以前“子どもの好き嫌い”を取りあげましたが、
「苦手な食べ物があるけど、体格も普通で元気に過ごせている」
子どもが対象でした。
今回は、
「苦手な食べ物があり、健康に支障をきたしている」
という、グレーゾーンから病的な状態までカバーする内容です。
子どもが食べられない理由・原因を医学的に評価し、
それを解消する方法を紹介します。
▢ 子どもも親もラクになる偏食の教科書/幼児の偏食や好き嫌いを改善する方法/自閉症や会食恐怖症の子の心理(子育てサロン ニュートラル)
▶ 子どもが食べない3つの理由
1.かめない、飲みこめない
2.感覚が過敏か、鈍感
3.知らないから
(解説)
1.かめない、飲みこめない
食べるまでの動作は、
①食べ物を目で見て確認する、手を使い、箸を動かし、食べ物をつかむ
②口に入れる、前歯でかじりとる
③舌を使って奥歯へ食べ物を移動させる、奥歯で食べ物をすり潰す
④舌を使ってのど元へ送り込む、嚥下する(飲み込む)
の過程があるが、各段階が未発達の子どもはうまくできない。
うまくできない子どもは以下のものが苦手になる。
・硬すぎるもの・繊維が多すぎて噛み切れないもの
(例)繊維質の野菜、お肉、きのこ、魚介(タコ・イカ)など
・水分量が少なすぎてパサパサしているモノ
(例)パン、カステラ、焼き魚など
・のどや口腔内に張り付きやすいもの
(例)のり、海藻類、キュウリ(薄切り)、ウエハース、モナカの皮など
・粘りが強すぎてのどに詰まりやすいモノ
(例)お餅、お団子、イモ類など
・水分量が多く、口の中でばらけてまとまりにくいモノ
(例)かまぼこ、コンニャク、リンゴなどの果物など
・細かすぎて気管に入ってしまいやすいモノ
(例)みじん切りの野菜、ひき肉など
食べる動作の発達レベルは以下でチェック可能です。
→ 口を閉じることができない子どもの練習方法
・ストローを使って、好きな形に切った折り紙を吸い上げる
・おもちゃの笛を思いっきり吹く
→ 舌をうまく動かせない場合
・くちびるにジャムなどを塗り、それを舐め取る
2.感覚が過敏か、鈍感
感覚過敏、感覚鈍麻などは発達障害(神経発達症)の一種である自閉スペクトラム症(ASD、対人関係が苦手で強いこだわりがあるとされる)の傾向がある子に多く見られ、ASD児には偏食が多い。ただし、五感には個人差が大きい。
(例)
・人より味を強く・薄く感じる。
・天ぷら・揚げ物の衣が口の中に刺さる感じがして痛い。
・もっちりした食感が気持ち悪い。
・料理の見た目がグロテスクに見える。
・少しの音が気になって集中して食べられない。
・哺乳瓶、スプーンなど、食器類の触った感じが気持ち悪い。
・口周りを触られることに強い嫌悪感がある。
・内臓の感覚が鈍感で空腹を感じない。
3.知らないから
子どもがある食材を食べるようになるまでの道程は、
1知らない → 2知る → 3興味を持つ → 4触れる → 5食べる
という壁を乗り越えて達成します。
対策は、食材に触れる機会を増やすこと。具体的には、
① 食材当てゲーム(目隠ししてニオイで当てる、触って当てる)
② お買い物で食材をかごに入れてもらう。
③ 食育関連の絵本を読む。
④ 家庭菜園や果物狩り
⑤ 釣り、魚のつかみ取り
▶ 好き嫌い・偏食を加速させるNG行動3つ
1.緊張感のある食卓
2.子ども主体のメニューになりすぎる
3.おやつの時間、食べ終わる時間に一貫性がない
(解説)
1.緊張感のある食卓
・食べないと怒られるかもしれない(ビクビク・ピリピリ)。
・「残さず食べなさい」はNG → 「食べきれなかったら残してもいいよ」
・まず親が「食事は楽しい」ことを見せる、親のイライラや焦りはマイナスポイント。
2.子ども主体のメニューになりすぎる。
・“子どもの言いなりメニュー“はNG、子どもの食が広がらない。
・“特別な日”ならOK、でも日常的にはNG。
・メニュー決めの主導権は大人が握るべし。毎回子どもの言いなりメニューでは、大人側の疲弊と不満が溜まりがち。
3.おやつの時間、食べ終わる時間に一貫性がない。
① 食べたいときに食べられるおやつでは、1日3回の主食を食べられなくなる。対策として、
・おやつをあげるときのポイント;
✓ 袋出しは避け、お皿に出してからあげる。
✓ エネルギー量が少ないモノに置き換える
・小さい子の場合には;
✓ お菓子はできるだけ子どもの手に届かないところに置く。
✓ 必要以上に回おきをしない。
・ある程度子どもが大きくなってきたら;
✓ お菓子の食べ過ぎが体の成長にはよくないことなどを伝える。
✓ お菓子はどれくらいまでにするか、親子でルールを決める。
②ダラダラ食べをやめる。対策として、
・食事の時間は30分が目安。
・子どもに「まだ食べたい?」と聞いて頷くなら延長OK(ただし1回まで)。
・食べるのが極端に遅い子どもは食べる機能(口腔機能)を要チェック。
以上に問題がなくても食べてくれない場合は「すでに好きなモノでお腹いっぱい」になっている可能性あり。
好きなモノだけ平らげて、他の食材にたどり着く前にお腹いっぱいなので箸が止まる。
→ 今食べられるものの提供量を減らす。食事内容の割合は「好きなモノ:苦手なモノ:ふつう=1:1:2」が目安。
<参考書籍>
・「偏食の教科書」(山口健太著、藤井葉子監修、青春出版社)