[パリに帰ったユジン、心配しているであろうサンヒョクに久しぶりに電話をします。]
「サンヒョク、私。ユジン。
今、少し話せる?
ごめんね、ずっと連絡しないで。
ええ、もうフランスに帰っていたの。
すぐ電話すれば良かったんだけれど、試験があって忙しくて…。
ええ、大丈夫、心配しないで、誰から聞いたの?
ああ、チェリンから、ミニョンさん…のお母様が連絡したっておしゃっていたわ。
ええ、もうずいぶん元気になったわ。
……お母様が配慮してくださって、馴染みの家政婦さんがいるのに私に任せてくださったから、二週間ずっと側にいられたの。
ジュンサンじゃなくなちゃったけれど…、
生きているのよ、それだけでいいの。
……サンヒョクは元気だった?
お仕事忙しいの?
そう、良かったわ。皆にもよろしく言ってね。
また連絡するから、いつも心配してくれてありがとう。
じゃあ、また。…」
[マルシアンにて]
「ジョンアさん、忙しいのに悪いね。
この二件?ちょっと見せてもらいますよ」
キム次長に呼ばれてジョンアはマルシアンに来ていた。
「ふ~ん、なるほど…。
じゃあ、ジョンアさん、これしばらく預からせてもらっていいですね。
悪用はしないですから、大丈夫ですよ」
「キム次長、理事がユジンの昔の仕事を見たいって、どうゆうことなんです?記憶が戻ったわけじゃないんでしょ」
「ああ、まだ精神科の治療は退院した後になるらしいから、記憶のほうは全然戻っていないと思う。
ミニョンとユジンさんがメールのやり取りをしているのは聞いているでしょ。
まあ、インテリアのこととか、建築のこととか、こっちで一緒に仕事をしていたときの延長のような中身らしいけれど(笑)。
それで、ユジンさんの仕事振りを見てみたいと思ったんじゃないかな。
覚えていなくてもユジンさんのことは気になるんだな、どうしても。…」
「そうですか…。手術の後理事がまた記憶を失ったと聞いた時、あの子は、ユジンはどうなっちゃうんだろうと…思いましたけれど、それっきりになってしいまわないで本当に良かった…」(涙)
「ジョンアさんもあの二人のことでは気苦労が絶えないね。(笑)」
「全く、笑い事じゃありませんよ」
じゃあ、宜しくと言ってジョンアは帰っていった。
その後、ミニョンは二ヶ月ほど病院で過ごし、退院した。
ミヒに付き添われて部屋へ帰ると、以前のように家政婦のパクさんが待っていてくれた。
「お帰りなさいませ。退院おめでとうございます」
「ご苦労様。
ミニョン、こちらは以前からここであなたの世話をしてくださっている家政婦のパクさんよ。
あなたのことは良く分かっていてくださるから、安心してお任せして大丈夫よ」
「そうですか。パクさん、またお世話になります。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
お元気になられて、本当に良うございました。
ユジンさんという方からお祝いのお花が届いておりました」
「ユジンさんから?…」
ミニョンの顔がぱっと明るくなった。
〈ミニョン…あなたの心の中にはもうユジンさんがいるのね…〉
「ミニョン、後でお父様もお出でになるわ。
今晩は久しぶりに三人で食事にしましょう。
退院祝いということで。
パクさん、支度を手伝ってくださる?」
ミヒとパクさんが台所へ行ってしまうとミニョンはソファへ腰掛けて花束に添えられていた封筒を開いた。
「ミニョンさんへ
退院おめでとうございます。
パリにて チョン・ユジン」
ユジンの直筆のメッセージカードが入っていた。
「ユジンさんの字、見るの初めてじゃないのに…」
ミニョンは胸に広がる想いに戸惑っていた。
「退院おめでとう。顔色もずいぶんいい。まず、良かった、良かった」
久ぶりに三人で食卓を囲み、イ氏は機嫌が良かった。
「ユジンさんも近くに居られたら来てくださったんだろうが、残念だな。
ユジンさんとは連絡を取り合っているんだろう?」
「はい、週に一度位メールで。
勉強の話とか、私が資料をお願いしたり…そんなことですが…。
お父さん、ユジンさんは優秀な方ですね。
この間マルシアンのキム次長に頼んでユジンさんが以前手がけた仕事の資料を送ってもらいました。私と一緒にやったスキー場の改修工事も含めて。
とてもいい内容でした。
仕事に復帰できたら、ぜひまた一緒にやりたいと思います」
「そうか、…。
ミヒ、ピアノを聴かせてもらえないかな。
なあ、ミニョン。何かお母さんにリクエストしたらどうだ?」
「僕は何でも。母さんの好きな曲を聴かせてください」
そうね…とミヒは少し考えて、ジュンサンの好きだった『初めて』を弾いた。
退院後体調が安定しているのを確認して、アン医師に記憶障害の治療を受けることになった。
一方、ミニョンの目は手術後一旦は回復したが、その後視力は徐々に低下していた。
ミニョンは失明した後も設計の仕事ができるようにと考え、視覚障害者を支援する団体に特注のコンピュータソフトの作製を依頼することにした。
「サンヒョク、私。ユジン。
今、少し話せる?
ごめんね、ずっと連絡しないで。
ええ、もうフランスに帰っていたの。
すぐ電話すれば良かったんだけれど、試験があって忙しくて…。
ええ、大丈夫、心配しないで、誰から聞いたの?
ああ、チェリンから、ミニョンさん…のお母様が連絡したっておしゃっていたわ。
ええ、もうずいぶん元気になったわ。
……お母様が配慮してくださって、馴染みの家政婦さんがいるのに私に任せてくださったから、二週間ずっと側にいられたの。
ジュンサンじゃなくなちゃったけれど…、
生きているのよ、それだけでいいの。
……サンヒョクは元気だった?
お仕事忙しいの?
そう、良かったわ。皆にもよろしく言ってね。
また連絡するから、いつも心配してくれてありがとう。
じゃあ、また。…」
[マルシアンにて]
「ジョンアさん、忙しいのに悪いね。
この二件?ちょっと見せてもらいますよ」
キム次長に呼ばれてジョンアはマルシアンに来ていた。
「ふ~ん、なるほど…。
じゃあ、ジョンアさん、これしばらく預からせてもらっていいですね。
悪用はしないですから、大丈夫ですよ」
「キム次長、理事がユジンの昔の仕事を見たいって、どうゆうことなんです?記憶が戻ったわけじゃないんでしょ」
「ああ、まだ精神科の治療は退院した後になるらしいから、記憶のほうは全然戻っていないと思う。
ミニョンとユジンさんがメールのやり取りをしているのは聞いているでしょ。
まあ、インテリアのこととか、建築のこととか、こっちで一緒に仕事をしていたときの延長のような中身らしいけれど(笑)。
それで、ユジンさんの仕事振りを見てみたいと思ったんじゃないかな。
覚えていなくてもユジンさんのことは気になるんだな、どうしても。…」
「そうですか…。手術の後理事がまた記憶を失ったと聞いた時、あの子は、ユジンはどうなっちゃうんだろうと…思いましたけれど、それっきりになってしいまわないで本当に良かった…」(涙)
「ジョンアさんもあの二人のことでは気苦労が絶えないね。(笑)」
「全く、笑い事じゃありませんよ」
じゃあ、宜しくと言ってジョンアは帰っていった。
その後、ミニョンは二ヶ月ほど病院で過ごし、退院した。
ミヒに付き添われて部屋へ帰ると、以前のように家政婦のパクさんが待っていてくれた。
「お帰りなさいませ。退院おめでとうございます」
「ご苦労様。
ミニョン、こちらは以前からここであなたの世話をしてくださっている家政婦のパクさんよ。
あなたのことは良く分かっていてくださるから、安心してお任せして大丈夫よ」
「そうですか。パクさん、またお世話になります。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
お元気になられて、本当に良うございました。
ユジンさんという方からお祝いのお花が届いておりました」
「ユジンさんから?…」
ミニョンの顔がぱっと明るくなった。
〈ミニョン…あなたの心の中にはもうユジンさんがいるのね…〉
「ミニョン、後でお父様もお出でになるわ。
今晩は久しぶりに三人で食事にしましょう。
退院祝いということで。
パクさん、支度を手伝ってくださる?」
ミヒとパクさんが台所へ行ってしまうとミニョンはソファへ腰掛けて花束に添えられていた封筒を開いた。
「ミニョンさんへ
退院おめでとうございます。
パリにて チョン・ユジン」
ユジンの直筆のメッセージカードが入っていた。
「ユジンさんの字、見るの初めてじゃないのに…」
ミニョンは胸に広がる想いに戸惑っていた。
「退院おめでとう。顔色もずいぶんいい。まず、良かった、良かった」
久ぶりに三人で食卓を囲み、イ氏は機嫌が良かった。
「ユジンさんも近くに居られたら来てくださったんだろうが、残念だな。
ユジンさんとは連絡を取り合っているんだろう?」
「はい、週に一度位メールで。
勉強の話とか、私が資料をお願いしたり…そんなことですが…。
お父さん、ユジンさんは優秀な方ですね。
この間マルシアンのキム次長に頼んでユジンさんが以前手がけた仕事の資料を送ってもらいました。私と一緒にやったスキー場の改修工事も含めて。
とてもいい内容でした。
仕事に復帰できたら、ぜひまた一緒にやりたいと思います」
「そうか、…。
ミヒ、ピアノを聴かせてもらえないかな。
なあ、ミニョン。何かお母さんにリクエストしたらどうだ?」
「僕は何でも。母さんの好きな曲を聴かせてください」
そうね…とミヒは少し考えて、ジュンサンの好きだった『初めて』を弾いた。
退院後体調が安定しているのを確認して、アン医師に記憶障害の治療を受けることになった。
一方、ミニョンの目は手術後一旦は回復したが、その後視力は徐々に低下していた。
ミニョンは失明した後も設計の仕事ができるようにと考え、視覚障害者を支援する団体に特注のコンピュータソフトの作製を依頼することにした。