学校水泳の特色の一つとして、集団指導があげられます。
近年、あらゆる場面で個人主義が主流となっており、集団意識というものは薄れています。
最近の傾向として個性を発揮することを得意としており、反対に集団行動を苦手としている生徒が多いようです。
集団の中で行動するという経験は、将来必ず生きてきます。
その理由は、会社組織では自分の意志を自由に発揮できる場面が少なく、他人に合わせて仕事をすることが多いからです。
つまり、学校水泳のなかで学べることは「他者の気持ち」を考え、行動するという「公」の大切さを学ぶことができます。
「公」では、時に我慢が必要なこともあるでしょう。
しかし、他人との調和を図ることで全体がうまく機能し、結果的に自分自身の向上につながることが多いものです。
クラブ活動を通した礼儀の指導や上下関係の在り方などは、在学中にはよくわからなくても卒業後にその有難さがわかります。
豊山水泳部では、「公」の大切さを学ぶことができる集団指導を大切にしています。
一方、水泳の練習では個別指導も重視しています。
水泳の力量は個人によって差があり、水泳部に所属する目的や達成したい目標、出場する試合も異なります。
得意とする種目や距離も異なるため、練習チームを細分化し、それぞれに担当するコーチがいます。
大きくはAチーム、育成チーム、Bチームに分け、その中でさらに2~5チームほどに細分化し、個別の指導を行っています。
これも新校舎のプールを使用し始めてから、より効率が高まっています。
豊山水泳部は泳ぐのが早い選手しかいないように思われていますが、中にはほとんど泳げない生徒もたくさんいます。
入学試験を合格して入った中学1年生は、ほとんどの生徒がスイミングクラブをやめており、泳げない生徒が多いです。
かつては高校1年生で10mしか泳げない生徒も入部し、3年後には50mで30秒を切るほどになったという例もあります。
そのような生徒が喜ぶ姿を見るというのも教師冥利につきるものです。
泳げない生徒から全国中学校大会で優勝し日本選手権で好成績を上げる生徒まで、皆が一緒にクラブ活動を行っています。
私がよく言うことですが、速く泳ぐこと自体は何の自慢にもならず、大切なのは「泳ぐことで何を学んだか」ということです。
学校水泳では「集団指導と個別指導」のそれぞれの利点を生かすことで、より良い教育活動を行うことができるのです。
竹村知洋