「ユジンさん、元気ですか?
来週の金曜日そちらへ父と行きます。
ユジンさんにお願いがあるので、時間を作ってください。
また近くなったら連絡します。
イ・ミニョン」
〈お願いって何かしら?〉
なぜか胸騒ぎがした。
〈まさか悪い知らせじゃないわよね、ミニョンさん。
ミニョンさんが会いに来るというのに不安になるのはなぜ?〉
「大丈夫よ、お父様にも久しぶりにお会いできるんだわ。
部屋を綺麗にしておかなくちゃ」
自分自身を励ますように元気に言った。
約束の日、ミニョンはイ氏と共にユジンの部屋へやってきた。
「ユジンさん、久しぶりだね。勉強はどうだね。元気だったかい?」
「はい、ありがとうございます。
もう、進級試験も終わりました。
ミニョンさんのおかげで今回も良い成績が取れそうです。
後は一年かけて研究論文に取り組みたいと考えています」
「そうですか。それは良かった。
…悪いが、私は少し用事があるので失礼するよ」
そういってお茶を飲むと、イ氏は二人を残して出かけていった。
気まずい空気が流れていた。
ミニョンの様子がいつもと違っていた。
「ミニョンさん、その後お加減はいかがですか」
「ええ、お蔭様で順調です。
まもなく職場復帰できると思います」
ミニョンの声が冷たかった。
「今日はユジンさんにお願いがあって来ました。
ユジンさん、僕の仕事のパートナーになっていただけませんか。
ユジンさんもご存知のように、僕は近い将来光を失うことになるでしょう。
そうなれば一人で仕事をすることが難しくなります。パートナーが必要です。
あなたにお願いしたい。
受けていただけませんか」
ミニョンと仕事ができる。
嬉しい話のはずなのに、なぜだか喜びが沸いてこなかった。
「あなたの勉強が途中なのはわかっています。
これから一年かけて研究論文に打ち込まれる予定だったのですよね。
それをアメリカで仕事をしながらやらせていただけるように、実は今父があなたの指導教授にお願いに行っています。
あなたの承諾も得ないうちに勝手なことをして申し訳ないが、どうか分かってください。
あなたにぜひ受けていただきたいのです」
ミニョンは、きわめて冷静に、ビジネスライクに話を続けていた。
「イ・ミニョンのビジネスパートナーだったということはあなたのキャリアにとっても損な話ではないと思いますよ」
「イ・ミニョンさんと仕事をしたい方はたくさんおりますでしょう。
私よりも有能な方がおられるはずです」
「いえ、あなたでなければだめです。
僕には時間がない。
ユジンさんなら、今僕の考えていることをすぐに理解し、形にすることができる。あなたのことは良く分かっているつもりです」
「ミニョンさん、時間がないとはどういうことですか?
本当はお加減が悪いんじゃないんですか?」
「いえ、そうではありません。
僕は最近一日一日を大切に過ごさなければという気持ちになっているのです。
事故にあって、手術を経験してそういう心境になったのです。
今日の続きの明日はないかもしれない。
今この瞬間を大切にしたいと思うようになったのです。
ユジンさんのおかげですよ。
あなたなら、僕の足りないところを補ってくれるだけではなくて、何倍にもしてくれる。
僕と一緒に一つ一つ造り上げていっていただきたいのです。
大事なことです。
すぐに返事をくださいとは言いません。よく考えて決めてください。
父がもしこちらに寄りましたら先にホテルに帰ったと伝えてください」
ミニョンは帰っていった。
ミニョンが自分を必要としていてくれることは嬉しかった。
でも…。
何かが、棘(とげ)のように刺さってユジンの心を暗くしていた。
ミニョンのいつもと違う冷ややかな態度…。
私に何か隠している。
まさか、血腫が再発した!
ユジンは恐ろしさで体が震えた。
ミニョンさん、あなたはまた私を一人置いて行こうとしているの?
来週の金曜日そちらへ父と行きます。
ユジンさんにお願いがあるので、時間を作ってください。
また近くなったら連絡します。
イ・ミニョン」
〈お願いって何かしら?〉
なぜか胸騒ぎがした。
〈まさか悪い知らせじゃないわよね、ミニョンさん。
ミニョンさんが会いに来るというのに不安になるのはなぜ?〉
「大丈夫よ、お父様にも久しぶりにお会いできるんだわ。
部屋を綺麗にしておかなくちゃ」
自分自身を励ますように元気に言った。
約束の日、ミニョンはイ氏と共にユジンの部屋へやってきた。
「ユジンさん、久しぶりだね。勉強はどうだね。元気だったかい?」
「はい、ありがとうございます。
もう、進級試験も終わりました。
ミニョンさんのおかげで今回も良い成績が取れそうです。
後は一年かけて研究論文に取り組みたいと考えています」
「そうですか。それは良かった。
…悪いが、私は少し用事があるので失礼するよ」
そういってお茶を飲むと、イ氏は二人を残して出かけていった。
気まずい空気が流れていた。
ミニョンの様子がいつもと違っていた。
「ミニョンさん、その後お加減はいかがですか」
「ええ、お蔭様で順調です。
まもなく職場復帰できると思います」
ミニョンの声が冷たかった。
「今日はユジンさんにお願いがあって来ました。
ユジンさん、僕の仕事のパートナーになっていただけませんか。
ユジンさんもご存知のように、僕は近い将来光を失うことになるでしょう。
そうなれば一人で仕事をすることが難しくなります。パートナーが必要です。
あなたにお願いしたい。
受けていただけませんか」
ミニョンと仕事ができる。
嬉しい話のはずなのに、なぜだか喜びが沸いてこなかった。
「あなたの勉強が途中なのはわかっています。
これから一年かけて研究論文に打ち込まれる予定だったのですよね。
それをアメリカで仕事をしながらやらせていただけるように、実は今父があなたの指導教授にお願いに行っています。
あなたの承諾も得ないうちに勝手なことをして申し訳ないが、どうか分かってください。
あなたにぜひ受けていただきたいのです」
ミニョンは、きわめて冷静に、ビジネスライクに話を続けていた。
「イ・ミニョンのビジネスパートナーだったということはあなたのキャリアにとっても損な話ではないと思いますよ」
「イ・ミニョンさんと仕事をしたい方はたくさんおりますでしょう。
私よりも有能な方がおられるはずです」
「いえ、あなたでなければだめです。
僕には時間がない。
ユジンさんなら、今僕の考えていることをすぐに理解し、形にすることができる。あなたのことは良く分かっているつもりです」
「ミニョンさん、時間がないとはどういうことですか?
本当はお加減が悪いんじゃないんですか?」
「いえ、そうではありません。
僕は最近一日一日を大切に過ごさなければという気持ちになっているのです。
事故にあって、手術を経験してそういう心境になったのです。
今日の続きの明日はないかもしれない。
今この瞬間を大切にしたいと思うようになったのです。
ユジンさんのおかげですよ。
あなたなら、僕の足りないところを補ってくれるだけではなくて、何倍にもしてくれる。
僕と一緒に一つ一つ造り上げていっていただきたいのです。
大事なことです。
すぐに返事をくださいとは言いません。よく考えて決めてください。
父がもしこちらに寄りましたら先にホテルに帰ったと伝えてください」
ミニョンは帰っていった。
ミニョンが自分を必要としていてくれることは嬉しかった。
でも…。
何かが、棘(とげ)のように刺さってユジンの心を暗くしていた。
ミニョンのいつもと違う冷ややかな態度…。
私に何か隠している。
まさか、血腫が再発した!
ユジンは恐ろしさで体が震えた。
ミニョンさん、あなたはまた私を一人置いて行こうとしているの?