渡辺松男研究27(15年5月実施)
【非想非非想】『寒気氾濫』(1997年)91頁~
参加者:石井彩子、泉真帆、かまくらうてな、M・K、崎尾廣子、M・S、曽我亮子、
渡部慧子、鹿取未放
レポーター:石井 彩子 司会と記録:鹿取未放
◆「非想非非想」の一連は、『寒気氾濫』の出版記念会の折、塚本邦雄氏が絶賛された。
全ての歌に固有名詞が入っていて全て秀歌、「敵愾心を覚える」とスピーチされた。
224 新樹みなキェルケゴールにほほえめばキェルケゴールはレギーネを恋う
(レポート)
キェルケゴールはレギーネに求婚をし、彼女は受け入れるのだが、一方的に破棄する、これは謎である。この不可解なキェルケゴールの行為を吉本隆明は普通以下の人だといい、日常の反復を嫌がったのではないかと言っている、あえて苦難に向かう性向は実存主義の始祖らしい。亡くなってもレギーネを相続人にするなど、生涯にわたって、彼女を思慕し続けた。この歌は新樹が初々しく、キェルケゴールに映るのを、レギーネへの想いと重ねたのではないか。(石井)
(当日意見)
★『悲劇の思想』(河出書房・1966年刊)の解説では、キェルケゴールは性的不能者だっ
たと翻訳をした高橋健二と秋山英夫が書いています。事実かどうかはわかりませんが。
(鹿取)
★「新樹みな」のみなって何ですか?木がしばしば人格のメタファーになっていることが多い
のですが、なぜ特定の樹ではなく「新樹みな」なんですか?(うてな)
★あまり深く考えないで全部の樹がキェルケゴールにほほえんでいると。(石井)
★季節ではないですか。いろんな樹が萌えだしている、ものみなエネルギーに満ちている、そ
ういう季節。だから特定の樹でなくみんな。(鹿取)
★出版記念会で小池光さんがこの歌がいいと言われたんだけど、なぜいいとおっしゃったかは
残念ながら覚えていません。ところで、「かりん」特集号の『寒気氾濫』自選5首にこの歌
入っていてこんな自注があります。(鹿取)
キェルケゴールの著書『反復』が頭にありました。まったく不可能な恋、存
在の限界を新緑の樹木のなかに置いてやりたかったのです。包みたかったのだ
と思います、たぶん。 「かりん」(2011年11月号)
【非想非非想】『寒気氾濫』(1997年)91頁~
参加者:石井彩子、泉真帆、かまくらうてな、M・K、崎尾廣子、M・S、曽我亮子、
渡部慧子、鹿取未放
レポーター:石井 彩子 司会と記録:鹿取未放
◆「非想非非想」の一連は、『寒気氾濫』の出版記念会の折、塚本邦雄氏が絶賛された。
全ての歌に固有名詞が入っていて全て秀歌、「敵愾心を覚える」とスピーチされた。
224 新樹みなキェルケゴールにほほえめばキェルケゴールはレギーネを恋う
(レポート)
キェルケゴールはレギーネに求婚をし、彼女は受け入れるのだが、一方的に破棄する、これは謎である。この不可解なキェルケゴールの行為を吉本隆明は普通以下の人だといい、日常の反復を嫌がったのではないかと言っている、あえて苦難に向かう性向は実存主義の始祖らしい。亡くなってもレギーネを相続人にするなど、生涯にわたって、彼女を思慕し続けた。この歌は新樹が初々しく、キェルケゴールに映るのを、レギーネへの想いと重ねたのではないか。(石井)
(当日意見)
★『悲劇の思想』(河出書房・1966年刊)の解説では、キェルケゴールは性的不能者だっ
たと翻訳をした高橋健二と秋山英夫が書いています。事実かどうかはわかりませんが。
(鹿取)
★「新樹みな」のみなって何ですか?木がしばしば人格のメタファーになっていることが多い
のですが、なぜ特定の樹ではなく「新樹みな」なんですか?(うてな)
★あまり深く考えないで全部の樹がキェルケゴールにほほえんでいると。(石井)
★季節ではないですか。いろんな樹が萌えだしている、ものみなエネルギーに満ちている、そ
ういう季節。だから特定の樹でなくみんな。(鹿取)
★出版記念会で小池光さんがこの歌がいいと言われたんだけど、なぜいいとおっしゃったかは
残念ながら覚えていません。ところで、「かりん」特集号の『寒気氾濫』自選5首にこの歌
入っていてこんな自注があります。(鹿取)
キェルケゴールの著書『反復』が頭にありました。まったく不可能な恋、存
在の限界を新緑の樹木のなかに置いてやりたかったのです。包みたかったのだ
と思います、たぶん。 「かりん」(2011年11月号)
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