7ヶ月にわたって連載してきた『スイミング・マガジン』の「ドリルマニュアル」は2019年1月号で完結しました。
フォームをつくるうえで一番大切にしていることは、「大きな筋肉の力を発揮させる」ということです。
泳ぐときの形は大切ですが、形だけにこだわりすぎて速く泳ぐこととのつながりが失われては元も子もありません。
大きな筋肉とは、体幹を中心とした筋肉のことで、腰背部や腹筋、大胸筋のことです。
私がいつも想定しているのは、生活の場を陸上から海中へと移していったイルカやくじらなどの哺乳類の泳ぎ方です。
どこかでイルカを見る機会があったら、是非、泳ぐ姿をよく観察してみてください。
これらの動物は腕や足がほぼ失われ、体幹の力を使って泳いでいます。
最も効率よく、速く泳ぐ方法を身につけた動物たちです。
それに比べ、人間の身体は陸上で歩行するようにできていますから、泳ぐことは得意ではありません。
特に大きな頭がじゃまになりますし、肘や膝などの大きな関節も水中では動きの妨げになります。
それを考えて、いかにイルカやくじらの動きに近づかせるか、というのがフォームをつくるうえでのポイントとなります。
連載してきたドリルマニュアルや『身になる練習法』で紹介しているドリルはその一点に集約されています。
もっと簡単にフォームの要点をまとめると「大きな筋肉の力を小さな筋肉に伝えていくこと」ということになります。
陸上でのトレーニングに関しても体幹の強化が重要となる理由もここにあります。
このような理由からフォームをつくるときは、体幹に力を入れる練習とフィンを使ったドルフィンキックからはじめます。
そして最終的には、「魚になるまで泳ぎこむ」ではなく、「イルカになるまで泳ぎこむ」です。
竹村知洋