理想国家日本の条件 さんより転載です。
良いインフレと悪いインフレ!?

2013-05-08
川辺賢一氏 ブログ転載
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130507-00000067-reut-bus_all
昨日のニュースでは「アベノミクス、賃金より物価が上がる可能性が高い
=安倍首相」 とあって、安倍首相がややアベノミクスに弱腰な発言を
されたことが報道されております。
2%のインフレ目標と大胆な金融緩和で物価が上がっても、給与所得が上がら
なければ、大変ですよね。
「インフレだからと言って、全て良いわけじゃない。給与所得、賃金が上が
るインフレは良いインフレだけど、物の値段だけが上がるインフレは悪い
インフレだ」
という主張が世の中にはあります。そして、アベノミクスは「もしかしたら
悪いインフレを呼ぶのではないか」というのが今、野党がこぞって批判して
いるポイントです。
幸福実現党は将来の与党として、またアベノミクスの出所として、この問題
に答えないわけにはいかないでしょう。
まず「世の中には良いインフレと悪いインフレがある」という主張に関して
は、私の意見は、インフレに良いも悪いもない、あるとすれば、2%のイ
ンフレ、3%のインフレ、5%のインフレなど、程度の差であって、質の差
はないというものです。
つまり例えば同じ2%のインフレでも良い悪いがあるというような質の違いは
ないという意見を個人的にもっております。
まず物価と賃金の動きを以下のグラフから見ていただきたいと思います。
(参照 http://d.hatena.ne.jp/nabezo-r/20080606/1212764373 )
ここには、日本の1970年代から今までの賃金と物価の関係が表されており
ます。縦軸が給与上昇率、横軸が消費者物価上昇率です。
ご覧の通り、インフレ率がプラスである場合は物価の上昇よりも給与上昇率
の方が高く、インフレ率がマイナスである場合は物価の下落率よりも給与
の下落率の方が高いことがおわかりいただけます。
高橋洋一氏は1971年から94年の24年間、マイルド・インフレの時代は「どの
年をとっても物価上昇率よりも賃金上昇率の方が高かった」と、そして95年
から2011年のデフレ時代の17年間では、10対7で「物価の下落よりも賃金の
下落の方が大きかった」ということを立証しております。
高橋洋一氏は上のデータを示して、
「インフレ期は全戦全勝、デフレ期では7勝10敗」と述べております。
このような過去のデータからして、アベノミクスの弱点として言われる
ような賃金と物価の問題は、インフレにする分には何ら問題ないと言える
のではないでしょうか。
つまりマイルドなインフレであれば、ほとんど全て良いインフレだと言える
いうことです
(もちろん、二桁を超えるようなインフレは悪いインフレになる可能性が
高いが、それは良い悪いの違いではなく、インフレの程度の違い)
さらに「良いインフレ・悪いインフレ」論が根本的に間違っていると私が考
えているのは、上記のグラフを注意してみていただければおわかりいただける
ように、むしろ1973年のように、インフレ率が急激に上昇した時の方が、
賃金の上昇率とインフレ率の差は広がっております
(実質賃金の拡大)。
つまり、賃金が上がるインフレが良いインフレで、賃金が上がらないインフレ
が悪いインフレだとするならば、80年代の安定的なマイルドなインフレよりも、
70年代のような混乱を伴ったインフレ(いわゆる「狂乱物価」)の方が良い
インフレということになってしまいます。
60年代は高度経済成長、80年代はジャパン・アズ・ナンバーワンの時代や
バブル好景気などと言われたのに対して、70年代はスタグフレーション
(インフレと停滞の同時進行)や狂乱物価と言われ、それほど国内経済の
調子が良かった時代ではありません。(それでもバブル崩壊後のデフレ期の
日本よりはましですが)。
その原因は、むしろインフレ率に対して、賃金上昇率が高すぎたからだと私は
思っております。
つまり、労働組合の力が強すぎて、企業の「投資」の論理よりも、労働者への
「分配」の論理が勝っていたために、停滞基調であったと考えてます。
一般に石油ショックなどの影響が挙げられますが、ドイツは同じ先進国でも
それほどインフレになっておりません。また73年の第1次オイルショックでは
日本もアメリカも同様のダメージを受けたにもかかわらず、76年の第二次
オイル・ショックでは日本はある程度インフレの封じ込めに成功した一方で、
アメリカは失敗し、80年代初頭までインフレの影響を引きずりました。
たとえオイルショックのような外的な要因が重要であったとしても、主因で
はなく、主因はむしろ国内の政策にあったと考えるべきなのでは
ないでしょうか。
現在、安倍政権は、アベノミクスの弱点(だと勝手に思い込んでいる)
を補うべく、経団連に対して従業員の賃金上昇を要求しております。
まるで労働組合がするよう言動を安倍政権がしているのを見ると、本当の
ところ安倍政権は自由主義がなぜ優れているのか、自由主義経済において
どうして金融政策が重要なのか、を理解しておられないと思います。
むしろ過去の日本の経験、上記のデータが示しているように、物価が上昇
して、賃金が上昇しないということの方が不自然な現象であって、もしも、
企業が賃金を上げないのであれば、それは「分配」よりも「投資」を優先
しているということであって、長期的にはむしろ日本経済にとってプラスです。
金融緩和が経済を好調にする要因として言われているのは以下の3つです。
第一に給与所得は下げにくく、上げにくいという点です。
つまり、不況になって企業が賃金を下げたいと思っても、なかなか企業家の
気概からして、また組合の反発からして下げにくい、そのため、結果的に
雇用の全体量が減っていく、そしてさらに経済が悪くなっていく、という
負の連鎖を金融緩和によるインフレが解決するというものです。
インフレになれば、名目上の給与は変わらなくとも、物価が上がった分、
実質的な賃金は下がります。つまり、実質賃金が下がることで、雇用の
全体量が増え、結果的に経済が好調になる。これはリフレ派の経済学者が
あまり言いたがらないところですが、「インフレが景気良くする」という
基本理論です。
しかし、実際には上記のグラフが示していたように、インフレ率以上に、
給与所得は上昇しております。(実質賃金も上昇している)。
ということは、金融緩和によるインフレが好況をもたらす効果は、他にも
あるということです。
それが二点目、資産効果だろうと思います。
金融緩和をしたときに即座に反応するのは、株価や為替などの資産価格です。
株が上がり、土地、不動産などの資産価格が上昇すれば、それらを保有して
いた企業・金融機関のバランスシートが改善され、積極的な投資を組みやすく
なります。
アメリカでは個人で資産運用をする人が多いので、資産価格の上昇が実体経済
を好調にする効果は日本よりも大きいと言われます。しかし、日本でも全体的
に株高が続けば、やがて庶民の懐経済もよくしていくと考えられます。
それ以外にももう一点ありましたが、長くなったのでここまでにさせて
いただきます。
要するに過去の日本の経験に照らして考えてみれば、「インフレにして
賃金が上がらないということはなく、むしろインフレ期に賃金が上がりすぎる
ことの方が経済にとって問題だ」ということです。
http://ameblo.jp/kawabe87/entry-11526441303.html