紫陽花記

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別館★写真と俳句「めいちゃところ」

★32 優先席

2023-12-03 08:42:51 | 「とある日のこと」2023年度

 
とある、土曜日の午前10時49分に乗り込んだ電車内のこと。

遅延気味の車内は混んでいた。カートを引いた私は、車両連結付近の優先席の前に立っていた。土曜日とあって、子供連れや高齢者の姿も多かった。優先席には高齢者の女性が入り口近くの席へ。あとの二人は二十代前半らしき男性。真ん中の若者はスマホに夢中。連結側の若者は眠を閉じている。混んでいるのは土曜日でもあり遅延しているせいだと思いながら、窓外の流れる街並みを見ていた。

「おう、あんたら、そこは優先席だぞ。字が読めねぇのか?」という、大声。ビックリして声の方を見ると、出入り口に密集している客の真ん中辺りに居る五十代半ばに見える男性が、優先席の二人の若者に言ったようだ。直ぐには何事なのかは理解できなかったが、その男性の近くに、杖を突いた高齢の女性が見えた。優先席の一番奥の若者が立ち上がり、私の隣に移動した。もう一人の若者は、席を立つ素振りを見せたが、その必要が無いと判断したようで、座り直しスマホに目を移した。

 大声で若者に声を掛けた男性に促されて、杖の女性が頭を低くしながら、「ごめんなさい。すみません」と言いつつ、吊革に掴まっている私の側をすり抜けて、優先席に腰を下ろした。その後も、申し訳なさそうに、立ち上がった若者に二三度頭を下げた。

 混んでいる車内。遠方から乗った人は、老若に関わらず座って移動したいはず。優先席でも、空いていたら若者でも座っても良いだろう。けれど、周りの状況に気を使い、どうするのが今一番適当なのかの判断が必要なのかもしれない。

【優先席の対象者は、高齢者に限らず、身体に不自由がある方、けが人、妊婦さん、赤ちゃん連れの方、なども含みます】



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