明水彩の特徴を活かし、色を重ねすぎたり、混ぜすぎないよう塗られているのでしょう。絵の具も濁らず全体的に柔らかい色合いでまとまっています。背景の青や緑は、1色を濃淡を作って塗ることで単調にならないよう工夫されていますね。油絵にはない、水彩の美しい滲みがなんとも魅力的です。
帽子やシャツも丁寧に形を描かれており、絵を通じて作者の制作姿勢が見えてくるようです。帽子のつばやシャツの襟、手のひらなどは影をしっかり作り立体感を出していますね。そしてメインとなる人物の顔は凹凸を細かく追い、明暗を捉えています。一番出っ張っている鼻や人中の右側は光が当たり明るい為、色を重ねず薄く塗ったまま残し、目頭周辺のくぼみや鼻の左側、ほうれい線などは影で暗くなっているので色を重ねて濃くしています。人の顔の立体感を表現する上で押さえるべきポイントをきちんと捉えて描かれていますね。
背景と人物の関係も、奥の背景は所々に画用紙の白を残しながら薄く塗り、手前の人物は塗り残しのないようしっかりと絵の具を重ねて塗っていく事で、平面の紙の上で前後感を表現しています。初めての透明水彩という事で、慣れない絵の具の扱いに苦労されたかと思いますが、水彩らしい柔らかく優しい作品になりましたね。

仕事がお忙しく、月に1・2回しか来られないことも多いですが、それでも仕事帰りに通われる情熱に脱帽です。この絵は額装して、無事におばあちゃんに渡せたそうですが、とっても喜んでくださったそうで私も嬉しく思います!

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建物への意識を

2022-10-22 17:47:22 | 大人 水彩


佐藤k 透明水彩

岩田です。今日は、佐藤さんの透明水彩の作品をご紹介します。

こちらは、ドイツのハイデルベルグという都市、ネッカー川に架かるカールテオドール橋の風景を描いたものおです。
こう見ると、かなり大きい川のようで、橋の上を歩く人の小ささをみても橋自体がとても大きいものだと思われます。風景を遠くから俯瞰して捉えている故、大きい広々とした感じが良く出ていますね。

背景の森?もしくは山なのか、その鬱蒼とした表情を透明水彩を淡く使って表現しています。
川に反射している建物、この辺りとても良いです。はっきり描きすぎず、かなりぼかしながらその雰囲気を上手く伝えていてとても綺麗です。そのお陰で、手前に架かる橋との空間も出ています。

そうした良いところもありつつ、私が敢えて指摘したいところは、建物のかたち、構造的な見方。それらが歪んで見えるのは気になりますね。
奥はまだしも、手前の建物だけでも、もっとしっかり描けていたら、全体の見え方も違ってくる筈。
佐藤さん、建物は沢山描いていると思うので、そこは気を付けましょう。
とはいえこれだけあると、一つ一つきっちり描くのも大変なのは分かりますが、何とか頑張って下さい。

そして最後に、もう一度背景の色の使い方で言うと、緑の中でも例えば青や他の色に振ってあげることで、更に見え方が良くなると思います。

あらためて、建物は今後も是非気を付けて描いていって下さい!

動画では、作品を近づけたりして詳しく解説しています!YouTubeはこちら

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気配の表現

2022-09-14 23:54:31 | 大人 水彩


殿山 透明水彩

夜は窓を開けて過ごせるようになりましたね、ナツメです。本日は土曜午前クラスの殿山さんの作品をご紹介します!いつも透明水彩の作品を描かれていますが、今回は街の風景を選ばれました。

街中を照らす夏の強い日差しが印象的です。日の当たった地面の明るさと重なり合う葉が落とす陰の暗さとの強いコントラストが、日差しの強さだけでなくじりじりとした暑さまで感じさせます。近頃少し涼しくなってきたのでこんな日差しもなんだか懐かしく感じますね。

デッサンのパースはもちろんですが、手前のお店にはほぼ真っ白に近いような明るさを置き、そこから奥へ行くに従って彩度と明度差を落としているため、開けている路の距離感へと繋がっています!遠近感の表現に関して、もう一つの注目ポイントは地面です。人間の目が明るさを追う習性を利用して、暗い明るい暗い明るいと地面に影と影のない場所を交互に作るという技法があります。そうすることで目がどんどん次の明るさを追っていくため空間がより広く見えるという仕組みで、ジブリの背景美術などでも使われているそうです。

また、看板の図柄や店の窓に貼ってあるポスターに至るまで、ずっと眺めていたくなるほど非常によく観察して描かれています。絵の雰囲気を邪魔しないよう緻密にしすぎない絶妙なラインに止めており、人気のない風景ながらもここで生活している人が背景に感じられます。ここまで細部を描いているのに対して歩いている男性の描写は色分け程度の最低限に抑えてあるのにお気付きでしょうか。影などの描き込みをほとんどしないことで、物理的な人間として描くのではなく、存在感を形にするような表現としてされているようにも思えます。

風景を描くときはその場の空気が伝わると良いのはもちろんですが、今回の殿山さんの作品は、描かれていなくても別の時間帯の様子までわかる、気配が見え隠れしているような表現へと一歩踏み出している様に感じます。

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四季百景?

2022-09-07 23:50:03 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

夏休みが終わってしまいました、ナツメです。今日は日曜大人クラスの釘宮さんの水彩画を2点ご紹介します!

季節に合わせて風景を選ばれてますが、今回はどちらも植物がメインになっていて湿度を感じるような場所を描かれました。

まず左の閑静な空気が伝わってくる水車小屋の絵。前回の絵の時に「緑の研究をされているみたいです!」とブログでお話ししたのですが、ここまで来るともはや専門家ですね!鬱蒼と木々の生い茂る中に建っている水車小屋のひっそりとした佇まいが素晴らしいです!

自然に生えている木々に対して小屋の線をシャープに引いているため、画面全体での大まかな色数が少ないながらも目を惹きます。緻密に描かれた水車にもぐっと暗い色を入れているため、優しく差し込む光がとても綺麗に見えます。

そして右の作品はたっぷりと咲いた紫陽花が見事です。左の絵とは打って変わって彩度の高い鮮やかな色が目立ちますね。特に紫陽花の様な大きめの葉がこれだけ密集しているところを描くのは難しかったと思いますが、茎を対比させるように濃く・真っ直ぐ描くことで、薄い葉の重なりも見事に表現されました。花もさることながら、周りの石なども緻密に書かれています。また、奥の木々や小屋をぼんやりと抑えて描いているため遠近感も出ていますね!

はじめにどちらも植物メインの画面、と描きましたが、水車小屋は明暗を意識した絵なのに対して紫陽花の絵は色に重きを置いているような、全く別の印象を受けます。どちらも使いこなせるならもう怖いものなし、最強ですね!絵が12枚になったらカレンダーなどを作ってみても面白そうです。(というより私が欲しいだけですが…)いつか四季百景のようになるのでしょうか、楽しみにしています!

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廃墟探検のような

2022-08-19 20:15:42 | 大人 水彩


黒永 透明水彩・ペン・カラージェッソ・ラウンドスポンジ/木製パネル

大竹です。今回ご紹介させて頂くのはトワの作品。高2からミオスに通っており、今春大学を卒業した今でも大人クラスに来てくれています。私が最後に会ったのはその高校生の頃のトワでしたので、今回紹介ブログを描くにあたり「あのトワがもう大学に?!しかも今年卒業?!」と腰を抜かしてしまいました。月日の流れはあっという間というのを、子供や学生達の成長でひしひしと感じてしまいます。

こちらの作品は廃墟の写真集を描きました。木製パネルに直接線画を描き、イエローオーカーのジェッソをペインティングナイフでカサカサこすり、カッターで部分的に彫ったり傷を付け、最後にラウンドスポンジをボンドで貼って苔むしたり埃っぽい感じを出しました。ちなみにラウンドスポンジとは、ジオラマで樹木の葉を作る用の緑の小さなスポンジです。主線はペン画で描かれていますが、廃墟の汚れて古ぼけた雰囲気とうまくマッチしています。透明水彩でありながら、支持体の木製パネルやジェッソによる下地のマチエールによって画面にも深みがありますね。外から入る光と、もう電気の通ってない暗い廃墟の明暗の対比も美しいです。奥の壁の青色のタイルも、かつては鮮やかな色をしていたのでしょう。長い年月で退色していった風合いが良く表現されていますね。
構図から見てみると、手前にある水差しがポイントとなっています。外の明るい光を受けて逆光となっているので、黒いシルエットがパキッと浮かび上がりました。ここまで黒く色を作った事で、この絵の中で主役になったのです。試しに水差しを指で隠してみると、少し物足りなく見えてくると思います。主役作りでも成功した1枚でしょう。

見れば見るほど新しい発見がありそうな絵で、なんだか探検に来ている様な気分になります。シンクなどが置いてあるので元は調理場だったのでしょうか?かつての姿を想像させてくれる面白さも廃墟の魅力の1つですね。

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三者三様?

2022-07-13 23:10:44 | 大人 水彩


遠藤 左 透明水彩 / 中央・右 鉛筆

湿度が高い日が続きますね、ナツメです。本日は水曜大人クラスから遠藤さんの人物画をご紹介します!

最近は短時間(1回~2回の授業)で、ご自身で選出した一人の人物の肖像画を描いています。今回は左から野球の大谷翔平選手、ボクサーの井上尚弥選手、三国志の曹操を描かれました。

透明水彩で描かれた大谷選手。普段ユニフォームを着ているところを見慣れているからかスポーツウェア姿はなんだか新鮮な気がしますね!このような日差しの中で逆光になっているアングルは色をつける時に影がくすみがちになってしまいます。そのため陰影の表現が難しいのですが、明るいところを残し強めの暗さを置いたことで眩しい光を見事に描写しています!

次に井上選手。背景に手を入れたことも相まって歴戦の風格が漂っています。こちらも強めのライティングですが、先程の大谷選手と比較すると暗闇の中でスポットライトが照らされている様な種類の光を感じませんか?左の絵では影を描いて明るさを出していたのに対して、こちらでは浮き彫りにする様に光を描くことによって似たような強い光源の描き分けがされているのが素晴らしいです。

そして最後、立派な髭が逞しい曹操。石膏像など人の顔を描く時はどうしても1番目にする自分の顔に寄せてしまうのですが、訝しげだった曹操もどこか遠藤さんのような優しげな表情になっているところが面白いです。先程の2枚よりも当たっている光が弱いのにも関わらず一枚の絵として画面が保っているのは、髭などの要所要所の特に暗いところにところに相応の色をしっかりとつけられているためです!画面の中で1番暗い色が中明度の灰色だと、白〜灰色の中でしか表現ができません。暗い場所にきちんと暗い色を置くことで、白〜黒へと使える明度の幅が広くなり細かな描写ができるのですが、この絵ではそのポイントがバッチリ抑えられています!

描き方の違う3枚ですが、どれもその人それぞれの雰囲気が出ています!短時間でこれだけ写真から表情を拾って描き留めることができるのは、遠藤さんの観察力の賜物でしょう。今後どんな方を描いていくのか、これからも楽しみにしています!

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思い出を描く

2022-06-15 23:58:05 | 大人 水彩


佐々木 透明水彩

折り畳み傘を携帯し始めました、ナツメです!日曜大人クラスの佐々木さんの絵をご紹介します!

いつも息子さんの絵を描かれている佐々木さん。今回制作された2枚も愛情のこもった素敵な作品になりました。

左はご兄弟で仲良く座っている風景。なんと言っても右上から当たっている日光が美しいです!透明水彩という色が淡く乗る画材を使っているにも関わらず、影となるところに強めに暗さをつけられているため日の当たった部分が強調され、一方向からの光がとても綺麗に見えます。膝や腕など、正面からの難しい構図でしたが、陰影を巧みに使われているためしっかりとした身体の立体感もばっちりです!

そして右の作品は、隣の人形と一緒にポーズをとっている様子が微笑ましいですね。左がお二人のいる「風景」を描かれた作品とすると、こちらはどちらかというと息子さんの仕草を重視して「人物」に焦点を当てて描かれているように感じます。
実はこちらの作品、縦型で空のスペースを多く取られた構図だったのですが、ご本人の承諾なしにトリミングさせて頂きました。ユニークなポーズだけでなく、人物に置かれている色が力強かったので、画面を正方形にしたら
CDのジャケットとして飾っていてもおかしくないんじゃないか?と思ったからです。勝手をして申し訳ございませんが、額装される際は、このような堂々とした画面構成をトライしてみるのも…?と参考にしてもらえれば嬉しいです。

写真は客観的なもので写る範囲のものを余すことなく全てそのまま保存しますが、絵は描き手の主観的が描写に反映されます。今回の作品も、当時の思い出や感情などの佐々木さんのフィルターを通して表現されていて、こちらにまでどの様な気持ちでこの光景を映し、振り返って筆を動かしているのかまで伝わってきます。

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初夏の訪れ

2022-05-11 23:47:36 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

アトリエにも半袖の方が増えてきました。服選びが難しい時期ですね、ナツメです。今日は日曜大人クラスの釘宮さんの水彩画をご紹介します!

入会以来水彩画を描き続けている釘宮さん。季節に合わせて描くものを選んでいるそうで、今回は初夏〜秋にかけて咲く睡蓮を描かれました。丁度5月頃から咲き始めるらしいので、これからそろそろ見ることのできる景色ですね!今まで比較的遠距離からの広い景色を描かれていた(こちら)のに比べると、この作品はぐっと足元の景色に寄ってフォーカスを当てているのですが、左上に向こうへと抜ける部分を作っているため窮屈さは感じません。睡蓮を囲うように生えている葦のような植物でそのまま全て奥を埋め尽くさない事で、手前にある空間だけでなくその奥に広がっていく池の様子まで想像できます。

睡蓮の周りの葉に暗めの緑を多く置き、下に落ちている影と明るい白の強めのコントラストを作って花に一番に目がいくように描かれていますが、肝心の見所は一面に敷き詰められた蓮の葉!密集しているものを一枚一枚追っていくのは、根気のいる作業だったと思います。同じ色の葉が見当たらないほど少しずつ塗り重ねられ、湿度や厚みのある葉が重なった部分のゴワついた感触も見事に表現されました。

ほぼ同じモチーフが画面を占めるような作品は、色彩に変化をつけて描かねばなりません。しかし『狭い色幅でも、明暗によりここまでの魅せ方ができる!』と研究を見ているようで楽しくなってしまいます。釘宮さんは次回も緑に挑戦されます。今回の研究()がどう活かされるのか、どうぞご期待下さい!

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足し算引き算

2022-04-06 23:58:58 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

早くも桜が散り始めてきましたね、ナツメです。今回は日曜大人クラスの釘宮さんの作品をご紹介します!!

今回は水彩で寺院が佇む雪景色を描かれました。真っ白な雪の中に映える鮮やかな赤色が印象的ですね。ほそーい木の枝や扉の細かい格子まで緻密に描写されていて、澄みわたった冷涼な空気感や遠くに見える御堂の厳かな雰囲気が伝わってきます。

雪の影の部分を描く時は灰色など無彩色の鈍い色を置きやすく、暗さによっては少し汚れたような雪に見えてしまうこともあるのですが、影面に比較的鮮やかな青〜水色を置くことで厚く積もった雪の白さを強調しています。もし彩度が低すぎると赤色が目立ちすぎてお寺の存在感ばかりが印象付けられるような画面になるため、他の部分で全体の彩度を補うというコントロールが素晴らしいです!

釘宮さんは以前から水彩画で風景を描かれていますが、これまでが画用紙に色を乗せていく足し算の作業だったのに対し、今回は画用紙の地の色を活かしてどこを残して描くのかという引き算が必要だったので、完成形をイメージしながら進めるのがより難しかったと思います。油絵やアクリルと違い、水彩絵の具は上から白を塗ってもその下に塗った色が残ってしまうため、このような思わず跡をつけたくなるようなまっさらな雪の表現になったのは釘宮さんの『塗り残す』計画の賜物です。この作品で習得した引き算(塗らない選択)のスキルが今後の制作にも活用されるのを楽しみにしています!

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なんだか懐かしい景色

2022-02-22 22:26:53 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

花粉の気配を感じます、一平です!本日は日曜クラスの釘宮さんの水彩をご紹介します。

温泉街の旅館のような暖かい雰囲気があるこちらの一枚、日本人のDNAに刻まれているのでしょうか、行ったことも無いのになんだか懐かしい気持ちになります。
街並みは暖かい色で統一し奥の山々は冷たい色を置くことで絵に奥行きを与えています。暖かい色だけだと画面がもったりとしてしまいがちですが、奥の山に冷たい色を置く事で締まりが出ていますね。実は山や旅館の屋根を含めると絵の半分くらいが冷たい色なのですが、絵全体を見てみると凄く暖かく、安心する印象を覚えます。また「暖かさ」がなんとなく街の活気をも感じさせてくれるような気さえします。
もちろん雰囲気だけではなく建物のパースや真ん中を流れる川の奥行きなどの基本的な技能も素晴らしいです。建物の細かい柱や屋根の部分もよくここまで絵の具で描き切ったな
と衝撃です。僕だったら下書きの時点で鉛筆でちょっと誤魔化してしまいそうなところを、しっかりと最後までやり切っています。主役である橋の真ん中に灯るライトも演出として凄く綺麗ですよね。
また、旅館や石畳の道、流れている川など全てが暖色でまとめているのにも関わらず全体がごちゃごちゃとしていない、そして奥に行くにつれて後退色である山の青に繋がっていく色彩計画もバッチリです。

色のコントロールからさまざまな感情を想起させるこちらの一枚、なんだか見れば見るほど惹き込まれます!

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透明水彩で様々なものを。

2022-02-19 23:37:05 | 大人 水彩


殿山 透明水彩

土曜日の岩田です。今日は多摩美・武蔵美の合格発表でした。元ミオスの学生達は皆、ご縁を頂いたようでホッとしております。残すは藝大ですが、浪人生たちもいますので、良い報告が来るよう祈って待っております。

さて、土曜午前クラスに通われている殿山さんの作品をご紹介します。
殿山さんは、一貫して透明水彩で様々なものを描かれています。
時に風景、時にリアルなモチーフ。そして今回掲載したように、娘さんも度々登場するのです。生まれて間もない頃から現在まで成長の記録をつぶさに拝見させて貰っています。お父さんの愛情を感じざるを得ませんね。

まるでチアガールのような出で立ちでポーズをとる姿がとても可愛らしいです。
絵の具の扱いも、以前とは比べ物にならない位思い切りが良くなっています。今回の絵では衣装よりも特にボンボンの描き方がとても良いなと感じます。彩度の高い色使いと筆のさばき方がそのモノの軽やかさを上手に表現しています。
とはいえ、大事な顔の表情こそが一番素敵に描けているのは言うまでもありません。

左手の作品は喫茶店のテーブルに置かれたクリームソーダ。
良く見るとグラスには「不純喫茶ドープ」と書かれています。お聞ききしたところ実際にこのお店があるとのこと。こうしたモチーフを選ぶのも殿山さんならではだと感じます。
画像では中々伝わりづらいのですが、器に注がれたソーダの抜けるような青がとても美しく描かれており、中に含まれた気泡もちゃんと表現されています。
今見ると背景の明度を更に落とすことで、アイスクリームの白がより映えたかもしれません。

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明暗の対比

2022-02-11 21:44:26 | 大人 水彩


杉田 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは杉田さんの水彩作品です。30年前のファッション雑誌から題材を選ばれていますが、とってもお洒落ですね!全体の彩度が低めの中で、鮮やかなオレンジの羽織がまた美しいアクセントになっています。シワの表現も見事で、しっかりと布の内側にある体の形を感じさせてくれます。
水彩は絵具を重ねすぎてしまうと色が濁り、薄すぎても弱く見えてしまいます。その塩梅が難しい所ではありますが、杉田さんの作品はそのバランスも取れています。特に、木の根と肌の対比はこの作品の一番の見どころでしょう。「木の根の力強さは思い切って濃く溶いた絵具使い、肌は最後までほとんど塗らずにサラッと仕上げた事で、木の重量感と透けるような透明感のある肌の美しさの対比が天才的!」と小原先生も絶賛でした。暗い部分の色作りは、ともすれば明るく鮮やかな部分よりも魅力を作るのが難しいかもしれません。この作品の木を見てみると、様々な色を含んでおり、それらが濁らずに互いに調和して美しい暗さを作っているのが分かります。
油絵科出身の私としては、杉田さんの油彩作品も見てみたくも思います。もし機会がありましたら、是非ともチャレンジして頂けたら嬉しいです。

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スズメ達

2022-01-25 21:24:36 | 大人 水彩


佐藤K 透明水彩

どんだけ寝ても眠いです、一平です!本日はチケット制の佐藤さんの水彩画をご紹介します!

スズメと傘のように覆い被さった葉っぱが印象的なこちらの一枚、写真を見ながらの制作でしたが、写真の模写というよりも写真の中で自分がどこに魅力を感じたのか、という要素がしっかりと抽出されている感じがします。

この絵を見ていると「植物が描ければなんでも描ける!」と予備校の先生に言われた事を思い出します。複雑な花びらの重なり、茎と葉っぱと花など色味が違うものが共存していたりと難しいポイントが盛り沢山だからそう言っていたのでしょう。それで言うと佐藤さんの今回の作品、スズメは勿論ですが植物が素晴らしい!葉っぱの影が葉っぱに落ちていてという植物の陰影の複雑さを見事に描き切っております。落とし合う影を丁寧に描く事で葉っぱの模様のように平面的にならず、しっかりと生い茂っているような奥行きを感じられるのです。茎が鮮やかなのも個人的な好きポイントの1つ!

そしてスズメですが、我々人間からするとなんだか会話しているように見えます。1匹ではなく絵の中に2匹描く事でこちらにストーリーを想起させ、より絵に興味を持たせています。体の模様と羽根の毛並み感も見ていて気持ちが良いです。描写力、表現、ストーリー性などどれをとってもレベルの高い作品になっています!素晴らしい!

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和みの裏側

2021-11-03 23:18:49 | 大人 水彩


遠藤 透明水彩

良い天気でしたが祝日はいかがお過ごしでしたか?ナツメです!今回は水曜クラスのさん遠藤さんの作品を紹介します!

どれも透明水彩で描かれた作品になります。水彩というとほんのりと淡い色合いのものというイメージの方も多いかと思われますが、今回の作品は丹念に重ねた力強い色彩と水彩ならではの滲みの調和が魅力的です!そのうち3枚の動物の絵はどれも2匹ずつ収められています。親子や兄弟なのでしょうか、眠たそうな顔やぽかーんと口を開けた顔など過酷な自然の中で気を許している仲間内にしか見せないようななんとも言えない絶妙に緩い表情にこちらも微笑ましい気持ちになってきますね。毛並みの量感やパーツの形などの描写力も素晴らしいですが、キリンを描く、トラを描く、といったようにそれぞれの動物をモチーフにするというよりは、一貫して2匹の関係性が描かれているように感じます。左上の作品のような風景ではなく、ざっくりと描写をしすぎない背景なので焦点がお互いの関係性に当たっていて、じわりとした色合いも動物たちの心象表現にも見えてきませんか?

その風景画も、隆々とした岩肌の表現など手にとるように伝わってきますね。画面の半分を埋めるほど堂々と配置され、迫力満点です。はじめにも書いた通り透明水彩でここまで色を重ねるのは相当な勇気と積み重ねがあったと思いますが、空や草の淡い色と対比したり、思いっきり暗い色を入れているため中途半端に終わらず完成度へと繋がっています!モチーフや作風は少しずつ違いますがどの作品にも穏やかで和ませてくれる魅力があるのは、表面に見えるものだけではなくその場所で何が起こっているのか、どんな空間が存在しているのかを捉えようとしているからなのではないでしょうか

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