上の手紙を序文とする、クレメンス(ペテロに任命された司教)の一人称で綴られるペテロとの冒険譚。この文書における敵役・魔術師シモンは、パウロに重ねられている。
「私(ペテロ)は彼(シモン)の後から来て、彼を凌駕した。ちょうど光が闇を、知識が無知を、癒しが病を凌駕するように」(2章17節)
「あなたは言った、…イエスの言葉を幻影から聞いたのだから、イエスの説く教義を私より理解していると… だが、幻影や幻視や夢を信じる者は地に足がついていない。… 信頼している相手が、言葉巧みに正体を誤魔化す邪悪な悪霊か、人をたぶらかす霊かもしれないからだ」
「誰が幻影によって教えるに相応しい者だと認められるというのか?
もしあなたが「できるとも」と言うなら、私は「なぜ私達の教師は、目覚めている者達に、一年もの時間を費やして、忍耐強く教えを説いたというのか?」と問い返すだろう。… キリストの教えに背く考えを抱くあなたに、キリストはどうして姿をお現しになられたというのか?」(17章)
一瞬の幻視に立脚した教義が、一年間もイエスに師事し礎(ペテロ=岩)の任命を受けた自分のそれに勝るはずがない…それが本書におけるペテロの主張である。 |