初版 2013/04/23
戦争中、ユダヤ難民を救った日本人のお話です。
と言えば、今年は12月に映画も公開される予定の杉原千畝さんの事が思い浮かびますが、この本は杉原千畝さんのお話ではありません。
杉原さんは日本に滞在出来るビザを多くのユダヤ人に発行しました。ビザと言っても日本を通過して第三国に行けるビザだけだったのです。このため、中には滞在3日だけとか一週間だけ、のビザの人もいました。或は、ビザを全く持っていなかった人もいたと言うことです。多くのユダヤ人は着の身着のままだったので、日本の次にどこに行くのか全く決まっていませんでした。3日だけ、1週間だけでは到底次の行き先が決まる訳がありません。ビザが切れたら、またもといた場所に帰らなければならないのです。その事はユダヤ人に 強制収容所=死 を意味していました。ではそのようなユダヤ人は日本に来てその後はどうなったのか、という事がこの本には書かれています。
私は日本政府がなんとかしたのだろう、と思っていました。ですが、実は政府ではなかったのです。そこには一人の日本人がいました。その日本人のおかげで、杉原千畝さんから託された多くの命がアメリカなどへ出発出来る事によって、救われて行くのです。
それが小辻節男さんです。
そしてこの本の著者、山田純大さん。どこかで聞いた名前、と思っていたら、あの俳優の山田純大さんなのです。最近あまりテレビで見ないな、と思っていたら、なんと、ノンフィクションライターにもなっていたんですね。そしてこの本の中で、山田さんの経歴も知る事ができました。
山田さんは杉原千畝さんの本を読み、その後のユダヤ人はどうなったのか、と疑問に思ったそうです。このときからこの本がスタートしました。小辻の書いた自伝もアメリカから取り寄せ、読んだそうです。そして山田さんがアメリカに行ったとき、小辻の自伝の解説もしていた有名なラビ、トケイヤーさんの話を友達したとき、なんと、そのお友達はトケイヤーさんと親しいという事で、すぐに彼に会う事ができ、、小辻の事も聞く事ができたという事です。そしてそこから、小辻に引き寄せられるように、彼の人生をなぞっていく旅をして行くわけです。
憲兵隊に拷問にあってもユダヤ人の命を救った小辻。
杉原さんに代表されるこのユダヤ難民のお話も、実は杉原さんだけではなく、杉原→根井三郎(在ウラジオストク総領事代理、独断でユダヤ難民の日本までの渡航を認める)→日本郵船の人たち(日本までの船を提供、また日本からアメリカなどに行くときも日本郵船を利用)→小辻と命のリレーが繋がっていた訳です。
山田純大さんも、この本を書くにあたってかなりの資料を読まれているようです。アメリカに滞在しているだけあって、英語もできるのでそれも十分役立ったでしょう。
読みやすく、丁寧に書かれている内容だと思います。山田さんの情熱が感じられます。
ユダヤ難民の事をもっと知りたい、と思っている人にはぴったりの本です。