180706 後見人の心構え <和歌山弁護士会のガイドラインを読みながら>
私立大学支援事業をめぐって、前文科省の局長が東京医科大の選定後押しの見返りに、自分の息子を合格させたという、受託収賄容疑事件は、連日大きく報道されていて、少し気になったので、取り上げようかと思ったら、どうもネット接続がうまくいかず、情報のアクセスできませんでしたので、今回は別の話題にすることにしました。
ただ、一言誰もが感じる疑問をあえて触れておきます。文科省が行う事業において大学の選定が個人のごり押しで決まったとしたら、なぜそのようなことができたのか、関係者全員、制度の実態を調査し、そのあり方を問い直してもらいたいものです。公正な競争の中で応募してきた各大学関係者にとっては、大変な問題です。
もう一つ、大学入試の合否が、大学側のさじ加減で合格できるようになったということだとしたら、どのような仕組みでそうなったか、解明する必要がありますし、それが他の大学ではあり得ないような仕組みが担保されているかも検討してもらいたいですね。多くの受験生や家族にとってはやりきれない思いでしょう。
さて、話変わって、今日のテーマは先日、和歌山弁護士会で東京から弁護士をお呼びして講演があったのを踏まえて、少し取り上げてみようかと思います。
背景は、後見人の不祥事が増加しており、その中で、弁護士後見人による不祥事も割合的には多くないですが増えており、とりわけ被害額が格段に大きいことが問題となっています。私が後見人をやっていたのは、もう10年以上前ですが、その当時はさほど問題になっていた記憶はなかったと思います。
私自身、管理する資産が数億円といったケースが何件かあり、身の引き締まる思いをしましたが、基本的にそういった多額の預金や有価証券などは一切触れず、銀行等に保管しているだけで、日常的な支出はそれほどでもないですから、実際はさほど神経を使うようなことはなかったように思います。だいたい、公私混同しようがありません。たしか20年近く前から預金などは別に●後見人として新たに口座を作ることになっていたはずですから、どうして混同してしまうのと思ってしまいます。
億単位の不動産も財産管理の対象となったりしますが、こういった他人の財産を処分するような意識になること自体、弁護士倫理以前に、人間としての常識を逸脱しているでしょうね。
問題にされている事柄が、報告期限に遅れるといったことです。ま、私もしっかりした報告書を作成できていると自信を持って言えるほどではありませんが、期限は最低限守りますね。この種の期限を守らない人は、通常の裁判でも、あらかじめ事前に提出期限が決められているのを守らず、裁判期日当日とか、前日に出すと行ったことを普段からやっている人かもしれません。
それは夏休みの宿題を休み明けに出さない以上に問題でしょう。子供だから許されるというのもありますが、それはあくまで自己責任だからです。しかし、裁判や後見事務は、前者であれば、相手方当事者や裁判の審理、後者であれば被後見人である本人、裁判所の監督事務に影響を与えることが明らかです。多大な迷惑と支障をきたすでしょう。そして後者の場合不祥事の発覚を遅らせるとか、不祥事を誘引する要因になり得るでしょう。
ところで、和歌山弁護士会のガイドラインで、最初に上げている部分は、とても印象的ですし、これは評価しても良いと思うのです。自画自賛というわけではなく、これがすべての要諦だと思うからです。
それは「本人の意向や希望を尊重し常に本人の最善の利益を考えながら行動すること」です。
以前、このブログでユマニチュードをとりあげました。これは介護のあり方を追求する根本的な取り組みでしたが、それは後見事務においても学ぶ必要があると思うのです。
従来、弁護士の後見事務では、財産管理が中心で、本人の意向についても、その面にばかり注意をはらってきたように思うのです(少なくとも10年以上前の私は)。しかし、このガイドラインでは、身上監護も役割として重視し、「本人の意向や今後の生活の希望、病気や要介護の状態、本人をめぐる人間関係、現在抱えている課題」等を適切に把握することを求めています。すばらしいことです。実のところは荷が重いことは確かです。
私はいま2件担当し、3件目を担当することになっています。一人は判断能力がないことや発語力が十分でないため、実のところ毎月面会していますが、話をするのも、聞くのも容易でありません。長くいれば、ユマニチュードのように、触れたりして、親しみをもてるようにできるのかもしれませんが、ご本人が女性だと、なかなか触れるといったことはよほどでないとできません。実際のところはご本人の意向を理解するのはいまのところ暗中模索でしょうか。毎回自腹で生花を買って持って行っていますが、それを見てにっこり笑ってくれるのがうれしいです。少し時間をかけてくつろげるようになれば、言葉も発するようになるかなと期待しています。
ただ、介護職員が延命措置について、言葉だけで説明しようとするのを、絵や写真で理解できるようにしてもらいたいとお願いして、そういう絵を用意して説明してもらうと、ご本人よくわかったようでした。
もう一人の方は、あまりしゃべる人ではないですが、割合理解力がしっかりしていて、話すと理解を示してくれます。ただ、やはりまだ慣れないせいか、話を聞いたり、話をしたりというのはスムーズではありません。これは普通の方でも、知らない人に自分の気持ちを話すことは躊躇するわけですし、ましてや私のように裁判所が選任した弁護士ですから、打ち解けるには少し時間がかかるのは当然です。
ガイドラインの話に戻りますと、最近は利益相反の基準が厳しくなってきたと思います。今回の中に、「本人の遺言書の作成に関わったり、遺言執行者を引き受けたりすること」につついて、「推定相続人間に紛争がある場合やその可能性がある場合」慎重に判断・対応することを求めています。それはそうですね。
以前、そう20年前ではないですが、それくらい前、任意後見人になったことがあります。そのとき、ご本人にはお子さんがいらっしゃらず、甥姪はいるけどあまり付き合いがないということで、ある大学医学部に寄付する遺言をしたいということで頼まれて、原案を作成し、遺言執行者として公正証書を作成してもらったことがあります。この場合は明確に紛争があったわけではありませんので、ガイドラインにはあたらないかなと思いつつ、当時はガイドラインもなくあまり気にもせずやったかなと思うのです。
後見人等は家庭裁判所以外から報酬を受け取ってはいけないことといったことがガイドラインに書かれています。当然のことですね。また、遺産分割や民事事件などを担当することがありますが、そういった場合にその報酬を受け取ることはできないのは当然です。このような場合家裁が後見人等の報酬算定で一定額を考慮してくれます。そういえば私もかなり高額の遺産分割事件を担当し、通常の後見人報酬よりその分付与されたことがありました。
また、ご家族から贈答をいただくようなことは差し控えてもらいます。こういったことがエスカレートして?病院付き添いで長時間かかったりしたりしたとき、喫茶室に誘われ、自分の分を支払おうとしたら、拒まれたとき、頑として支払うというのもどうかと思うのです。儀礼的な範囲として許容されるのではと思うのです。ガイドラインにはそこまで書かれていませんが。
ちょうど一時間となりました。思いつきで書いてみましたので、誤解があるかもしれません。当日の講演内容とは少々違う内容になったかなと思いますが。ま、この辺でおしまいとします。また明日。