かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 187

2021-03-23 17:18:03 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究23 【眉間】『寒気氾濫』(1997年)79頁
  参加者:泉真帆、かまくらうてな、渡部慧子、鹿取未放、石井彩子と鈴木良明は紙上参加
  レポーター: 泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
            
    
187 ナチ・ヌード陰毛濃きを白日の野に立たせ種の保存のロマン

      (レポート)
 富国強兵を目的に〝産めよ増やせよ〟の政策を進めた日本。ナチス政権下では「配偶者選択十か条」が出され、その中にヌードの写真を載せたと聞く。西洋人の濃き陰毛と、白日のもと繰りひろげられる男女のロマン。政策下とは言え「白日の野」に明るさも感じる。(真帆)


        (紙上意見)
 女性は産む機械のように裸で野に立たせられ、淫靡な視線にさらされている。ナチが信奉する種の保存ードイツ民族は唯一優秀な民族という優生学ーを実践するためだ。がそれはナチが考案した狂気のロマンだ。劣性とされたユダヤ人はホロコーストされ、また遺伝性疾患子孫防止法のもとに身体・精神障害者が虐殺された。(石井)

 ドイツナチスの政策として、『ドイツ裸体文化』が刊行され、ヌード写真掲載の雑誌なども発刊されるようになった。それは、エロやポルノといったものではなく、あくまでも芸術的な視点から肉体美が表現されたもので、「白日の野に立たせ」て写っているものもあったのだろう。それは優秀な遺伝子を残すための、「種の保存のロマン」でもあった。(鈴木)


         (当日意見)
★この歌は「種の保存」と言いながら残酷なことをしていた。だからこの部分は逆説だと思う。(慧子)
★皮肉ですね。(うてな)
★ナチは「種の保存」をロマンのように言っているけれど、何を馬鹿なという、ここは揶揄であり
 批判なんですよね。(鹿取)
★皮肉というのは文学の発想の一つですよね。塚本邦雄は短歌で皮肉ばっかり言っているけど。
   (うてな)


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