かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 190

2024-01-27 10:12:41 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究23
    【眉間】『寒気氾濫』(1997年)79頁
    参加者:泉真帆、かまくらうてな、渡部慧子、鹿取未放、
        S・Iと鈴木良明は紙上参加
    レポーター: 泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
            
    
190 われの手がソープレスソープにまみるるを積乱雲は湧きやまぬなり

     (レポート)
 ソープレスソープとは合成洗剤、中性洗剤のことだ。屋外で何かの作業を終えた作者なのか、手を洗っている。むくむくと湧く入道雲とソープの泡がひびきあう。(真帆)


    (紙上意見)
 ホイップクリームに似た石鹸の泡が次々、生れている。それを積乱雲に見立てている。少年のように無心な、作者の手の動きを想像すると微笑ましい。(S・I)


 石鹸ではなく、泡立ちが良く汚れがよく落ちる合成洗剤「ソープレスソープ」で手を洗いながら、その泡立ちに積乱雲が湧く様を連想している。(鈴木)


      (当日意見)
★我の手が汚れていたのはどうしてか?罪があると思っているのか、とかいろいろ後か
 ら考えました。(真帆)
★現代文明批判だと思います。ソープレスソープは非常に肌荒れも起こすし、海洋汚染
 にも通じますから。「まみるる」というのはマイナスイメージで言っていますから。
 積乱雲の中身だって汚染されていますから。(うてな)
★では、積乱雲は怒りに通じているの?(慧子)
★私は一連の続きなのでここも隠微な秘密めいた性的な感じにとりました。ソープと
 か泡ですから。次の東郷健にも繋がります。だから積乱雲も湧いてくる衝動の象徴
 のような。(鹿取)


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