ずいぶん昔の話だが
今思い出しても奇妙だなぁ
と感じた事が二つ。
二つの出来事の時期は
まったく違うのだが
似たような現象が特徴的だ。
①民族衣装の女
およそ20年前くらいだろうか。
沖縄県那覇の国際通りを
ぶらぶらと歩いていた時だ。
夏の日差しは本土と違って
まわりの景色をより鮮やかに
映している。
国際通りは沖縄随一の繁華街で
当時も人混みがすごかった。
何気なく歩いている筈なのに
何故か少し先に背中を向けて
歩いている茶色の
長〜い髪の細い女が
いつのまにか
視界に入ってきている。
歩くスピードはこちらの方が
早いので追いつきそうな距離
まで近づいてきた。
目前まで来ると女の服装
はセピア色の民族衣装で
鮮やかな沖縄のカラーとは
異なり、この場に相応しい
とは思えない身なりに
ようやく気付いた。
すると、その時!
女は途端に振り向き
手に持っているチラシを
渡そうとした。
瞬時に状況が掴めなかった。
それまで一度も振り向いて
いなかった筈なのに女は
背中で私に気づいていたのだ。
細長い女の顔は生気が
感じられないのだが
眼光の鋭さが不気味であった。
私は無意識にその女に
吸い寄せられたのでは
ないかと思うのである。
②玉葱頭の怪
学生時代まで遡る。
渋谷駅内のトイレ前で
知人を待っていた時だ。
茫然と駅構内の群衆を
眺めていると何やら視線
が感じられ、気持ち悪いので
その所在を探した。
すると真正面の向こうに
何やら小さな中年女が
こちらを見ているのが
はっきり見えた。
玉葱頭でおそらく四十代
非日常的なカラフルな様相で
黒柳徹子風な姿である。
およそ30メートル先で
あろうか。沢山の人が
行き交う中で彼女は
手招きでもするような仕草
でニタニタと笑っている。
うっかり蜘蛛の巣
にかかったような戦慄が
走ったので思わず目を逸らした。
女が立っていた場所へ再び
目をやると女はいなかった。
知人はトイレからまだ
出てこない。
次第に焦ってきた。
腕時計を顔に近づけた時
私の右隣に玉葱頭の女が
立っているのが見えた。
いつの間に??
先程同様にニタニタと
上目遣いで私を捉え半径
1メートル以内まで入って
きていた。
まるで「やっと二人きりに
なれたね〜」と言わんばかりに。
漸く知人がトイレから出てきた
と同時に私は知人になんの説明
もすることなく駆け足で一緒に
改札口を飛び出した。もちろん
後ろを振り返ることもなく…。
以上が私の中の都市伝説である。
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