《あらすじ》
暴力実体調査票には、フンスについてあらゆることが書かれていた。
これはすべて真実なのか?
インジェは疑問に思うが、セチャンは即座にオム先生に提出してしまう。
フンスと2組の生徒の成績、どちらが大事か?
セチャンの言い分に、インジェは腹を立てるのだった。
オム先生は、生徒に聞き取り調査をおこなった。
パンを買いに行ったり、鞄をもってやったり、
ナムスンは、自発的にやったことだと言っている。
「フンス本人に事情を聞いてみなくては」
あくまで公正に対処しようとするオム先生。
しかし、ナムスンは不安で仕方がない。
フンスから自分を守ろうとしてくれる、
クラスメイトのおせっかいがわずらわしかった。
みんなは勘違いをしているのだ。
あいつは、フンスは親友だった。
悪いことも、楽しいことも、一緒にやった。
それなのに……。
「ナムスンとお前は友達か?友達でもパシリ行為は禁止だぞ」
オム先生に聞かれて、フンスは言った。
「あいつは友達なんかじゃない」
フンスは怒りを押し殺しているようだった。
聴取のあと、廊下でナムスンを見つけたフンスは、
彼の胸ぐらをつかんで壁に押しつけた。
「今度は被害者面か?やってやるよ」
ふたりの不穏な様子に、生徒たちが集まってくる。
先生を呼びに走った生徒もいる。
「やめろ」
ナムスンがまわりを気にしながら、声を殺してフンスをなだめようとするが、
彼は聞く耳を持たない。
「お前が殴ったらやめてやるよ」
「退学になる」
「俺の心配か?俺には願ってもないことだ、退学になるさ」
「頼むから、フンス」
「黙れ」
フンスはナムスンを殴り、駆けつけた先生たちに取り押さえられた。
指導室で反省文を書かされているふたり。
「この学校で卒業するんだろ?」
「そのつもりだったが、お前が邪魔をする」
「ごめん、パク・フンス」
フンスはナムスンを許さなかった。
もう遅い。それに、本当に許されると思っているのか?
彼の言うことはもっともで、ナムスンはうつむくしかなかった。
フンスを止めようとして振り払われたインジェは、怪我をした。
教師たちはフンスを恐れ、退学もやむなしと考え出した。
しかしインジェは、そうは思えない。
そこでチョ先生が疑問を呈した。
「なぜ殴り合ったんでしょうね?」
みんなが見ている前でわざわざ?報復なら隠れてやるだろうに。
物事は、見えている部分より見えない部分の方が大きい。
チョ先生の言葉は、インジェの胸に響いた。
フンスはインジェの怪我の様子を心配してたずねた。
その優しさに、ふと微笑んでしまう。
「さっきの、本気のケンカに思えないんだけど。違うかな?」
とうとう、フンスのために、暴力対策委員会が開かれることになった。
彼の処分はそこで決まる。
本人はすっかり退学するつもりでいるし、
ジョンホもニヤニヤしながらまた、ヨンウから金をせびろうとしている。
もう強い奴がいなくなるのだから、2組はまたジョンホの天下になるのだ。
「おい、まだ目が醒めないのか?おとなしく引っ込んでろ」
フンスはジョンホを止めた。
「俺の退学を喜んでいる場合か?まだ強い奴が控えているだろ?」
フンスの目線は、ナムスンへ飛ぶ。
思わせぶりな物言いに、ナムスンも身構えた。
「数学のオムだよ。お前いいなりじゃないか」
ナムスンは、ほっと、力を抜いた。
フンスを退学にしないですむ方法はないのか?
考え続けていたナムスンは、授業中に手をあげた。
事実を時系列で述べていく、叙事を展開してごらん、という
インジェ先生の授業だった。
「夢はサッカー選手だった。
不良をやめろと、監督に言われた。
番長は抜けるなら殴ると言った。
そして足の骨が砕けた。
番長は夢を奪った悪党だ」
教室は少しざわつき、次第にしんとなった。
インジェも戸惑い、「最後の文は叙事じゃないわ」と指摘する。
「まだ1文あります。
その悪党は……コ・ナムスンだ。
だから、フンスは悪くない」
フンスの足を砕き、彼の夢を奪ったのは親友であるナムスンだった。
ナムスンは不良の番長で、フンスを制裁する側だったのだ。
教室は静まりかえり、
フンスは目の縁を赤くしてナムスンをにらみ、委員会へ呼ばれていった。
校長は、フンスを退学させたがっている。
委員会のメンバーには地元の警察もいて、以前の暴力沙汰がバレてしまった。
校長はインジェを担任から下ろし、委員会への出席を止めた。
彼女のかわりに、セチャンが出る。
合理主義のセチャンで、フンスは大丈夫だろうか?
インジェはできうる限りのことを訴えたが、
セチャンがどう考えるかはわからなかった。
フンスについてのアンケートは、生徒たちの誤解であることがわかった。
しかし、委員会は紛糾した。
フンスが問題児であることに変わりはない。
まともな保護者は、問題児に懲罰を望むだろうし、
かといって退学にすれば、生徒を見放すのか、という保護者も出るだろう。
どちらの意見も間違いではない。
と、委員会へインジェが入ってきた。
「改心の機会を逃しているのかも、と不安になったんです。
ジョンホの瞳が、セチャン先生の言葉にゆらぐのを見ました。
あのジョンホがですよ?
フンスはわたしの怪我を気にしてくれました。
私を突き飛ばしたのが気がかりだったんです。
これぐらいなら、まだ可能性があるのでは?
フンスにもう一度だけチャンスをください」
校長はインジェをロマンチックすぎると非難したし、
ミンギの母は、フンス自身に学校に居つづける意志があるのか疑問だと言った。
しかし学校は、法律で縛られた社会ではない。
歩み寄り、譲歩することも必要だと、チョ先生は言う。
セチャンは、フンスに勝ち続けることは不可能だと言った。
生徒は自力では変わらない。ずっと担任が刺激を与え続けられる?
どの意見も、なるほどと思わせるものだったし、間違っていない。
では、委員会の結論は?
退学に賛成は3名。反対も3名。オム先生も冷静に判断して反対にまわっている。
セチャンは、もちろん退学に賛成だ。
フンスは、半ばあきらめていた。教室を出て行く彼を、ナムスンが追った。
「まだ何か言うことがあるのか?全部ぶちまけたろ?」
「言わなかったら退学になるから……」
ナムスンの態度に、フンスは怒っていた。
「お前には関係ない」
「お前が一緒の学校にいれば、何かできるから……」
「何をだよ?何ができるって?」
「わからないけど、お前にいっぱい謝って借りも返す」
フンスは許さなかった。
借りだと?返せる借りだと思うのか?
自分の人生を台無しにして逃げた奴を許すわけがないだろう?
「退学じゃなかったら?退学じゃなかったら学校へ来るか?」
「来るもんか」
だが、セチャンは続けて言った。
「個人的には退学に賛成です。しかし、
わたしは今、インジェ先生の代理できていますから、反対です」
多数決により、フンスの処分は校内奉仕ですんだ。
だが彼は学校へ来ないのだ。インジェは心配だった。
そんな彼女の様子をセチャンはからかう。
だが、これまでとは違ってふたりの間にはお互いへの信頼がある。
ようやく共同担任という呼び方がしっくりくるようになったのだ。
インジェは夜になってフンスの家を訪ねた。
誰もいなくて待っていたら、ナムスンが来た。
すべてが明るみに出てすっきりしたのか、ナムスンはフンスとのことを素直に話してくれた。
小学校の頃から仲が良かった。
フンスはサッカーがとてもうまくて、病気のお母さんに親孝行するんだと
一生懸命だった。自分が邪魔してしまったけれど。
グループを抜けるというフンスを殴ったのは、儀式だった。
でも、自分だけ置いて行かれそうで、腹も立ったのだ。
インジェは、後のことはナムスンに任せて帰っていった。
ナムスンはフンスを呼び出し、学校へ来るように言った。
だがフンスはもう何もかもあきらめている。
「また俺のために人生を投げ出すのか?俺を無視して通えばいい!
できないのか?じゃあ逃げずに気になるっていえよ!」
「逃げるさ。お前をみてると吐き気がする。砕かれた足を思いだしてな」
ナムスンは、それを言われると何も言えなくなりそうだった。
だが、ここで引き下がったら本当にフンスは学校へ来なくなってしまう。
「なら残って俺に復讐しろ。逃げないで俺に復讐しろ」
「復讐?何を奪えばいい?お前に大事な物なんてあるのか?
あるなら捨てろ。そしたらお前も本気だとだまされてやる」
ナムスンの顔がゆがむ。
「どうした?できないのか?」
うつむいたナムスンを残してフンスは立ち去り、やはり学校へはこなかった。
このまま休んで奉仕作業をしないなら、学校も彼を救えない。
今日来なければ退学だという日に、ナムスンはフンスへ電話した。
大事なものを捨てるから、学校へ来い。
来たら何を捨てるか見せるから。
授業が終わっても、インジェは彼を待っていた。
クラスメイトはしびれを切らして、時間のない者たちは帰っていった。
ナムスンを含めて数人が残っていると、オム先生が様子を見に来た。
そこへちょうどフンスがやってくる。
「来たには来たが、放課後ですから欠席でしょう」
「いえっ、いま終礼中なんです!」
「そうです、みんなは途中で帰ったんです」
ミンギの後押しもあり、インジュは強引にフンスを遅刻扱いにしてしまった。
「何を捨てるんだ?」
フンスはたずねた。
ナムスンが見せたのは、退学届だった。
インジェにそれを提出して、帰っていくナムスン。
フンスは校門で待っていた。
「たかが学校かよ?人生で一番大事なものが?認められないぞ」
ナムスンは言った。
「今捨てたのは、学校か?
俺が今捨てたのは、学校じゃない。お前だよ」
(つづく)
あのさぁ、
何で泣けちゃうのかなぁ……
ここで来ちゃうんだろうなぁ、ってわかってるのにさ、
泣くもんか、って思ってるのにさ、
なんで泣けちゃうのかな?
うわぁぁぁぁぁん!(泣)
っていう回でしたね、はい。
なんか、ぶわって涙が出る感じで泣きましたラストシーンで。
「お前だよ」って、そんなセリフ反則だよ……。
ナムスンの言い方も胸にくるんですよ。
こみ上げてくる嗚咽を押さえつけるように、
ぐっと喉が鳴ってね。
それがどんなにつらいことか、すごく伝わってくるんですよ。
だってわたしだって思ってましたもん、
ナムスンが捨てたのは「学校」だ、って。
自分を受け入れてくれるクラスメイト、
関わってくれる先生、
自分が大事にされて、新しく生まれ変われる環境を捨てたんだ、って。
でも違った!
そうじゃなかった!
ナムスンは自分が一番大事なんじゃない、
フンスのことが一番大事だったの……。
さすがのフンスも、これは来ただろう。
途中、インジェ先生とか、ナムスンの告白とか、
ぐぐっと涙をこらえたシーンがいっぱいあったせいで、
最後は我慢できなくなって涙が出てしまったんだよ、わたし。
構成うまいよなぁ。
前回の感想で申し上げましたが、
もうさすがにこれ以上、ナムスンとフンスの因縁の謎は引っ張れないだろうという
読み通り、ここでふたりの過去がはっきりしました。
ナムスンとフンスは親友で、ふたりで悪いことをいっぱいしたけど、
グループを抜けたくなったフンスが制裁を受け、
ナムスンが彼の足を折ってしまった、と。
そのせいで、フンスは夢だったサッカー選手をあきらめた。
スカウトもたくさん来るほどの実力者だったのに……。
そんな過去を、クラスメイトの前ですべてあきらかにするナムスンが
素晴らしくかっこいいですね。
そして涙目になっちゃうふたりが、素晴らしく愛おしいです。
いまのフンスが、友人に囲まれるナムスンを見て
「置いて行かれる」と感じたように、
むかしのナムスンは、夢に向かうフンスを見て
「置いて行かれる」と感じていた。
ふたりがもう少しだけ、大人だったら、
ふたりがもう少しだけ、しあわせだったら、
こんな悲劇は起こらなかったのかも。
まわりより大人びていた、という彼らは、
そう言われる分だけ子どもだったし、
暴力や悪さに惹かれる分だけ、
ふしあわせだったのだと思う。
フンスの母が病弱であったり、
ナムスンの父が酒浸りであったり、
やはりそこには社会的弱者という環境があるわけで。
そういう環境でも、まっすぐで素直な子はいる、ということも
わかっているし、みんなが悪さをするわけではない、とわかっていますが、
そうした要素はまったく関係ないとはいいきれない。
歯切れ悪いですか?
そうですね、こうした紋切り型の物の見方は差別的だとも思うし、
彼らがふしあわせだったと言い切るのは失礼かもしれません。
でも、物事の良い面だけを見ようとしても意味が無いとも思う。
フンスとナムスンはふたりでいる時はしあわせだったけれど、
やはりどこかふしあわせだったのだと思います。
でもまんまと騙されたなぁ。
彼らのパワーバランスを完全に見誤っていました。
過去の回想で、ナムスンがボコボコに殴られ蹴られしているシーンが
あったじゃないですか。
あれで、フンスが番長でナムスンは子分兼親友みたいなイメージができてた。
先に抜けたかったのは、フンスの方だったんですね。
傷つけられ、裏切られたのはフンスであるのは変わりないけれど、
ナムスンが善だとばかり思っていました。
ははは、ギボム並の推理力だなー、わたし。
すべてをクラスメイトに告白して、
(その告白の仕方が授業中で、しかも叙事文であるというのがかっこよすぎ。
叙事というのは、主観を入れないで事実だけを記すことなので、
ふたりの関係性がよりストレートに伝わり、
当事者のフンスも素直に聞くことができたと思われる)
フンスの家の前でインジェ先生と話すナムスンの表情。
この時のナムスンが、これまでのナムスンとまったく違う人みたい。
すごく先生に心をゆるしている感じがして、
心の重荷を下ろした人のようにさっぱりとした顔で、
先生と話すの。
ちょっと衝撃でした。
わたしがドラマを見続ける理由はこれじゃないかな、と思った。
この全身から立ち上る気配を、映像で目撃し、感じるために
ドラマを観るんだなって。
優れた小説だっていっぱいありますけど、
心が目に見える形で迫ってくるのは映像作品ならではの体験ですものね。
とはいえ、映像作品ならではの弊害もあって。
数年前?のナムスンとフンスの仲良かった時代の光景って、
ちょっと浮いた感じしませんでした?
学校で他の生徒たちと一緒にいる時はいいんだけれど、
ふたりだけで遊んでる時は、ちょっと年代的に大きすぎる感じで、
初々しさにかけるというか……。
苦労のためはやく老成したふたりが、
年相応に楽しく遊んでいる図、と思えばいいかもしれませんね。
お前の一番大事な物を捨てろ、と言い、
それが学校かよ、と吐き捨てたフンスに、
涙を堪えて、そうじゃない、と言うナムスン。
「俺が捨てたのは、お前だよ」
ここで涙腺崩壊しない人間がいるでしょうか?
いや、いない。(反語)
こうなってくると、オ・ジョンホがちょっとかわいそうですな。
まさに彼は井の中の蛙で、実質3番手の男。
ふたりの火花バチバチの間に割り込んでいくことはとうていできず、
なんだお前まだいたの?状態です。
だいたいフンスもナムスンも一匹狼で、
いきがって先生に逆らったりしないんだもん。
ジョンホの小物感が生徒たちにもわかっちゃって気の毒~。
そうした空気には敏感な不良たちなので、
変に逆ギレしないといいな、と思います。
インジェ先生、こっちをはやく手当てしとかないと後が怖いですよ。
しかし、ここまでになっちゃって、ナムスンは学校へ戻れるのか?
フンスが急に彼を許したりしないと思うんですよね。
もちろん、インジェ先生の言うとおり、
本気でケンカしたわけじゃなくて、本当はまだ親友同士のふたりなんだろうけど。
因縁はわかったけれど、仲直りできるのか、不安は続きます。
【追記 1】
なんだかんだ言って、冷静に物事を判断してくれるオム先生が好きです。
一時は、やっぱり怖いだけの先生?と思ったけど、そうじゃないや。
セチャン先生が、生徒の答案にサインを入れているとき、
「2PMですか」と揶揄したセリフを聞き逃しませんでしたよ!
字幕は「芸能人ですか」になってた。
元のままじゃ通じないですもんね。
でも嬉しかったな~。
【追記 2】
字幕版で観ている方は感じていらっしゃるかと思いますが、
フンスとナムスンの会話には、「セッキ」という単語が飛びかっとります。
イ セッキヤ だとか、ケ セッキヤ だとか、
言葉尻に必ずつく感じ。
侮蔑語っていうか、悪口っていうか、セッキというのが「畜生」のような意味ですんで、
「やめろ、クソが」とか、「わかったよ、ガキが」みたいな、一種の合いの手ですな。
米国人が「ファック」という単語を文章に織り交ぜるようなものです。
これがもう、ふたりの関係をすごくよく表しているなぁ、と。
感動の「お前だよ」のセリフも、
「ノダ セッキヤ」でありまして、「お前だよ、クソガキ」くらいの勢いでアリマス。
ふたりの親密さの表れであり、彼らの愛情の表現なんでしょうけどね。
で、ふと思ったんですけど、
サノバビッチ(雌犬の子)ケ セッキ(イヌの子) 犬畜生 など、
なぜ罵り言葉に「犬」ばかり関係するのか。
犬は人間のよき友だというのに、不思議なもんですね。
暴力実体調査票には、フンスについてあらゆることが書かれていた。
これはすべて真実なのか?
インジェは疑問に思うが、セチャンは即座にオム先生に提出してしまう。
フンスと2組の生徒の成績、どちらが大事か?
セチャンの言い分に、インジェは腹を立てるのだった。
オム先生は、生徒に聞き取り調査をおこなった。
パンを買いに行ったり、鞄をもってやったり、
ナムスンは、自発的にやったことだと言っている。
「フンス本人に事情を聞いてみなくては」
あくまで公正に対処しようとするオム先生。
しかし、ナムスンは不安で仕方がない。
フンスから自分を守ろうとしてくれる、
クラスメイトのおせっかいがわずらわしかった。
みんなは勘違いをしているのだ。
あいつは、フンスは親友だった。
悪いことも、楽しいことも、一緒にやった。
それなのに……。
「ナムスンとお前は友達か?友達でもパシリ行為は禁止だぞ」
オム先生に聞かれて、フンスは言った。
「あいつは友達なんかじゃない」
フンスは怒りを押し殺しているようだった。
聴取のあと、廊下でナムスンを見つけたフンスは、
彼の胸ぐらをつかんで壁に押しつけた。
「今度は被害者面か?やってやるよ」
ふたりの不穏な様子に、生徒たちが集まってくる。
先生を呼びに走った生徒もいる。
「やめろ」
ナムスンがまわりを気にしながら、声を殺してフンスをなだめようとするが、
彼は聞く耳を持たない。
「お前が殴ったらやめてやるよ」
「退学になる」
「俺の心配か?俺には願ってもないことだ、退学になるさ」
「頼むから、フンス」
「黙れ」
フンスはナムスンを殴り、駆けつけた先生たちに取り押さえられた。
指導室で反省文を書かされているふたり。
「この学校で卒業するんだろ?」
「そのつもりだったが、お前が邪魔をする」
「ごめん、パク・フンス」
フンスはナムスンを許さなかった。
もう遅い。それに、本当に許されると思っているのか?
彼の言うことはもっともで、ナムスンはうつむくしかなかった。
フンスを止めようとして振り払われたインジェは、怪我をした。
教師たちはフンスを恐れ、退学もやむなしと考え出した。
しかしインジェは、そうは思えない。
そこでチョ先生が疑問を呈した。
「なぜ殴り合ったんでしょうね?」
みんなが見ている前でわざわざ?報復なら隠れてやるだろうに。
物事は、見えている部分より見えない部分の方が大きい。
チョ先生の言葉は、インジェの胸に響いた。
フンスはインジェの怪我の様子を心配してたずねた。
その優しさに、ふと微笑んでしまう。
「さっきの、本気のケンカに思えないんだけど。違うかな?」
とうとう、フンスのために、暴力対策委員会が開かれることになった。
彼の処分はそこで決まる。
本人はすっかり退学するつもりでいるし、
ジョンホもニヤニヤしながらまた、ヨンウから金をせびろうとしている。
もう強い奴がいなくなるのだから、2組はまたジョンホの天下になるのだ。
「おい、まだ目が醒めないのか?おとなしく引っ込んでろ」
フンスはジョンホを止めた。
「俺の退学を喜んでいる場合か?まだ強い奴が控えているだろ?」
フンスの目線は、ナムスンへ飛ぶ。
思わせぶりな物言いに、ナムスンも身構えた。
「数学のオムだよ。お前いいなりじゃないか」
ナムスンは、ほっと、力を抜いた。
フンスを退学にしないですむ方法はないのか?
考え続けていたナムスンは、授業中に手をあげた。
事実を時系列で述べていく、叙事を展開してごらん、という
インジェ先生の授業だった。
「夢はサッカー選手だった。
不良をやめろと、監督に言われた。
番長は抜けるなら殴ると言った。
そして足の骨が砕けた。
番長は夢を奪った悪党だ」
教室は少しざわつき、次第にしんとなった。
インジェも戸惑い、「最後の文は叙事じゃないわ」と指摘する。
「まだ1文あります。
その悪党は……コ・ナムスンだ。
だから、フンスは悪くない」
フンスの足を砕き、彼の夢を奪ったのは親友であるナムスンだった。
ナムスンは不良の番長で、フンスを制裁する側だったのだ。
教室は静まりかえり、
フンスは目の縁を赤くしてナムスンをにらみ、委員会へ呼ばれていった。
校長は、フンスを退学させたがっている。
委員会のメンバーには地元の警察もいて、以前の暴力沙汰がバレてしまった。
校長はインジェを担任から下ろし、委員会への出席を止めた。
彼女のかわりに、セチャンが出る。
合理主義のセチャンで、フンスは大丈夫だろうか?
インジェはできうる限りのことを訴えたが、
セチャンがどう考えるかはわからなかった。
フンスについてのアンケートは、生徒たちの誤解であることがわかった。
しかし、委員会は紛糾した。
フンスが問題児であることに変わりはない。
まともな保護者は、問題児に懲罰を望むだろうし、
かといって退学にすれば、生徒を見放すのか、という保護者も出るだろう。
どちらの意見も間違いではない。
と、委員会へインジェが入ってきた。
「改心の機会を逃しているのかも、と不安になったんです。
ジョンホの瞳が、セチャン先生の言葉にゆらぐのを見ました。
あのジョンホがですよ?
フンスはわたしの怪我を気にしてくれました。
私を突き飛ばしたのが気がかりだったんです。
これぐらいなら、まだ可能性があるのでは?
フンスにもう一度だけチャンスをください」
校長はインジェをロマンチックすぎると非難したし、
ミンギの母は、フンス自身に学校に居つづける意志があるのか疑問だと言った。
しかし学校は、法律で縛られた社会ではない。
歩み寄り、譲歩することも必要だと、チョ先生は言う。
セチャンは、フンスに勝ち続けることは不可能だと言った。
生徒は自力では変わらない。ずっと担任が刺激を与え続けられる?
どの意見も、なるほどと思わせるものだったし、間違っていない。
では、委員会の結論は?
退学に賛成は3名。反対も3名。オム先生も冷静に判断して反対にまわっている。
セチャンは、もちろん退学に賛成だ。
フンスは、半ばあきらめていた。教室を出て行く彼を、ナムスンが追った。
「まだ何か言うことがあるのか?全部ぶちまけたろ?」
「言わなかったら退学になるから……」
ナムスンの態度に、フンスは怒っていた。
「お前には関係ない」
「お前が一緒の学校にいれば、何かできるから……」
「何をだよ?何ができるって?」
「わからないけど、お前にいっぱい謝って借りも返す」
フンスは許さなかった。
借りだと?返せる借りだと思うのか?
自分の人生を台無しにして逃げた奴を許すわけがないだろう?
「退学じゃなかったら?退学じゃなかったら学校へ来るか?」
「来るもんか」
だが、セチャンは続けて言った。
「個人的には退学に賛成です。しかし、
わたしは今、インジェ先生の代理できていますから、反対です」
多数決により、フンスの処分は校内奉仕ですんだ。
だが彼は学校へ来ないのだ。インジェは心配だった。
そんな彼女の様子をセチャンはからかう。
だが、これまでとは違ってふたりの間にはお互いへの信頼がある。
ようやく共同担任という呼び方がしっくりくるようになったのだ。
インジェは夜になってフンスの家を訪ねた。
誰もいなくて待っていたら、ナムスンが来た。
すべてが明るみに出てすっきりしたのか、ナムスンはフンスとのことを素直に話してくれた。
小学校の頃から仲が良かった。
フンスはサッカーがとてもうまくて、病気のお母さんに親孝行するんだと
一生懸命だった。自分が邪魔してしまったけれど。
グループを抜けるというフンスを殴ったのは、儀式だった。
でも、自分だけ置いて行かれそうで、腹も立ったのだ。
インジェは、後のことはナムスンに任せて帰っていった。
ナムスンはフンスを呼び出し、学校へ来るように言った。
だがフンスはもう何もかもあきらめている。
「また俺のために人生を投げ出すのか?俺を無視して通えばいい!
できないのか?じゃあ逃げずに気になるっていえよ!」
「逃げるさ。お前をみてると吐き気がする。砕かれた足を思いだしてな」
ナムスンは、それを言われると何も言えなくなりそうだった。
だが、ここで引き下がったら本当にフンスは学校へ来なくなってしまう。
「なら残って俺に復讐しろ。逃げないで俺に復讐しろ」
「復讐?何を奪えばいい?お前に大事な物なんてあるのか?
あるなら捨てろ。そしたらお前も本気だとだまされてやる」
ナムスンの顔がゆがむ。
「どうした?できないのか?」
うつむいたナムスンを残してフンスは立ち去り、やはり学校へはこなかった。
このまま休んで奉仕作業をしないなら、学校も彼を救えない。
今日来なければ退学だという日に、ナムスンはフンスへ電話した。
大事なものを捨てるから、学校へ来い。
来たら何を捨てるか見せるから。
授業が終わっても、インジェは彼を待っていた。
クラスメイトはしびれを切らして、時間のない者たちは帰っていった。
ナムスンを含めて数人が残っていると、オム先生が様子を見に来た。
そこへちょうどフンスがやってくる。
「来たには来たが、放課後ですから欠席でしょう」
「いえっ、いま終礼中なんです!」
「そうです、みんなは途中で帰ったんです」
ミンギの後押しもあり、インジュは強引にフンスを遅刻扱いにしてしまった。
「何を捨てるんだ?」
フンスはたずねた。
ナムスンが見せたのは、退学届だった。
インジェにそれを提出して、帰っていくナムスン。
フンスは校門で待っていた。
「たかが学校かよ?人生で一番大事なものが?認められないぞ」
ナムスンは言った。
「今捨てたのは、学校か?
俺が今捨てたのは、学校じゃない。お前だよ」
(つづく)
あのさぁ、
何で泣けちゃうのかなぁ……
ここで来ちゃうんだろうなぁ、ってわかってるのにさ、
泣くもんか、って思ってるのにさ、
なんで泣けちゃうのかな?
うわぁぁぁぁぁん!(泣)
っていう回でしたね、はい。
なんか、ぶわって涙が出る感じで泣きましたラストシーンで。
「お前だよ」って、そんなセリフ反則だよ……。
ナムスンの言い方も胸にくるんですよ。
こみ上げてくる嗚咽を押さえつけるように、
ぐっと喉が鳴ってね。
それがどんなにつらいことか、すごく伝わってくるんですよ。
だってわたしだって思ってましたもん、
ナムスンが捨てたのは「学校」だ、って。
自分を受け入れてくれるクラスメイト、
関わってくれる先生、
自分が大事にされて、新しく生まれ変われる環境を捨てたんだ、って。
でも違った!
そうじゃなかった!
ナムスンは自分が一番大事なんじゃない、
フンスのことが一番大事だったの……。
さすがのフンスも、これは来ただろう。
途中、インジェ先生とか、ナムスンの告白とか、
ぐぐっと涙をこらえたシーンがいっぱいあったせいで、
最後は我慢できなくなって涙が出てしまったんだよ、わたし。
構成うまいよなぁ。
前回の感想で申し上げましたが、
もうさすがにこれ以上、ナムスンとフンスの因縁の謎は引っ張れないだろうという
読み通り、ここでふたりの過去がはっきりしました。
ナムスンとフンスは親友で、ふたりで悪いことをいっぱいしたけど、
グループを抜けたくなったフンスが制裁を受け、
ナムスンが彼の足を折ってしまった、と。
そのせいで、フンスは夢だったサッカー選手をあきらめた。
スカウトもたくさん来るほどの実力者だったのに……。
そんな過去を、クラスメイトの前ですべてあきらかにするナムスンが
素晴らしくかっこいいですね。
そして涙目になっちゃうふたりが、素晴らしく愛おしいです。
いまのフンスが、友人に囲まれるナムスンを見て
「置いて行かれる」と感じたように、
むかしのナムスンは、夢に向かうフンスを見て
「置いて行かれる」と感じていた。
ふたりがもう少しだけ、大人だったら、
ふたりがもう少しだけ、しあわせだったら、
こんな悲劇は起こらなかったのかも。
まわりより大人びていた、という彼らは、
そう言われる分だけ子どもだったし、
暴力や悪さに惹かれる分だけ、
ふしあわせだったのだと思う。
フンスの母が病弱であったり、
ナムスンの父が酒浸りであったり、
やはりそこには社会的弱者という環境があるわけで。
そういう環境でも、まっすぐで素直な子はいる、ということも
わかっているし、みんなが悪さをするわけではない、とわかっていますが、
そうした要素はまったく関係ないとはいいきれない。
歯切れ悪いですか?
そうですね、こうした紋切り型の物の見方は差別的だとも思うし、
彼らがふしあわせだったと言い切るのは失礼かもしれません。
でも、物事の良い面だけを見ようとしても意味が無いとも思う。
フンスとナムスンはふたりでいる時はしあわせだったけれど、
やはりどこかふしあわせだったのだと思います。
でもまんまと騙されたなぁ。
彼らのパワーバランスを完全に見誤っていました。
過去の回想で、ナムスンがボコボコに殴られ蹴られしているシーンが
あったじゃないですか。
あれで、フンスが番長でナムスンは子分兼親友みたいなイメージができてた。
先に抜けたかったのは、フンスの方だったんですね。
傷つけられ、裏切られたのはフンスであるのは変わりないけれど、
ナムスンが善だとばかり思っていました。
ははは、ギボム並の推理力だなー、わたし。
すべてをクラスメイトに告白して、
(その告白の仕方が授業中で、しかも叙事文であるというのがかっこよすぎ。
叙事というのは、主観を入れないで事実だけを記すことなので、
ふたりの関係性がよりストレートに伝わり、
当事者のフンスも素直に聞くことができたと思われる)
フンスの家の前でインジェ先生と話すナムスンの表情。
この時のナムスンが、これまでのナムスンとまったく違う人みたい。
すごく先生に心をゆるしている感じがして、
心の重荷を下ろした人のようにさっぱりとした顔で、
先生と話すの。
ちょっと衝撃でした。
わたしがドラマを見続ける理由はこれじゃないかな、と思った。
この全身から立ち上る気配を、映像で目撃し、感じるために
ドラマを観るんだなって。
優れた小説だっていっぱいありますけど、
心が目に見える形で迫ってくるのは映像作品ならではの体験ですものね。
とはいえ、映像作品ならではの弊害もあって。
数年前?のナムスンとフンスの仲良かった時代の光景って、
ちょっと浮いた感じしませんでした?
学校で他の生徒たちと一緒にいる時はいいんだけれど、
ふたりだけで遊んでる時は、ちょっと年代的に大きすぎる感じで、
初々しさにかけるというか……。
苦労のためはやく老成したふたりが、
年相応に楽しく遊んでいる図、と思えばいいかもしれませんね。
お前の一番大事な物を捨てろ、と言い、
それが学校かよ、と吐き捨てたフンスに、
涙を堪えて、そうじゃない、と言うナムスン。
「俺が捨てたのは、お前だよ」
ここで涙腺崩壊しない人間がいるでしょうか?
いや、いない。(反語)
こうなってくると、オ・ジョンホがちょっとかわいそうですな。
まさに彼は井の中の蛙で、実質3番手の男。
ふたりの火花バチバチの間に割り込んでいくことはとうていできず、
なんだお前まだいたの?状態です。
だいたいフンスもナムスンも一匹狼で、
いきがって先生に逆らったりしないんだもん。
ジョンホの小物感が生徒たちにもわかっちゃって気の毒~。
そうした空気には敏感な不良たちなので、
変に逆ギレしないといいな、と思います。
インジェ先生、こっちをはやく手当てしとかないと後が怖いですよ。
しかし、ここまでになっちゃって、ナムスンは学校へ戻れるのか?
フンスが急に彼を許したりしないと思うんですよね。
もちろん、インジェ先生の言うとおり、
本気でケンカしたわけじゃなくて、本当はまだ親友同士のふたりなんだろうけど。
因縁はわかったけれど、仲直りできるのか、不安は続きます。
【追記 1】
なんだかんだ言って、冷静に物事を判断してくれるオム先生が好きです。
一時は、やっぱり怖いだけの先生?と思ったけど、そうじゃないや。
セチャン先生が、生徒の答案にサインを入れているとき、
「2PMですか」と揶揄したセリフを聞き逃しませんでしたよ!
字幕は「芸能人ですか」になってた。
元のままじゃ通じないですもんね。
でも嬉しかったな~。
【追記 2】
字幕版で観ている方は感じていらっしゃるかと思いますが、
フンスとナムスンの会話には、「セッキ」という単語が飛びかっとります。
イ セッキヤ だとか、ケ セッキヤ だとか、
言葉尻に必ずつく感じ。
侮蔑語っていうか、悪口っていうか、セッキというのが「畜生」のような意味ですんで、
「やめろ、クソが」とか、「わかったよ、ガキが」みたいな、一種の合いの手ですな。
米国人が「ファック」という単語を文章に織り交ぜるようなものです。
これがもう、ふたりの関係をすごくよく表しているなぁ、と。
感動の「お前だよ」のセリフも、
「ノダ セッキヤ」でありまして、「お前だよ、クソガキ」くらいの勢いでアリマス。
ふたりの親密さの表れであり、彼らの愛情の表現なんでしょうけどね。
で、ふと思ったんですけど、
サノバビッチ(雌犬の子)ケ セッキ(イヌの子) 犬畜生 など、
なぜ罵り言葉に「犬」ばかり関係するのか。
犬は人間のよき友だというのに、不思議なもんですね。
楽しんでます(*^ω^*)
で、本筋とは全く関係ないところで
どうしても言いたいことが…←
3番手の男、オ・ジョンホくんが
ポジョンの少年時代だったんですよー
お茶吹くのわかっていただけますよね
;^_^A
すみません( ;´Д`)
しょーもないコメントしてしまって
これからも楽しみしてます(*´艸`*)ァハ♪
善徳はオム・テウンの少年時代をイ・ヒョヌが演じて、
どうやったらあの美少年がユシンになるんだ……と
それこそお茶吹いたですよね。
ジョンホは経験を積んだいい役者になるはずだから、
絶対変な整形とかしないでほしいわ~。