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聖書の起こり

2011-09-27 00:29:24 | 聖書


“聖書”は紀元前10世紀前後からヘブライ民族が600年以上の歳月を掛けて書き足し完成させた書物である。紀元前7~6世紀、新バビロニアの侵攻(ユダヤ王国滅亡、エルサレム神殿の破壊、バビロン捕囚)によるユダヤ民族の逼迫した危機感が聖典とユダヤ教を性急に纏め上げる契機になった(聖書における"バビロン"とは象徴的な悪や退廃の都を指す)。





多人数の著者による異なる出典を組み合わせた文書には初っ端から齟齬が見られる。

冒頭『創世記』には異なる2つの創造物語があり1章は植物→動物→人間・男女(最終日);、2章は人間・男から始まり→木→動物→人間・女の順序で生物が創造される。明快でリズミカルな1章は2章以降とは神の呼称、語彙が異なる点から後代に付加された文章と推定されている。6章でも神の呼称が変わる9節(「これはノアの歴史である…」)以降が後の挿入文と見られ、6章9節~終わりまでを除外すると、重複記述と矛盾を解消する事ができる。
6:18 あなたは、あなたの息子たち、あなたの妻、それにあなたの息子たちの妻と一緒に箱舟に入りなさい。
7:1 あなたとあなたの全家族とは、箱舟に入りなさい。
6:19 全ての生き物、全ての肉なるものの中から、それぞれ2匹ずつ箱舟に連れて入り、あなたと一緒に生き残るようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。また、各種類の鳥、各種類の動物、各種類の地を這うもの全てのうち、それぞれ2匹ずつが、生き残るために、あなたの所に来なければならない。
7:2 あなたは、全ての清い動物の中から雄と雌、七つがいずつ、清くない動物の中から雄と雌、一つがいずつ、また空の鳥の中からも雄と雌、七つがいずつを取りなさい。それはその種類が全地の面で生き残るためである。
6:22 ノアは、全て神が命じられた通りにし、そのように行った。
7:5 ノアは、全て主が命じられた通りにした。


前3世紀に翻訳された七十人訳聖書(ギリシャ語圏に離散したユダヤ人向けに翻訳されたギリシャ語聖書)ではアダムとその子孫が子を成した年齢が改ざんされており、アダムを千年以上古い時代に送り込む事に成功している。
世界創造紀元 70人訳 旧約聖書直訳
 
出産時年齢 原典 七十人訳
アダム 130 230
セツ 105 205
エノシュ 90 190
アルパクシャデ 35 135
シェラフ 30 130
エベル 34 134

七十人訳聖書にまつわる話に「72人を別個の個室で翻訳作業に当たらせたら訳が見事に一致して出て来た」という伝説的逸話がある。 …しかし72人全員がこのような意訳をしたのでは、聖書の神が如何に科学の追跡の手を恐れているかの味わい深い証明にしかならないであろう。

人間の複雑な思いと動機を出自とした書物である以上、聖書とて当然食い違い、矛盾、人為的見解、誤った神の観念という人為の所作を免れることはできない。
ヨアブは民の登録人数を王に報告した。イスラエルには剣を使う兵士が80万、ユダには50万であった。 (サムエル記下24:9)
ヨアブは民の登録人数をダビデに報告した。全イスラエルには剣を使う者が110万人、ユダには剣を使う者が47万人であった。 (歴代誌上21:5)
アハズヤは22歳で王となり、… (列王記下8:26)
アハズヤは42歳で王となり、… (歴代誌下22:2)









アダムとイブの失楽園の意味は? バベルの塔の意味は?
十字架と復活の意味は? 桃太郎、花咲か爺さんの意味は?


「歴史」でも「神の権威」でもない聖書の面白さは神学的主張の解釈や整合性無視の多義性を求める所にあり、決して左脳人間の好む知識、文面、歴史の物証ではない。

聖書が永遠の真実性を持った知恵の宝庫となるも精神を薬殺するカルトの読み物となるも、手法次第。読み方を誤っていては聖書は何年読んでも益にはならないのである。


聖書の内容を見るとどんな困難に面しても同じ民族の者として一つであり続け、団結心を育む掟と価値観や、先祖の偉業に思いを馳せ自信を確立させる民族意識を高揚させるものとして、各自の拠り所としての聖書が浮かび上がって来ることだろう。ユダヤ民族には自身を選んで護ってくれる神と、護られている証拠が必要だったのである。









 
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