180726 浜の真砂と不法投棄 <西日本豪雨 不法投棄土砂、住宅目前に・・>などを読みながら
緑豊かな山の頂上に裸地がむき出しで無残な様子が映っています。キャプションには「不法投棄などで土砂崩れの原因となった造成地」とあります。たしかにひどい「造成」地と見えます。しかも場所は京都・伏見で、夜景や散策で有名?な大岩山の南斜面というのですから、こんなひどいことをと思わざるを得ません。
それは今朝の毎日記事<西日本豪雨不法投棄土砂、住宅目前に 崩落防止工事中に豪雨 京都・伏見>で、見事に切り取られた写真が物語っています。
どんな場所か、改めてGoogle Earthで確かめました。北方を見れば東山の名峰が続き、南に転じればは、木津川の沿いに広がる平野です。すぐ西方には桃山大地震で全壊した伏見城跡があり、決して安全なところともいえませんが、著名寺社仏閣が一杯ですね。
それはともかく、驚いたのは当該裸地をアップすると、とても造成地とは思えません。畑作地か以前水田耕作をしていたところに見えます。そして、道路付けを見ると、そこまでに膨大な数の太陽光発電装置が設置されています。そのための維持管理用道路かもしれません。それが土砂の不法投棄に利用されたのかもしれません。
それにしてもこの東山連峰に続く、南端に位置するこの緑豊かな山に太陽光発電装置をここまでやるかと慨嘆します。太陽光発電装置は、写真では設置してあまり時間が経っていないようです。周辺が裸地のままの状態です。通常は、草が繁茂するので、たとえば南高梅の畑の下で使われるような防草シートを設置することが多いと聞いていますが、ここではどうなんでしょう。
余分の話が長引きました。本論に戻ります。
記事によると、<京都市伏見区の大岩山(標高189メートル)の南側斜面で、不法投棄や無許可造成を理由に崩落防止の工事中だった土砂が、今月5~7日の西日本豪雨で崩れ、ふもとの農業用ため池を埋め尽くした。関係者が25日、明らかにした。ため池の10メートルほど下からは住宅街。市の指導で業者による工事は再開され、ため池の土砂も撤去される計画だが、作業の完了時期は未定。住民は台風シーズンを前に不安を募らせている。>
土砂の不法投棄と、無許可造成の土砂が、崩落防止工事中に、西日本豪雨で崩れて、下方にあるため池を埋め尽くしたというのです。
ところで、Google Earthの写真では不法投棄土砂が小山状に積み上がっていて、上記の通り田畑のような利用状況でした。それが今朝の写真では、小山状の部分がまだ残っていて、他方で田畑で会ったところが、階段状になっています。それが無許可宅地造成の跡としたら、あまり考えにくいですね。単純に崩落防止のために階段状の法面を作っていたとみるか?
いずれにしても階段状の法面からさらに一部が下方のため池に向かって土砂流出の後があります。
このような状態で、どのような崩落防止工事をしていたというのでしょう。それが問題だと思ったのです。
というのは私も15年以上前、無許可開発で山林を伐採し、土砂を不法投棄して山盛りにした業者を相手に、長い時間をかけて戦ったことがあります。いろいろな事情で、仮処分とか、裁判上の手続をとらず、行政の監督権限行使を要請したり、議会に嘆願して指導させたりして、相当程度改善させることができました。そのときむろん、山盛りにした土砂(条例上高さ規制などがあります)を削らせたり、下方に土砂が崩落しないように、H鋼を全面に打ち込ませて(これは私の方で提案したものではありません)、崩落を止めることができました。それがベストではないことはたしかですが、現在の崩落防止工事がどのような安全設計の元に指導したのか気になります。
私はさまざまな開発案件に取り組みましたが、斜面地での開発の場合、土砂崩れはかなりの頻度で起こっていたように思います。それに対する監督是正措置なるものが、さまざまな法制の中で抽象的に規定されているだけで、実際の安全対策は行政には持ち合わせていないのが現状ではないかと思います。
行政がもっているのは、国交省なりが過去決めた開発許可なりの技術指針を基にした
開発に向けての安全基準であって、違法な工事の場合の対応指針は具体的なものがないはずです。今回も当該業者に任せています。そうなんです。監督権とか是正措置といっても、具体性を欠いており、業者任せです。業者は採算に合わないことをいやいややるわけですから、そこには明確な基準もないため、費用を度外視してなんてことは考えないわけです。
記事では<不法投棄の土砂、崩落 法規制が必要 京都大防災研究所・釜井俊孝教授の話>も紹介されていますが、釜井教授の指摘するとおりです。私も以前、釜井教授やその弟子の方にお世話になりましたが、熱心で実践的です。
行政指導では、なかなか期限を指定して行うことがありませんが、その違法性が顕著であったり、あるいは危険性が迫っているときは、しっかり期限を指定して行うべきでしょう。以前、私が関与した別の事件で、横浜市がそういった指示をしたことがあった記憶です。
記事では、<崩落防止工事を請け負う業者は「不法投棄は別の企業が主導したもので、土地の所有企業は損害賠償訴訟を検討している。>と誰も直接的な責任をとらないような姿勢です。土地所有者は工作物責任を負うべきでしょうが、これは民事法の世界ですから、下方の危険に脅かされている住民の権限行使となりますね。では行政は生ぬるい方法でたいおうしてもよいのか、そろそろ考え時でしょう。
太陽光発電用の管理用道路の利用の仕方も問題と思います。最近、作業道を切り開いたところで、その先にわずかな森林が残っていて、その先に道路があり、その森林の一部に道を作れば道路が接続することになるので、そのような要望が上がりました。たしかに道路がどんどんつながると便利とも言えますが、それによって不法投棄や関係のない車の進入というデメリットも考えないといけない時代です。奥まった山では道ができると不法投棄が増える状況にあります。そのようなリスク対応を考慮せずに、開発することなど愚の骨頂かもしれません。
書き出すと切りがないのと、そろそろ1時間ですので、この程度でおしまいとします。また明日。