コキュートスの記憶

日々の出来事とか戦果(買い物)とか。
主にガンダムを中心にしています。

ヘルメス夢幻 part11

2014年05月20日 | ゲームブック
前回、サザダーンから脱出して地球に降下しましたが、
旧友カセムのドーベンウルフに追われ、窮地に陥りました。
今回は、その続きでございます。

015:
サザダーンのデッキで聞いたメカマンの言葉を頭の中で繰り返す。
─右だ…
右胸にコクピット!:215

215:
「てめえが悪いんだ、カセム!」
ビームサーベルを振りかぶったドーベンウルフの右胸にポッと穴が開
いた。巨体がゆっくりと仰け反る。総てが動きを止める。
スティックから強ばった手を放したキミは、教官席のハッチを開いた。
右手でナオミを雪の上に降ろし、自分も降りる。
下から見上げると、ガザTは酷い有様だった。そこここの装甲は黒く
焦げて捲れ上がり、オイルが筋をなして流れ出している。
ナオミがジッとキミを見詰めている。
「カセムって人…知っている人だったんでしょう?」
「ああ…」
雪に半分めり込んで倒れているドーベンウルフを見やる。
─あの夕陽はオマエが見せてくれたのか?
君の胸にチラと後悔に似た痛みが走った。
─なかなかにキレイだったぜ…
アレは狂いかけたカセムに残された最後の意識だったのだろうか。
ガザTの脚部の収納ラックからサバイバルキットを取り出し、雪の上
に並べる。
「上から見た地形からすると…ヨーロッパ、ロシアの辺りかな。街迄
はちょっと歩かなきゃならんかも知れんが…」
「どうした?」
「月は出てないかなって思って」
バックパックにエアテントを固定しながらチラと空を見る。
「月齢によるけど、これだけ晴れてりゃ夜には見えるさ」
「ナオミ?」
様子がおかしい。ガラス玉のように虚ろな瞳で空を見上げたまま棒立
ちになっている。キミは肩に手をかけてこちらを向かせ、頬を叩いた。
「どうしたんだ!?」
ナオミの目はキミを見ていなかった。あらぬ方向に向けられた瞳には
何の色も浮かんでいない。
─何だ?一体どうしたんだ?
どこかで電子音が鳴っていた。それがガザTのコクピットの呼び出し
音だと悟るや否や、キミはガザTに飛び乗った。頭のハッチ迄運び上
げられるのももどかしく、コクピットに飛び込む。
通信が入っていた。遠距離用のレーザー通信だ。回線を開いて怒鳴る。
「サザダーンか!」
「良かった、届いたのね」
「ミディ…」
「カセムのお陰で大体の位置は判ったけど、レーザー通信のレンジは
狭いものね。後5分でこちらが地球の陰になってしまう」
「ナオミに何をした!」
ミディの含み笑いが聞こえた。
「意外に早かったわね」
「答えろ!」
「ムラサメ研究所の研究成果…使わせて貰ったの。一種の催眠暗示よ」
「暗示?」
「そう。あるキーワードに反応し、彼女の自我は─個性としての意志
は活動を停止する。肉体的な反応を示すだけの、早い話がロボットに
なる訳。キーワードは─アナタたちのシャトルでの会話を参考に、自
分としては凝ってみたつもりなんだけど、どうかしら?」
キミの脳裏にシャトルの窓から外を眺めていたナオミの横顔が浮かぶ。
地球から見る月は、それは美しいモノだって。人はその美しさに魅せ
られて一時総てを忘れてしまうんだって…。
「─悪趣味だな」
「もう少し大きなことの出来る女だと思っていた…。これはレベルが
低すぎる…」
「アナタは私を傷つけた」
ミディの声は低かった。キミの言葉を否定しないその響きに、キミは
一瞬、黙り込んだ。
「キミは若いけど…、その若さは醜いな」
通信にノイズが入り始めた。サザダーンが水平線に入りかけているの
だろう。
「私はHLVで地球に降りるわ…、また逢えると良いわね」
通信が切れた。

その夜、空に炎の尾を引き、巨大なモノが東に向けて飛んで行った。
テントを出てそれを見上げたキミの目に、白い月が映る。
ナオミはシェラフの中で眠っていた。起こさない限りいつ迄も眠り続
けるのかも知れない。
HLVの飛んで行った方角を向いて立ち尽くす。
─待っていろよ、ミディ…。

ちゅーとこで、Vol.3に続くとのことです。
一応、最善の道を辿ってきたとは思うのですが…。
次回はVol.3に行くか、他の道を拾うか未定でございます。
コメント
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