《あらすじ》
「私がミシルを利用したと言った理由がわかりましたか?」
チュンチュは、自分の計画がうまくいったと確信し、意気揚々とトンマンに語る。
はじめから計画していたことであり、失敗の可能性などない。
しかしトンマンは慎重に、甥に告げるのだ。
「もし、万が一の場合は、私が手をさしのべるから、その手をつかめ。
約束できるか?」
「ええ、いいでしょう。万が一、失敗した場合は」
その万が一など、あり得ないとチュンチュは思っているのだが。
ポリャンとチュンチュが結婚してしまったため、ソルォンの立場は悪くなった。
セジョンは、とりつくしまがなく、対抗心をむき出しにしている。
ミシルはいまだ遊山から戻らないので、ミセンは事態の沈静化におおわらわだ。
ミシルが騙され、陣営は分裂。それなのに何の手も打たないミシルに、
トンマンは不安でたまらない。
一体ミシルの心境にどのような変化が?
ミセンは、親しくしていたチュンチュがどのような意図で動いているのか
確かめに行った。
「ミセン公は、世の中に明るい方ですから、何が起こっているかおわかりでしょう?
私の母、チョンミョン王女は、テナムボに殺されました」
チュンチュの激しい口調に、ひるんでしまったミセン。
「しかし私はテナムボに情けをかけ、生かした。
私の恩に、ミセン公はどのように報いるおつもりですか!」
チュンチュの目は、涙で潤んでいるように見えた。
急ぎ、姉を探すミセンは、行き先に見当がついた。
宮廷を一時追われた時も、チンジ王廃位の時も、あの場所に出かけた。
トンマンもミシルを探していたところ、
各組に配属された伽耶民の郎徒が情報をあげ、居場所が判明した。
五指山、閑雲渓谷の佳穏亭。
ミシルを信じられなくなり、不安になっていたトンマンは、
急遽、佳穏亭へ向かう。
ミシルは山頂の澄んだ空気の中でゆったりと呼吸する。
ピダムを相手に、若い頃の話をしてやる。
「本当ですか?修行がつらくて師匠が泣いたって?」
「師匠のコチルブ公に蛇をけしかけたこともある」
「ははははは!」
ムンノの若い頃の話を聞かせもらって、ピダムは楽しそうだ。
「陛下の寵愛を受けていた私にコチルブ公は厳しくできないし、
ソルォン公は暇さえあれば遊山にでかけて雲上人というあだ名をつけられていたわ」
「師匠のあだ名は?」
「護国仙……国を護る仙人という意味だ」
「璽主は?」
ピダムは楽しくなってそう聞くのだが、ミシルはふいと話題をそらしてしまう。
「お前たち三人なら天下を取れるとかわいがってくださった」
「璽主のあだ名も教えてください」
食い下がるピダムに、ミシルは言った。
「傾国之色(キョングクチセ)」
「傾国之色?国を傾けるほどの美女という意味ですね!」
「花郎たちはそう言って、私の色香はいつか国を傾けると皮肉ったのだ。
陛下への警告でもある」
「不服ですか?」
「不服か、だと?
そのころからだったか、王妃などという、しがない夢を抱いたのは……」
「しがない、夢?」
過去を思い出し、遠くを見るような目をするミシル。
兵を集め、かたくなな態度のセジョン公にソルォンは当惑していた。
もろくも崩れ去った信頼関係を修復するのは至難の業だ。
チュンチュを副君に推し、新勢力となるか、先制攻撃をしかけるか……。
上大等と兵部の争いなど、洒落にならない。
ソラボルは重苦しい空気に支配されていた。
ポジョンは、花郎たちを連れてセジョンを拉致。
対抗するように、ハジョンもソルォンを拉致した。
ソルォンは、ミシルのいない間に進行してしまった事態を
なんとか食い止めようと、ハジョンを説得しようとするのだが、
猜疑心が勝っているハジョンは、聞く耳を持たない。
「しがない夢……ですか」
ピダムのつぶやきに答えるミシル。
「今思うと、そうだ。力なき女の浅知恵……
王妃がなんだ。王妃など、一人の男の正室に過ぎぬ」
ミシルは、自嘲する。
「時代に逆らい、息子を捨ててまで……。
王妃になるため、私は息子を捨てた」
「かっこいいですよ」
「そう思うか?」
「当時はそれが夢だったんでしょう?」
「そうだ、しがなくも」
「しがなくても、壮大でも、夢とはそういうもの。
すべてを、捨てさせます」
「理解してくれるとはありがたい」
思わぬピダムの言葉に、戸惑うミシルだが、ふと問うた。
「なぜトンマンに仕えている?お前とは合わぬのに」
「私は鴨なのです」
「鴨?」
「鴨は、生まれて初めて見るものについていくのだそうです」
「世に出て初めて観たのがトンマン王女だったと?」
ピダムは、ムンノの最後の言葉を思い出していた。
ピダムが、生まれて初めて自ら助けようとしたのが、トンマン王女だった。
王女が、ピダムの慈悲の心を引き出してくれたのだ。
「恋心か?」
ミシルに指摘され、照れくさそうに認めるピダム。
「ふふ、まぁそうです」
「なんとも魅力のないものだな。
恋を成就させるために女を追いかける男など。踏みつけたくなる」
「では、恋心だけでなく、自分の夢もかなえられるなら?」
ミシルは興味深げに、ピダムにほほえむ。
「三韓統一の大業を果たすため、師匠は生涯をかけて三韓地勢を書き上げました。
璽主は興味がないようですが、王女様は非常に関心があります。
王女は私を得て、大業を為し、私は王女を得て歴史に名を残す。
これなら壮大な夢と言えるでしょう?
壮大な夢を抱く男には、女も魅力を感じるのでは?
ですから、璽主もしがない夢などお捨てになってはいかがですか?」
ミシルは、ささやくようにつぶやいた。
「なぜ?」
ピダムは、じっと彼女の目を見つめる。
「私だからです」
「断る」
「なぜです?」
「私だから」
「しがない夢だとご自分で認められたのではないですか」
「それは認める。
だがこのミシルは、認めてもあきらめたことはなかった。
再出発してきたのだ。
それが私。
ミシルだ」
魅了されたように、ミシルから視線をそらすことができない。
自分の口元がふと緩むのに気付いて、慌てて気を引き締めるピダムだった。
ソラボルは、いまにも内戦が勃発しそうな勢い。
ミシルもトンマンも宮廷にはいない。
王はトンマンの身を按ずるが、自身の病はいかんともしがたい。
この状況をどう切り抜けるのか。
桂隠亭に、突然トンマンが訪ねてきた。
トンマンは、ミシルの態度を批判する。
ミシルらしくない態度をとられて、自分はどうしたらいいかわからない。
ミシルのように考え、ミシルのように行動しようとしているのに……。
「私のように考え、私のように行動しようとしているなら、
私の考えはおわかりのはずです」
「ええ、だから不安なのです」
ミシルの心には、大きな変化が起きようとしていた。
ソルォンも、それを感じている。
ミシル自身も……。
ミシルが勝つこともあれば、トンマンが勝つこともあるだろう。
だが、ただでよこせというのは厚かましい。
人材や財産なら、ただで渡してもいい。
「しかし、私が持っているのは時代です」
「すべてを失うかもしれませんよ」
それを知っているミシルは、だからこそ、遊山に来た。
初心を取り戻すために。
「全身全霊でお相手いたします。主となるために……」
ミシルの決意を知ったトンマンは、急ぎソラボルへ。
弟ミセンからの文で状況を知ったミシルも、馬でソラボルへ向かった。
チュンチュの居場所がわからなかったが、
ピダムの手引きで賭博場のヨムジョンのもとへ向かったトンマン。
さすがに気まずそうなチュンチュだが、得意げな態度はかわらない。
「降伏しにきたのですか?手を組もうというならかまいませんよ。
叔母上の資質と能力は私も高く評価しています」
トンマンは、チュンチュにまず謝った。
子ども扱いして悪かった、彼の力を侮っていた、と。
「だが、そなたの計画は失敗だ。ひとつ見逃したのだ」
チュンチュは、トンマンの言葉に意外な表情だ。
トンマンが副君に立とうとすれば、対抗できるのは自分以外にいるか?
「いる。ミシルだ」
「そ、そんなことはありえないことだ」
女の身で、王になると宣言したトンマン、
骨品制を批判したチュンチュ。
二人のおかげで、眠れる龍が目を覚ましてしまった。
彼らがミシルを覚醒させてしまったのだ。
「だから私の手をつかめ。ミシルまでは私が相手をする」
屋敷前で、相対峙していたソルォンとセジョン。
ソルォンの説得と、先に自兵を下がらせた態度が、セジョンを冷静にさせていた。
「もしポジョンのいうことが正しいのなら……」
そこへ現れたミシル。
「ええ、わたくし自ら名乗りを上げます」
とうとうミシルが、王位を望むというのか……。
(つづく)
だ、騙されたぁ~!
ミシル、全然弱ってないじゃん!
死にそうかと心配しちゃって損したよ!
眠れる龍を起こしちゃった、覚醒させちゃった、って!
より強大になったミシルに立ち向かえるのか、トンマンや~!
こわ~~~。
なんかいよいよミシル弱ってきたのかと思わせておいてこれだよ。
息子と仲良く遊山にいって、昔話なんかしちゃって、
おばあちゃんかよ、と思いきや、なんのなんの、再生したよ、この人。
でもあれだね、ピダムがほぉ~っとなっちゃうのもわかるね。
昔、ミシルとソルォンとムンノが仲良く花郎だった頃の話は面白そうだったなぁ。
ムンノは尊敬していた師匠の娘と結婚したんだね。
小説だったら、外伝とかあるのにね。
意外にお茶目だったムンノの話をきいて、ピダムほんとに楽しそう。
お母さんにおねだりする子どもみたい。
あ、そのとおりか。
ミシルは冷たい女だけど、息子を捨てたことはさすがにつらかったようだ。
ことあるごとに、私は息子すら捨てた女なのだぞ、と自嘲気味に話すのがその証拠か。
息子に恨まれてるだろうな、とは感じているのね、きっと。
でもピダムは許しちゃう。
いとも簡単に。
夢っていうのは、人をそうさせちゃうものだから。
そこまで必死に追い求める夢があるっていうことが、かっこいいことだから。
まぁピダムにしろ、自分の夢のために、お袋さんを捨ててるわけですよ。
トンマンを王女にしたくて、ミシルを追い落とそうとしているわけですから。
お母さん、僕を見てね、僕を認めてね、って最初は思ってたけど、
こっぴどく意地悪されてからはそうでもないしね。
てか、ミシルが結構普通にかまってくれるもんだから、それでいいやって感じ?
心の中、全部だだ漏れになってるし。
ムキになってもしょうがない、みたいな。
へたすると、ほわぁ~っとミシルに惹かれまくってしまうピダムは、
時々いかんいかん、みたいに冷静になるようつとめていますね。
かわいいですね。
お母さんじゃなかったら、恋をしちゃいそうな勢いですね。
親子だってわかっててよかったですね。
ほんとはミシル、チルスクとどうにかなるにも年増なのに、
つやつやぷっくり美しいので惑っちゃうんですよ!
ピダムが、じゃないよ、視聴者が。
「昔は花郎たちが私を抱こうと殺しあいをしたものよ」とか
言ってましたし、現在のおばあちゃんっぷりは本人もわかっているはずだす。
でも見た目の色香が現役なんで、観てる方は戸惑うんだす。
あー、こわいこわい。
ミシルを見つめるピダム。そ、そんな目をしたって無駄なのよっ。
ピダムがあっさり許してくれたんで、ミシルも拍子抜けって感じでしたね。
もっといろいろ言われるかと思ってたけど、
ピダムは今はトンマンに夢中ですから、母のことはもういいのね……。
それもきっと寂しいんだろうな、ミシル。
あの子はお前には合わないわよ~と意地悪言ってます。
うふふ、でもお父さん(がわりのムンノ)はトンマンを認めてたんだよね。
彼の優しさを初めて引き出したのが、トンマンだったから。
ムンノとの最後の会話で、それをはっきり意識したピダムは、
俺も変われるかも……って期待しちゃってるんでしょうね。
物語の最後の最後で、変わりたいのに変われない、と葛藤し苦悩するピダムが観たいわ~。
どうせしがない夢なんだし、あきらめてくれよ、と息子に言われ、
「ウェ?」と聞き返すお母さん。
「俺だから」と答える息子。
これはあれですかね、三韓統一を果たす女王に仕え、歴史に名を残すこの俺が、
あなたの息子なのだから、それでいいじゃないか、という意味ですか?
どうせ一人の男の妻になる程度の夢なら、すごい男の母だった、という名誉で我慢してくれ、と。
それとも、もっと直接的な意味?
息子の俺が頼んでいるんだから、黙って呑んでくれ、と?
でも断っちゃうミシル。
今度は息子に「なぜ?」と聞かれ、「ナ ニッカ」と答える母。
私だから。
……すげーの一言ですよ。
ふっと笑っちゃうピダムを責められませんよ。
てか、トンマンが聞いてたら、ミシルに惚れ直しそうですよ。
カリスマ~。
このピダムとミシルのシーンもそうですけど、
役を超えて、俳優同士の演技のぶつかり合い、みたいなとこでも見応えあります。
ナムギルさん、アップでどうどうヒョンジョンさんと渡り合うの、大変だったでしょうね~。
息子と微妙な会話を交わしつつの、あのミシルの表情の変化と、間。
ほんとにどうして方眉だけうまいこと動くんでしょうね、あの人。
ミシルに奇襲攻撃でいっぱいくわせたチュンチュですが、まだまだ子ども。
ここは叔母さんを頼るしかないでしょう~。
でも、ミシルが王位を目指すって、そんなのあり?大義名分ある?
セジョンのこと、あんまり好きじゃなかったからちょっといい気味だけど。
トンマンも、ミシルを倒した後は、最終的には王位をチュンチュに譲る気なんでしょうな。
姉上の息子なわけだしね。
「私がミシルを利用したと言った理由がわかりましたか?」
チュンチュは、自分の計画がうまくいったと確信し、意気揚々とトンマンに語る。
はじめから計画していたことであり、失敗の可能性などない。
しかしトンマンは慎重に、甥に告げるのだ。
「もし、万が一の場合は、私が手をさしのべるから、その手をつかめ。
約束できるか?」
「ええ、いいでしょう。万が一、失敗した場合は」
その万が一など、あり得ないとチュンチュは思っているのだが。
ポリャンとチュンチュが結婚してしまったため、ソルォンの立場は悪くなった。
セジョンは、とりつくしまがなく、対抗心をむき出しにしている。
ミシルはいまだ遊山から戻らないので、ミセンは事態の沈静化におおわらわだ。
ミシルが騙され、陣営は分裂。それなのに何の手も打たないミシルに、
トンマンは不安でたまらない。
一体ミシルの心境にどのような変化が?
ミセンは、親しくしていたチュンチュがどのような意図で動いているのか
確かめに行った。
「ミセン公は、世の中に明るい方ですから、何が起こっているかおわかりでしょう?
私の母、チョンミョン王女は、テナムボに殺されました」
チュンチュの激しい口調に、ひるんでしまったミセン。
「しかし私はテナムボに情けをかけ、生かした。
私の恩に、ミセン公はどのように報いるおつもりですか!」
チュンチュの目は、涙で潤んでいるように見えた。
急ぎ、姉を探すミセンは、行き先に見当がついた。
宮廷を一時追われた時も、チンジ王廃位の時も、あの場所に出かけた。
トンマンもミシルを探していたところ、
各組に配属された伽耶民の郎徒が情報をあげ、居場所が判明した。
五指山、閑雲渓谷の佳穏亭。
ミシルを信じられなくなり、不安になっていたトンマンは、
急遽、佳穏亭へ向かう。
ミシルは山頂の澄んだ空気の中でゆったりと呼吸する。
ピダムを相手に、若い頃の話をしてやる。
「本当ですか?修行がつらくて師匠が泣いたって?」
「師匠のコチルブ公に蛇をけしかけたこともある」
「ははははは!」
ムンノの若い頃の話を聞かせもらって、ピダムは楽しそうだ。
「陛下の寵愛を受けていた私にコチルブ公は厳しくできないし、
ソルォン公は暇さえあれば遊山にでかけて雲上人というあだ名をつけられていたわ」
「師匠のあだ名は?」
「護国仙……国を護る仙人という意味だ」
「璽主は?」
ピダムは楽しくなってそう聞くのだが、ミシルはふいと話題をそらしてしまう。
「お前たち三人なら天下を取れるとかわいがってくださった」
「璽主のあだ名も教えてください」
食い下がるピダムに、ミシルは言った。
「傾国之色(キョングクチセ)」
「傾国之色?国を傾けるほどの美女という意味ですね!」
「花郎たちはそう言って、私の色香はいつか国を傾けると皮肉ったのだ。
陛下への警告でもある」
「不服ですか?」
「不服か、だと?
そのころからだったか、王妃などという、しがない夢を抱いたのは……」
「しがない、夢?」
過去を思い出し、遠くを見るような目をするミシル。
兵を集め、かたくなな態度のセジョン公にソルォンは当惑していた。
もろくも崩れ去った信頼関係を修復するのは至難の業だ。
チュンチュを副君に推し、新勢力となるか、先制攻撃をしかけるか……。
上大等と兵部の争いなど、洒落にならない。
ソラボルは重苦しい空気に支配されていた。
ポジョンは、花郎たちを連れてセジョンを拉致。
対抗するように、ハジョンもソルォンを拉致した。
ソルォンは、ミシルのいない間に進行してしまった事態を
なんとか食い止めようと、ハジョンを説得しようとするのだが、
猜疑心が勝っているハジョンは、聞く耳を持たない。
「しがない夢……ですか」
ピダムのつぶやきに答えるミシル。
「今思うと、そうだ。力なき女の浅知恵……
王妃がなんだ。王妃など、一人の男の正室に過ぎぬ」
ミシルは、自嘲する。
「時代に逆らい、息子を捨ててまで……。
王妃になるため、私は息子を捨てた」
「かっこいいですよ」
「そう思うか?」
「当時はそれが夢だったんでしょう?」
「そうだ、しがなくも」
「しがなくても、壮大でも、夢とはそういうもの。
すべてを、捨てさせます」
「理解してくれるとはありがたい」
思わぬピダムの言葉に、戸惑うミシルだが、ふと問うた。
「なぜトンマンに仕えている?お前とは合わぬのに」
「私は鴨なのです」
「鴨?」
「鴨は、生まれて初めて見るものについていくのだそうです」
「世に出て初めて観たのがトンマン王女だったと?」
ピダムは、ムンノの最後の言葉を思い出していた。
ピダムが、生まれて初めて自ら助けようとしたのが、トンマン王女だった。
王女が、ピダムの慈悲の心を引き出してくれたのだ。
「恋心か?」
ミシルに指摘され、照れくさそうに認めるピダム。
「ふふ、まぁそうです」
「なんとも魅力のないものだな。
恋を成就させるために女を追いかける男など。踏みつけたくなる」
「では、恋心だけでなく、自分の夢もかなえられるなら?」
ミシルは興味深げに、ピダムにほほえむ。
「三韓統一の大業を果たすため、師匠は生涯をかけて三韓地勢を書き上げました。
璽主は興味がないようですが、王女様は非常に関心があります。
王女は私を得て、大業を為し、私は王女を得て歴史に名を残す。
これなら壮大な夢と言えるでしょう?
壮大な夢を抱く男には、女も魅力を感じるのでは?
ですから、璽主もしがない夢などお捨てになってはいかがですか?」
ミシルは、ささやくようにつぶやいた。
「なぜ?」
ピダムは、じっと彼女の目を見つめる。
「私だからです」
「断る」
「なぜです?」
「私だから」
「しがない夢だとご自分で認められたのではないですか」
「それは認める。
だがこのミシルは、認めてもあきらめたことはなかった。
再出発してきたのだ。
それが私。
ミシルだ」
魅了されたように、ミシルから視線をそらすことができない。
自分の口元がふと緩むのに気付いて、慌てて気を引き締めるピダムだった。
ソラボルは、いまにも内戦が勃発しそうな勢い。
ミシルもトンマンも宮廷にはいない。
王はトンマンの身を按ずるが、自身の病はいかんともしがたい。
この状況をどう切り抜けるのか。
桂隠亭に、突然トンマンが訪ねてきた。
トンマンは、ミシルの態度を批判する。
ミシルらしくない態度をとられて、自分はどうしたらいいかわからない。
ミシルのように考え、ミシルのように行動しようとしているのに……。
「私のように考え、私のように行動しようとしているなら、
私の考えはおわかりのはずです」
「ええ、だから不安なのです」
ミシルの心には、大きな変化が起きようとしていた。
ソルォンも、それを感じている。
ミシル自身も……。
ミシルが勝つこともあれば、トンマンが勝つこともあるだろう。
だが、ただでよこせというのは厚かましい。
人材や財産なら、ただで渡してもいい。
「しかし、私が持っているのは時代です」
「すべてを失うかもしれませんよ」
それを知っているミシルは、だからこそ、遊山に来た。
初心を取り戻すために。
「全身全霊でお相手いたします。主となるために……」
ミシルの決意を知ったトンマンは、急ぎソラボルへ。
弟ミセンからの文で状況を知ったミシルも、馬でソラボルへ向かった。
チュンチュの居場所がわからなかったが、
ピダムの手引きで賭博場のヨムジョンのもとへ向かったトンマン。
さすがに気まずそうなチュンチュだが、得意げな態度はかわらない。
「降伏しにきたのですか?手を組もうというならかまいませんよ。
叔母上の資質と能力は私も高く評価しています」
トンマンは、チュンチュにまず謝った。
子ども扱いして悪かった、彼の力を侮っていた、と。
「だが、そなたの計画は失敗だ。ひとつ見逃したのだ」
チュンチュは、トンマンの言葉に意外な表情だ。
トンマンが副君に立とうとすれば、対抗できるのは自分以外にいるか?
「いる。ミシルだ」
「そ、そんなことはありえないことだ」
女の身で、王になると宣言したトンマン、
骨品制を批判したチュンチュ。
二人のおかげで、眠れる龍が目を覚ましてしまった。
彼らがミシルを覚醒させてしまったのだ。
「だから私の手をつかめ。ミシルまでは私が相手をする」
屋敷前で、相対峙していたソルォンとセジョン。
ソルォンの説得と、先に自兵を下がらせた態度が、セジョンを冷静にさせていた。
「もしポジョンのいうことが正しいのなら……」
そこへ現れたミシル。
「ええ、わたくし自ら名乗りを上げます」
とうとうミシルが、王位を望むというのか……。
(つづく)
だ、騙されたぁ~!
ミシル、全然弱ってないじゃん!
死にそうかと心配しちゃって損したよ!
眠れる龍を起こしちゃった、覚醒させちゃった、って!
より強大になったミシルに立ち向かえるのか、トンマンや~!
こわ~~~。
なんかいよいよミシル弱ってきたのかと思わせておいてこれだよ。
息子と仲良く遊山にいって、昔話なんかしちゃって、
おばあちゃんかよ、と思いきや、なんのなんの、再生したよ、この人。
でもあれだね、ピダムがほぉ~っとなっちゃうのもわかるね。
昔、ミシルとソルォンとムンノが仲良く花郎だった頃の話は面白そうだったなぁ。
ムンノは尊敬していた師匠の娘と結婚したんだね。
小説だったら、外伝とかあるのにね。
意外にお茶目だったムンノの話をきいて、ピダムほんとに楽しそう。
お母さんにおねだりする子どもみたい。
あ、そのとおりか。
ミシルは冷たい女だけど、息子を捨てたことはさすがにつらかったようだ。
ことあるごとに、私は息子すら捨てた女なのだぞ、と自嘲気味に話すのがその証拠か。
息子に恨まれてるだろうな、とは感じているのね、きっと。
でもピダムは許しちゃう。
いとも簡単に。
夢っていうのは、人をそうさせちゃうものだから。
そこまで必死に追い求める夢があるっていうことが、かっこいいことだから。
まぁピダムにしろ、自分の夢のために、お袋さんを捨ててるわけですよ。
トンマンを王女にしたくて、ミシルを追い落とそうとしているわけですから。
お母さん、僕を見てね、僕を認めてね、って最初は思ってたけど、
こっぴどく意地悪されてからはそうでもないしね。
てか、ミシルが結構普通にかまってくれるもんだから、それでいいやって感じ?
心の中、全部だだ漏れになってるし。
ムキになってもしょうがない、みたいな。
へたすると、ほわぁ~っとミシルに惹かれまくってしまうピダムは、
時々いかんいかん、みたいに冷静になるようつとめていますね。
かわいいですね。
お母さんじゃなかったら、恋をしちゃいそうな勢いですね。
親子だってわかっててよかったですね。
ほんとはミシル、チルスクとどうにかなるにも年増なのに、
つやつやぷっくり美しいので惑っちゃうんですよ!
ピダムが、じゃないよ、視聴者が。
「昔は花郎たちが私を抱こうと殺しあいをしたものよ」とか
言ってましたし、現在のおばあちゃんっぷりは本人もわかっているはずだす。
でも見た目の色香が現役なんで、観てる方は戸惑うんだす。
あー、こわいこわい。
ミシルを見つめるピダム。そ、そんな目をしたって無駄なのよっ。
ピダムがあっさり許してくれたんで、ミシルも拍子抜けって感じでしたね。
もっといろいろ言われるかと思ってたけど、
ピダムは今はトンマンに夢中ですから、母のことはもういいのね……。
それもきっと寂しいんだろうな、ミシル。
あの子はお前には合わないわよ~と意地悪言ってます。
うふふ、でもお父さん(がわりのムンノ)はトンマンを認めてたんだよね。
彼の優しさを初めて引き出したのが、トンマンだったから。
ムンノとの最後の会話で、それをはっきり意識したピダムは、
俺も変われるかも……って期待しちゃってるんでしょうね。
物語の最後の最後で、変わりたいのに変われない、と葛藤し苦悩するピダムが観たいわ~。
どうせしがない夢なんだし、あきらめてくれよ、と息子に言われ、
「ウェ?」と聞き返すお母さん。
「俺だから」と答える息子。
これはあれですかね、三韓統一を果たす女王に仕え、歴史に名を残すこの俺が、
あなたの息子なのだから、それでいいじゃないか、という意味ですか?
どうせ一人の男の妻になる程度の夢なら、すごい男の母だった、という名誉で我慢してくれ、と。
それとも、もっと直接的な意味?
息子の俺が頼んでいるんだから、黙って呑んでくれ、と?
でも断っちゃうミシル。
今度は息子に「なぜ?」と聞かれ、「ナ ニッカ」と答える母。
私だから。
……すげーの一言ですよ。
ふっと笑っちゃうピダムを責められませんよ。
てか、トンマンが聞いてたら、ミシルに惚れ直しそうですよ。
カリスマ~。
このピダムとミシルのシーンもそうですけど、
役を超えて、俳優同士の演技のぶつかり合い、みたいなとこでも見応えあります。
ナムギルさん、アップでどうどうヒョンジョンさんと渡り合うの、大変だったでしょうね~。
息子と微妙な会話を交わしつつの、あのミシルの表情の変化と、間。
ほんとにどうして方眉だけうまいこと動くんでしょうね、あの人。
ミシルに奇襲攻撃でいっぱいくわせたチュンチュですが、まだまだ子ども。
ここは叔母さんを頼るしかないでしょう~。
でも、ミシルが王位を目指すって、そんなのあり?大義名分ある?
セジョンのこと、あんまり好きじゃなかったからちょっといい気味だけど。
トンマンも、ミシルを倒した後は、最終的には王位をチュンチュに譲る気なんでしょうな。
姉上の息子なわけだしね。
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