たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

西日本豪雨その5 <真備の死者9割が自宅で 高齢で2階上がれず>などを読んで

2018-07-22 | 災害と事前・事後

180722 西日本豪雨その5 <真備の死者9割が自宅で 高齢で2階上がれず>などを読んで

 

今朝は少し寒さを感じて目が覚めました。温度計を見ると25度でしたか。寝るときは30度くらいあったので、5度下がると少し冷えを感じるのかもしれません。これもわが家は180度空間が広がっていて遮るものがないことと、谷底からの冷風が深夜になると効果的になるからかもしれません。江戸時代の武家屋敷を調査した記録によると、少なくとも風通しをよくすることと湿気がこもらないようにする工夫が家の配置や材料などで配慮されていたように思います。農家も高持百姓の屋敷はそういった配慮がしっかりできていたように思います。

 

現代の住宅造りは、残念ながら大手デベロッパーの分譲地でも日当たりや内装に配慮されても、暑さや湿気対策は、電気エネルギーを使って人工的に対処するのが本流のようです。私は30年くらい前に自然エネルギーを利用した住宅造りを学んで以来、できればそうありたいと願ってきましたが、実際に自分でできたのはほんのわずかです。

 

さて住宅や施設の建設、配置を考えたとき、バリアフリーや高齢者・障害者対応が次第に普及しつつありますが、防災とか、災害時対応といった視点は十分ではないことが大災害が起こるたびに話題になります。

 

今朝の毎日一面記事<西日本豪雨真備の死者9割が自宅で 高齢で2階上がれず>は想定外の出来事でしたが、少し考えればありうることであったと思いました。

 

記事は<西日本豪雨による岡山県倉敷市真備(まび)町地区の浸水で、亡くなった人のほぼ9割が自宅で見つかっていたことが県などへの取材で分かった。被害を受けたのは高齢者に集中しており、足が不自由な人も多い。発見場所は寝室や居間、台所などで、ほとんどが1階で水にのみ込まれたとみられる。>と、死亡者の9割が自宅で、ほとんどが1階で溺死、しかも高齢者・障害者がほとんどというのです。

 

そのため、記事は<上階に逃げる「垂直避難」ができない災害弱者が犠牲になった可能性が高い。>と指摘しています。

 

<毎日新聞の取材では、死亡したのは多くが1人暮らしのお年寄りや2人暮らしの高齢夫婦で、車椅子を使うなど体が不自由な人も目立った。>とも言及されています。

 

自宅をバリアフリーにしている家は最近普通に見かけるようになりました。そして高齢者や障害者の多くは1階を居住場所としていると思います。しかし、今回のような短時間で起こった堤防決壊と洪水に遭遇すると、1階は安全とは言えません。本来は、気象予報が的確に認知されて対応していれば、適切な避難場所に移動する、あるいは移動させることが望まれる方たちだったと思います。

 

NHKの日曜討論では「西日本豪雨今被災地で何が必要?災害から命をどう守る」ということが専門家同士で議論されました。気象予報が相当正確になり、かなり早い段階で今回の異常事態を察知し、気象庁としては順次的確に情報をTVなどの媒体だけでなく、個別に自治体に伝達したとのことです。治水計画がもっと早く整備されていれば防げたという議論もありましたが、そのような側面を否定しないものの、それだけで対応できるとは思えません。

 

単純に欧米の堤防整備比較するのは、昔、下水道普及率を誤解を招く進捗率で推し進めた国交省と同じような愚を犯す危険があると思います。だいたい、氾濫原に安易に土地利用を推し進める一方、リスクをほとんど開示しないあり方にこそ、基本的な問題があると思うのです。空き家や未利用地を残しつつ、災害リスクの是非を十分検討しないまちづくりを見直す必要があると思うのです。

 

災害時の場合、とくに避難所が問題となっています。同じ毎日3面では<西日本豪雨福祉避難所3県253人 計れぬ需要>が取り上げられています。

 

これは自宅にとどまって溺死という不幸な結果となった災害弱者にとって、今後も問題となる重要な点ではないでしょうか。

 

<西日本豪雨で被害が大きかった岡山、広島、愛媛の3県では災害弱者向けの「福祉避難所」は15~19日現在、46カ所で開設され、計253人が利用。ただ、病院や介護施設に入院・入所せず、在宅で生活している場合、利用ニーズを把握するのは困難で、相当数の災害弱者が孤立している可能性がある。>

 

福祉避難所自体、必ずしも周知されていないと思います。福祉避難所の解説では<高齢者や障害者、妊産婦ら特別な配慮が必要な被災者向けに、災害時に開設される避難所で災害救助法に基づき自治体が公共施設や福祉施設などを指定する。事前の協定で福祉施設に協力を求める動きが広がっている。>とされています。

 

ここで注意を要するのは、<事前の協定で福祉施設に協力を求める動き>です。成年後見の仕事をしていると、老健施設に入所する場合や特養施設に入所するといった場合に、その手続が相当厳格に行われていることがわかります。事前に相当な要介護度や健康チェックをして、さらに入所後のさまざまな事態を想定して、慎重な手続が行われています。そのようにして入所している人の中に、災害時という入所者の安全対策を第一に考えないといけないとき(重度の認知症や障害のある方などが入所されていると、その対応だけでも大変なことが想定できます)、緊急時とはいえ、突然、その方の状況が十分把握できない状態で入所してもらうということは、施設側にとっては相当リスクを受け入れることになるでしょう。

 

そのようなリスクを回避ないし軽減するため、事前に自宅で療養介護されている方を災害時受け入れる準備をしておくには事前協定が望ましいことは確かでしょう。

 

災害時、一旦避難所にいってもらい、その場で福祉避難所への移動してもらうといった選択は、担当者にも、災害弱者にも、必要以上のストレスとなるでしょうし、リスクも増大するでしょう。

 

そのようなケースが記事で紹介されています。<中野さんは変形性膝関節症などを患う。4年前に左膝に金具を入れる手術を受け、布団では寝起きができない。豪雨があった6日午後7時ごろ、同居の次男らと近所の小学校の避難所に向かったが、体育館に続く階段が上がれず、ベッドもなかった。近所の病院内のベンチで一夜を明かした。

 2日間友人宅で過ごした後、普段からデイサービスを利用しているホーム職員から声をかけられ、福祉避難所に入った。カーテンで仕切られたベッドで寝起きし、昼間はレクリエーションにも参加。「何かあればすぐに職員が駆けつけてくれるので安心」と話す。>

 

幸い移動時に豪雨被害に遭遇しなかったですが、障害のある方が一般の避難所で過ごすことは容易でないことは明らかです。福祉避難所自体が知らされていない、あるいは数が少ないことに問題があるでしょうし、災害発生以前に対応しておくべきことだったと思うのです。

 

一般の避難所では多くの多様な災害弱者が生活できない、「震災関連死」となるリスクも大きいでしょう。毎日記事で紹介されている事例では例外的な取扱を受けていますが、自宅で溺死した少なくない割合の方は、福祉避難所の存在を知らなかった、あるいは身近になかったために、あきらめて自宅にとどまった可能性もあると思うのです。

 

行政の状況を毎日記事は<愛媛県では少なくとも西予市が19日現在で1カ所開設し、80代の男女3人が利用。保健師が一般の避難所を巡回し、支援が必要な人がいれば福祉避難所に移す態勢を取る。大洲市では介護老人保健施設が被災後に13人を受け入れたが、元々満床だったこともあり、数人は断らざるを得なかったという。>

 

真備町のある倉敷市ですが、<岡山県倉敷市は、市内の介護施設など10施設を福祉避難所として開設したが避難者は29人(18日現在)。「本当に必要な人が入れなくなる」との理由で積極的には広報しておらず、保健師らが一般の避難所を巡回し、対象者に福祉避難所への移動を勧めている。だが、在宅避難者まで手が回らないことがあるという。>悲しい現実ですね。

 

基本的には災害時に福祉避難所への移動を個人単位で制度化する仕組みが、財政的にも施設的にも、また利用可能性のある人たちやそれを支援する人たちにも、用意されていないことが問題でしょう。

 

専門家の意見は参考になります。

<東京都文京区で危機管理課長を務め、災害弱者対策に詳しい日本大学の鈴木秀洋准教授(行政法)は

「福祉避難所は災害の度に機能不全を繰り返している。指定や協定の増加のみが注目され、開設の道順が改善されていないからだ。指定避難所へ避難後、保健師などが該当者を選別し、福祉避難所に移動・搬送する制度設計は、災害時に不可能だ」と指摘。>

 

<その上で「自治体は平時から介護申請等を受けており、地域で利用想定数の概算は可能。福祉避難所を第1次避難所として開設したり、事前周知と訓練を徹底したりする対策は最優先だ」と提言する。【花澤葵、高山梓、木島諒子】>

 

1時間が過ぎました。この辺でおしまいとします。また明日。