日々雑感

読んだ本やネット記事の感想、頭に浮かんでは消える物事をつらつら綴りました(本棚7)。

樋口一葉

2013-10-28 06:25:42 | 小説
 樋口一葉は明治時代の女流作家で、近年では5000円札の肖像に採用されたことで話題になりました。
 実は私はまだ一葉の小説を読んだことがありません。
 でも様々な機会に取りあげられ耳にするこの作家は、現代も生き残っている普遍性を有しているのでしょう。
 格調の高い「文語体」にいずれ挑戦してみたいと思います。

 録画しておいた彼女の特集番組を2つ続けて見ました。

恋する一葉~平成の女子大生がたどる明治の青春(NHK-BS)
 第22回ATP賞優秀賞受賞作品。「劇団で樋口一葉を演じることになった2人の女子大生が、その実像をたどるドキュメンタリードラマ。一葉の日記や新発見資料から、夢や恋、仕事に悩みながらのびのびと生きる現代的な一葉の姿が浮かび上がる。


 恋や就職問題が現在進行形の現役女子大生が、封建制度の女性像が色濃く残る明治時代に「職業作家」として自立を目論んだ一葉を等身大の女性として捉えた内容です。
 「自立とはお金を稼いで生活すると云うことだから、原稿料で生活できないなら自立とは云えないのでは?」
 「二人の男性からお金を融通してもらって、しかも肉体関係がなかったのであれば、一葉はなかなかどうしてしたたかな女性だったのではないか?」
 などなど、評論家からは聞こえてこないような新鮮な意見が飛び交いました。
 「たけくらべ」「にごりえ」が出版され話題になり、森鴎外や幸田露伴からもその気品のある文語体の文章を絶賛されました。彼女の自宅は若手の作家が集まるサロンと化しました。
 しかし、一葉は「集まった人たちは、ただ私が女性と云うだけでもてはやしているに過ぎない」と日記に記しています。
 彼女の本当の姿を指摘したのは「あなたの小説は泣きはらして涙が涸れた後の冷笑のようである」(※)と評した斉藤緑雨のみ、と感じていました。
 それにしても、生涯借金に追われた一葉が5000円札の肖像になった皮肉を、彼女自身はどう感じているのだろう。感想を聞きたいものです(笑)。 
※ 「君が作中には、此冷笑(あざわらい)の心みちたりとおもふはいかに。」「されど、世人のいふが如き涙もいかでなからざらん。そは泣きて後の冷笑なれば、正しく涙はみちたるべし。」

樋口一葉物語(BS-TBS)
 24歳という若さで没した日本初の女流職業作家・樋口一葉の短くも熱い生涯を描いたドラマ。
【あらすじ】
 明治19年、伊藤博文が初代の内閣総理大臣になった翌年。14歳のなつ子(後の一葉・内山理名)は、父・則義(野口五郎)と母・多喜(かとうかずこ)、兄・泉太郎(内田朝陽)、妹・くに子(前田亜季)と幸せに暮らしていた。
 ある日なつ子は父の勧めで、女流歌人・中島歌子(余貴美子)が主宰する当代随一の歌塾「萩の舎」に入門する。喜び勇んで通い始めたものの、塾生には華族や政府の高官、著名な学者の令嬢たちが名を連ねており、士族とはいえ下級官吏の娘であるなつ子は肩身の狭い思いをする。
 そんな中、めきめきと頭角を現し、主宰者の歌子や先輩の龍子(尾上紫)からもその才能を認められる。ところがそんな幸せも束の間、樋口家を不幸が襲う。兄の泉太郎が肺を患い24歳の若さで急逝し、その2年後、事業に失敗して莫大な負債を抱えた父も心労がもとで亡くなってしまう。
 残されたなつ子たちは針仕事などの内職をして新しい生活を始めるが、暮らしは貧しく、苦しいものだった。そんな中、小説を書けばお金になることを知ったなつ子は、くに子の口ききで、新聞記者で小説も書いている半井桃水(永井大)に指導を受けることになる。桃水の親切な指導を受けるうち、次第に恋心を抱くようになったなつ子だが…。


 こちらは見どころ満載のドラマ仕立て。
 駆け落ちして東京に出てきた両親と一葉の生い立ちから始まり、一葉と桃水の関係を戸主同士の叶わぬ「純愛」として描き、生活苦と色街界隈に過ごした日々から「たけくらべ」が生まれた背景を探ります。
 ただ、訪問した鴎外が述べたセリフ「涙が涸れた後の冷笑」は齋藤緑雨の言葉として残っているはずだけど・・・。

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