かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 224

2021-05-15 16:41:42 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究27(15年5月実施)
                【非想非非想】『寒気氾濫』(1997年)91頁~
      参加者:石井彩子、泉真帆、かまくらうてな、M・K、崎尾廣子、M・S、曽我亮子、
          渡部慧子、鹿取未放
        レポーター:石井 彩子 司会と記録:鹿取未放

 ◆「非想非非想」の一連は、『寒気氾濫』の出版記念会の折、塚本邦雄氏が絶賛された。
   全ての歌に固有名詞が入っていて全て秀歌、「敵愾心を覚える」とスピーチされた。

224 新樹みなキェルケゴールにほほえめばキェルケゴールはレギーネを恋う

        (レポート)
 キェルケゴールはレギーネに求婚をし、彼女は受け入れるのだが、一方的に破棄する、これは謎である。この不可解なキェルケゴールの行為を吉本隆明は普通以下の人だといい、日常の反復を嫌がったのではないかと言っている、あえて苦難に向かう性向は実存主義の始祖らしい。亡くなってもレギーネを相続人にするなど、生涯にわたって、彼女を思慕し続けた。この歌は新樹が初々しく、キェルケゴールに映るのを、レギーネへの想いと重ねたのではないか。(石井)


      (当日意見)
★『悲劇の思想』(河出書房・1966年刊)の解説では、キェルケゴールは性的不能者だっ
 たと翻訳をした高橋健二と秋山英夫が書いています。事実かどうかはわかりませんが。
    (鹿取) 
★「新樹みな」のみなって何ですか?木がしばしば人格のメタファーになっていることが多い
 のですが、なぜ特定の樹ではなく「新樹みな」なんですか?(うてな)
★あまり深く考えないで全部の樹がキェルケゴールにほほえんでいると。(石井)
★季節ではないですか。いろんな樹が萌えだしている、ものみなエネルギーに満ちている、そ
 ういう季節。だから特定の樹でなくみんな。(鹿取)
★出版記念会で小池光さんがこの歌がいいと言われたんだけど、なぜいいとおっしゃったかは
 残念ながら覚えていません。ところで、「かりん」特集号の『寒気氾濫』自選5首にこの歌
 入っていてこんな自注があります。(鹿取)
   キェルケゴールの著書『反復』が頭にありました。まったく不可能な恋、存
   在の限界を新緑の樹木のなかに置いてやりたかったのです。包みたかったのだ
   と思います、たぶん。 「かりん」(2011年11月号)


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