かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 188

2021-03-24 17:59:11 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究23 【眉間】『寒気氾濫』(1997年)79頁~
  参加者:泉真帆、かまくらうてな、渡部慧子、鹿取未放、石井彩子と鈴木良明は紙上参加
  レポーター: 泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
            
    
188 北斎はエイズを知らず絡みあい渦巻き男波女波怒濤す

         (レポート)
 信州の小布施文化観光協会のサイトに、葛飾北斎の美術館が紹介されている。展示されている二基の祭屋台には北斎自筆の「龍と鳳凰」と、一首に詠まれている「怒濤」がある。「怒濤」は通称、男波女波と呼ばれる。絡みあう男波女波はいかにも奔放で、エイズなど存在しなかった時代の力強さがある。
    (真帆)

      (紙上意見)
 『神奈川沖浪裏』という印象派に影響を与えた木版画で、鑑賞者はまず中心にある富士山に視線が向き、動と静、遠と近の対比に感銘を受けるが、渡辺氏は波だけに関心を寄せる。波の躍動感、迫力を男女が絡みあうエロチシズムに置き換えている。そして現代の文明病であるエイズと、想念は広がってゆく。(石井)

 北斎が描いた浮世絵の波―高低のある波の中で高い「男波」と低い「女波」が絡み合って渦を巻き怒涛しているーに性のうねりのようなものを感じている。それを過去の話にしないため、「エイズ」という言葉を入れて、現代に引き寄せて詠っている。(鈴木)


       (当日意見)
★この一首はすごく分かりやすい。北斎は春画を描いたからその連想から波、性的なものに発展し
 たんだなあと思う。(うてな)
★作者は北斎の作品名「男波女波」や「怒濤」を連ねることで波の動きの凄まじさをうまく描写し
 ていて、しかもエイズを持ってきたことで人間の性愛の比喩になっている。とてもエロティック
 な歌ですよね。(鹿取)


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