チューブとレインで一息ついたのもつかの間、
いきなりピンチになったところから続きます。
209:
咄嗟にピシャリとドアを閉める。指でも挟まれたのか、拳銃は床に落
ちて暴発する。
その銃声にキミが怯んだ一瞬の隙に、凄まじい力がドアを引き開け、
飛び込んで来た黒い影がキミをコンパートメントの奥に突き飛ばした。
後頭部を窓の桟に叩きつけられ、一瞬目の前が真っ暗になる。胸元を
掴んで引き摺り上げられ、みぞおちに拳が食い込む。続いてもう一発。
・ガクッと膝が床に落ち、キミは前のめりに倒れる:078
078:
跳ね起きて反撃しようにも体が全く言うことを聞いてくれない。キミ
は頬に押しつけられた床の冷たい感触に呻いた。男の嘲るような声が
上から降ってくる。
「さて膝をついてこっちを向いて貰いましょうか。拳銃が狙っている
ことをお忘れなく」
キミは上体を起こした。殴られた腹に重い痛みが走る。男はキミの着
ている制服の上着の襟を開き、力任せに二の腕の中程迄押し下げた。
キミの両腕の自由は上着の厚い布地で完全に封じられる形になった。
「縫製はしっかりしてるね。偽物とは思えない」
「オレをどうする気だ」
「悲しいかな、オレはアンタを殺さなくちゃならない」
「だったらさっさと用を済まして出てった方が良いな。人が来るぞ」
「慌てなさんな。一度こうやってアンタと話してみたかったのさ、F
-008の旦那」
「何…」
FISTにいた時のコードナンバーで呼ばれ、キミはハッと目を上げ、
男の顔を見詰めた。男は意外に若々しく、ブルゾンにジーンズという
格好でいるとまるで学生のように見えた。
「オレを忘れちゃったのかい?悲しいなぁ」
ラテン系の血を感じさせるその表情には見覚えがあった。
「フェデリコ…」
「アンタと仕事をした時は、そういう名前だったなぁ」
「FISTも人手不足らしいな。センチニアルを独りで寄越すとは」
男の頬がピクッと引き攣った。
エゥーゴの存在が明らかになりつつあった頃、スペースノイドの独立
運動の活発化やティターンズの台頭に対し、連邦政府における己の地
位の危険を感じ始めたダカールの老人たちは、懐刀であるFISTの
増員を図った。
しかし、機密を要す危険な任務に耐え得る技量を持った人材はそう一
度に集められるものではない。一応、計画された定数は満たしたもの
の、その質の低下は明らかであった。
そう言った状況を冷ややかに見詰めていたFISTの古株たちは、増
員によってナンバーが100を越えたことから未熟な新参者をセンチ
ニアルと呼び、自分たちと区別した。
「シングルナンバーのエースが任務の最中に消えちまったんだからな」
フェデリコの拳銃がキミの額を小突いた。
「名誉の殉職 誰もがそう思ったさ。ところがどっこい、とんでもな
い所からひょっこりアンタの名前が出て来た。アンタは知らないかも
しれんが、あのミディって女は最近じゃちょっとした有名人でね。陥
落寸前のキエフから脱出したのを追ってみれば、聞いて驚けF-00
8様がいらっしゃる。アンタは強化処理を受けた人間、彼女はニュー
タイプ関係担当の情報部員だ。こりゃほっとけないね」
─ナオミのことは知られてないな。
フェデリコは鼻を鳴らし、キミの額に銃口を押し当てる。
・ミディがティターンズと手を組もうとしていると話す:034
・フェデリコに体当たりを喰らわせる:009
・何とか両腕を自由にする:099
034:
「もう少しオレたちを泳がせるべきだったな。ミディが何をしようと
しているかを知ったら腰を抜かすぜ」
「興味ないね。ネオジオンに協力するアンタの存在が危険なのさ。ア
ンタのことは連邦のエゥーゴに対する立場を益々弱くする理由になり
得る。内輪の揉め事は内輪で、大事にならない内にって訳」
2、3歩後退りしたフェデリコはキミを見下ろして得物をいたぶる蛇
のような笑みを浮かべた。
「いつかこうやってアンタを跪かせてやりたいと思ってたのさ…ずっ
とな。アンタの時代はもう終わりだ、あばよ」
その時、ドアが外から激しく叩かれた。
「どうしたの?誰が一緒なの!?」
ミディの声だ。フェデリコの注意がキミから逸れた一瞬を見逃さず、
床を蹴って跳ぶ。キミの頭に顎を下から突き上げられ、フェデリコは
ガクッと仰け反った。
上着がスルリと抜け、キミの腕は自由になった。フェデリコの手から
落ちた拳銃が窓の下に滑って行く。
・ドアを開けて通路へ逃げる:176
・拳銃を拾う:048
攻勢に転じる感じですが、次回に続きます。
次回は176から再開になります。
いきなりピンチになったところから続きます。
209:
咄嗟にピシャリとドアを閉める。指でも挟まれたのか、拳銃は床に落
ちて暴発する。
その銃声にキミが怯んだ一瞬の隙に、凄まじい力がドアを引き開け、
飛び込んで来た黒い影がキミをコンパートメントの奥に突き飛ばした。
後頭部を窓の桟に叩きつけられ、一瞬目の前が真っ暗になる。胸元を
掴んで引き摺り上げられ、みぞおちに拳が食い込む。続いてもう一発。
・ガクッと膝が床に落ち、キミは前のめりに倒れる:078
078:
跳ね起きて反撃しようにも体が全く言うことを聞いてくれない。キミ
は頬に押しつけられた床の冷たい感触に呻いた。男の嘲るような声が
上から降ってくる。
「さて膝をついてこっちを向いて貰いましょうか。拳銃が狙っている
ことをお忘れなく」
キミは上体を起こした。殴られた腹に重い痛みが走る。男はキミの着
ている制服の上着の襟を開き、力任せに二の腕の中程迄押し下げた。
キミの両腕の自由は上着の厚い布地で完全に封じられる形になった。
「縫製はしっかりしてるね。偽物とは思えない」
「オレをどうする気だ」
「悲しいかな、オレはアンタを殺さなくちゃならない」
「だったらさっさと用を済まして出てった方が良いな。人が来るぞ」
「慌てなさんな。一度こうやってアンタと話してみたかったのさ、F
-008の旦那」
「何…」
FISTにいた時のコードナンバーで呼ばれ、キミはハッと目を上げ、
男の顔を見詰めた。男は意外に若々しく、ブルゾンにジーンズという
格好でいるとまるで学生のように見えた。
「オレを忘れちゃったのかい?悲しいなぁ」
ラテン系の血を感じさせるその表情には見覚えがあった。
「フェデリコ…」
「アンタと仕事をした時は、そういう名前だったなぁ」
「FISTも人手不足らしいな。センチニアルを独りで寄越すとは」
男の頬がピクッと引き攣った。
エゥーゴの存在が明らかになりつつあった頃、スペースノイドの独立
運動の活発化やティターンズの台頭に対し、連邦政府における己の地
位の危険を感じ始めたダカールの老人たちは、懐刀であるFISTの
増員を図った。
しかし、機密を要す危険な任務に耐え得る技量を持った人材はそう一
度に集められるものではない。一応、計画された定数は満たしたもの
の、その質の低下は明らかであった。
そう言った状況を冷ややかに見詰めていたFISTの古株たちは、増
員によってナンバーが100を越えたことから未熟な新参者をセンチ
ニアルと呼び、自分たちと区別した。
「シングルナンバーのエースが任務の最中に消えちまったんだからな」
フェデリコの拳銃がキミの額を小突いた。
「名誉の殉職 誰もがそう思ったさ。ところがどっこい、とんでもな
い所からひょっこりアンタの名前が出て来た。アンタは知らないかも
しれんが、あのミディって女は最近じゃちょっとした有名人でね。陥
落寸前のキエフから脱出したのを追ってみれば、聞いて驚けF-00
8様がいらっしゃる。アンタは強化処理を受けた人間、彼女はニュー
タイプ関係担当の情報部員だ。こりゃほっとけないね」
─ナオミのことは知られてないな。
フェデリコは鼻を鳴らし、キミの額に銃口を押し当てる。
・ミディがティターンズと手を組もうとしていると話す:034
・フェデリコに体当たりを喰らわせる:009
・何とか両腕を自由にする:099
034:
「もう少しオレたちを泳がせるべきだったな。ミディが何をしようと
しているかを知ったら腰を抜かすぜ」
「興味ないね。ネオジオンに協力するアンタの存在が危険なのさ。ア
ンタのことは連邦のエゥーゴに対する立場を益々弱くする理由になり
得る。内輪の揉め事は内輪で、大事にならない内にって訳」
2、3歩後退りしたフェデリコはキミを見下ろして得物をいたぶる蛇
のような笑みを浮かべた。
「いつかこうやってアンタを跪かせてやりたいと思ってたのさ…ずっ
とな。アンタの時代はもう終わりだ、あばよ」
その時、ドアが外から激しく叩かれた。
「どうしたの?誰が一緒なの!?」
ミディの声だ。フェデリコの注意がキミから逸れた一瞬を見逃さず、
床を蹴って跳ぶ。キミの頭に顎を下から突き上げられ、フェデリコは
ガクッと仰け反った。
上着がスルリと抜け、キミの腕は自由になった。フェデリコの手から
落ちた拳銃が窓の下に滑って行く。
・ドアを開けて通路へ逃げる:176
・拳銃を拾う:048
攻勢に転じる感じですが、次回に続きます。
次回は176から再開になります。